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 何とかルルカの機嫌を取りながらも移動を続ける。
 俺は何も悪くないような気がするが、せっかくの二人旅なのだ。

 村や街を通過する際にはルルカがゆっくり見れるように飛行速度を落とす。俺自身も8日前に帝都まで行った時は移動を最優先していたからよく見てないしな。
 休憩時には前回の帝都行の詳細をイチャイチャしながら語りようやく甘い雰囲気になり始める。

 昼頃にコートダールの商都に到着した。
 旅自体は順調なのでここでは特別に商都上空に滞空してじっくりと眺める。

「こんなにも大きな街は見た事がありません」

 これまでベルガーナ王都以上の都市を見たことのなかったルルカは感嘆の声を漏らした。

「(グラバラス帝国の)帝都はこれよりもっと大きいぞ」

「ちょっと想像ができませんね」

「そうだ! 大した距離でもないし帝都も見物していこうか?」

「よろしいのでしょうか?」

「時間的な余裕もあるしせっかくの二人旅なんだ。
 それぐらいの寄り道はしてもいいだろう」

「ありがとうございます♪」

 ルルカが抱き付いて来る。
 ちょっと北に寄り道するだけで俺の評価が上がるなら安いものだ。



 商都からライン川を下っていくと帝都ラスティヒルがその姿を現してくる。
 見る者を圧倒する巨大都市を目の当たりにしては如何にルルカと言えど声も出ないようだ。

 帝都の全容をじっくりと見物した後、再び漁村へ向け移動する。


 その日は草原の中の少し丘のようなところの上に小屋を建てて野営地とした。
 周囲を見回しても民家の1軒もなく、静寂な空間がどこまでも続いている。

「今日は休み休みとは言え一日中飛んでいたんだ。疲れただろう?」

「そうですね。ただ、空から見る景色を楽しめましたので」

「明日以降は今日ほどは飛ばないから大丈夫だぞ」

 それから2人で話し合った結果、今後は可能な限り街に立ち寄って食事をすることとなった。
 そうしないと結局収納にあるシチューとパンという普段と変わらない食事になり旅気分を損なうのだ。美味しくはあるが。

「そう言えばルルカは海を見た事はあるか?」

「いえ、今回が初めてです」

「いいか、初めて海に来た時はまず海水に足を浸す。
 それから沖から水が迫って来るので陸に向けて懸命に逃げなければならない。
 逃げられないと深海に引きずり込まれるから気を付けろ」

「(ジトーーーーーー)」

 あ、あれ?

「海については私校に通ってた時に習いましたし、直に見るのは初めてというだけで絵画で見たことはあります。
 風景画の題材になりやすいので」

「そ、そうか……」

 教育制度はそれなりに整っているのだったな、チッ!!

「(ジトーーーーーー)」

「コホン! あー、海の向こうに何があるのかは習ったか?」

「東の海を進めば西の大地に、西の海を進めば東の大地に着くだろうと教わりました」

 確か沖合には海の魔物がいて船は沿岸部しか航行できないのだったか。
 それにしても『大地』か……

「まだ見ぬ新大陸がある、という説は知らないか?」

 これまで自分達がいる土地が唯一無二だったのなら『大地』と呼ぶのも頷ける。

「聞いたことがありませんね」

 この星がどの程度の大きさにもよるか……
 今まで飛んでみた感じ地球より小さい感じはしないが、あくまでも俺の感覚的な印象に過ぎない。
 星の直径を測るには、確か二か所の地点間の正確な距離と太陽の角度の差から求めるのだったか。
 やるなら人を雇う必要がある。また冒険者ギルドに依頼を出そうか……なんか冒険者として依頼を受けるよりも依頼を出す機会の方が多いのだが……
 天文学に詳しい人を探すほうが簡単かもしれないな。まぁ早急に知らなければいけないという訳でもないから機会がある時でいいのだけど。

「ただ、私が子供の頃にグラバラス帝国が巨大大型船を建造して遠洋航海を目指すという話があったのを覚えています」

 ルルカの子供の頃……20年以上も前のことだぞ。

「それでどうなったんだ?」

「申し訳ございません。その後の記憶が曖昧でして……喜んだり興奮したということはなかったと思いますのでおそらくは失敗に終わったかと」

「ふむ……」

 水属性の魔物との交戦経験がまだないので、海にいる魔物がどれほど厄介なのかがよくわからない。
 もちろん大量の海水が厚い防壁と化してこちらの攻撃を阻むであろうことぐらいはイメージできるけど。
 逆に地の利を生かせる水魔法や氷結魔法で倒せないのだろうか?
 明日試して…………船がないな。
 違う種類の魔法は同時発動できないので、飛行魔法中に魔法攻撃することはできない。
 今回のようなケースにしろ、新魔法の開発なんかでもこの同時発動できないという制約がかなり痛いんだよなぁ。

 上空で飛行魔法を切って落下しながら土魔法で船を作るか。
 もし失敗して海に落ちたら溺れたり魔物の攻撃を無防備で受ける危険性があるな。
 別に泳げないという訳ではないぞ。普通に泳げるが元水泳部でもないので溺れる危険は常に考慮すべきだろう。

 ならば最初に船を作ってロープで繋いで牽引するのはどうだろう?
 船は魔物の襲撃に耐えられる造りにしないといけないのである程度の大きさと装甲の厚さが必要だ。
 そんな大きくて重い物を人力で引っ張って飛べるのだろうか?
 そもそもそれ以前に土魔法で作った物が水に浮くのだろうか?
 土魔法で作る物体は一定期間であれば風雨に晒されても大丈夫ではあるし、風呂として中にお湯を入れて使用しても崩れるということはないが……

 わからなければ試してみればいいということで、小屋の外に大きな池を作ろうとしたところで、

「今日のお風呂は表でですか?」

 とルルカが早くも服を脱ぎ始めた。
 毎日見ているのにその肢体のエロさに思考がすぐ支配され、露天風呂も旅行らしくていいだろうともっともらしい理由を付けてすぐに予定を変更する。
 2人で入るには大き過ぎる湯を作りルルカと浸かる。

「凄く贅沢なことをしているような気がします」

「家でも時々こうしようか?
 庭ではさすがに無理だが、北の草原の辺りで3人で湯に浸かるのもいいかもしれん」

「それは楽しみですね」

 あるいは放置している西の森の拠点に露天風呂を作るのもいいかも……
 !? 閃いた!!
 展望台に露天風呂を造設するのだ!!
 あの景色を見ながら風呂に浸かるのはさぞかし気分がいいだろう。

 ………………姫様も誘えないだろうか?
 無理だよなぁぁぁぁ。
 無礼討ちにされそうだし。
 俺が一緒に入らないのであれば平気だろうけど、あのロイヤルボディを拝めないなんて誘う意味ないしな。
 ルルカと密着して土魔法で作った小舟を湯に浮かべながら、どのようにすれば姫様を誘えるかに思考を巡らした。
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