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「してベルガーナの軍勢はどうであった? 収穫はあったのか?」
「それなりに。
しかしながら魔術士の強化には育成にこそ力を注がねば」
「であろうな。そこはベルガーナ王都に派遣した視察団の帰国を待たなければならないが……
ん?
その者は?」
目を付けられた?!
「バルーカの冒険者です。
帰路は飛行魔法で戻りました故」
「どのぐらいで戻って来れたのだ?」
「途中長めに休みましたが、飛んでいた時間は2刻(4時間)弱といったところでしょうか」
「さすがに早いな。
私も他国に赴く際には飛んで行きたいものだ」
バルーカからベルガーナの王都まで乗合馬車で2日。アルタナ王都までも似たようなものだとしても、移動時間が2日から4時間に短縮できるのは大きいだろう。
「警護の面からそれは叶いますまい。
飛行中は無防備な状態になりますので」
襲撃される可能性かぁ……
高度を上げて飛べば大丈夫そうだけど、凄腕の弓士に狙撃でもされたら危ないのか。
それにしてもレイシス姫の反応を見るにこの小太りなおっさんは王太子っぽいな。
次期アルタナ王であれば万が一もあってはならない立場だろうし。
「優秀な護衛でも同行させれば話は違ってくるかもしれませんが…………(チラッ」
こっち見ないで!!
「私の場合は冒険者を雇うというわけにもいかないしな」
俺は雇われてすらないけどな!
しかし実際に飛行魔法で同じ飛んでる相手を護衛するとなったらどうすればいいのだろう?
飛行中は当然魔法は使えないのだから護衛なんてできない。
誰かに抱えて飛んでもらって魔法を使用するパターンか。
だけどそれで飛行中に魔法が使えても意味あるのかって話なんだよなぁ。
まず事前に攻撃を察知できない。
相手が魔物だったら地図(強化型)スキルで反応を拾えるかもしれない。それでも飛行中の索敵には向かないから運が良ければなんだけど、襲撃者が人間の場合は反応自体がないので完全にお手上げだ。
それに運良く襲撃者を目撃したとして、どうやって防ぐ?
今のところ魔盾(=マジックシールド)が他者を守れる唯一の魔法だが、果たして飛行中に展開したとして有効かどうか……
「…………バルーカでの話は食事の時にでも聞こう」
「わかりましたわ」
考え事をしている間に話は終わったらしく、レイシス姫の兄上殿は取り巻きを従えて立ち去った。
「ツムリーソ、今のが私の兄であるベルゴール・アルタナ。
第一王子でありこの国の後継者です」
やはり王太子か。
「行きますよ」
「はい」
再びレイシス姫の後をついていく。
次は王様に遭遇するとかは勘弁して欲しいと本気で願いながら。
…
……
…………
願いが通じたのかその後は誰とも遭遇しなかった。
王城の3階奥にレイシス姫の自室があり、その隣にある衣裳部屋みたいなところに荷物を置いてお役御免である。
「ツムリーソ、ここまで大儀でした」
「お役に立てたのなら幸いです」
「近い内に必ず私に会いに来るのですよ。わかりましたね?」
「承知致しました」
武闘大会に出ないといけないから数日後にはまたアルタナ王都に来るけど、いくらなんでも直近すぎるか。
大体1月後ぐらいにまた会いにくればいいだろう。
そうだ!
せっかくここまで来たのだし、武闘大会の下見もしておこう。
城を出て空に上がる。
今更なんだが王都内を許可も無しに飛んで平気だろうか? レイシス姫は何も言ってなかったが……
城を警備している衛兵に特に動きがないのでたぶん大丈夫なのだろう。
上空から王都を見渡す。
南門のほうに闘技場のような建物を見つけたので早速行ってみる。
アルタナ王都の南地区にある闘技場は1万人を軽く収容できそうな立派な建築物だった。
周囲を歩いてみるが閑散としていて、とても明後日から武闘大会の参加者を受付する雰囲気ではない。
闘技場の外壁を補修している人に声を掛けてみる。
「すいません! ここって武闘大会の受付で……」
「ここは大会本選の試合会場だよ!
参加受付と予選は王都北西区画にある軍の敷地内だ!」
ここではないらしい。
「ありがとうございます!」
「参加受付は2日後からだぞ!」
「知ってま~す」
今度は北西区画に行ってみる。
王城の左手にある広大な土地は軍の所有地らしい。
錬兵場では3ヵ所で観客席を建築中で、おそらくそこが予選会場になると思われる。
この軍の所有地の入り口部分に人が集まっている。
「参加登録受付は明後日の朝からとなります! 登録料は5000ルクです!
登録後すぐに試合となります!
6日後の受付最終日は混雑が予想されますので早めの登録をお願いします!
なお混雑対策として最終日の登録料は1万ルクとなるのでご注意ください!!
繰り返します!
…………」
大会運営の職員さんらしき人が大声で説明している。
最終日の受付だと倍額の登録料を取られるみたいだが、元々最終日の前日に来る予定なのだ。
しかし登録だけで5000ルクは高いのか安いのか…………最終日の登録料1万ルクは明らかに高いが。
下見はこんなもので十分だろうということで、バルーカへの帰路に着いた。
翌日、この日はいよいよ3人目の女性を買う日だ。
ドキドキワクワクが止まらなくて昨晩はイチャイチャした後、中々寝付けなかった。
「お気を付けて」
「うん。
ロザリナ、実戦復帰する心構えはしておくようにな」
「かしこまりました」
これで俺もようやく自分のパーティーでの活動が可能となる。
もうぼっち野郎などとは呼ばせない!
そんな陰口を叩かれているのかは知らんけど。
「ツトムさん……」
ルルカが俺を抱き締めてくる。
珍しいな、ルルカのほうからこんなことしてくるのは。
「新たな女性を買われても帰りの道中で抱くのはダメですからね」
ルルカの柔らかさを堪能していると耳に直接囁かれた。
「真っ直ぐ帰ってくるつもりだけど……」
「移動中の休憩時にツトムさんのお相手をするのは私だけ……」
ルルカはさらに強く抱き締めてくる。
「わかりましたね?」
「あ、ああ。移動中はルルカとしかしない」
俺の頭に手を添えられて濃厚且つ丁寧なキスをしてくる。
これじゃあ男女逆だろ。
「それじゃあ行ってくる!
帝都の奴隷商で見つからなかった場合はコートダールの商都でも探そうと思う」
「「いってらっしゃいませ!」」
グラバラス帝国の帝都ラスティヒルに向けて全速飛行だ!!
「それなりに。
しかしながら魔術士の強化には育成にこそ力を注がねば」
「であろうな。そこはベルガーナ王都に派遣した視察団の帰国を待たなければならないが……
ん?
その者は?」
目を付けられた?!
「バルーカの冒険者です。
帰路は飛行魔法で戻りました故」
「どのぐらいで戻って来れたのだ?」
「途中長めに休みましたが、飛んでいた時間は2刻(4時間)弱といったところでしょうか」
「さすがに早いな。
私も他国に赴く際には飛んで行きたいものだ」
バルーカからベルガーナの王都まで乗合馬車で2日。アルタナ王都までも似たようなものだとしても、移動時間が2日から4時間に短縮できるのは大きいだろう。
「警護の面からそれは叶いますまい。
飛行中は無防備な状態になりますので」
襲撃される可能性かぁ……
高度を上げて飛べば大丈夫そうだけど、凄腕の弓士に狙撃でもされたら危ないのか。
それにしてもレイシス姫の反応を見るにこの小太りなおっさんは王太子っぽいな。
次期アルタナ王であれば万が一もあってはならない立場だろうし。
「優秀な護衛でも同行させれば話は違ってくるかもしれませんが…………(チラッ」
こっち見ないで!!
「私の場合は冒険者を雇うというわけにもいかないしな」
俺は雇われてすらないけどな!
しかし実際に飛行魔法で同じ飛んでる相手を護衛するとなったらどうすればいいのだろう?
飛行中は当然魔法は使えないのだから護衛なんてできない。
誰かに抱えて飛んでもらって魔法を使用するパターンか。
だけどそれで飛行中に魔法が使えても意味あるのかって話なんだよなぁ。
まず事前に攻撃を察知できない。
相手が魔物だったら地図(強化型)スキルで反応を拾えるかもしれない。それでも飛行中の索敵には向かないから運が良ければなんだけど、襲撃者が人間の場合は反応自体がないので完全にお手上げだ。
それに運良く襲撃者を目撃したとして、どうやって防ぐ?
今のところ魔盾(=マジックシールド)が他者を守れる唯一の魔法だが、果たして飛行中に展開したとして有効かどうか……
「…………バルーカでの話は食事の時にでも聞こう」
「わかりましたわ」
考え事をしている間に話は終わったらしく、レイシス姫の兄上殿は取り巻きを従えて立ち去った。
「ツムリーソ、今のが私の兄であるベルゴール・アルタナ。
第一王子でありこの国の後継者です」
やはり王太子か。
「行きますよ」
「はい」
再びレイシス姫の後をついていく。
次は王様に遭遇するとかは勘弁して欲しいと本気で願いながら。
…
……
…………
願いが通じたのかその後は誰とも遭遇しなかった。
王城の3階奥にレイシス姫の自室があり、その隣にある衣裳部屋みたいなところに荷物を置いてお役御免である。
「ツムリーソ、ここまで大儀でした」
「お役に立てたのなら幸いです」
「近い内に必ず私に会いに来るのですよ。わかりましたね?」
「承知致しました」
武闘大会に出ないといけないから数日後にはまたアルタナ王都に来るけど、いくらなんでも直近すぎるか。
大体1月後ぐらいにまた会いにくればいいだろう。
そうだ!
せっかくここまで来たのだし、武闘大会の下見もしておこう。
城を出て空に上がる。
今更なんだが王都内を許可も無しに飛んで平気だろうか? レイシス姫は何も言ってなかったが……
城を警備している衛兵に特に動きがないのでたぶん大丈夫なのだろう。
上空から王都を見渡す。
南門のほうに闘技場のような建物を見つけたので早速行ってみる。
アルタナ王都の南地区にある闘技場は1万人を軽く収容できそうな立派な建築物だった。
周囲を歩いてみるが閑散としていて、とても明後日から武闘大会の参加者を受付する雰囲気ではない。
闘技場の外壁を補修している人に声を掛けてみる。
「すいません! ここって武闘大会の受付で……」
「ここは大会本選の試合会場だよ!
参加受付と予選は王都北西区画にある軍の敷地内だ!」
ここではないらしい。
「ありがとうございます!」
「参加受付は2日後からだぞ!」
「知ってま~す」
今度は北西区画に行ってみる。
王城の左手にある広大な土地は軍の所有地らしい。
錬兵場では3ヵ所で観客席を建築中で、おそらくそこが予選会場になると思われる。
この軍の所有地の入り口部分に人が集まっている。
「参加登録受付は明後日の朝からとなります! 登録料は5000ルクです!
登録後すぐに試合となります!
6日後の受付最終日は混雑が予想されますので早めの登録をお願いします!
なお混雑対策として最終日の登録料は1万ルクとなるのでご注意ください!!
繰り返します!
…………」
大会運営の職員さんらしき人が大声で説明している。
最終日の受付だと倍額の登録料を取られるみたいだが、元々最終日の前日に来る予定なのだ。
しかし登録だけで5000ルクは高いのか安いのか…………最終日の登録料1万ルクは明らかに高いが。
下見はこんなもので十分だろうということで、バルーカへの帰路に着いた。
翌日、この日はいよいよ3人目の女性を買う日だ。
ドキドキワクワクが止まらなくて昨晩はイチャイチャした後、中々寝付けなかった。
「お気を付けて」
「うん。
ロザリナ、実戦復帰する心構えはしておくようにな」
「かしこまりました」
これで俺もようやく自分のパーティーでの活動が可能となる。
もうぼっち野郎などとは呼ばせない!
そんな陰口を叩かれているのかは知らんけど。
「ツトムさん……」
ルルカが俺を抱き締めてくる。
珍しいな、ルルカのほうからこんなことしてくるのは。
「新たな女性を買われても帰りの道中で抱くのはダメですからね」
ルルカの柔らかさを堪能していると耳に直接囁かれた。
「真っ直ぐ帰ってくるつもりだけど……」
「移動中の休憩時にツトムさんのお相手をするのは私だけ……」
ルルカはさらに強く抱き締めてくる。
「わかりましたね?」
「あ、ああ。移動中はルルカとしかしない」
俺の頭に手を添えられて濃厚且つ丁寧なキスをしてくる。
これじゃあ男女逆だろ。
「それじゃあ行ってくる!
帝都の奴隷商で見つからなかった場合はコートダールの商都でも探そうと思う」
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