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「このような素敵な首飾りを頂いて、本当にありがとうございます」
「いえ、お嬢……ルルカさんがご家族の為に選ばれた品なんですよ」
「ルルカもありがとうねぇ、ほらルミカもツトムさんにお礼を言いなさい!」
「えーっ!?」
「ルミカっ! いい加減にしないと怒るわよ?」
ルルカの一喝にビクッとなるルミカちゃん。
「…………あ、ありがと……」
さすが娘だけあって母親の怖さは身に染みているようだ。
若干そっぽを向きながらではあるが。
「どういたしまして」
「ふんっ!!」
「まったくっ! この娘ったら!!」
「別に構わないから……」
その後は女性陣3人でのトークがメインとなった。
話題はルルカへの家族の近況報告がほとんどで、中でもルミカちゃん関係が多いようだ。
以前ルルカから聞いた説明では普通の人は10歳から12歳までの3年間私校に通い、その後は成人(15歳)するまで家業を手伝うのが一般的で12歳を超えて学ぶのは一部の人だけとのことだったが、コートダールでは学び続けることへのハードルが低いらしくルミカちゃんも途中編入という形でこの街の私校に通っているのだそうだ。
ではなぜ現在ルミカちゃんが俺の正面に座っているのかと言うと、この世界の教育は国が管轄しているのではなく各街や村単位で行われている為に方法や質にかなりのバラつきがある。
俺がイメージしている全員登校・一斉授業は王都や商都の学校ぐらいで、教員数の不足や使用している建物(校舎)などの問題から年齢毎に時間差を付けて登校するのが普通で、ルミカちゃんが私校に行くのは午後からだ。
他には先ほどルルカのお母さんは家族は『皆元気よ』と言ったもののあくまで歳の割にはということであり、特に70歳を超えているだろう祖父母(ルミカちゃんからすると曽祖父母)は体のあちこちにガタが来ているらしい。
現在祖父母がルルカの父親と共に地区の寄り合いに出掛けているのもこの店を息子夫婦に任せて隠居する為の引継ぎの一環のようだ。
今までは他の家族が帰って来る前になんとかお暇出来ないかとチャンスを伺っていたのだが、この話を聞いて考えを改めることにした。
そう、ルルカの祖父母に(ついでに両親やルミカちゃんにも)回復魔法を掛けることを決意する。
例え回復魔法でも老化現象には効果はないだろうが、それが原因で引き起こされる体の不具合ぐらいは何とかできるはずだ。たぶん……
女性陣3人の会話に割り込むのは大変勇気がいるが仕方ない。
「あの~奥様、どこか具合……」
「いやですよ! 奥様なんて!?」
「ツトムさんはどうして変な呼び方ばかりするのかしら……」
「ぷっw」
どう呼べばいいんだよ!
「普通に"おばさん"とでも呼んでくださいな」
"おばさん"って感じの距離感でもないのだけどなー、一応はそう呼ぶことにするか。
「えっとですね、どこか具合の悪いところはありませんか?
自分は回復魔法を使えますのでひょっとしたら治せるかもしれません」
「回復魔法……
そ、そうねぇ、この歳になると腰と膝に痛みが走るのと、明け方に足が冷えるのが辛いかしら」
「失礼しますね」
おばさんの傍に行き腰と膝に回復魔法を掛ける。
後は冷え症か……
一応足にも回復魔法を施すがあまり効果はないだろうなぁ。
「どうですか?」
おばさんは立ち上がって色々と体を動かしている。
「あら? あらあら? 痛みが全然ないわ!」
「ケガ以外を治すのは初めてですので今度経過を教えてください」
「ええ、それはもう」
おばさんは体を動かすのに夢中になってきている。
「一時的に痛みが引いてるだけの可能性もありますのであまり無理に動かないほうが……」
「そ、そうね、腰も膝も痛みがないなんて随分と久しぶりだからつい……」
「寄り合いに出席されている方の帰りはまだ?」
「もう終わる頃だと思うけど、他の出席者と食事でもして来るかも……ひょっとして旦那や両親にも回復魔法をしてくれるの?」
「ええ。治せるかはわかりませんが痛みは取れるみたいですし」
「3人共喜ぶと思うわぁ」
「ルミカ、おじいちゃん達を呼んで来なさい!」
「はぁ~い」
ルミカちゃんが家を出て行った。
「この間に家と店をざっと綺麗にしておきましょうか」
浄化魔法で綺麗にしていく。
「魔法って凄いのねぇ」
「一家に1人ツトムさんがいると凄く便利よ」
俺は家事ロボットかよ!?
「(アンタ、本当にあの子の奴隷なのよね?)」
「(当然じゃない)」
「(もしや成人したばかりの少年を騙して言い様にこき使ってるのではないでしょうね?!)」
「(そんな訳ないでしょ!! これでも結構大変なのよ)」
「(本当かしら? 家事のほとんどをあの子にやってもらってるんじゃないの?)」
「(ツトムさんのご命令なのよ。自分の魔法なら一瞬だからって)」
「(だからって奴隷が楽していい訳ではないでしょ)」
「(この歳でツトムさんのような若い子の相手をするのも大変なんだからね!)」
「(それってアンタ…………)」
「あの~~?」
「「オホホホホ。何か?」」
さすが親子、反応が一緒だ。。
「自分の浄化魔法では見えてる範囲しか綺麗になりませんので、こういう……」
陳列してある商品を持ち上げる。
「物が置いてある下などは汚れたままですので気を付けてくださいね」
「それでも助かるわぁ。ありがとうね」
「大した手間でもありませんので」
店内→家の外観→居間→台所→煙突→トイレ→風呂?→各部屋と浄化魔法で綺麗にした。
特に台所と煙突とトイレは大層喜ばれた。掃除するの大変だからね。
※風呂は1畳ぐらいのスペースに1人が入れるだけの穴があり、そこに沸騰したお湯と水を加えて適温な湯にするようだ。これが一般的な家庭の風呂であり家長だけ湯に浸かり残りの者は体を拭くだけみたいな家もあるし、もちろんこのような風呂すらない家もある。
このことからも俺がバルーカで借りた家は富裕層向けということがわかる。
借りた時は宿に2人で泊まるより安いからと適当に決めた感があるが、今にして思えば壁外区で月額10万ルクは結構な値段だ。まぁだからといって後悔はしてないし、良い物件を紹介してくれた商人には感謝すらしている。
「ルルカが帰って来たって? うお!? なんだ? 随分と中が綺麗に……」
中年のやや小太りな男性が慌ただしく入って来た。
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今週は木曜日も投稿します。
「いえ、お嬢……ルルカさんがご家族の為に選ばれた品なんですよ」
「ルルカもありがとうねぇ、ほらルミカもツトムさんにお礼を言いなさい!」
「えーっ!?」
「ルミカっ! いい加減にしないと怒るわよ?」
ルルカの一喝にビクッとなるルミカちゃん。
「…………あ、ありがと……」
さすが娘だけあって母親の怖さは身に染みているようだ。
若干そっぽを向きながらではあるが。
「どういたしまして」
「ふんっ!!」
「まったくっ! この娘ったら!!」
「別に構わないから……」
その後は女性陣3人でのトークがメインとなった。
話題はルルカへの家族の近況報告がほとんどで、中でもルミカちゃん関係が多いようだ。
以前ルルカから聞いた説明では普通の人は10歳から12歳までの3年間私校に通い、その後は成人(15歳)するまで家業を手伝うのが一般的で12歳を超えて学ぶのは一部の人だけとのことだったが、コートダールでは学び続けることへのハードルが低いらしくルミカちゃんも途中編入という形でこの街の私校に通っているのだそうだ。
ではなぜ現在ルミカちゃんが俺の正面に座っているのかと言うと、この世界の教育は国が管轄しているのではなく各街や村単位で行われている為に方法や質にかなりのバラつきがある。
俺がイメージしている全員登校・一斉授業は王都や商都の学校ぐらいで、教員数の不足や使用している建物(校舎)などの問題から年齢毎に時間差を付けて登校するのが普通で、ルミカちゃんが私校に行くのは午後からだ。
他には先ほどルルカのお母さんは家族は『皆元気よ』と言ったもののあくまで歳の割にはということであり、特に70歳を超えているだろう祖父母(ルミカちゃんからすると曽祖父母)は体のあちこちにガタが来ているらしい。
現在祖父母がルルカの父親と共に地区の寄り合いに出掛けているのもこの店を息子夫婦に任せて隠居する為の引継ぎの一環のようだ。
今までは他の家族が帰って来る前になんとかお暇出来ないかとチャンスを伺っていたのだが、この話を聞いて考えを改めることにした。
そう、ルルカの祖父母に(ついでに両親やルミカちゃんにも)回復魔法を掛けることを決意する。
例え回復魔法でも老化現象には効果はないだろうが、それが原因で引き起こされる体の不具合ぐらいは何とかできるはずだ。たぶん……
女性陣3人の会話に割り込むのは大変勇気がいるが仕方ない。
「あの~奥様、どこか具合……」
「いやですよ! 奥様なんて!?」
「ツトムさんはどうして変な呼び方ばかりするのかしら……」
「ぷっw」
どう呼べばいいんだよ!
「普通に"おばさん"とでも呼んでくださいな」
"おばさん"って感じの距離感でもないのだけどなー、一応はそう呼ぶことにするか。
「えっとですね、どこか具合の悪いところはありませんか?
自分は回復魔法を使えますのでひょっとしたら治せるかもしれません」
「回復魔法……
そ、そうねぇ、この歳になると腰と膝に痛みが走るのと、明け方に足が冷えるのが辛いかしら」
「失礼しますね」
おばさんの傍に行き腰と膝に回復魔法を掛ける。
後は冷え症か……
一応足にも回復魔法を施すがあまり効果はないだろうなぁ。
「どうですか?」
おばさんは立ち上がって色々と体を動かしている。
「あら? あらあら? 痛みが全然ないわ!」
「ケガ以外を治すのは初めてですので今度経過を教えてください」
「ええ、それはもう」
おばさんは体を動かすのに夢中になってきている。
「一時的に痛みが引いてるだけの可能性もありますのであまり無理に動かないほうが……」
「そ、そうね、腰も膝も痛みがないなんて随分と久しぶりだからつい……」
「寄り合いに出席されている方の帰りはまだ?」
「もう終わる頃だと思うけど、他の出席者と食事でもして来るかも……ひょっとして旦那や両親にも回復魔法をしてくれるの?」
「ええ。治せるかはわかりませんが痛みは取れるみたいですし」
「3人共喜ぶと思うわぁ」
「ルミカ、おじいちゃん達を呼んで来なさい!」
「はぁ~い」
ルミカちゃんが家を出て行った。
「この間に家と店をざっと綺麗にしておきましょうか」
浄化魔法で綺麗にしていく。
「魔法って凄いのねぇ」
「一家に1人ツトムさんがいると凄く便利よ」
俺は家事ロボットかよ!?
「(アンタ、本当にあの子の奴隷なのよね?)」
「(当然じゃない)」
「(もしや成人したばかりの少年を騙して言い様にこき使ってるのではないでしょうね?!)」
「(そんな訳ないでしょ!! これでも結構大変なのよ)」
「(本当かしら? 家事のほとんどをあの子にやってもらってるんじゃないの?)」
「(ツトムさんのご命令なのよ。自分の魔法なら一瞬だからって)」
「(だからって奴隷が楽していい訳ではないでしょ)」
「(この歳でツトムさんのような若い子の相手をするのも大変なんだからね!)」
「(それってアンタ…………)」
「あの~~?」
「「オホホホホ。何か?」」
さすが親子、反応が一緒だ。。
「自分の浄化魔法では見えてる範囲しか綺麗になりませんので、こういう……」
陳列してある商品を持ち上げる。
「物が置いてある下などは汚れたままですので気を付けてくださいね」
「それでも助かるわぁ。ありがとうね」
「大した手間でもありませんので」
店内→家の外観→居間→台所→煙突→トイレ→風呂?→各部屋と浄化魔法で綺麗にした。
特に台所と煙突とトイレは大層喜ばれた。掃除するの大変だからね。
※風呂は1畳ぐらいのスペースに1人が入れるだけの穴があり、そこに沸騰したお湯と水を加えて適温な湯にするようだ。これが一般的な家庭の風呂であり家長だけ湯に浸かり残りの者は体を拭くだけみたいな家もあるし、もちろんこのような風呂すらない家もある。
このことからも俺がバルーカで借りた家は富裕層向けということがわかる。
借りた時は宿に2人で泊まるより安いからと適当に決めた感があるが、今にして思えば壁外区で月額10万ルクは結構な値段だ。まぁだからといって後悔はしてないし、良い物件を紹介してくれた商人には感謝すらしている。
「ルルカが帰って来たって? うお!? なんだ? 随分と中が綺麗に……」
中年のやや小太りな男性が慌ただしく入って来た。
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