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破壊した黒オーガのトンファーブレードの刃が付いてる棒の部分は俺が貰えることになった。
グリードさんに『そんなのいらね』的な感じで譲られたので、特別な素材が使われてるわけでもなさそうだ。
思えば先ほどの戦闘で黒オーガの斬撃を受け流したグリードさんの大剣は無事だったのだ。
剣が真っ二つに斬られたのは、俺の使った剣のほうに問題があったと見るべきか。
買ったのか拾ったのかすら忘れてる剣だったしな。
「ツ、ツトム様! 大丈夫ですか?」
「ツトム様!」
元の配置に戻るとロザリナとサリアさんが俺のボロボロの革鎧と服を見て慌てて声を掛けてきた。
「かなり手強い敵と戦ってな」
ロザリナはペタペタと俺の体中を触っている。
どうやらケガしてないか確認しているようだ。
「ロザリナ、ケガはしてないから大丈夫だぞ」
「ツトム様がここまで苦戦なされるとは……
どのような相手だったのですか?」
「それは…………ちょっと待っててくれ。
ミリスさん!」
ワグディルパーティーと話していたミリスさんを呼んだ。
「ツトムさん、その姿は……」
そんなにボロボロなのか。
帰りに替えの服を買って着替えたほうがいいな。
「グリ…………、東の3等級パーティーを襲ったのは黒オ…………、特殊個体でした。
なんとか撃退しましたのでもう安全です」
黒オーガが自ら退いてくれただけなのに撃退したと功を誇ってしまっていいのだろうか?
この手の戦況報告は客観に徹して誇張することなく正確に伝えないといけない、とどこぞの金髪の侯爵閣下も言っていたが……
「わかりました。
そうしましたらオークの死体の収納と集落の捜索を始めてください」
結構な数のオークの死体があるから収納するのも大変そうだ。
もっとも俺以外にも収納持ちがいるからその点は気が楽だけど。
「そうそう。
ワグディルさんに私がツトムさんに支援するようお願いした、ときちんと伝えておきましたから。
これで変な分配比率を言ってくるようでしたら私がガツンと言ってやりますよ!」
両手をグーに握って可愛らしく"ふんぬっ"とポーズを取るミリスさん。
自分の年齢を考えろと激しく突っ込みたいがここは我慢する。
「出発前に取り決めた通り、彼らの主張をそのまま通して構いませんよ。
自分はミリスさんにお願いされたからここにいるのであって、お金を稼ぐためにこの討伐に参加したのではありませんから」
言外に"この借りはきちんと返すように"とのメッセージを込める。
「私のために…………、ツトムさんありがとうございます!」
"相応のお礼はしますよ"ということだと思う…………たぶん。
せっせとオークの死体を収納していく。
もう慣れた作業ではあるのだが、単調な時間が続くのはかなりキツイ。
「ツトム様、オークの棍棒は収納されないのですか?」
「まだ収納の中に山ほどあるんだよ」
オークの棍棒は風刃で切り刻んで家で薪として使っている。
表面は浄化魔法で綺麗にするのだが、その棍棒によって撲殺された獲物の血や脂が染み込んでいてよく燃えるのだ。
「ツトム様、姉さん、こちらに来てください」
サリアさんに連れられ集落のとある一角にある大きなボロテントの中に入る。
「うっ……」
酷い悪臭がこもる中に遺体だったモノと遺品らしき物が散乱していた。
浄化魔法でテント内を綺麗にしてミリスさんを呼ぶ。
テントに入ってきたミリスさんは散乱している遺品の中から数枚のギルドカードを見つけて確認している。
俺が持っている5等級のより少しだけ小さいギルドカードだ。
「ウチに所属していたパーティーですね。
普段から7等級と実力が足りない6等級パーティーには森に行かないよう指導していたのですが……」
7等級パーティーということは10代の若者だったことは間違いない。
もし俺がまともにギルドに顔を出していたら話す機会もあったのだろうか?
そうしたら森への無謀な挑戦もヨハンの時のように止めれたのかもしれない。
結果は全て自己責任なのが冒険者の常ではあるが。
ミリスさんが手持ちのバッグに遺体(の一部)と遺品を回収していく。
前回討伐時にも持っていたマジックバッグのようだ。
しかし、あんな遺体の状態でも回収するのか……
どの部分が誰々のなのかまずわからない状態だ。
この大陸の主要4ヵ国(南部3国と帝国)が火葬ではなく土葬であることが理由なのかもしれないが。
いつの間にやら収納作業をしているのは俺1人になった。
ヨハンがいるパーティーの魔術士2人とワグディルパーティーの魔術士はリタイヤしたようだ。
「俺達の報酬の為に回収作業ご苦労だな! ツトム!!」
集落内での回収が終わり最後に東側のグリードさん達の戦果を回収するところで茶々が入る。
「これまで何体回収した?」
「もう 400体は超えてますね」
グリードさんパーティーは近接戦闘職しかいないので、オークの死体が割と近場に固まっていて回収し易い。
「たった1日でいい稼ぎになったな! 今夜パアァーと飲みにでも行くか!」
ガハハハハッ!! と豪快に高笑いしているグリードさん。
正直ちょっとだけイラっとしたけど、
「すまないねぇ、ツトム。
グリードは強敵と戦った後はいつもちょっとおかしくなるんだよ。
まして今日の敵はとんでもなかったからねぇ」
ナタリアさんに謝られてしまった。
「いえ、グリードさんには今日助けて頂きましたし……」
事実危ないところを助けてもらった。
俺1人で対峙していたら殺されていただろうことは間違いない。
「後ろで見ていて何度ダメかと思ったことか。
それにさっきのグリードへの回復魔法……」
なんだ?
ナタリアさんがモイヤーさんを見て頷き合っている?!
「ツトム君、先ほどの切断された腕を繋げた回復魔法のことを知っている人は他にもいますか?」
「ええ、それなりに……」
ロイターのおっさんには言ってあるし、アルタナでは大勢の前で使ってるし……あっ! でもあれは変装してやったんだっけ。結局レイシス姫にはバレちゃったけど。
「でしたら教会の動きには注意してください。
ツトム君の存在が彼らの耳に入ればどんな手段を用いてでも取り込もうとするでしょう」
教会(=聖トルスト教)の悪い噂は定期的に聞こえてくるけど……
「私の時ですら冒険者ギルドと教会の間で色々と揉めたみたいです。
ましてツトム君のような使い手ですと……」
「当時私とモイヤーは北部の街で活動していたのだけど、そこは教会の勢力が強いとこでね。
大人になってから回復魔法を習得した要因を調べればもっと回復術士が増やせるという名目で、教会側は強引にギルドにモイヤーを引き渡すように迫ったんだ」
「その時のギルドマスターの計らいで王都のギルド本部に一時避難しまして事なきを得ました。
その後グリード達とパーティーを組んでバルーカに来たのが10ヵ月ほど前のことになります」
「しかし自分は大人になってからというわけではありませんし……」
「むしろ彼らからすれば、ツトム君の若さで極めて高度な回復魔法を使いこなせる理由を是非とも知りたいと考えるのではないでしょうか?」
思った以上に俺にとっては危険な話だった!?
グリードさんに『そんなのいらね』的な感じで譲られたので、特別な素材が使われてるわけでもなさそうだ。
思えば先ほどの戦闘で黒オーガの斬撃を受け流したグリードさんの大剣は無事だったのだ。
剣が真っ二つに斬られたのは、俺の使った剣のほうに問題があったと見るべきか。
買ったのか拾ったのかすら忘れてる剣だったしな。
「ツ、ツトム様! 大丈夫ですか?」
「ツトム様!」
元の配置に戻るとロザリナとサリアさんが俺のボロボロの革鎧と服を見て慌てて声を掛けてきた。
「かなり手強い敵と戦ってな」
ロザリナはペタペタと俺の体中を触っている。
どうやらケガしてないか確認しているようだ。
「ロザリナ、ケガはしてないから大丈夫だぞ」
「ツトム様がここまで苦戦なされるとは……
どのような相手だったのですか?」
「それは…………ちょっと待っててくれ。
ミリスさん!」
ワグディルパーティーと話していたミリスさんを呼んだ。
「ツトムさん、その姿は……」
そんなにボロボロなのか。
帰りに替えの服を買って着替えたほうがいいな。
「グリ…………、東の3等級パーティーを襲ったのは黒オ…………、特殊個体でした。
なんとか撃退しましたのでもう安全です」
黒オーガが自ら退いてくれただけなのに撃退したと功を誇ってしまっていいのだろうか?
この手の戦況報告は客観に徹して誇張することなく正確に伝えないといけない、とどこぞの金髪の侯爵閣下も言っていたが……
「わかりました。
そうしましたらオークの死体の収納と集落の捜索を始めてください」
結構な数のオークの死体があるから収納するのも大変そうだ。
もっとも俺以外にも収納持ちがいるからその点は気が楽だけど。
「そうそう。
ワグディルさんに私がツトムさんに支援するようお願いした、ときちんと伝えておきましたから。
これで変な分配比率を言ってくるようでしたら私がガツンと言ってやりますよ!」
両手をグーに握って可愛らしく"ふんぬっ"とポーズを取るミリスさん。
自分の年齢を考えろと激しく突っ込みたいがここは我慢する。
「出発前に取り決めた通り、彼らの主張をそのまま通して構いませんよ。
自分はミリスさんにお願いされたからここにいるのであって、お金を稼ぐためにこの討伐に参加したのではありませんから」
言外に"この借りはきちんと返すように"とのメッセージを込める。
「私のために…………、ツトムさんありがとうございます!」
"相応のお礼はしますよ"ということだと思う…………たぶん。
せっせとオークの死体を収納していく。
もう慣れた作業ではあるのだが、単調な時間が続くのはかなりキツイ。
「ツトム様、オークの棍棒は収納されないのですか?」
「まだ収納の中に山ほどあるんだよ」
オークの棍棒は風刃で切り刻んで家で薪として使っている。
表面は浄化魔法で綺麗にするのだが、その棍棒によって撲殺された獲物の血や脂が染み込んでいてよく燃えるのだ。
「ツトム様、姉さん、こちらに来てください」
サリアさんに連れられ集落のとある一角にある大きなボロテントの中に入る。
「うっ……」
酷い悪臭がこもる中に遺体だったモノと遺品らしき物が散乱していた。
浄化魔法でテント内を綺麗にしてミリスさんを呼ぶ。
テントに入ってきたミリスさんは散乱している遺品の中から数枚のギルドカードを見つけて確認している。
俺が持っている5等級のより少しだけ小さいギルドカードだ。
「ウチに所属していたパーティーですね。
普段から7等級と実力が足りない6等級パーティーには森に行かないよう指導していたのですが……」
7等級パーティーということは10代の若者だったことは間違いない。
もし俺がまともにギルドに顔を出していたら話す機会もあったのだろうか?
そうしたら森への無謀な挑戦もヨハンの時のように止めれたのかもしれない。
結果は全て自己責任なのが冒険者の常ではあるが。
ミリスさんが手持ちのバッグに遺体(の一部)と遺品を回収していく。
前回討伐時にも持っていたマジックバッグのようだ。
しかし、あんな遺体の状態でも回収するのか……
どの部分が誰々のなのかまずわからない状態だ。
この大陸の主要4ヵ国(南部3国と帝国)が火葬ではなく土葬であることが理由なのかもしれないが。
いつの間にやら収納作業をしているのは俺1人になった。
ヨハンがいるパーティーの魔術士2人とワグディルパーティーの魔術士はリタイヤしたようだ。
「俺達の報酬の為に回収作業ご苦労だな! ツトム!!」
集落内での回収が終わり最後に東側のグリードさん達の戦果を回収するところで茶々が入る。
「これまで何体回収した?」
「もう 400体は超えてますね」
グリードさんパーティーは近接戦闘職しかいないので、オークの死体が割と近場に固まっていて回収し易い。
「たった1日でいい稼ぎになったな! 今夜パアァーと飲みにでも行くか!」
ガハハハハッ!! と豪快に高笑いしているグリードさん。
正直ちょっとだけイラっとしたけど、
「すまないねぇ、ツトム。
グリードは強敵と戦った後はいつもちょっとおかしくなるんだよ。
まして今日の敵はとんでもなかったからねぇ」
ナタリアさんに謝られてしまった。
「いえ、グリードさんには今日助けて頂きましたし……」
事実危ないところを助けてもらった。
俺1人で対峙していたら殺されていただろうことは間違いない。
「後ろで見ていて何度ダメかと思ったことか。
それにさっきのグリードへの回復魔法……」
なんだ?
ナタリアさんがモイヤーさんを見て頷き合っている?!
「ツトム君、先ほどの切断された腕を繋げた回復魔法のことを知っている人は他にもいますか?」
「ええ、それなりに……」
ロイターのおっさんには言ってあるし、アルタナでは大勢の前で使ってるし……あっ! でもあれは変装してやったんだっけ。結局レイシス姫にはバレちゃったけど。
「でしたら教会の動きには注意してください。
ツトム君の存在が彼らの耳に入ればどんな手段を用いてでも取り込もうとするでしょう」
教会(=聖トルスト教)の悪い噂は定期的に聞こえてくるけど……
「私の時ですら冒険者ギルドと教会の間で色々と揉めたみたいです。
ましてツトム君のような使い手ですと……」
「当時私とモイヤーは北部の街で活動していたのだけど、そこは教会の勢力が強いとこでね。
大人になってから回復魔法を習得した要因を調べればもっと回復術士が増やせるという名目で、教会側は強引にギルドにモイヤーを引き渡すように迫ったんだ」
「その時のギルドマスターの計らいで王都のギルド本部に一時避難しまして事なきを得ました。
その後グリード達とパーティーを組んでバルーカに来たのが10ヵ月ほど前のことになります」
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◇ ◇ ◇
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