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「カリークがまだ残っているから、夕食のおかずに添えよう」
魔法の練習を終えて帰宅し、ルルカにそう告げた。
カリークとはこの大陸東の海の魚であり、ルルカを実家に送る際に漁村まで足を延ばして入手したものだ。
「そうですね、久しぶりです……し……、ツ、ツトムさん、どちらへ?」
「庭で焼いて来るよ」
「庭で!? 私が調理しますので、庭で焼かれるのはちょっと……」
「庭で焼くのはダメなのか?」
ルルカが調理すると魚料理になってしまう。もちろんそれがダメってわけではないのだが、魚は塩を振って焼くだけのシンプルなアウトドアスタイルで食べたいのだ。
「村落ならともかく、街中の戸建ての庭では焼き物なんてしませんよ」
「でもルルカが実家に帰ってた時、ロザリナと庭でカリークを焼いて食べたぞ」
「ロザリナ、本当なの?」
「はい。1度だけでしたが」
「ご近所から苦情とかはなかった?」
「ありませんでした」
ご近所迷惑か。
現代ならともかく、この時代にそんなのあるのか?
庭で枯れ葉を燃やすようなことはどの家でもやってそうだが、それを目撃したことは1度もない。
まぁ要は煙と匂いを何とかすればいいわけだ。
「俺の魔法で煙突を作るのはどうだ?
煙と匂いを上空に逃せばご近所の迷惑にはならないだろう」
「仰る通りですが、カリークを焼くためにわざわざ作るのですか?」
むぅ……
さすがに改めて言われてみると、そこまでするほどのことでもないか。
「わかった。ルルカに任せるよ」
「かしこまりました」
結局夕食にはルルカの魚料理が追加されることとなった。
ちなみに、カリークは初めてというディアは美味しいっ言って喜んで食べていた。
翌日、昼過ぎに商業ギルドに行った後で魔法練習することを伝えて家を出た。
商業ギルドへは魔道具に関する情報を聞きに行くためだ。ついでに飛行魔法を活かせる輸送案件がないかも聞こうと思う。
俺が求めてる魔道具は2種類。
1つは魔法能力を高める魔道具だ。魔剣が存在しているのだからこういった魔道具もきっとあるはず。
魔法の威力を上昇させたり最大MPを引き上げたりの効果があるのなら、自分の戦闘力を底上げすることも可能だろう。
もう1つは写真か動画撮影できる魔道具が欲しい。こちらは完全にスケベ心を満たすためのモノだが、思い出を記録するという綺麗な意味でも使うことができる。
もっともこの世界に来てもうすぐ100日になろうかと言うのに、撮影系の魔道具に関しては一切聞いたことがない。噂話すら耳にしたことがないので存在してない可能性が高くほとんど期待はしていない。
入城料を支払い城壁内の北東区画にある大きな倉庫に併設している商業ギルドに入る。
今回は幅広い見識を求めるので、なるべくベテランそうな職員のいる受付へと並ぶ。
ほどなくして順番が来て、
「いらっしゃいませ、本日はどのような御用件でしょうか?」
「魔道具について聞きたいのですが、商業ギルドで取り扱っていますか?」
「魔道具に関しては王都で開催されるオークションにたまに出品されますよ」
また王都のオークションか。
地元なのにバルーカでのオークションとは縁がないな。よほど小規模での開催なのかな?
「他で買えたりしませんか?」
「オークション以外で、となると聞いたことがありませんね。
他は商路を介さない個人間の取引ぐらいではないでしょうか?」
個人間と言ったところで王族か貴族か商人の3者ぐらいなんだろうけど。
「王都ではどのような魔道具がオークションに出品されるのでしょう?」
「私が知ってる限りにおいてですが、拡声の魔道具に火・水・風の魔道具ですね」
拡声の魔道具って昇格試験の際に実況と解説者の前に置かれていた大きな箱のことなんだろうな。
それよりも、
「火・水・風の魔道具ってどんなのです?」
もし、これらの魔道具が対応する属性のスキルを強化するものだったら……かなり使えるぞ!
特にメインで使っている風属性が強化されるのはデカイ!
「名前の通り、火を起こす、水を出す、風を送ることができる魔道具ですね」
「えっ…………??」
それだけ? たったの??
「あのっ! 自分は冒険者で魔術士なんですけど、魔法力を強化するような魔道具はありませんか?」
4等級の冒険者カードを見せながら、ド直球に聞いてみた。
「そのような効果の魔道具は聞いたことがありませんが……」
「ほら、魔剣があるのだったら魔術士を強化する魔道具があってもおかしくないでしょ、むしろ魔道具なんだから魔術士が本命でもいいぐらいですし」
「あぁ、男爵が持つ有名な魔剣ファルヴァールですね。あれはオリジナルですからねぇ、市場にあれクラスはまず出てきませんよ」
「オリジナル??」
「各地の遺跡から稀に発掘される魔道具を『オリジナル』と呼称しています。約3000年前に栄えていたとされる古代魔法王国の遺産で、強力な効果がありますが複製・復元は不可能な代物です。
オークションに出品されるような魔道具はオリジナルの模造品・劣化品・劣化派生品でして、その性能はオリジナルの足元にも及びませんね」
何だよ、古代魔法王国って……
「もっと詳しくお知りになりたいのでしたら、王都の商業ギルドで聞かれるのがよろしいかと。
あちらは実際オークションで取り扱ってるだけに魔道具に関しての知識は豊富ですし」
結局それ以上聞くことはせずに商業ギルドを後にした。
求める魔道具がないかもしれない状況では、輸送案件のことを聞いたところで無意味だし、撮影系も聞くだけ無駄に思えたのだ。
王都の商業ギルドに行くかはしばらく考えたいと思う。どの道今は待機中なのでバルーカから動くことはできないのだから。
…
……
…………
その後は日課の魔法の練習以外は特に何もなく、のんびりイチャイチャしながら過ごした。
城からの急報もないので、アルタナ王国における軍による防衛が成功していて有利な戦況なのだろう。
このような怠惰なエロい日々が続けば身体が鈍ってしまうかもしれない。
ロザリナから『そうならないためにも今の内から身体を動かしておきませんか?』というプレッシャーをガンガンに感じながらも、商業ギルドに行った日から2日目、この世界に来て記念すべき100日目の夜も眠りについた。
ドンドンドンッ! ドンドンドンッ! ドンドンドンッ! ドンドンドンッ!
激しくドアを叩く音が聞こえたのは、日付も変わった異世界生活101日目の深夜のことだった……
魔法の練習を終えて帰宅し、ルルカにそう告げた。
カリークとはこの大陸東の海の魚であり、ルルカを実家に送る際に漁村まで足を延ばして入手したものだ。
「そうですね、久しぶりです……し……、ツ、ツトムさん、どちらへ?」
「庭で焼いて来るよ」
「庭で!? 私が調理しますので、庭で焼かれるのはちょっと……」
「庭で焼くのはダメなのか?」
ルルカが調理すると魚料理になってしまう。もちろんそれがダメってわけではないのだが、魚は塩を振って焼くだけのシンプルなアウトドアスタイルで食べたいのだ。
「村落ならともかく、街中の戸建ての庭では焼き物なんてしませんよ」
「でもルルカが実家に帰ってた時、ロザリナと庭でカリークを焼いて食べたぞ」
「ロザリナ、本当なの?」
「はい。1度だけでしたが」
「ご近所から苦情とかはなかった?」
「ありませんでした」
ご近所迷惑か。
現代ならともかく、この時代にそんなのあるのか?
庭で枯れ葉を燃やすようなことはどの家でもやってそうだが、それを目撃したことは1度もない。
まぁ要は煙と匂いを何とかすればいいわけだ。
「俺の魔法で煙突を作るのはどうだ?
煙と匂いを上空に逃せばご近所の迷惑にはならないだろう」
「仰る通りですが、カリークを焼くためにわざわざ作るのですか?」
むぅ……
さすがに改めて言われてみると、そこまでするほどのことでもないか。
「わかった。ルルカに任せるよ」
「かしこまりました」
結局夕食にはルルカの魚料理が追加されることとなった。
ちなみに、カリークは初めてというディアは美味しいっ言って喜んで食べていた。
翌日、昼過ぎに商業ギルドに行った後で魔法練習することを伝えて家を出た。
商業ギルドへは魔道具に関する情報を聞きに行くためだ。ついでに飛行魔法を活かせる輸送案件がないかも聞こうと思う。
俺が求めてる魔道具は2種類。
1つは魔法能力を高める魔道具だ。魔剣が存在しているのだからこういった魔道具もきっとあるはず。
魔法の威力を上昇させたり最大MPを引き上げたりの効果があるのなら、自分の戦闘力を底上げすることも可能だろう。
もう1つは写真か動画撮影できる魔道具が欲しい。こちらは完全にスケベ心を満たすためのモノだが、思い出を記録するという綺麗な意味でも使うことができる。
もっともこの世界に来てもうすぐ100日になろうかと言うのに、撮影系の魔道具に関しては一切聞いたことがない。噂話すら耳にしたことがないので存在してない可能性が高くほとんど期待はしていない。
入城料を支払い城壁内の北東区画にある大きな倉庫に併設している商業ギルドに入る。
今回は幅広い見識を求めるので、なるべくベテランそうな職員のいる受付へと並ぶ。
ほどなくして順番が来て、
「いらっしゃいませ、本日はどのような御用件でしょうか?」
「魔道具について聞きたいのですが、商業ギルドで取り扱っていますか?」
「魔道具に関しては王都で開催されるオークションにたまに出品されますよ」
また王都のオークションか。
地元なのにバルーカでのオークションとは縁がないな。よほど小規模での開催なのかな?
「他で買えたりしませんか?」
「オークション以外で、となると聞いたことがありませんね。
他は商路を介さない個人間の取引ぐらいではないでしょうか?」
個人間と言ったところで王族か貴族か商人の3者ぐらいなんだろうけど。
「王都ではどのような魔道具がオークションに出品されるのでしょう?」
「私が知ってる限りにおいてですが、拡声の魔道具に火・水・風の魔道具ですね」
拡声の魔道具って昇格試験の際に実況と解説者の前に置かれていた大きな箱のことなんだろうな。
それよりも、
「火・水・風の魔道具ってどんなのです?」
もし、これらの魔道具が対応する属性のスキルを強化するものだったら……かなり使えるぞ!
特にメインで使っている風属性が強化されるのはデカイ!
「名前の通り、火を起こす、水を出す、風を送ることができる魔道具ですね」
「えっ…………??」
それだけ? たったの??
「あのっ! 自分は冒険者で魔術士なんですけど、魔法力を強化するような魔道具はありませんか?」
4等級の冒険者カードを見せながら、ド直球に聞いてみた。
「そのような効果の魔道具は聞いたことがありませんが……」
「ほら、魔剣があるのだったら魔術士を強化する魔道具があってもおかしくないでしょ、むしろ魔道具なんだから魔術士が本命でもいいぐらいですし」
「あぁ、男爵が持つ有名な魔剣ファルヴァールですね。あれはオリジナルですからねぇ、市場にあれクラスはまず出てきませんよ」
「オリジナル??」
「各地の遺跡から稀に発掘される魔道具を『オリジナル』と呼称しています。約3000年前に栄えていたとされる古代魔法王国の遺産で、強力な効果がありますが複製・復元は不可能な代物です。
オークションに出品されるような魔道具はオリジナルの模造品・劣化品・劣化派生品でして、その性能はオリジナルの足元にも及びませんね」
何だよ、古代魔法王国って……
「もっと詳しくお知りになりたいのでしたら、王都の商業ギルドで聞かれるのがよろしいかと。
あちらは実際オークションで取り扱ってるだけに魔道具に関しての知識は豊富ですし」
結局それ以上聞くことはせずに商業ギルドを後にした。
求める魔道具がないかもしれない状況では、輸送案件のことを聞いたところで無意味だし、撮影系も聞くだけ無駄に思えたのだ。
王都の商業ギルドに行くかはしばらく考えたいと思う。どの道今は待機中なのでバルーカから動くことはできないのだから。
…
……
…………
その後は日課の魔法の練習以外は特に何もなく、のんびりイチャイチャしながら過ごした。
城からの急報もないので、アルタナ王国における軍による防衛が成功していて有利な戦況なのだろう。
このような怠惰なエロい日々が続けば身体が鈍ってしまうかもしれない。
ロザリナから『そうならないためにも今の内から身体を動かしておきませんか?』というプレッシャーをガンガンに感じながらも、商業ギルドに行った日から2日目、この世界に来て記念すべき100日目の夜も眠りについた。
ドンドンドンッ! ドンドンドンッ! ドンドンドンッ! ドンドンドンッ!
激しくドアを叩く音が聞こえたのは、日付も変わった異世界生活101日目の深夜のことだった……
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