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「ロザリナ!! 家の中で防衛に向いてるのは2階でいいか?」

「は、はい。壁を壊さない限りオークの大きさでは階段を上って来れないはずです」

「必要な物を持って2階に上がれ!!」

「はい!!」「わ、わかりました」

 ロザリナの防具や瓶を収納に入れて2階に行きそれらを出す。
 ついでに食料と槍や剣を出す。

「ロザリナ、階段上のここで魔物を防げるな?」

「はい。お任せ下さい」

「ルルカもロザリナの動きを邪魔しないように後ろから槍で突くんだ、できるな?」

「わ、わかりました」

「俺はこれから魔物を蹴散らしてくる。家の周囲の安全は確保しておくからしばらくは大丈夫になるはずだ」

「あっ、あの!!」

 ルルカが袖を掴んできた。

「危ない真似はしないで下さい」

 ルルカを抱き締めキスをした。

「大丈夫だ。おまえのツトムさんはこれでも結構強いからな」

「無事に戻ってこないと許しませんからね」

「あ、ああ」

 どう許してくれないのか少し興味があるがここは空気を読もう。
 ロザリナも抱き寄せてキスをする。

「後を頼むぞ、ロザリナ」

「はい。ツトム様も御武運を」



 家を出て近くに魔物がいないのを確認して大通りに出る。
 緊急招集を知らせる鐘の音と人々の喧騒が緊急事態感を煽っている。

 風刃で一体一体丁寧に首を刈っていく。
 街中だと他の人に被害が出る恐れがある貫通系の魔法は使えない。

 定番のオークとゴブリンだが、初めて見る魔物も混じってる。
 倒した魔物を収納しながら地図(強化型)を見る。

 おいおい。
 城内にも多数の魔物の侵入を許してるみたいだ。
 転移してきたのだろうか?

 壁外区に入り込んだ魔物はてっきり南東(城基準だと北東)の防御を突破してきたものと思ったのだが、まだ防衛陣は機能してる。

 どうやら西側から土壁沿いに回り込んで北口から侵入してるみたいだ。

 北へ向かう。
 進行方向以外の敵は倒しても収納はしない。
 惜しいが仕方ない。今は時間のほうが貴重だ。

 壁外区を囲んでいる土壁の北口大通り付近では数人の冒険者が戦っていた。

 パッと見て優勢な人は放置してそれ以外の魔物の首を落とす。
 MMORPGだと完璧マナー違反だが死体は収納しないで行くので勘弁して欲しい。


「お、おい。どこ行くんだ?」

 北口を通過し左折しようとしたとこで戦っていた冒険者から声が掛かった。

「ここから西回りに南下して魔物を倒してくる!」

「ま、待て! 1人じゃ……」

 冒険者の言葉を無視して壁沿いを進む。
 ここなら貫通しても角度的に大丈夫なので土槍(回転)でまとめて倒し回収していく。

 壁外区域から明かりが漏れてるものの土壁から離れると暗いのと、
 索敵警戒の意識がなるべく分散しないように壁沿いを進んでいるので、
 どうしても壁から離れたとこを北口に向かっている魔物を討ち漏らしてしまう。
 まだ3体ほど見逃しただけだが……

 丁寧に倒していくべきだろうか?

 しかし……

 壁外区の南西(城基準だと北西)角の防御が押されているのだ。
 赤点が徐々に押してるのが表示だけでわかる。
 まだ突破はされていないが時間の問題に思える。

 先を急ぐ決断をする。
 討ち漏らしはなんとか北口のとこで防いでくれるのを期待するしかない。



 少し前まで頻繁に使っていた狩場を過ぎて南下していく。

 時々小さな火弾で草を燃やして明かりを確保する。

 もし森に延焼するようなら魔物のせいにする他ない。
 周囲の草を燃やし尽くせば自然と消えるので大丈夫だとは思うが。

 南西角が見える地点まで来たが、外側の土壁も内側の防柵も破壊されてて魔物が群がっている状態だ。
 以前訪れた奴隷商の建物も見える。
 その建物の正面で集団で戦ってるのは戦闘奴隷だろうか?

 ギリギリ間に合ったようだ。
 土槍(回転)を落ち着いて放っていく。
 レベルが上がった。

 南下したことで地図(強化型)にバルーカ城全体とその南まで範囲に捉えてるのだが……
 南側の城壁の外が真っ赤だ。
 明らかに魔物は南を攻めている。

 そして城の南門が破られていてそこから魔物が城内に侵入している。

 城側も南門の広場のところで迎撃してるみたいだが、明らかに押されている。
 広場から伸びる道路全てに守備兵を配置するとなると戦力が分散され過ぎる。

 城の東側は静かな感じだ。
 時々南を攻めてる魔物が溢れるように東に行くのだが上手く対応しているようだ。

 そして西側、つまり俺がいる前方にもかなりの魔物が押し寄せてきている。

 壁外区南西角から侵入しようとしてた魔物は土壁の外側は排除したので、後は奴隷商の建物の周辺にいる魔物だけだ。
 10体はいないので大丈夫だろう。

「外にいる奴! ここは閉鎖するぞ、中に入れ!!」

「俺には構わず閉鎖してくれ!!」

 いざとなれば滞空魔法で退避できるしな。

「死ぬんじゃねぇぞ!!」

「大丈夫だ! ありがとう!!」


 さて……、ここからがある意味本番だ。
 西門を襲ってる魔物を駆逐し、南側の敵の側面を突けるかどうかでこの戦いの行方が決しそうな感じだ。
 西側から南城壁を攻めてる敵の左側面を突ければ南門に侵入する敵を減らせるし、味方が呼応すれば挟撃も可能となる。
 将に一気に戦局を好転せしめることが可能となるのだ。
 武人として(←突っ込んではいけない!)この天王山に参戦するのは武門の誉れ(←以下…)である!!


 無意味に剣を出して振りかざし(←麾下の兵士に突撃を号令してる感を出している。もちろんそんな兵士は1人もいない!!)前方の西門を攻撃してる魔物に対して横撃を加えていく。
 西門城壁上からの攻撃と併せて十字砲火を形成する。

 側面攻撃の効果は絶大だ。
 驚く程の魔物を倒せてる。
 このまま西側の制圧は簡単そうだと笑みを浮かべようとした時である!

 !?
 土槍(回転)が弾かれた??

 ドシドシドシと重低音を響かせてやって来る。

「ジ、ジェネラル!?」

 しかも3体同時だ!

 城壁上からジェネラルに対して魔法と弓矢の攻撃が行われるが、そのデカい斧を一閃しただけで防いでしまう。
 正確には何発か当たってはいるのだが、かすり傷程度のダメージしかないようだ。

 ギギィギギィギギ……

 何の音だ?

 ジェネラル達がニヤリと笑う。

 くっ。こいつらまるで勝利を確信してるかのように笑いやがって……

 3体同時に突っ込んで来た!

「な、めるなああああああああああ!!」

 風槍(回転)を6連横並びにしてジェネラル3体に叩き込んだ!!
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