異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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 部屋に残ったのは俺達とワグディルパーティーだけになった。

「ワグディルさん、ツトムさんのパーティーとの分配比率を言ってください」

 さて、ワグディルはどんな比率を出してくるだろうか?
 あの状況でこちらの救援を断ったことからも客観的な判断ができるとは思えない。
 あまり期待はできないだろうな……

「こちらが6割、そっちが4割だ!」
「なっ!?」

 6対4か。
 もっとがめつく吹っ掛けてくるかと思ったけど意外に……

「念の為にその根拠を教えてくれるか?」

 憤慨しているロザリナを抑えながら聞いてみる。

「今朝も言ったがそちらより人数が多いことと、激戦区だった西側中央を担当したのが我々だったからだ」

「撃破数に関しての評価は?」

 まさか自分達のほうがたくさん倒したなんて言い張ることはできないだろう。
 後ろでミリスさんが見ていたのだし。

「そちらの撃破数のほうが多いようだが、それも我々が中央部で踏ん張っていたからだと考える」

 物は言い様だな。
 押されて後退していたくせに……

「ふ、不満でもあるのかっ?!」

「いや、あくまでも根拠を聞いただけだ。
 出発前の取り決め通り、こちらはその比率での分配で構わない」

「そ、そうか……」

 ワグディル達は報酬を受け取りそそくさと部屋を出て行った。

「ツトム様ぁ」

 不満顔のロザリナの手を握る。
 机の下でしかも指と指を絡ませる恋人繋ぎだ。
 ロザリナの機嫌が少し持ち直したようだが…………こんなところで俺は何をやってるんだろう!?


「ツトムさん、本当によろしかったのですか?
 ギルドとして介入することもできましたが……」

 ミリスさんから報酬を受け取る。
 ギルドからの報酬が3万ルク。
 オークの売却額が48万5000ルク。
 合計51万5000ルクだ。

「大丈夫です。
 彼らはこのギルドのナンバーワンパーティーなんですよね?」

「はい。
 ツトムさんがパーティー登録されるのであれば評価は違ってくるかと思いますが」

「このメンバーはあくまでも臨時ですので……」

 ロザリナは冒険者資格を停止したままだし、サリアさんは別のパーティーの人だ。

「ナンバーワンパーティーである彼らには今後多くの厄介事が持ち込まれるのでしょう。
 なにせ"ナンバーワン"なのですから。
 ですよね? ミリスさん?」

「え、ええ……
 (そのように取り計らえってことですか)
 !?
 まさかこうなることを狙って?」

「いえいえ。
 あくまでも彼ら自身の選択の結果ですよ」

 過分な報酬を受け取ったんだ。
 少しはこちらの役に立ってもらわないと。

「今回の討伐参加、本当にありがとうございました」

「無事に終わって良かったです」

 ミリスさんが退室した。

 無事に終わって、か…………
 黒オーガの件があるから無事というわけにはいかないよなぁ。
 以前からの課題ではあったものの、より明確になったというか浮き彫りにされた感じだ。
 まぁこの件は後で考えよう。

「サリアさん、こちらが今日の分配金です」

 サリアさんに34万ルクを渡す。

「こ、こんなに受け取れません!」

「ロザリナの分も含まれていますので。
 ロザリナ、構わないな?」

「はい、もちろんです。
 サリア、受け取りなさい」

「ツトム様、姉さん、ありがとうございます」

 所持金  136万1,170ルク →153万6,170ルク
 帝国通貨 353万1,500クルツ



 サリアさんと別れて帰宅した。

「おかえりなさいませ」「お、おかえりなさい……ませ」

「2人ともただいま」

 ディアの挨拶は凄くぎこちなかった。
 こういうやり取りに慣れてないのだろう。

「あら。ツトムさん、服が今朝と違いませんか?」

 服は黒オーガに斬られてボロになったので、帰還途中で予備の服に着替えていた。
 ボロボロの革鎧は集落の時点で脱いで収納入りだ。

「破れてしまって予備に着替えたんだ」

「縫いましょうか?」

「あれも古かったからな。新しいのを買うことにするよ」

「そうですか……」

 戦闘で手傷を負ったのを知られると心配させてしまうからな。
 ロザリナは知っているが俺の一連の言動から察して黙っててくれるだろう。たぶん。

 ディアがペタペタと俺の身体を触ってくる。

「本当にケガしてないのか? 身体は何ともないか?」

「大丈夫だが…………
 ディア、ちょっと来い」

 ディアを連れて俺の部屋へと移動する。

「昨日からか? 過剰に心配してるみたいだが一体どうしたんだ?」

 普通2日前に買われたばかりの主のことをこんなに心配しないだろう。

「す、すまない。どうしても戦死した夫と病死した息子のことを思い出してしまって……」

「そうか……
 旦那さんや息子さんのことを忘れろなどと言うつもりは無いが、俺はその2人とは違うんだ。
 あまりに過剰に心配されるとルルカやロザリナまで心配するようになるので困る」

「わかった。今後は気を付ける」

 ディアを抱き締める。
 正確に言うと、ディアの大きな胸に顔をうずめる形だ。

「ちゃんと無事に帰ってきただろ?
 俺は強いからな。心配しなくても平気だぞ」

 ディアにキスする。
 正確に言うなら、ディアにキスするように促した。
 俺とこういうことをするのが慣れてない感じが新鮮だ。

「ツトム様……」

 いつの間にやら戸口にロザリナが立っていた。

「ルルカさんがお呼びです。こちらに……」

 ディアから離れてロザリナの横をすり抜けようとした際に、強引に肩を掴まれ唇を塞がれた。

「んんっ……」

 もう慣れた感じで舌を入れてくる。
 ロザリナの舌の感触を楽しみながら身体を引き寄せようとすると、

「ルルカさんが待っておられますよ」

 行こうとしたのを引き留めたくせにぃ……



「お掛けください」

 リビングでルルカに座るよう言われる。
 このピリッとした感じはちょっと怒っている?

「ロザリナから聞いたのですが……」

 ケガしたのがバレた!?

「報酬を他のパーティーにまんまと差し出したとか」

 そっちかよっ!
 ロザリナめぇ、そんなに納得してなかったのか。

「差し出したとかじゃなく、色々考えがあってだな……」

「きちんと働きに応じた報酬を受け取ることは大事なことなんですよ」

「もちろんそれはわかっている。
 ただ、金額的にもそれほどの額でもないし……」

「金額の大小のことを言ってるのではありません!」

「お、おぅ……」

 こうなったらいつもの手を使おう。

 ルルカの隣に移動して手を握る。

「今回のことは先方にも一理あることだし、決して不当に扱われたわけではないんだ」

 ルルカの肩に手を回して引き寄せる。

「しかし、ツトムさんの働きが一番だったとロザリナが申しておりました」

「俺は魔術士だ。役割的に戦果が一番になることが多い。
 だからといって前衛の働きを疎かにしていいわけじゃない」

「それは……そうですけど……」

 ルルカにキスをする。

「んっ……」

 丁寧に。
 ネットリと。

「ここは俺のことを信じて納得してくれないか?」

「仕方ありませんね。今回だけですよ?」

 よしっ!
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