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 翌日、本予選2日目。
 俺が出場する14組は11組の試合が行われた後になるので、大体昼頃からの試合開始だ。

 ルルカとディアに途中からはロザリナの試合を見るよう言って、予備予選の時に登録した受付に行き、決勝戦後に貰った初代王様が彫刻されているカードを見せる。
 受付の男性はカードに書かれている数字を手元の資料と照らし合わせ、

「ツトム様ですね。今、係の者に案内させます」

 本人確認は済んだようで係の人が来てその後に付いて行く。

 一昨日予選を戦った建物の中を突っ切り、予備予選の時と同じ会場の小さな待機所に案内された。

「今日出るシード選手も中で待機しているのか?」

「そのぉ、シード選手は別室にて待機しておりまして……」

 チッ!? やっぱりか。
 言い辛そうに答えた係の人を尻目に待機所に入った。
 中には舞台側の扉の所で待機している案内役の大会運営員含めて8人いて、みなそれぞれに座っている。
 適当に空いてるところに座り、冊子をめくる。

 書かれているトーナメント表の右側から順々に試合を行うとするなら、俺の試合は3試合目だ。
 それにしても、改めてトーナメント表を見てみるとかなり歪な形になっている。
 表の中央に多数のシード選手が配置されてるのが原因だ。
 第1シードが出てくる準決勝まで勝たなければいけない試合は5試合。
 予備予選からの勝ち上がり組はほとんどがそうで、1人だけ4試合のラッキーな人がいる。

「〇×△選手、舞台上へどうぞ」

 案内役の運営員が扉を開けて選手を呼び込む。
 いよいよ本予選14組の試合が開始するようだ。




……

…………


「ツトム選手、舞台上へ」

 事前に予想した通り3試合目で呼ばれた。

「アイツ魔術士なのか」「プッ。戦闘ランク8の奴かよ」

 この中の何人かもあの冊子を読んでるみたいだな。

 舞台へと歩いて行く。
 観客席は昨日と同じく指定席に空席が目立つ感じだ。
 そして…………いた! ルルカにロザリナにディア。
 自分の試合に備えて軽鎧を装備したまま観戦しているロザリナが1番目立っている。
 まぁ鎧を着たまま観戦してる人なんて他にいないしな。
 手でも振ろうかと思ったのだが恥ずかしいので止めた。

 舞台中央に立つ。
 俺の初戦の相手は冊子の記述だと、

 ホルフィス・22歳・男性・獣人・アルタナ王国・剣士・4等級冒険者・大会初出場・戦闘ランク51

 なので全く大したことはない。安牌というヤツである。

「クックックックッ……
 初戦の相手がお前のような魔術士で俺はすげぇツイてるな!?」

「むしろ不運だと思うけど?」

 外見上のわかり易い特徴がないので、このホルフィスという男が何系の獣人だかよくわからない。

「いいやぁ~爆ツキだぜぇ。
 このまま一気に勝ち上がってやる!!」

「はじめ!」

 審判の声が掛かり試合開始となった。

 油断してた訳ではないのだが、開始と同時に獣化移動で一気に間合いを詰められての猛攻に倒されてしまった。

「……ハァハァ……どうだっ!」

「1、……2、……3、…………」

 審判のカウントが始まる。

 がっ!!
 俺の狙いはここなのだ!

 先ほどの攻撃もダウンなんかせずにいつも通り即回復させて我慢することはできた。
 全ては今この時、この瞬間の為に!

 ボォォォォッ!!

「おおぉぉぉぉ!?」「なにあれ?」「すげぇぇぇぇ!!」「わぁぁぁぁ!!」

 鳥を形取った火魔法が上空へ向けて飛翔する!

 そう。
 まるで灰の中から不死鳥が羽ばたくが如く俺は立ち上がった!

 ワァー! ウォーー!! ワァーワァー! ワァーワァー!

 会場は大盛り上がりだ。
 どうだっ!
 俺の練りに練ったこの演出プランは!!
 これでルルカ達も喜ぶこと間違いない!

「警告!
 ダウンした状態での攻撃は禁止。
 次やったら失格ね!」

 エッ…………??

「い、いや、今のは別に攻撃した訳じゃ…………」

「そんなことはわかってる。
 だから警告としてるんだ。もし攻撃だったら一発退場だよ」

 俺の練りに練って練習した演出プランがたった1回だけしか使えないだと…………?!
 今後の試合をどうするか…………

 でも確かに倒れた相手への追撃を禁止している以上はその逆も禁止なのは当然のこと。

 ん? 待てよ……
 審判が変わればさっきの警告もなかったことになるのでは?
 具体的には凄まじい魔法攻撃に巻き込まれる形で審判が負傷して交代するとか……
 名付けて不幸な事故作戦……いけるか?

「なぜ…………私を見ている?」

「イイエ、キノセイデス」

 やはり難しいか。
 こうなったら普通に違う演出プランを考えるべきなのだろう。

「はじめ!」

「てめぇ……ふざけるなよ……」

 どうやらホルフィス君は自分がまったく相手にされてないことに気付いたようだ。

「魔術士ごときがぁぁぁぁ舐めやがってぇぇぇぇ!!」

「うるさい!」

 無造作に突っ込んでくるホルフィスに対して風槌の弾幕を射出する。

「ぶへっ!?」

 冷静さを失った状態では回避できるはずもなく、ホルフィスは舞台上に沈んだ。

「1、……2、……3、……4、……」

 審判のカウントが始まる。
 ホルフィスはなんとか手足を動かそうとしているが、低コストバージョンとはいえ無数の風槌をまともに喰らって起き上がれるはずもなく……

「……9、……10! 勝者ツトム!!」

 無事に1回戦を突破した。

 舞台上に担架が運ばれホルフィスが乗せられる。
 そっと回復魔法を掛けてあげて舞台を後にした。



 待機所へと戻る。

「アイツ勝ったのかよ……」「戦闘ランク8なのにどうして……」

 ヒソヒソ声が聞こえるが一切無視だ。
 早急に新しい演出プランを考えねば……

 先ほどの鳥の形をした火魔法は、以前カイザー〇ェニックスを撃ちたくて練習した時の失敗作を再利用したものだ。
 どこら辺が失敗作なのかというと、苦労して鳥の形にできたのはいいが、どうやっても羽を羽ばたかせるギミックを付け加えることができなかった。
 そして最大の問題点が攻撃力がほとんどないという点だ。
 当たれば熱さは感じるし産毛ぐらいなら燃やせるが、まともに直撃してようやく髪の毛を燃せる程度なので、火魔法の基本魔法である火弾のほうが何倍も攻撃力は上なのだ。
 なので泣く泣く失敗作として封印したのを昨日の練習で演出面強化のために引っ張り出してきたのだ。

 待てよ……
 初見なら攻撃力がほとんどないなんてわからないはず。
 ならば……


「ツトム選手、2回戦ですよ」

「よしっ!」

 舞台へと歩いて行く。
 ルルカ達は…………まだいるな。

「先ほどの警告は覚えているね?」

「もちろんだ」

 チッ、やはり同じ審判か。

「では、はじめ!」

 対戦相手の男性が構える。
 そういや相手のことを何もチェックしてないが……

 なら先手必勝!
 火魔法の鳥を放つ!

「うぉ!?」

 ここだ!
 風槌の弾幕を放って火魔法の鳥諸共相手を撃ち抜く!

「ぐはっ」

 どうだ! この合わせ技は!!
 名付けて『火鳥風撃』!!
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