異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

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「異議アリだ!」

 異を唱えたのは俺達より先に来ていたパーティーだ。

「ワグディル! てめぇ…………!?」

 ヨハンパーティーのリーダーが立ち上がりかけたのをワグディルと呼ばれた男は手で制した。

「そちらが自力で回収したのを報酬とするのに反対したのではない」

「そ、そうなのか……」

 気まずい感じで座り直すヨハンパーティーのリーダー。

「(ギロッ!)」

 え? 俺ら?

「そこの3人のパーティーと均等に分配されるのが納得いかない」
「そうだ! そうだ!」
「人数割にすべきだろ!」

 ワグディルのパーティーは5人、ヨハンのパーティーは6人だ。
 人数が少ないとこういう問題も出てくるのか。

「そこの3等級パーティーも4人と少ないがそれに関しては?」

「ちょ!? ツトム! オレらを巻き込むんじゃねぇ!!」
「ツトム! あんたねぇ……」

「所属も違うし等級も上だ。3等級さんには逆にこちらの取り分をいくらか譲ってもいいとすら考えている」

「あー、俺達は均等割でいいぞ。収納持ちがいないから回収物が分配されるだけでもありがたいし」

 となると俺とワグディルの分配比率をどうするかってことになるな。

「ワグディルさんのパーティーはどのような方法を望みますか?」

「指揮官であるあなたの判断で戦果に応じて2つのパーティーの分配比率を決めて欲しいが……」

「えっと…………」

「後で揉めたくないので今言っておくが、この討伐隊に俺を誘ったのはそこのミリスさんだ。
 それでも尚彼女の判断を支持するというのならこちらもその方法で構わないが」

「む……
 では城内ギルドの職員の……」

「私は君達の戦闘を見ることができない配置なので不適格だ」

 あちらの代案は尽きたようだ。なら、

「こちらからの提案だが、ワグディルさんのほうで分配比率を決めるのはどうか?」

「ツトム様!」

 ロザリナを手で制し、

「異議を唱えた本人が決めるのだから文句はないだろうし、こちらもその判断に全面的に従うことを約束する」

「い、いいのか?」

「もちろんだ。
 もっとも自信がないのであればこちらで引き受けても構わないが?」

「いや、分配は我々で決めさせてもらう」

「決まりましたね。次は作戦面に移ります。
 この後ギルドの馬車でバルーカとメルクの中間地点まで行き下車。
 そこから南にある集落まで徒歩で行きます」

 馬車に乗るのも前回の討伐以来で久しぶりだな。

「目標集落手前で二手に別れて、グリードさんのパーティーは東から、壁外ギルドのパーティーは西から攻撃します。
 まず西側が攻撃してから東側も呼応してください」

 流れ的には前回と同じだが、最初に攻撃するのが西側なのが違う点だ。
 しかし……
 この変更点といい、城内ギルドの職員が3等級を指揮することといい、壁外ギルドは前回瞬烈が壊滅したことの責任をかなり追及されたことが伺える。
 そんなに心配なら4等級パーティーでも追加して討伐隊の戦力を増強すればいいのになぁ。参加パーティーが増えると分け前が減るから依頼としては美味しくなくなるのが理由だろうか……

「西側の配置ですが、当初ツトムさんに中央部をお願いするつもりだったのですが……」

 中央部は敵が集まり易く、もっとも激しく反撃を受ける位置だ。
 ミリスさんは敵が集結したところを俺の魔法で一気に殲滅するつもりだったのだろうけど……

「中央部は我々に任せて欲しい。
 3人パーティーでは荷が重いだろう、壁外ギルド唯一の5等級パーティーである我らが担当すべきだ」

 当然ワグディルは志願してくるわな。
 しかし唯一の5等級って、俺も5等級なのを知らないみたいだ。

「ツトムさん達も5等……」
「ミリスさん! 彼らの希望通りでお願いします」

「よろしいのですか?」

「ええ。先輩方の意向が優先されるのは当然だと思います」

 見た目ワグディルは20代中盤、他のパーティーメンバーも20代と思われるから先輩なのは間違いない。
 もっとも、ロザリナやサリアさんのほうがワグディルよりも先輩ではあるが……

「自分達は南を担当させてください」

「わかりました。残るは北で必然的に……
 これで配置が決まりましたね」

 なんだかんだでロザリナは実戦復帰2日目、サリアさんとは初めてパーティーを組む。
 無理をするより楽な配置で戦うほうがいいだろう。

「1点だけ注意事項があります。
 既にご存知の方もいらっしゃるでしょうが、先日来新種のオークとの遭遇報告が相次いでおります。
 変わった動作、充実した装備をしているオークと戦う際は十分注意してください。
 特に大剣を扱うオークジェネラルの強さはオークキング級との報告もありますので特別な警戒をお願いします」

 最後のは俺の報告っぽいな。

「それでは馬車の準備ができ次第出発となります!
 ギルド前に集合してください!」

 それぞれが部屋を出ていく。

「オイ! ツトム!
 ここの連中はオマエの強さを知らないのか?」

 グリードさんに絡まれてしまった。

「そうですね……自分も彼らのことを何も知りませんしね」

「胸を張って言うことじゃないだろ……
 ん?
 知りもしない連中に重要な中央部を任せてしまって西側は大丈夫なのか?」

「わかりませんが、立候補するぐらいですから自信があるのではないでしょうか」

「オイオイ……
 壁外パーティーが壊滅なんてことになったら助っ人に来た俺らの立場がなぁ」

「まぁまぁ、何とかなりますよ。
 それよりもグリードさん側も南に人を配置しないで下さいよ。
 流れ魔法に当たっても責任負いませんからね」

「わかったよ!
 まぁオークの集落ぐらい俺達だけでもどうとでもなるだろ」

「そうですね。似たようなことを仰っていた瞬烈は前回壊滅しましたけど」

「縁起わるっ!?」

「そういえばグリードさん達のパーティー名は決まってないのですか?」

 3等級からはパーティー名をギルドに登録できる仕組みだ。

「昇格試験自体が突然だったということもあってまだでな。
 どうせならもう1人メンバーを増やしてからパーティー名を決めようって感じになっている」

「どのような素敵なパーティー名を付けるのか楽しみにしていますね!」

「そんなに防壁の高さを上げるなよ……」

 ハードルを上げるな的な言い回しなんだろうな。




……

…………


「分配の件は納得できないか?」

 グリードさん達が部屋を出た後、ずっと不満な様子だったロザリナに聞いてみる。

「はい。あの男は絶対自分達の働きを過大に見積もるに決まっています!」

「そうかもしれないが……
 俺らとしたら最悪でもサリアさんの報酬分を確保できればいいのだしさ」

「あの~、私の分の報酬はお気になさらずに……」

「そうはいきませんよ。せっかく俺のパーティーに参加して頂いたからにはサリアさんには是非とも美味しい思いをしてもらわないと」

「でしたら尚のこときちんと分配させないと!」

「まぁまぁ。キツイ中央部を彼らが担ってくれるのだし……
 この3人でパーティー組むのも初めてだから、右翼(南側)でのんびりやろう」

「はぁ…………」

 今一つ納得できない感じか。
 こんな複数パーティーで分配する報酬なんてたかが知れてるし、サリアさんへの報酬分を別にすればそんなに金銭にこだわる必要は感じないけどな。
 もっとも俺の金銭感覚は自分でも自覚があるぐらい怪しいから、後でフォローしておく必要がありそうだ。
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