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040-第4章 飛翔編 [7等級冒険者]

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 5日間休養した後の翌朝ベッドで2人に、

「今日から活動を再開しようと思う」

「大丈夫なのですか?」

「まだ無理をされないほうが…」

「大丈夫だ。あまり間隔を空けて感が鈍るほうが却って怖いし」

「いきなり本格的な狩りはしないさ。徐々にやるつもり」

 実際ここ2日ほどは杖なしでも歩けるようになった。
 多少ふらつくが。
 近接戦闘しなければ大丈夫だろう。

「私が警護につきましょうか?」

「それはダメだ。ロザリナはルルカを護れ」

「私は平気ですよ?」

「この5日間の間に事態がどう動いたのかわからんが、ロザリナを購入した時より危険度が増してるのだからルルカの警護は必要だ」

「わかりました」

「それとこの壁外区に魔物が流れ込んで来た場合の備えをしたい」

「そのようなことありますでしょうか?」

「6日前は危なかったぞ。東門を襲った魔物の数は数百だったらしい。これが南砦を陥落させた規模で来てたら城内は悲惨なことになってただろうし、壁外区にも魔物が流れてきたはずだ」

「そこでそうなった場合は北のドルテスに避難するように。ドルテスの冒険者ギルドに俺宛で伝言を残してくれ」

「わかりました」

「かしこまりました」

「あと一応お金も渡しておく。避難とか関係なく普段使いしていい金だ。必要な物は遠慮なく買ってくれ」

 ルルカに10万ルク、ロザリナに5万ルク渡す。

「こ、こんなによろしいのでしょうか?」

「ロザリナ、俺と10万目当てに勝負したのに5万程度で驚くなよ」

「あ、あのお金は他の奴隷達に振舞って残りは妹に送金してしまいますから…」

「なんなら奴隷商の時の口調に戻してみるか? あの時と比べてどうも口数が減ってる感じだし」

「お、お許しください」

「ツトムさん、ロザリナの口調とは?」

「元々ロザリナは『おい小僧。あたしと勝負しな』とか『どうせ魔術士なんて後ろから魔法撃つだけの案山子ばっかだし』とか『口ほどにもないねぇ。もうおねんねかい?』とか『ふん! 結局口だけかい。情けないねぇ』とかこんな喋り方だったんだぞ」

「ああああああああ」

 ロザリナは両手で顔を隠してしまった。

「今のロザリナからはちょっと考えられませんね。ところでツトムさん」

「なんだ?」

「口という言葉が2回ありますがツトムさんが無意味に挑発されたのでは?」

「む、無意味ではないぞ。彼女の腕を確かめる為の高度な情報戦だったのだ!」

 うわっ、すごいジト目ですよ、ルルカさん。

「とにかく! 俺が言いたいのはロザリナも冒険者に復帰するのだし以前の口調に戻しても構わないというかもっと自由に話していいぞ。ちょっと畏まり過ぎだ」

「ロザリナはこの家に来てまだ1週間なのです。直に慣れますよ」

「そうだといいが。ところでロザリナ、いつまで顔を隠しているんだ?」

「ううう…」

 恐る恐る顔から手をどけた。

「早く慣れろ。でないと俺のお仕置きシリーズが火を噴くぞ」

「お仕置き…」

「大したことないわよ。ロザリナ」

「と言ってるルルカも知ったら驚く程のお仕置きになるだろう」

 なんか考えないとなぁ。
 まぁエロいことでいいのだからいくらでもアイデアは出てくる。
 ジャパニーズ・エロスは伊達じゃない!!

「「……」」


 所持金104万2120ルク→89万2120ルク



 家を出て早速飛行魔法を試そうとしたが必死に思い止まった。
 こんな人家が密集してるとこで危険なことはできないと判断したのである。

 北のいつもの狩場を目指すが途中で10人近い兵士が周囲を警戒しながら待機していた。
 不思議に思いつつ壁外区の北端まで行くと、これまでになかった土壁が街道以外を東西に造られている。
 滞空魔法で空に浮き眺めて見ると壁外区全体が土壁で囲まれていた。西側は今まであった木製の防柵の外側に土壁が設置されている。
 警備している兵士も含めて魔物の襲撃に備えてのことなのだろう。

 浮いたまま飛行魔法を試してみる。
 城で教えてもらったコツを思い出しながらやってみるが、どうも飛ぶというより滑空する感じだ。
 コツを知っていてもいきなり飛べるようにはならない感じだ。
 思えばコツを教えてもらって即出来た滞空魔法もそれまでの失敗の連続だった修練が生きた結果なのかもしれない。
 集中が途切れる→墜落→大怪我なんてことは嫌なので余裕を持って練習を止める。


 次は西の森の奥に狩場を作ろうプロジェクトである。

 まず西の森に入り少し奥まで行く。
 通り辛いとこは土魔法で軽く獣道を造りながら。
 少し奥から本格的に西に伸びる道路を作成するのだ。
 こんなやり方をするのは他の冒険者から少しでも道路の存在を隠したいからである。

 土魔法のレベルが上がったせいかサクサク道路化していく。
 もっとも道路といっても土なので雨の時とか心配だ。一応固めるイメージで作ってはいるが。
 道路自体の幅は1メートル程度で、その両側に3メートルほどの安全地帯を設けるようにしている。

 木は風刃で切り倒して切り株は土魔法で掘り起こして収納していたのだがかなり太い木に行く手を遮られた。
 樹齢何百年ってレベルだろうか?
 切ってしまっていいのか判断に迷う。
 ここは異世界だ。樹の精霊とかいるかもしれない。
 もっと言うなら切ると祟りとかあるかも…
 う~ん。
 土魔法で動かすことはできないだろうか?
 別の適当な木で試してみる。
 動かすことはできるものの根をブチブチ切断してしまう。
 効果があるかわからないが回復魔法を根元付近にかけておく。

 とりあえず大木はスルーして先に進み邪魔な木は移動させて動かす練習をする。
 500メートル近く進んだだろうか?
 MPに余裕を持たせて今日の作業を終わることとする。
 復帰初日だしね。



 さて、いよいよ見習い冒険者卒業イベントだ。

「あの~。今日から7等級になれるはずなのですが…」

 壁外ギルドの受付に行き、初めての受付嬢に声をかけた。
 20代中盤ぐらいのグラマーなタイプだ。
 見習い用の黒いギルドカードを差し出す。

「ツトム様ですね。少しお待ちください」

 グラマー嬢は事務スペースから何やら書類を持ち出してくる。

「お待たせ致しました。ツトム様見習い卒業おめでとうございます」

 手を叩いて拍手しそうだったので慌ててグラマー嬢の両手の間に手を差し込んで止めた。立派な丘の間でないのが非常に残念だ。

「拍手はいらないですから」

「そうですか。こちらがツトム様の新しいギルドカードとなります」

 銀色のカードを渡された。
 これで俺も正規の冒険者だ。

「ツトム様は見習い期間中の実績が考慮されまして即6等級に昇格できますがこのまま手続きしてもよろしいですか?」

「ちょ、ちょっと待って」

 いきなり6等級に上がれるのか。
 面倒な通常依頼をこなさなくていいのだから美味しいのだが。
 しかしこれは罠だ。
 他の冒険者からの嫉妬を買ってトラブルになったり。
 特別待遇してやったんだからと冒険者ギルドから無理難題を押し付けられる未来が待っているのだろう。
 ことわざにもあるじゃないか。急がば回れと。
 ここはルルカ達に対しても慎重な判断ができる主人であるというアピールも必要だろう。
 決まったな。

「このまま7等級で通常の方法で昇格したい」

「かしこまりました。6等級へは通常依頼を50件達成で昇格できますので頑張ってください」

 50件と聞いて昇格を断ったのをちょっとだけ後悔した。

 別に昇格を急いでいる訳ではないのだ。
 ゆっくりで自分のペースでいい。

 ギルドの解体場に行きまず蛇を売る。
 皮が高く売れるようだ。身はクズ肉扱いらしい。
 皮を剥ぎ取る間に聞き込みをしよう。
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