異世界ライフは山あり谷あり

常盤今

文字の大きさ
上 下
108 / 374

105

しおりを挟む
「他に用件がないのでしたら失礼しますね」

 あまりに不愉快な話が続いたので強引に話を打ち切って退室した。
 俺をペットか何かのように扱いたい・飼いたいと言われてるみたいで凄く気持ち悪かった。
 ギルドを通して依頼を受けろと言うのはわからんでもない。
 依頼に発生する手数料はギルドの大事な収入源だろうからな。
 しかし城内ギルドに所属を変えろというのは意味がわからない。
 こんな仕打ちを受けても自分の下に来ると本気で考えているのだろうか?

「ちょっといいかな?」

 階段を1階に降りたところで声を掛けられた。

「あっ、先ほどの……」

 模擬戦前に今知ったことに不満はないと言った人だ。

「まずは自己紹介からかな。
 オレは4等級パーティーのリーダーをしているグリードだ。
 遺憾ながらバルーカではトップパーティーになってしまっているかな」

 年の頃は20代前半のまさに重戦士といった感じの大男だ。
 背中に背負っている大剣はグレートソードだろうか? それともクレイモアか?
 オーク集落討伐でやられてしまった3等級パーティー瞬烈の重戦士ガルクよりは一回り小さい。

「5等級冒険者のツトムです」

「とりあえず座って話さないか?
 飲み物ぐらい奢るからさ」

「構いませんよ」

 このグリードという人に悪い印象はないので承知する。

 受付の反対側にある食堂に移動した。
 出張所である壁外ギルドにはないが、城内のギルドには酒や食べ物を提供する店がギルドによって運営されている。
 利用するのは初めてだが、食事時以外でもそこそこ冒険者がたむろしているのを見かけていた。
 分類的には居酒屋が近いだろうか?
 適当に座り飲み物(果汁水)を頼み、

「率直に聞くが、オレのパーティーに入らないか? いまソロなんだろ?」

 パーティーの勧誘か……2回目だな。

「誘って頂いたのは嬉しいのですが……スイマセン」

「断られるだろうとは思っていたが……
 一応理由を聞いてもいいかい?」

 俺の返答を予測していたらしく落胆している様子はない。

「基本的に自分でパーティー作って好きにやりたいという希望があるのですが、現状ソロでも困っていませんので」

 朝のイチャイチャは絶対死守だ!
 まぁ正直言ってパーティーを組むメリットがないんだよなぁ。
 仲間だったりパーティー戦闘の経験や冒険者としての知識を得られはするだろうけど、それだけだと結局は強さや収納魔法による運搬能力を依存されるだけの関係になって長続きはしないと思う。

「あの火力ならソロでも十分やっていけるか。
 実は勧誘とは別に頼みたいことがあってな、君が4等級に昇格したら俺達と一緒に3等級への昇格試験を受けてもらえないか?」

 本命はこちらという訳か。

「それは全然構わないのですが、自分が4等級に昇格するよりグリードさんのパーティーが3等級に昇格するほうが早くないですか?
 何せ自分が5等級になったのはついこの間ですし」

 ギルドで依頼を受けない俺は等級を上げるメリットがほとんどない。
 ましてバルーカのトップランクに名を連ねるなんて面倒事が起こる予感しかしない。
 主に3階にいるギルドマスター絡みとか……

「今は昇格試験の対戦相手である3等級パーティーがバルーカにいないからね。
 試験を受ける為には3等級パーティーを他の街から呼ぶかオレ達が他の街に出向くかしないといけない。
 その為の調整をギルド間で色々とやるから時間が掛かるんだよ」

 他の街に出向いて試験を受けるというのが1番簡単そうだけど……
 それだとバルーカトップパーティーとしての面子が立たないとか。いや、グリードさんは自己紹介の時に『遺憾ながら』と言っていたのだからパーティーではなくギルド側の面子か!
 昇格試験程度で他の街のギルドとスムーズな連携ができないとすると……
 冒険者ギルドは異世界モノの定番で複数の国に展開する超武力組織的なイメージだったのだが、その実態は各街のギルドの独立色が強い縦割り構造な欠陥を抱えてもいる訳なのか。
 さっきレドリッチ(ギルドマスター)が『3等級より上のパーティーを招くことは簡単にできることではない』と言ったのもその動機の部分はともかく事実ではあるらしい。

「わかりました。
 自分が4等級になった時にグリードさんがまだ4等級のままでしたら一緒に昇格試験を受けましょう」

 すぐには4等級に上がるつもりはないがいずれは昇格することになるだろう。
 ロザリナを4等級にしてあげたいしな。

「その時は頼むな」



 グリードさんと別れ一旦壁外ギルドに向かった。
 職員のミリスさんに一応レドリッチとの面会内容を伝えようと思ったからである。
 円満な面会とは到底言えずトラブルに発展する可能性が高いのであればきちんとした情報提供は必須だろう。
 それと城内ギルドではオークを売り捌くことはしなかった。
 こちらのどのような行動が相手(ギルドマスター)に付け入る隙を与えるかわからなかった為に自重したのである。



「はぅあ! そのようなことが……」

 『はぅあ!』って……
 壁外ギルドの個室でミリスさんにレドリッチとの面会内容を伝えた際の第一声である。
 最初に会った頃はクールな秘書風お姉さんだったんだが……
 会う度にキャラ崩壊していって残念な感じになってしまっている。
 せめてお色気要素でもあればいいのだが、ギルド職員の制服はスタイルを強調するようなタイプではなく、ミリスさんもお尻の主張は激しいもののお山は普通ぐらいだ。
 年齢相応に落ち着いた態度を貫けばいいと思うのだが……

 ギロッ!

 ヒィ~
 ま、まさかルルカみたいな感知能力があるのだろうか?!

「魔法で実力を納得させたって何をしたんですか?」

「大したことはしてないですよ。ちょっとだけ本気で魔法撃っただけで」

「そうですか。
 所属に関しては6等級か5等級の間に城内ギルドに移す人も多いのですけど……」

「こちらの壁外ギルドでも城内に所属を移すよう薦めているのですか?」

「いえ、特にそのようなことはありません。
 冒険者の方達にとっては登録手続きさえしてしまえばどこのギルドでも依頼は受けられるのですから関係ありませんし。
 ギルド側は所属冒険者の活躍が実績に繋がる訳ですが、しかしわざわざ所属の変更を働きかけるなんて……」

 現時点では自分の功績は秘匿してる訳だからギルドの実績目当てに俺を所属させようとしている訳ではないと思うのだが……
 将来的な活躍を見込んでの先物買い的な措置だろうか?

「それにしてもツトムさんが軍から依頼を受けていたなんて知りませんでしたわ」
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く

burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。 最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。 更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。 「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」 様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは? ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...