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ロザリナの帰宅後に1人家を出て王都に向かった。
単独飛行なので全速で飛び、特に何事もなく短時間で王都に着いた。
始めに冒険者ギルドで調査依頼をして、その待ち時間でティリアさんオススメのパン屋に行くのがいいだろうな。寝具とかも買えるのなら尚良しだ。
ギルドに行き適当に空いてる受付に並ぶ。決して好みの受付嬢がいなかったという訳ではない。
「いらっしゃいませ。本日はどのような御用件でしょうか?」
装備を着けてないせいか依頼人と勘違いされたかな?
まぁ依頼はするのだけど。ただその前に、
「指導員のランテスはいますか?」
ギルドカードを見せながら聞くと、
「彼ねぇ、魔物に押されてるアルタナ王国に救援に行ったわよ。
でも出発して2日後ぐらいに王国と帝国からの援軍が加わって魔物を撃破したと言う報せが来てね。
タイミングが悪いわよねぇ。もうちょっと様子見てれば良かったのに」
20代中頃の可愛い系の受付嬢は砕けた口調に変えて話しだした。
「とするとすぐに帰ってきそうですか?」
「それは無いと思うわよ。
せっかく行ったのだし撃破されて散らばった魔物の討伐でも手伝うのではないかしら?
それにアルタナ出身らしいから実家にも顔出すんじゃない?」
ランテスはアルタナ王国が生まれ故郷なのか。
そう言えばロイター子爵がアルタナには獣人が多いと言っていたな。
せっかく自慢してやろうと思ったのだが、いないのであれば仕方ない。
「それとは別件で調査を依頼したいのですが」
「かしこまりました。調査対象は何でしょうか?」
また切り替えた! プロだなぁ。
「王都に住む一般人で…………
存命の時は健康状態などを、亡くなっている場合は何時のことかとその死因を、転居していたら転居先を最優先で調べてください。
刻限を2刻(約4時間)として成果がなくても調査途中でも打ち切って報告するようお願いします」
「短時間でも半日分の依頼料を頂くことになりますがよろしいですか?」
「構いませんよ」
「調査対象が存命の場合は本人への接触は有りにしますか?」
う~~ん、どうしようか。
別に俺が調べてるのがわかったところで特に不都合はない。が、相手側からしたら得体の知れない者に周辺を嗅ぎまわれていることになるので気持ち悪いか。
「雑談程度であれば有りで。調査していることは内密に」
「かしこまりました。
依頼料が4,000ルク、これに手数料が2割上乗せされますのと別途調査費用として1,000ルクとなります」
以前にギルド職員(現役1等級冒険者ケルトファー)を調査した時と比べてかなり安い。
調査対象が一般人だからだろうか。
何にせよこの依頼料は安すぎるだろう。
「時間的な猶予の無い案件ですし依頼料は6,000ルク払いますよ」
「ありがとうございます。依頼料が5,000ルクを超えましたので手数料が15%となりまして、計7,900ルクのお支払いとなります。
調査報告は口頭で行いますか? それとも書面でなさいますか?」
「口頭というのは調査した冒険者から直接報告を受けるのですか?」
わざわざ書面にすることはないけど冒険者から直接というのも大げさな感じがする。
「はい。他に受付経由で結果をお知らせすることもできますが……」
「ならそれで」
「承りました。
本日は当ギルドに御依頼頂きまして誠にありがとうございました」
完璧な仕事振りだ。
某壁外ギルドのミリスさんにも見習って欲しいぐらい…………いや、ミリスさんも最初は完璧だったのだ。秘書風お姉さんと思っていたぐらいなんだから。
ダメなところを見せられる程度には2人の距離が縮まったということなのだろうか? ちょっと違うか。
調査が終わるまでの空き時間を利用してパン屋で大量注文をする。
この店で大量注文をするのも3回目なので店の主人も慣れた感じで対応してくれている。
ふと思い付き大量に余っている角付き肉を仕入れてみないかと聞いてみた。
少量を切り取って試食してもらったが…………断られてしまった。どうも店で焼くパンとの相性が悪いらしい。どちらの味も知っている俺からすれば相性が悪いとは思えないのだが、専門家には微妙な違いがわかるのだろう。
ただ家で食べる用に分けて欲しいと言われたので了承した。その分は代金から引いてくれるとのこと。
その後店主に教えてもらった寝具店で布団一式を2組買い、パン屋に戻って出来立てのパンを収納する作業をして、割とすぐに2刻(約4時間)が経過した。
パン屋での大量注文を終えて調査結果を聞きにギルドに向かう。
他人事ではあるのだが、安否確認的な事は初めてなのでかなりドキドキする。
ロザリナのことを想えば無事息災であることが最も望ましいのは当然だ。
仮に病を患っていたとしても回復魔法で治せばいい。治せるよな? 病気の治療はしたことないが教会が運営する治療院でも回復魔法で治療しているはず。
ギルドの受付に行くが、先ほどの完璧受付嬢はいなかった。勤務時間が終わったのだろう。
仕方ないので適当に空いてる受付に行き、
「調査依頼の報告を受けたいのですが」
依頼した時に受け取った控え兼領収書みたいなのを提示する。
「しばらくお待ちください」
キリッとした雰囲気のショートヘアな受付嬢は奥の棚から書類を持ってきて一読した。
ドキドキ……
「結論から申し上げますと、調査対象者は存命でございます。
特に病などを患っているようには見えなかったとのことです」
「そうですか」
これで一安心だな!
ロザリナに暗い報告をせずに済んだことは大変喜ばしい事だ。
「調査が極めて短時間で終わった為に更なる情報を得る為に周囲の聞き込みと本人への接触を試みました」
今回調べてくれた冒険者は中々気が利くな。
「対象者の夫が経営している店舗はそれなりの売り上げのようで、特に儲けている訳でもなく、かといって赤字経営でもないようです。
夫婦仲も特に問題ないようで近所付き合いも良好のようです。
夫側の息子は他店で働いており、近い将来店舗を継ぐものと思われます。
そして対象者の娘2人は10年以上前に失踪しております」
おいおい、ロザリナ姉妹は失踪した扱いなのか。
衛兵に失踪届みたいなのを届け出ている訳ではないだろうが。
母親は姉妹が家を出た要因を知らないはずだから、再婚した夫との仲が険悪になるのを恐れて失踪したことにしたのだろうか?
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10日(木)にも追加投稿します
単独飛行なので全速で飛び、特に何事もなく短時間で王都に着いた。
始めに冒険者ギルドで調査依頼をして、その待ち時間でティリアさんオススメのパン屋に行くのがいいだろうな。寝具とかも買えるのなら尚良しだ。
ギルドに行き適当に空いてる受付に並ぶ。決して好みの受付嬢がいなかったという訳ではない。
「いらっしゃいませ。本日はどのような御用件でしょうか?」
装備を着けてないせいか依頼人と勘違いされたかな?
まぁ依頼はするのだけど。ただその前に、
「指導員のランテスはいますか?」
ギルドカードを見せながら聞くと、
「彼ねぇ、魔物に押されてるアルタナ王国に救援に行ったわよ。
でも出発して2日後ぐらいに王国と帝国からの援軍が加わって魔物を撃破したと言う報せが来てね。
タイミングが悪いわよねぇ。もうちょっと様子見てれば良かったのに」
20代中頃の可愛い系の受付嬢は砕けた口調に変えて話しだした。
「とするとすぐに帰ってきそうですか?」
「それは無いと思うわよ。
せっかく行ったのだし撃破されて散らばった魔物の討伐でも手伝うのではないかしら?
それにアルタナ出身らしいから実家にも顔出すんじゃない?」
ランテスはアルタナ王国が生まれ故郷なのか。
そう言えばロイター子爵がアルタナには獣人が多いと言っていたな。
せっかく自慢してやろうと思ったのだが、いないのであれば仕方ない。
「それとは別件で調査を依頼したいのですが」
「かしこまりました。調査対象は何でしょうか?」
また切り替えた! プロだなぁ。
「王都に住む一般人で…………
存命の時は健康状態などを、亡くなっている場合は何時のことかとその死因を、転居していたら転居先を最優先で調べてください。
刻限を2刻(約4時間)として成果がなくても調査途中でも打ち切って報告するようお願いします」
「短時間でも半日分の依頼料を頂くことになりますがよろしいですか?」
「構いませんよ」
「調査対象が存命の場合は本人への接触は有りにしますか?」
う~~ん、どうしようか。
別に俺が調べてるのがわかったところで特に不都合はない。が、相手側からしたら得体の知れない者に周辺を嗅ぎまわれていることになるので気持ち悪いか。
「雑談程度であれば有りで。調査していることは内密に」
「かしこまりました。
依頼料が4,000ルク、これに手数料が2割上乗せされますのと別途調査費用として1,000ルクとなります」
以前にギルド職員(現役1等級冒険者ケルトファー)を調査した時と比べてかなり安い。
調査対象が一般人だからだろうか。
何にせよこの依頼料は安すぎるだろう。
「時間的な猶予の無い案件ですし依頼料は6,000ルク払いますよ」
「ありがとうございます。依頼料が5,000ルクを超えましたので手数料が15%となりまして、計7,900ルクのお支払いとなります。
調査報告は口頭で行いますか? それとも書面でなさいますか?」
「口頭というのは調査した冒険者から直接報告を受けるのですか?」
わざわざ書面にすることはないけど冒険者から直接というのも大げさな感じがする。
「はい。他に受付経由で結果をお知らせすることもできますが……」
「ならそれで」
「承りました。
本日は当ギルドに御依頼頂きまして誠にありがとうございました」
完璧な仕事振りだ。
某壁外ギルドのミリスさんにも見習って欲しいぐらい…………いや、ミリスさんも最初は完璧だったのだ。秘書風お姉さんと思っていたぐらいなんだから。
ダメなところを見せられる程度には2人の距離が縮まったということなのだろうか? ちょっと違うか。
調査が終わるまでの空き時間を利用してパン屋で大量注文をする。
この店で大量注文をするのも3回目なので店の主人も慣れた感じで対応してくれている。
ふと思い付き大量に余っている角付き肉を仕入れてみないかと聞いてみた。
少量を切り取って試食してもらったが…………断られてしまった。どうも店で焼くパンとの相性が悪いらしい。どちらの味も知っている俺からすれば相性が悪いとは思えないのだが、専門家には微妙な違いがわかるのだろう。
ただ家で食べる用に分けて欲しいと言われたので了承した。その分は代金から引いてくれるとのこと。
その後店主に教えてもらった寝具店で布団一式を2組買い、パン屋に戻って出来立てのパンを収納する作業をして、割とすぐに2刻(約4時間)が経過した。
パン屋での大量注文を終えて調査結果を聞きにギルドに向かう。
他人事ではあるのだが、安否確認的な事は初めてなのでかなりドキドキする。
ロザリナのことを想えば無事息災であることが最も望ましいのは当然だ。
仮に病を患っていたとしても回復魔法で治せばいい。治せるよな? 病気の治療はしたことないが教会が運営する治療院でも回復魔法で治療しているはず。
ギルドの受付に行くが、先ほどの完璧受付嬢はいなかった。勤務時間が終わったのだろう。
仕方ないので適当に空いてる受付に行き、
「調査依頼の報告を受けたいのですが」
依頼した時に受け取った控え兼領収書みたいなのを提示する。
「しばらくお待ちください」
キリッとした雰囲気のショートヘアな受付嬢は奥の棚から書類を持ってきて一読した。
ドキドキ……
「結論から申し上げますと、調査対象者は存命でございます。
特に病などを患っているようには見えなかったとのことです」
「そうですか」
これで一安心だな!
ロザリナに暗い報告をせずに済んだことは大変喜ばしい事だ。
「調査が極めて短時間で終わった為に更なる情報を得る為に周囲の聞き込みと本人への接触を試みました」
今回調べてくれた冒険者は中々気が利くな。
「対象者の夫が経営している店舗はそれなりの売り上げのようで、特に儲けている訳でもなく、かといって赤字経営でもないようです。
夫婦仲も特に問題ないようで近所付き合いも良好のようです。
夫側の息子は他店で働いており、近い将来店舗を継ぐものと思われます。
そして対象者の娘2人は10年以上前に失踪しております」
おいおい、ロザリナ姉妹は失踪した扱いなのか。
衛兵に失踪届みたいなのを届け出ている訳ではないだろうが。
母親は姉妹が家を出た要因を知らないはずだから、再婚した夫との仲が険悪になるのを恐れて失踪したことにしたのだろうか?
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10日(木)にも追加投稿します
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