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「自分の願いは今後昇格試験の手伝いはお断り…………」
待てよ。
いっそ昇格試験の手伝いだけではなく指名依頼全般を断ることにするか。
俺にとってギルドの依頼は重要な収入源という訳でもないから指名依頼が来なくても何も問題ない。
むしろ依頼内容を吟味したり断ったりする煩わしさから解放されるなら大いにプラスだ。
「願いは……今後自分への指名依頼の全てを受け付けないでもらいたいのです。
当然昇格試験の助っ人もこれっきりということで」
「ふむ……
昇格試験に関しては今後君に助っ人を頼むことで実力不相応のパーティーが昇格することへの対応策を検討するつもりだったので、君の申し出は渡りに船と言える」
ギルドとしては当然のことか。
現状だと俺は無限に3等級の試験に助っ人できてしまうからな。
「だが全ての指名依頼を断ってしまってもいいのかね?
中には君にとって有益な依頼もあるかと思うが……」
「構いません。
特定の依頼のみを受ける形ですとトラブルの元になりますし、ギルド側の対応も難しくなるでしょうから」
「わかった。そのように通達しておこう」
「ありがとうございます」
「一応念の為に言っておくが、壁外ギルドに手を回すことはできないからな。
そちらは君自身で何とかし給え」
「……わかりました」
嘘吐け、と言いたいのをグッと我慢する。
壁外ギルドの所長さんが注意したのでレドリッチ自身が手を及ぼす範囲をきちんと線引きするようになった……と納得することにしよう。
今日の帰りにでも壁外ギルドに寄ってミリスさんに同じことをお願いしなくては。
その後3人で城内の商店街の一角にある食事処にロザリナの案内で移動した。
前々回(20日前の買い物)に来た時に立ち寄ったような高級店ではなく今回は中流店のようだ。
ホールと個室(有料)が選択出来て、もちろん個室を選んだ。
「改めまして本日の御勝利おめでとうございます」
「おめでとうございます!」
「ありがとう。
ギルドでも言ったが俺自身が昇格した訳ではないから大げさにする必要は全くないからな」
「でも凄かったですよ。
ツトム様が勝利したのを伝えた時のギルド内の盛り上がりは。
ですよね、ルルカさん」
「そうねぇ。
特に決定戦での勝利が伝えられた時は凄かったわね。
皆さすがこの建物を破壊した魔術士だと口々に絶賛していましたよ」
「うっ…………」
そんな絶賛の仕方があるものか!
誰だよ! よりにもよってルルカの耳に入れた奴は!!
「(じぃーーーーーー)」
「お、男には自分の力量を示さねばならない時というのがあるんだよ……」
「ロザリナ、ギルドの建物って時々破壊されるものなの?」
「少なくとも私は聞いたことがありません」
「ツトムさん以外はそのような暴挙を行う人はいないみたいですが?」
「ケガ人が出ないようにちゃんと配慮はしたし、もういいじゃないか」
「良くはありません!!
あれほど自重するよう申し上げましたのに……」
ルルカが説教モードに入ってしまった……
「ほ、ほら、今日は3等級2人に勝っためでたい日なんだし……」
「先ほど大げさに祝う必要はないと仰いましたが?」
くっ、確かにそう言ったけども!
仕方ない、ここは正攻法で何とか収めよう。
「ルルカこっちへ」
席を立ち窓の傍に立つ。
不機嫌さを露わにして隣に来たルルカをそっと抱き締めて、
「すまなかった。あの時はああするしか方法はなかったんだ」
「…………」
「冒険者で、しかも身寄りのない俺はどうしても己の力に頼らなければならない状況になる時がある。
理解してくれ……とまでは言わないが、どうか許しては欲しい」
「しかし! 一つ間違えれば大変なことになります!
あんな想いで待つのはもう嫌です……」
『あんな想いで』というのは王都でルルカを買ってバルーカに戻った際に商業ギルドとの一件で危うく軍と衝突しそうになった時のことを言っているのだろう。
「2人のおかげであの時よりもこの国のことは理解できるようになっているし、城や軍との関係も良好だ。
心配するようなことはないからな」
「……はい……」
「もちろんこれからも最大限自重するよう気を付けるから」
「……約束ですよ?」
「ああ、約束する」
どうにか説得に成功したか。
ルルカにキスをして席に戻る。
俺の背がもう少し高ければ絵になるのだが、ルルカを見上げる形なのでどうにも締まりがないんだよなぁ。
タイミングを伺っていた訳でもないだろうが、ちょうどいい頃合いで料理が運ばれてくる。
ちょっと微妙な空気になっていたので正直助かった。
「今日のことでツトム様の名もより広まったことでしょうし、今後は指名依頼もたくさん来るようになるのではないでしょうか?」
「あぁそのことなんだがな、さっきギルドマスターに……
(経緯を説明中)
……という訳で今後指名依頼は全て断る手はずになっている。
もちろん帰りに壁外ギルドに寄って同様の措置を頼むつもりだ」
「もったいなくはありませんか?
好条件の依頼も多いかと思いますが……」
「そういった報酬が高額な依頼はトラブルに発展する可能性も秘めている。
依頼者との関係だけではないぞ。
どんな奴からどのような形で恨みや嫉妬・妬みなどを買うかわからん。
事前に手を打つことでそれらを回避できるのであれば迷わずそうすべきだろう。
依頼の報酬など考慮する必要もない」
本当は面倒臭かったり2人とイチャイチャする時間を邪魔されたくないだけなのだが、先ほどのルルカとの話の流れから俺もちゃんと考えているんだよアピールだ!!
「そうですね。
ツトムさんは依頼を受けなくても稼ぐ手段は他にありますから。
依頼を全く受けないというのは思い切った考えですが、正しい判断かと思います」
「ツトム様は冒険者としての名声を求められていないということを再認識しました」
「まぁ俺のほうはそんなとこで、2人は今日ギルドで過ごしてどんな感じだったんだ?」
今度は2人の様子を聞くことにする。
2人は試合が終わるまでは俺が飛行魔法の指導を受けた魔術士ネル先生と一緒だったらしい。
しかもロザリナの知り合いだったとか。
奴隷落ちした身で知人に会うのは苦痛だったりするのだろうか?
これは俺の配慮が足りなかったか……いや、戦闘奴隷は冒険者として活動するケースも多いのだから気にし過ぎなのかも……
ルルカを実家に連れて行った後はロザリナと2人で過ごす時間があるのでその時にでも聞いてみることにしよう。
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今週は木曜日も投稿予定です。
待てよ。
いっそ昇格試験の手伝いだけではなく指名依頼全般を断ることにするか。
俺にとってギルドの依頼は重要な収入源という訳でもないから指名依頼が来なくても何も問題ない。
むしろ依頼内容を吟味したり断ったりする煩わしさから解放されるなら大いにプラスだ。
「願いは……今後自分への指名依頼の全てを受け付けないでもらいたいのです。
当然昇格試験の助っ人もこれっきりということで」
「ふむ……
昇格試験に関しては今後君に助っ人を頼むことで実力不相応のパーティーが昇格することへの対応策を検討するつもりだったので、君の申し出は渡りに船と言える」
ギルドとしては当然のことか。
現状だと俺は無限に3等級の試験に助っ人できてしまうからな。
「だが全ての指名依頼を断ってしまってもいいのかね?
中には君にとって有益な依頼もあるかと思うが……」
「構いません。
特定の依頼のみを受ける形ですとトラブルの元になりますし、ギルド側の対応も難しくなるでしょうから」
「わかった。そのように通達しておこう」
「ありがとうございます」
「一応念の為に言っておくが、壁外ギルドに手を回すことはできないからな。
そちらは君自身で何とかし給え」
「……わかりました」
嘘吐け、と言いたいのをグッと我慢する。
壁外ギルドの所長さんが注意したのでレドリッチ自身が手を及ぼす範囲をきちんと線引きするようになった……と納得することにしよう。
今日の帰りにでも壁外ギルドに寄ってミリスさんに同じことをお願いしなくては。
その後3人で城内の商店街の一角にある食事処にロザリナの案内で移動した。
前々回(20日前の買い物)に来た時に立ち寄ったような高級店ではなく今回は中流店のようだ。
ホールと個室(有料)が選択出来て、もちろん個室を選んだ。
「改めまして本日の御勝利おめでとうございます」
「おめでとうございます!」
「ありがとう。
ギルドでも言ったが俺自身が昇格した訳ではないから大げさにする必要は全くないからな」
「でも凄かったですよ。
ツトム様が勝利したのを伝えた時のギルド内の盛り上がりは。
ですよね、ルルカさん」
「そうねぇ。
特に決定戦での勝利が伝えられた時は凄かったわね。
皆さすがこの建物を破壊した魔術士だと口々に絶賛していましたよ」
「うっ…………」
そんな絶賛の仕方があるものか!
誰だよ! よりにもよってルルカの耳に入れた奴は!!
「(じぃーーーーーー)」
「お、男には自分の力量を示さねばならない時というのがあるんだよ……」
「ロザリナ、ギルドの建物って時々破壊されるものなの?」
「少なくとも私は聞いたことがありません」
「ツトムさん以外はそのような暴挙を行う人はいないみたいですが?」
「ケガ人が出ないようにちゃんと配慮はしたし、もういいじゃないか」
「良くはありません!!
あれほど自重するよう申し上げましたのに……」
ルルカが説教モードに入ってしまった……
「ほ、ほら、今日は3等級2人に勝っためでたい日なんだし……」
「先ほど大げさに祝う必要はないと仰いましたが?」
くっ、確かにそう言ったけども!
仕方ない、ここは正攻法で何とか収めよう。
「ルルカこっちへ」
席を立ち窓の傍に立つ。
不機嫌さを露わにして隣に来たルルカをそっと抱き締めて、
「すまなかった。あの時はああするしか方法はなかったんだ」
「…………」
「冒険者で、しかも身寄りのない俺はどうしても己の力に頼らなければならない状況になる時がある。
理解してくれ……とまでは言わないが、どうか許しては欲しい」
「しかし! 一つ間違えれば大変なことになります!
あんな想いで待つのはもう嫌です……」
『あんな想いで』というのは王都でルルカを買ってバルーカに戻った際に商業ギルドとの一件で危うく軍と衝突しそうになった時のことを言っているのだろう。
「2人のおかげであの時よりもこの国のことは理解できるようになっているし、城や軍との関係も良好だ。
心配するようなことはないからな」
「……はい……」
「もちろんこれからも最大限自重するよう気を付けるから」
「……約束ですよ?」
「ああ、約束する」
どうにか説得に成功したか。
ルルカにキスをして席に戻る。
俺の背がもう少し高ければ絵になるのだが、ルルカを見上げる形なのでどうにも締まりがないんだよなぁ。
タイミングを伺っていた訳でもないだろうが、ちょうどいい頃合いで料理が運ばれてくる。
ちょっと微妙な空気になっていたので正直助かった。
「今日のことでツトム様の名もより広まったことでしょうし、今後は指名依頼もたくさん来るようになるのではないでしょうか?」
「あぁそのことなんだがな、さっきギルドマスターに……
(経緯を説明中)
……という訳で今後指名依頼は全て断る手はずになっている。
もちろん帰りに壁外ギルドに寄って同様の措置を頼むつもりだ」
「もったいなくはありませんか?
好条件の依頼も多いかと思いますが……」
「そういった報酬が高額な依頼はトラブルに発展する可能性も秘めている。
依頼者との関係だけではないぞ。
どんな奴からどのような形で恨みや嫉妬・妬みなどを買うかわからん。
事前に手を打つことでそれらを回避できるのであれば迷わずそうすべきだろう。
依頼の報酬など考慮する必要もない」
本当は面倒臭かったり2人とイチャイチャする時間を邪魔されたくないだけなのだが、先ほどのルルカとの話の流れから俺もちゃんと考えているんだよアピールだ!!
「そうですね。
ツトムさんは依頼を受けなくても稼ぐ手段は他にありますから。
依頼を全く受けないというのは思い切った考えですが、正しい判断かと思います」
「ツトム様は冒険者としての名声を求められていないということを再認識しました」
「まぁ俺のほうはそんなとこで、2人は今日ギルドで過ごしてどんな感じだったんだ?」
今度は2人の様子を聞くことにする。
2人は試合が終わるまでは俺が飛行魔法の指導を受けた魔術士ネル先生と一緒だったらしい。
しかもロザリナの知り合いだったとか。
奴隷落ちした身で知人に会うのは苦痛だったりするのだろうか?
これは俺の配慮が足りなかったか……いや、戦闘奴隷は冒険者として活動するケースも多いのだから気にし過ぎなのかも……
ルルカを実家に連れて行った後はロザリナと2人で過ごす時間があるのでその時にでも聞いてみることにしよう。
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