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「そろそろ食事にしましょう」
盛り上がってきたところルルカの一言で中断させられてしまった。
梯子を外された感があるが、このまま玄関で始めてしまったら夕飯がかなり遅くなってしまう。ディアなどは我慢できないだろう。
しかしあれだけ帰りが遅くなったら先に食べるよう言ったのに……
まぁ今日は4等級に昇格した記念すべき日だ。あまりうるさいことは言わないでおこう。
…
……
…………
「…………というわけで、明後日3人(ロザリナ・サリア・ゼアータ)を連れて王都に行くことになった」
「ロザリナ、良かったわね」
「ルルカさん、ありがとうございます」
今の2人のやり取りからすると、ロザリナは普段からサリアさんの身を案じていて、そのことをルルカに話していたことが伺える。
俺ももう少し気に掛けるべきだっただろうか?
しかしいくら同じ等級とはいえ、サリアさんとゼアータさんは俺なんかよりもずっと冒険者としてのキャリアが長いからなぁ。2人からしたら余計なお世話だろうし。
もっとも気に掛けたところで具体的にはどうするんだって話ではあるけど……
「……それで、王都行きのついでに受けられた依頼というのはどのような?」
「ギルドで余っているオークを王都で売るよう頼まれた。
実はミリスさんが……」
ミリスさんの事情も話しておく。
どうせギルドで指導しているロザリナから情報は漏れるのだ。
であるなら、先んじて俺の口から話しておけば要らぬ誤解が生まれるようなこともなくなる。
何もやましいことなどないのだ。
なので、俺が担当は外見が好みなミリスさんを望んでいることが動機なのは当然秘匿する。
「…………なので、今後はたまにギルドの依頼を受けるようになるだろう」
「(じぃーーーーーー)」
こちらの説明には何も不手際はないはずなのだが、ルルカは何かを感じ取ったのか俺に無言のプレッシャーをかけてくる。
「……モグモグ…………ンンッ…………オークの買い取り額が下がっているのか?」
今まで食べることに専念して黙って聞いていたディアが口を開いた。
つか食べ物の話題だから喰い付いてきただけとか?
「ああ。南の砦に駐留する軍が新たにバルーカに供給してるようだ」
「昼にルルカさんと買い物した時はオーク肉の値段は下がってなかったぞ」
元主婦で買い物スキルが高いから売り物の値段を覚えているのか、あるいは食いしん坊だから食品関連のチェックは万全なのか…………どっちなんだ?
「ディア、今お店で売られているのは価格が下がる前に仕入れたモノよ。
店側が値段を下げてくるのはもうしばらく後かしら」
「そうか……」
元商人のルルカの見立てに、なぜか気落ちするディア。
待てよ…………もしかして…………、
「ディア、ひょっとしてもっと肉が食べたいんじゃないか?」
「そ、そんなことはないぞ!!
ただ、値段が下がればその分だけ買う量を増やせると思って……」
それもう、もっと食べたいって言ってるようなものだろ。
「角付き肉があるが食べるか?」
「食べる!! あっ…………」
案の定ってやつだな。
でもディアにはちょっと可哀そうなことをした。
この家で1番に小さいのは俺だし、ルルカもロザリナも俺より大きいというだけで女性としては一般的な体格だ。まぁロザリナの背が少し高いぐらいか。
なので普通に食べてるつもりでも一般的には少ない食事量となる。
ルルカもディアには多めに配分して料理してるのだが、基準となる元の食事量が少ないのでディアからすればそれでも少ないのだろう。
角付き肉の塊は定期的に食べてるので買った当初よりかなり小さくなっている。
もっともまだ手付かずの大きな塊が3つも収納にあるけど……
ディアは角付き肉を自分で料理して、収納から追加で出したパンと共に勢いよく食べている。
「ルルカ、これからディアの食事は2人分を想定して作ってくれ」
「かしこまりました。
ディアも足りなかったら遠慮しないで言ってね」
「はぁむふぁむ…モグ…ハムふぁむ!?」
おそらく『私はそんなに大喰らいではないぞ!?』的なことを言ってるのだろうが説得力は皆無だ。
「それで話を戻すが、明後日王都に行くとして明日は城に4等級に昇格したことを報告しに行こうと思う」
「ツトム様、明日はギルドに行ってもよろしいでしょうか?」
剣の指導か。
担当した6等級パーティーが指導を受けに壁外ギルド来るのだっけ。
「もちろん構わないぞ」
「ありがとうございます」
「そうだな……
明日は城に行く前にディアのベッドや鏡付きの化粧台なんかを買い揃えよう」
「ツ、ツトム、私にそんな物は必要ないぞ!?」
「いいや、こういう物はきちんと揃えないとダメだ」
むしろディアの家具を買うのが遅すぎたぐらいだ。
ロザリナの時はもっと早く買ったのだし。
武闘大会出場のためにアルタナ王国に滞在したり、4等級への昇格試験(に代わる特殊依頼)があったりでやむを得ない状況ではあったが。
「ルルカも明日はディアの買い物を手伝ってくれるか?」
「もちろんです」
どの道ロザリナがギルドに行っていないのなら、警護の都合上ルルカはディアと一緒に行動してもらわないと困るわけだけど……
ルルカとロザリナとはディア……というより3人目の女性を買う際に、2人と仲良くできる女性という条件を守ることを約束している。
2人にはディアについて聞くことは特にしてないが、大丈夫だよな? 仲良く過ごしてるとは思うが……
でもこればかりは男性視点では計り知れない領域だからなぁ。
念のために2人に聞く機会を作るか。
盛り上がってきたところルルカの一言で中断させられてしまった。
梯子を外された感があるが、このまま玄関で始めてしまったら夕飯がかなり遅くなってしまう。ディアなどは我慢できないだろう。
しかしあれだけ帰りが遅くなったら先に食べるよう言ったのに……
まぁ今日は4等級に昇格した記念すべき日だ。あまりうるさいことは言わないでおこう。
…
……
…………
「…………というわけで、明後日3人(ロザリナ・サリア・ゼアータ)を連れて王都に行くことになった」
「ロザリナ、良かったわね」
「ルルカさん、ありがとうございます」
今の2人のやり取りからすると、ロザリナは普段からサリアさんの身を案じていて、そのことをルルカに話していたことが伺える。
俺ももう少し気に掛けるべきだっただろうか?
しかしいくら同じ等級とはいえ、サリアさんとゼアータさんは俺なんかよりもずっと冒険者としてのキャリアが長いからなぁ。2人からしたら余計なお世話だろうし。
もっとも気に掛けたところで具体的にはどうするんだって話ではあるけど……
「……それで、王都行きのついでに受けられた依頼というのはどのような?」
「ギルドで余っているオークを王都で売るよう頼まれた。
実はミリスさんが……」
ミリスさんの事情も話しておく。
どうせギルドで指導しているロザリナから情報は漏れるのだ。
であるなら、先んじて俺の口から話しておけば要らぬ誤解が生まれるようなこともなくなる。
何もやましいことなどないのだ。
なので、俺が担当は外見が好みなミリスさんを望んでいることが動機なのは当然秘匿する。
「…………なので、今後はたまにギルドの依頼を受けるようになるだろう」
「(じぃーーーーーー)」
こちらの説明には何も不手際はないはずなのだが、ルルカは何かを感じ取ったのか俺に無言のプレッシャーをかけてくる。
「……モグモグ…………ンンッ…………オークの買い取り額が下がっているのか?」
今まで食べることに専念して黙って聞いていたディアが口を開いた。
つか食べ物の話題だから喰い付いてきただけとか?
「ああ。南の砦に駐留する軍が新たにバルーカに供給してるようだ」
「昼にルルカさんと買い物した時はオーク肉の値段は下がってなかったぞ」
元主婦で買い物スキルが高いから売り物の値段を覚えているのか、あるいは食いしん坊だから食品関連のチェックは万全なのか…………どっちなんだ?
「ディア、今お店で売られているのは価格が下がる前に仕入れたモノよ。
店側が値段を下げてくるのはもうしばらく後かしら」
「そうか……」
元商人のルルカの見立てに、なぜか気落ちするディア。
待てよ…………もしかして…………、
「ディア、ひょっとしてもっと肉が食べたいんじゃないか?」
「そ、そんなことはないぞ!!
ただ、値段が下がればその分だけ買う量を増やせると思って……」
それもう、もっと食べたいって言ってるようなものだろ。
「角付き肉があるが食べるか?」
「食べる!! あっ…………」
案の定ってやつだな。
でもディアにはちょっと可哀そうなことをした。
この家で1番に小さいのは俺だし、ルルカもロザリナも俺より大きいというだけで女性としては一般的な体格だ。まぁロザリナの背が少し高いぐらいか。
なので普通に食べてるつもりでも一般的には少ない食事量となる。
ルルカもディアには多めに配分して料理してるのだが、基準となる元の食事量が少ないのでディアからすればそれでも少ないのだろう。
角付き肉の塊は定期的に食べてるので買った当初よりかなり小さくなっている。
もっともまだ手付かずの大きな塊が3つも収納にあるけど……
ディアは角付き肉を自分で料理して、収納から追加で出したパンと共に勢いよく食べている。
「ルルカ、これからディアの食事は2人分を想定して作ってくれ」
「かしこまりました。
ディアも足りなかったら遠慮しないで言ってね」
「はぁむふぁむ…モグ…ハムふぁむ!?」
おそらく『私はそんなに大喰らいではないぞ!?』的なことを言ってるのだろうが説得力は皆無だ。
「それで話を戻すが、明後日王都に行くとして明日は城に4等級に昇格したことを報告しに行こうと思う」
「ツトム様、明日はギルドに行ってもよろしいでしょうか?」
剣の指導か。
担当した6等級パーティーが指導を受けに壁外ギルド来るのだっけ。
「もちろん構わないぞ」
「ありがとうございます」
「そうだな……
明日は城に行く前にディアのベッドや鏡付きの化粧台なんかを買い揃えよう」
「ツ、ツトム、私にそんな物は必要ないぞ!?」
「いいや、こういう物はきちんと揃えないとダメだ」
むしろディアの家具を買うのが遅すぎたぐらいだ。
ロザリナの時はもっと早く買ったのだし。
武闘大会出場のためにアルタナ王国に滞在したり、4等級への昇格試験(に代わる特殊依頼)があったりでやむを得ない状況ではあったが。
「ルルカも明日はディアの買い物を手伝ってくれるか?」
「もちろんです」
どの道ロザリナがギルドに行っていないのなら、警護の都合上ルルカはディアと一緒に行動してもらわないと困るわけだけど……
ルルカとロザリナとはディア……というより3人目の女性を買う際に、2人と仲良くできる女性という条件を守ることを約束している。
2人にはディアについて聞くことは特にしてないが、大丈夫だよな? 仲良く過ごしてるとは思うが……
でもこればかりは男性視点では計り知れない領域だからなぁ。
念のために2人に聞く機会を作るか。
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