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「オーク集落討伐……ですか……」

「はい。
 今朝方バルーカとメルクの中間の南東の森林地帯においてオーク集落の発見報告がありまして、緊急で協議した結果討伐隊を編成することになりました。
 そこで是非ともツトムさんには討伐隊に参加して頂きたく……」

「しかしこちらにも予定がありまして」

 ロザリナの実戦感覚を取り戻さないといけないし、明後日には姫様にお会いする為に城に行かないといけない。

「お、お願いしますよ~
 今回の討伐では私が指揮することになってしまって、もし失敗してしまうとギルド内での私の立場が……」

 討伐が失敗した時はそんな立場より無事生還できるかどうかを心配すべきだと思うけどな。
 そういえば、

「前回の討伐の時の指揮官だったギリアスさんはその後どうなったんですか?」

「地方の小さなギルドに移動しました。そこで数年後にはギルドマスターに就任するらしいので形としては栄転となります」

 だが、実質的には3等級パーティー瞬烈壊滅の責任を負わされての左遷か……

「前回の瞬烈のような援軍というか助っ人は今回は……」

「もちろんいます。今回も城内ギルドから3等級パーティーが助っ人として参加します」

 グリードさんのパーティーだな。

「不思議なんですが、どうしていつも壁外ギルドが討伐を主催するのです?
 ギルドの規模や冒険者の質から言っても城内ギルドが主導すべき案件では?」

 あちらは3等級のグリードさんパーティーをはじめ幾つかの4等級パーティーを抱えてる。
 4等級がいるかすら怪しい(←自分が所属しているギルドのことをよく知らない)壁外ギルドが討伐するのはおかしいと思うが。

「いつもという訳ではないのですが、討伐対象……今回はオーク集落ですが……を発見したギルドが討伐を担当するというのが通例となっておりまして」

 前回はタークさんパーティーが発見して、今回も壁外ギルドの冒険者が発見したのか。

「今回はさすがに上位個体による奇襲も対策するでしょうし、自分が参加しなくても……」

「そこをなんとか!
 私が指揮する時に限って何かが起こりそうな嫌な予感がするんです!
 先日城内を襲撃したオークジェネラルはキング並みの強さの新種だったとか」

 高技量型か……軍からの情報だな。

「その……、参加して頂けるのならツトムさんの為になんでもしますので……」

「なんでも?!」

 ミリスさんは中身は残念な一面もあるが、外見は秘書風の美人さんだ。
 ゴ、ゴクリ……

「ツトムさん?」

 ルルカから疑惑の眼差しをむけられている!?

「コホン。しかしですね」

「ツトム様、私からもお願い致します。ミリスさんにはお世話になっておりますので」

 ロザリナからも頼まれたら仕方ないか。

「わかりました。参加しましょう。
 ミリスさんのたってのお願いとあれば断れませんからね」

 さっきまで断る気満々だったけど。

「あ、ありがとうございます!!」

「ロザリナも連れてっていいですか? 冒険者としてではなく一個人としてですが」

「ロザリナさんも参加して頂けるのなら心強いです!
 ただ、冒険者としての評価からは除外されてしまいますが」

「ロザリナ、構わないな?」

「もちろんです」

 実戦から離れているロザリナを大きな戦いに参加させたくはなかったが、本人もやる気になってるしな。



 ミリスさんは明日朝一にギルドで集合することを伝えて帰っていった。

「午後からのつもりだったがロザリナ、早速出発するぞ。
 明日までに少しでも実戦感覚を取り戻さないとな」

「はい!」

 頷いたロザリナは部屋の隅に置いてある軽鎧に手を伸ばす。
 そっちを装備していくのか。
 昨日購入した革製のほうを装備して欲しかったけど……軽鎧だとスタイルの良さを隠してしまいつまらないってだけの理由だから言えないけど。

「ルルカ、これでアルタナに行く準備とディアに必要な物を買ってくれ」

 20万ルクを渡す。

「かしこまりました」

「オ、オイ! ツトム!」

「ディア、どうした?」

「オークの集落を討伐するなんて大丈夫なのか? 危なくはないのか?」

 えらく真剣に聞いてくるな。
 そりゃあ安全なんて保障はないし犠牲者も出るけど……

「ここバルーカでは魔物との戦闘は日常茶飯事だからな。
 こういうことは割とあるから心配いらないぞ」

「しかしいくら魔術士が後ろに下がってるからって弓矢ぐらいは飛んで来るだろう。
 ケガでもしたらどうするんだ?」

「俺は回復魔法が使えるから大概のケガはどうとでもなる。
 それに俺の強さは実質2等級クラスだ。
 その辺にいる魔物なら軽く蹴散らせるから安心しろ」

 これだけ力説しているのに尚も疑わし気な目で見てくるディア。

「ルルカからも俺の強さを言ってくれ」

「すいません。私も心配する側なので……」

 そう言えばルルカは俺に冒険者稼業から足を洗って欲しい的なことを言ってたっけ。

「不安な点は何もないから、2人は昼寝でもしながら気楽に帰りを待つように!」

「はぁ……」「昼寝だとぉ?」

 もう少し主人の強さを信頼してもいいと思うんだ。特にそこのルルカ。



 ロザリナを抱えて南東の森へと飛ぶ。
 明日討伐する集落はバルーカとメルクの中間にあるらしいので、今はバルーカ側の近い森に降りる。

「短時間なら飛ぶのも問題なさそうだな」

「はい。大丈夫です」

「アルタナに行く際は長い時間飛ばないといけないから覚悟しておくように」

「わかりました」

 さて、オークを探さないと。

 ん?
 敵感知に反応が……
 反応のほうに行ってみると芋虫のドでかい奴が!?

「見敵必殺!」

 すかさず土甲弾を放った!

「ツトムさ……」

 芋虫は跡形もなく消滅し、土甲弾は木々をなぎ倒して直進し見えなくなって遠くのほうで着弾音が聞こえた。

「フッ、少しやり過ぎてしまったか……」

 だって気持ち悪かったんだもの!!
 虫系は会敵即撃破以外にない!!

「ツトム様……
 ビッグキャタピラーの素材は高く売れますのに」

「そうなの?」

「はい。
 外皮が防具や服飾の材料として重宝されていますよ」

「ロザリナは今の芋む……そのビッグなんとかは倒せるのか?」

「倒せますよ。見習いでも倒せますね。
 ちなみにビッグキャタピラーです」

 軽自動車より一回りぐらい小さいサイズだったのにそんなに弱いのか。
 でも倒すって剣で斬るんだろ? 斬った箇所からプシューって体液が飛び出そうなんだけど……

「それじゃあ今度出会ったらロザリナに任せるよ」

「わかりました。
 ですがあそこまでの大きさのは滅多におりませんが」

 あのサイズは珍しいのか。
 そうだよな。ここに限らず森には何度も足を運んでいるのに初遭遇なんだし。
 高値での買い取り額が期待できそうでちょっともったいなかったかな。
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