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「以上が作戦だが何か質問あるか?」

 瞬烈というのは職員と一緒に入って来た4人のようだ。
 巨漢のいかにもな重量戦士と斥候風な獣人の男、弓士の男に女魔術士のパーティーだ。
 女魔術士は20代で妙にエロい雰囲気を纏っている。

「3等級とはいえ東は1パーティーだけで大丈夫なのか?」

「瞬烈のリーダーガルクだ。オーク如きは何も問題ない。安心して任せて欲しい」

 重戦士ガルク。いい響きだな。
 魔術士ツトム……いまいちか? 名字なら魔術士カワバタ。うん、名前のほうで正解だな!

「西側の攻撃は集落に突っ込むのか? それとも包囲して削っていく感じか?」

「状況次第なのですが現段階では包囲する形を想定しています」

 ミリスさんが答える。
 指揮する以上は戦闘もできるのだろう。
 戦う秘書お姉さんか~

「集落に捕らわれている人はいるのか?」

 ギルドの資料にあったな。オークやゴブリンは人でも繁殖すると。男女問わずに捕えるらしい。

「報告があった昨日すぐに斥候を出したが捕虜がいるかどうかの確認まではできなかった」

「他にないようなら出発するぞ!!」



 ギルドによる冒険者の格付け『等級』は、1等級の上の特別枠(銀級・金級)が10人程度でほとんど活動をしておらずここ10年ほど銀級に昇格する者もいなかったことからほぼ有名無実化している。
 なので1等級が実質最上位なのだがここも化け物クラスの集まりで1等級への昇格者は数年に1人という。
 よって現実としてトップを目指す場合は2等級が目標であり、そこに後1歩の瞬烈はかなり強いパーティーと言える。
 ちなみに一般的な冒険者は4等級でそこそこの成功者として扱われ4等級を最後に引退する者も多い。5等級6等級で冒険者を諦める者が20代中盤以降で特に多く、『4等級の壁』という言い方で広く一般にも認知されている。




「ツトムはあまり緊張してるようには見えないわね」

 南東の森に向かう馬車の中でエルさんに言われた。

「パーティーに参加するのは初めてなのですが、こういう雰囲気は1度緊急招集で経験していますので」

「2週間ぐらい前にあったやつでしょ?
 私達あの時も南東の森で狩りしてて参加できなかったのよね」

「緊急招集は報酬も出ませんし却って良かったのでは?」

 俺なんか緊急招集に参加したばかりに城で指導なんてさせられてるのに。

「確かに報酬は出ないけどギルド側できちんと評価されて昇格に響いてくるわよ」

「僕達は6等級パーティーだからあの緊急招集は是非とも参加したかったかな」

「このオーク集落の討伐も評価に関係してくるのですか?」

「もちろんよ! 緊急招集ほどではないけどそこそこ大きな評価に繋がるはずよ!」

 見習いだと緊急招集の評価も関係ないな。だからギリアスは見習いは無理に参加させないとか言ってたんだな。
 でも今回は俺の働きは直接タークさんのパーティーの評価に繋がるのだからやり甲斐はあるな。

「そう言えばタークさんのパーティーには瞬烈みたいな名前はないのですか?」

「ギルドが認める正式なパーティー名を付けられるのは3等級からだよ。実際は4等級上位からパーティー名を名乗ってるけどね」



 南東の森入り口で馬車を降りた俺達はオーク集落に向けて森の中を進んで行く。途中2手に別れ西に行き、集落から見えない位置で最後の打ち合わせをする。

 包囲する方針は変わらずに中央を俺達が担当することになった。
 他のパーティーのリーダーから、

「第一発見者のターク達が美味しいとこを担当すべきじゃね?」

 と、悪意か善意なのか微妙に判断の困ることを言われてタークさんも断れなかったようだ。



「東の攻撃後に私が合図しますのでそうしたら攻撃開始してください。
 両翼のパーティーは中央パーティーが攻撃開始したのを確認してから攻撃してください」

 ミリスさんはバッグ持ってるだけだ。魔術士かな?
 そういや昨晩慎重に行動しようと決めたんだった。
 念の為に槍を持つようにする。

「槍を使うの?」

「はい。補助的に剣も使いますよ」

「変なの」

 不思議ちゃんに変て言われたよ……



 指定の場所で待機する
 タークさんから、初撃はエルさんの弓で当たってから魔法攻撃して欲しいとの指示を受けた。

 この開戦を待つまでのジリジリとした感じは癖になりそうだ。
 ただ、地図(強化型)に映る赤点が昨日より若干少ない感じなのが気になる。
 狩りに出かけてるとかだろうか。

 集落の向こうの東の森を見る。
 そろそろ瞬烈の攻撃が始まる頃だ。

 ドドーン!

 東側の攻撃が始まったな。
 集落中のオークが一斉に反応する。

「今です!」

 エルさんが放った矢が集落の出入り口を警護するオークに刺さった。
 攻撃開始だ!

 威力を抑えたMP節約型の土槍(回転)を連射してオークを倒していく。

 布キレで作ったテントのようなとこからワラワラと出てくるが、的が大きいので適当に撃っても当たるのだ。

 横を見ると不思議ちゃんがサンドアローを放っている。
 本人の懸念通り火力不足で倒すまで2~3発必要なようだ。

 オークの数が急速に減っていく。

 攻撃初期はこちらに向かってこようとした集団もいたのだが殲滅した。

 盾を構えて防ごうとした個体もいたが、通常威力の土槍(回転)で倒した。

 もはや魔法の射角から外れたオークをタークさんとラルカスさんが相手してるぐらいで他はぽつんぽつんと点在する感じだ。

 残敵掃討の段階に入ったと判断していいだろう。

 せっせとオークを回収していく。
 この数のオークを売ったらいくらになるのだろうか?
 ソロだったらウハウハなんだけど今回は5等分だ。

 レベルも1つ上がった。
 あれだけ倒せば当然か。

 時折姿を見せる単発オークを倒しながら死体回収に勤しんでいると、

「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 凄まじい咆哮が東から聞こえてきた。

「なんだ?」

「新手か?」

 魔物の凄まじい咆哮に動揺と混乱が広がる中、

 3等級パーティー瞬烈のいる方向からギリアスが走って来たが、どこか様子がおかしい。

 なんだろう? 凄く慌ててるような感じだが?

「に、逃げろ!!」

「瞬烈はどうしましたか?」

「オ、オークジェネラルだ!!」

「瞬烈が苦戦してるのですか?」

「ち、違う。瞬烈はやられたんだよ!! オークジェネラルが後ろから襲ってきてあっという間に……」
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