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15日後に出陣か。
その前にはルルカを家族のいるコートダールに連れて行かないといけないから案外すぐな感じだな。
「……魔物が砦から討って出てきた場合には第2騎士団の各小隊を中核として半包囲陣形を敷き……」
軍議は現在砦の奪取に向けての各隊の配置を確認している。
それに先立ち主力である第2騎士団とバルーカ領軍のついでみたいな感じで俺の名前も読み上げられた。
隣のナナイさんから合図を受けて立ち上がって礼をして何事もなく終わった。
緊張していたのがバカらしくなるぐらいの呆気なさだ。
「……連日の偵察により砦内に駐留している魔物の数はそのおおよそを把握できています。増援でも来ない限りは砦の奪還は容易でしょう」
「うむ。では今後は敵の増援を含めた不測の事態に対する対応法を検討してくれ」
「了解しましたっ!!」
実際には敵の増援が現れたら俺が対応しないといけないのだろうな。
ロイター子爵もその為に自分の直属に配置したのだろうし。
「次は砦奪還後の守りについて……いや、その前に第3騎士団の状況を知ったほうがいいな。
コーネル男爵! 報告を頼む」
「ハッ!
第3騎士団で参謀を務めておりますコーネルと申します。
我が騎士団は一昨日にアルタナ王都の東にて南下して来た帝国軍の支援部隊と合流。
そのまま王都を包囲している魔物の軍勢に攻撃を仕掛けました。
我らの攻撃に呼応してアルタナ王国軍が王都より出撃して比較的短時間で魔物を敗走させることができました」
俺が見た限りではアルタナの王都はまだ余裕があったからな。
2ヵ国からの援軍の力も加われば一気に魔物を押し返したのも不思議な話ではない。
「その後はアルタナ国内に散らばった魔物の掃討とルミナス要塞の防御支援を任務としています。
中央(ベルガーナ王国軍部)からの新たな指令がいずれ届くでしょうが、出陣の際に軍務卿から中途半端な形で(アルタナから)引き揚げさせることはないと聞いておりますのでこのまま任務継続になるかと思われます。
よって参陣するのに最短でも1月で、1ヶ月半は覚悟して欲しいとのことであります!!」
「コーネル男爵、ご苦労だった。
当面は我らのみで守ることが確定したのでこれを基に守備計画を練り直して欲しい」
「承知しました!」
同盟関係ならちょっと早めに引き揚げることぐらいできないのかねぇ。
なんだかんだ言ってもこちらは領土拡張、あちらは本国防衛、さすがにこれで速攻で援軍を引き揚げたら友好関係にヒビが入るか……
その後物資やその輸送などに触れた後、
「王都にある魔族研究所から報告書が届いておる。
……要点だけ読むぞ」
魔族研究所! そんなものもあるのか!
行ってみたいけど無理だろうなぁ。
だって俺がずっと警戒している怪しい機関そのものだろうし。
「ここ1月ほどの間に魔族側が次々と新戦法を繰り出して来たのは彼らの中で大きな変化があったことを如実に表している」
魔族の変化って俺がこの世界に来た少し後からなんだよなぁ。
世界間移動による副作用とか?
あり得そうで怖いよ。
「その変化を当研究所では強力な能力を持った個体が魔族全体を新たに支配し始めた為という結論に達した」
強力な個体か……
所謂『魔王』ってやつなのだろうか?
敵が魔王だと言うのならこちらは『勇者』を立てて対抗しないとダメだろう。
神(仮)の話では確か地球からの転移者はもっと後の時代になるとかなんとか。
そうなるとこの世界の人々の中から勇者みたいなのが現れてくれないと困るのだが……
も、もしかして俺が勇者的な役割を担わされてるとか?
確かに『魔法の才能』は優秀なスキルだと思うけどこれで勇者をやれというのも無茶振りが過ぎるでしょ。
「……その個体の影響力がどこまで及ぶのかの予測は難しいが、従来の数を頼りに押し寄せて来るだけという認識は早急に改めるべきである。以上だ」
(ゾクリ)
すっげぇー嫌なこと思い出してしまったよ!!
そうだよ。『魔法の才能』になったのは俺の魂の大きさだか何かが一杯になるからだった。
なぜそうなったかはその前に異世界言語と若返りを選んだからだ。
異世界言語はともかく本来なら若返りなんてせずにもっと強力なスキルを得て勇者として活躍するはずだったのでは……
(冷や汗ダラダラ)
い、いや待て待て。確か神(仮)は俺の生死はどうでもいいとか言ってたはずだ。
だから別に勇者なんて……ん? 確かその後俺の魂がこの世界に加わるとか言ってたな。
つまり俺の魂の後継者即ち生まれ変わりが勇者として世に出るってことなのか?
いくら魂が同じでも俺自身とは別人格なのだから次の人生が勇者であろうとそれはそれでいいのだが……
この場合の最大の問題は俺が死なないとこの世界に勇者が生まれないということだ。
例えば、このまま対魔族の戦線を維持し続けて俺が寿命を迎えるのならいいが(おそらくこれがベスト)、魔族の侵攻を許してしまうと俺が生きてる期間だけ余計な犠牲者を増やしてしまうということになる。
勇者の一件がなくともやること自体は変わらないけどプレッシャーががが……
「これにて軍議を終了する。
各自出陣まで準備を怠ることの無いように」
全員が立ち上がり一礼する。
「あら。ツトムさん凄い汗ですよ」
ナナイさんがハンカチみたいなのを取り出して拭いてくれた。
「スイマセン、緊張しっぱなしでしたので……」
「ツトム君、出陣日時が早まったがよろしく頼むよ。
私はこの後伯爵と更なる協議があるから後のことはナナイ君に任せる」
「かしこまりましたわ」
ロイター子爵は即立ち去ってしまった。
第3騎士団が実質的に不参加になったせいで戦力のやり繰りが大変なんだろうな。
「ツトムさん何かありますか?」
「ちょっと報告したいことがあるのですが」
黒オーガに関しては言っておくべきだろうな。
アルタナから帰った一昨日の時点で報告すべきだったのかもしれないが。
「わかりました。執務室のほうに移動しましょう」
「まず、出陣当日はどのように行動すればいいのでしょうか?」
ロイター子爵の執務室に移動してソファに座った。
ナナイさんは対面に座って素敵なおみ足を存分に披露してくれている。
「当日は朝一で城に来て下さい。
出陣は領民に見送られながら盛大に行われる予定ですが、行進に参加なさいますか?」
「い、いえ、ひっそりと目立たぬように城外で合流したいと思います」
あくまでもお手伝い、裏方というスタンスは貫くべきだろう。
その前にはルルカを家族のいるコートダールに連れて行かないといけないから案外すぐな感じだな。
「……魔物が砦から討って出てきた場合には第2騎士団の各小隊を中核として半包囲陣形を敷き……」
軍議は現在砦の奪取に向けての各隊の配置を確認している。
それに先立ち主力である第2騎士団とバルーカ領軍のついでみたいな感じで俺の名前も読み上げられた。
隣のナナイさんから合図を受けて立ち上がって礼をして何事もなく終わった。
緊張していたのがバカらしくなるぐらいの呆気なさだ。
「……連日の偵察により砦内に駐留している魔物の数はそのおおよそを把握できています。増援でも来ない限りは砦の奪還は容易でしょう」
「うむ。では今後は敵の増援を含めた不測の事態に対する対応法を検討してくれ」
「了解しましたっ!!」
実際には敵の増援が現れたら俺が対応しないといけないのだろうな。
ロイター子爵もその為に自分の直属に配置したのだろうし。
「次は砦奪還後の守りについて……いや、その前に第3騎士団の状況を知ったほうがいいな。
コーネル男爵! 報告を頼む」
「ハッ!
第3騎士団で参謀を務めておりますコーネルと申します。
我が騎士団は一昨日にアルタナ王都の東にて南下して来た帝国軍の支援部隊と合流。
そのまま王都を包囲している魔物の軍勢に攻撃を仕掛けました。
我らの攻撃に呼応してアルタナ王国軍が王都より出撃して比較的短時間で魔物を敗走させることができました」
俺が見た限りではアルタナの王都はまだ余裕があったからな。
2ヵ国からの援軍の力も加われば一気に魔物を押し返したのも不思議な話ではない。
「その後はアルタナ国内に散らばった魔物の掃討とルミナス要塞の防御支援を任務としています。
中央(ベルガーナ王国軍部)からの新たな指令がいずれ届くでしょうが、出陣の際に軍務卿から中途半端な形で(アルタナから)引き揚げさせることはないと聞いておりますのでこのまま任務継続になるかと思われます。
よって参陣するのに最短でも1月で、1ヶ月半は覚悟して欲しいとのことであります!!」
「コーネル男爵、ご苦労だった。
当面は我らのみで守ることが確定したのでこれを基に守備計画を練り直して欲しい」
「承知しました!」
同盟関係ならちょっと早めに引き揚げることぐらいできないのかねぇ。
なんだかんだ言ってもこちらは領土拡張、あちらは本国防衛、さすがにこれで速攻で援軍を引き揚げたら友好関係にヒビが入るか……
その後物資やその輸送などに触れた後、
「王都にある魔族研究所から報告書が届いておる。
……要点だけ読むぞ」
魔族研究所! そんなものもあるのか!
行ってみたいけど無理だろうなぁ。
だって俺がずっと警戒している怪しい機関そのものだろうし。
「ここ1月ほどの間に魔族側が次々と新戦法を繰り出して来たのは彼らの中で大きな変化があったことを如実に表している」
魔族の変化って俺がこの世界に来た少し後からなんだよなぁ。
世界間移動による副作用とか?
あり得そうで怖いよ。
「その変化を当研究所では強力な能力を持った個体が魔族全体を新たに支配し始めた為という結論に達した」
強力な個体か……
所謂『魔王』ってやつなのだろうか?
敵が魔王だと言うのならこちらは『勇者』を立てて対抗しないとダメだろう。
神(仮)の話では確か地球からの転移者はもっと後の時代になるとかなんとか。
そうなるとこの世界の人々の中から勇者みたいなのが現れてくれないと困るのだが……
も、もしかして俺が勇者的な役割を担わされてるとか?
確かに『魔法の才能』は優秀なスキルだと思うけどこれで勇者をやれというのも無茶振りが過ぎるでしょ。
「……その個体の影響力がどこまで及ぶのかの予測は難しいが、従来の数を頼りに押し寄せて来るだけという認識は早急に改めるべきである。以上だ」
(ゾクリ)
すっげぇー嫌なこと思い出してしまったよ!!
そうだよ。『魔法の才能』になったのは俺の魂の大きさだか何かが一杯になるからだった。
なぜそうなったかはその前に異世界言語と若返りを選んだからだ。
異世界言語はともかく本来なら若返りなんてせずにもっと強力なスキルを得て勇者として活躍するはずだったのでは……
(冷や汗ダラダラ)
い、いや待て待て。確か神(仮)は俺の生死はどうでもいいとか言ってたはずだ。
だから別に勇者なんて……ん? 確かその後俺の魂がこの世界に加わるとか言ってたな。
つまり俺の魂の後継者即ち生まれ変わりが勇者として世に出るってことなのか?
いくら魂が同じでも俺自身とは別人格なのだから次の人生が勇者であろうとそれはそれでいいのだが……
この場合の最大の問題は俺が死なないとこの世界に勇者が生まれないということだ。
例えば、このまま対魔族の戦線を維持し続けて俺が寿命を迎えるのならいいが(おそらくこれがベスト)、魔族の侵攻を許してしまうと俺が生きてる期間だけ余計な犠牲者を増やしてしまうということになる。
勇者の一件がなくともやること自体は変わらないけどプレッシャーががが……
「これにて軍議を終了する。
各自出陣まで準備を怠ることの無いように」
全員が立ち上がり一礼する。
「あら。ツトムさん凄い汗ですよ」
ナナイさんがハンカチみたいなのを取り出して拭いてくれた。
「スイマセン、緊張しっぱなしでしたので……」
「ツトム君、出陣日時が早まったがよろしく頼むよ。
私はこの後伯爵と更なる協議があるから後のことはナナイ君に任せる」
「かしこまりましたわ」
ロイター子爵は即立ち去ってしまった。
第3騎士団が実質的に不参加になったせいで戦力のやり繰りが大変なんだろうな。
「ツトムさん何かありますか?」
「ちょっと報告したいことがあるのですが」
黒オーガに関しては言っておくべきだろうな。
アルタナから帰った一昨日の時点で報告すべきだったのかもしれないが。
「わかりました。執務室のほうに移動しましょう」
「まず、出陣当日はどのように行動すればいいのでしょうか?」
ロイター子爵の執務室に移動してソファに座った。
ナナイさんは対面に座って素敵なおみ足を存分に披露してくれている。
「当日は朝一で城に来て下さい。
出陣は領民に見送られながら盛大に行われる予定ですが、行進に参加なさいますか?」
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