異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 他にルルカが仕入れてきた情報では、

・本選と本予選はトーナメント形式。
・予備予選の試合形式は1vs1やバトルロイヤルがあり、かなり雑に(良い言い方をすればスピーディに)試合進行がなされる。
・本選は王都の南地区にある闘技場で、本予選と予備予選は北西地区の軍の錬兵場で行われる。
・本予選は3日間で行われるが、2日目までで日に8組ずつ準々決勝まで行い、3日目に全ての組の準決勝と決勝の計48試合を行う。
・本予選からは多数のシード選手が出場し、特に本予選突破大本命の軍と冒険者のトップクラスは準決勝から各組2名ずつ計32名登場する。
・ノーシード(=予備予選からの出場選手)が本選に出場するのは大変難しく、ここ10年ぐらいは誰もいない。(武闘大会は2年に1度の開催)
・アルタナ王国軍からの参加者は俺が思っていた程には多くはないらしい。
 これは冒険者や他国の軍のトップクラスの出場数が読めないので、参加登録終了後に空いてるシード枠に開催国の軍の手練れを組み入れていく方法を毎大会行っているとのこと。
 他は若手が経験を積むために予備予選から参加するぐらいだそうだ。
・本選が行われる闘技場の観戦チケットは多少割高でも事前に先行販売されている指定席券を買うべき。当日券は入手困難。
・本選と本予選では賭けが行われる。試合毎の勝敗を予想するものではなく、最終的な優勝者(本予選だと本選出場者)の賭け札を買う方式。

 などがあった。
 よくこれだけの情報を仕入れられたものだと感心していると、ロザリナが休んでいる間近くの井戸端会議に参加して長話をした成果らしい。
 さすがは元主婦だ。
 もっともおしゃべりの相手は奥様とかではなく使用人らしいけど。


 さて、まずは俺の目標だ。
 この武闘大会に俺が出場する目的は、魔術研究所に入るのに必要な伯爵の紹介状をもらう為だ。
 その為には大会本選まで進むか、もしくは本予選で相応の相手に負けても条件クリアとなる。
 実質的にはトップシードの奴らと戦えれば、すなわち本予選準決勝まで勝ち進めればいいわけだ。
 予選とはいえ大会ベスト4が目標というとハードルが高そうだけど、本選の出場枠が16なので16組あるトーナメントの内の1つでベスト4でいい訳だからなんとかなりそうだ。

 次に、

「ロザリナ、明日は登録時間をずらすぞ。
 予備予選でかち合ったらつまらんからな。
 最初に俺が登録する」

「ではツトム様の試合後に私が」

 ロザリナは奴隷紋がある為に俺を攻撃することができないので、俺とはまともに戦うことができない。

「運悪く本予選で対戦することになったら棄権してくれ」

「かしこまりました」

 俺的には本予選でロザリナと当たれば不戦勝が確定しているのでラッキーなんだけどな。



 翌朝、早めに宿を出た。
 何気に4人揃って外を歩くのは初めてのことだ。
 スペシャルエロボディなルルカに、軽鎧を着用しているのでスタイルの良さは隠れているものの精悍な女騎士風のロザリナ、そして背の高いエロエロ魔人な褐色のディア。
 この3人が集まっていると男共の邪な視線に晒されそうだが、今は予選会場に向かう人がたくさんいて幸いにもあまり目立っていない。


 アルタナ王都の北西区画に広大な軍事エリアがあり、その入り口にある大会の参加登録所に到着すると、既に受付待ちの長い列が複数できていた。
 登録最終日は混んでいると言っていたが予想以上だ。

「昨日も言ったがまずは俺が参加登録をする。
 ロザリナ、この混雑だと試合が終わるのにかなり時間が掛かるかもしれない。
 俺の試合を待たずに、ある程度時間が経ったら受付するように」

「そのように致します。
 ツトム様も御武運を」

「ツトムさん応援してますね」

「ツトム! がんばれよ!」

「ああ、ありがとう。
 でも今日は予備予選だから気楽に見ててくれ」

 試合会場の客席に向かう3人に手を振って、近くの列へと並ぶ。

「坊主、聞こえてたぞ。
 予備予選だからって甘く見ないほうがいい」

 俺の前に並んでいた40ぐらいのガタイの良いおっさんに声を掛けられた。

「自分冒険者なんで、こう見えても本予選の上位を狙ってるんですよ」

「坊主の等級はいくつなんだ?」

「5等級です」

「ハハハハ、諦めろ諦めろ。
 4等級ですら実績がなければシード権が得られず予備予選からなんだぞ。
 5等級なんて受付してすぐの試合で負けて終わりさ」

 そんなにレベルが高いのか?
 受付登録するための長い列に並んでいる顔ぶれを見てみるが、時折冒険者らしい人や重厚な装備で固めている人、体格の良い人を見かける程度で他はほとんどが一般人みたいなんだけど……

「そういうおじさんの等級はいくつ?」

「俺か? 俺は冒険者じゃない。元軍人さ。
 家族の都合で辞めちまったがな」

「へぇぇ。
 もし辞めてなかったらシード枠で本予選に出場してたり?」

「もちろんさ!
 軍人のシード枠が決まるのは一番最後だが、それなりの位置からの出場になるのは間違いない」

 冒険者で例えると3等級ぐらいの実力があるってことか。
 本当かなぁ?
 元冒険者や元軍人の凄腕が多数出場してくるとなると、確かに予備予選でも油断ならないが……

「ところでおじさんは装備はしないの?」

 そう。このおじさんは思いっきり普段着なのだ。
 まさかそのガタイで魔術士なんてことはあるまい。偏見ではあるが。

「ハハハハハハ!
 防具なんかに頼っているようでは所詮2流よ!
 そんなのに頼って勝ちを拾ったところでさらに強い相手と戦う時はどうするのだ?」

 むぅぅ。言ってることは一理あるような気がする!
 仙人目指してるOBOROさんも人間は五感をフルに使って物を見、些細な変化を感じなければいけないと言ってたし!

「いいか、坊主。
 強さというのはな…………」

 それから長いこと元軍人であるおっさんの謎な強さ論や武術論を聞かされた。
 列に並んでいる間退屈しなかったことだけは確かだった。




……

…………


 運営側も受付を増やしたようで途中から列が進むのが少し早くなり、いよいよ俺の番になる。

「こちらの参加登録票に御記入を」

 なになに……、名前・年齢・性別・種族・所属国・戦闘タイプに職業と地位並びに実績、過去大会への参加の有無か。
 全て記入して提出すると、

「登録料として1万ルク頂きます」

 金を支払う。

「それではあちらから中に入ってください」

 受付所の後ろに1階しかないが出入口が4つもある大きな建物があり、一番左側の入り口から中に入るよう指示された。

 結局おっさんの名前を聞きそびれたが……言ってたことが本当なら本予選でわかるか。
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