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 エメリナさんが隣に座り密着してくる。
 先ほどまでとは違い大胆に胸元を見せる感じに着崩して……

「こちらがぁ、清算書と大金貨10枚でございます。ふぅー」

 無駄に吐息混じりの声を耳元に囁いてきた!
 つか耳穴に息吹きかけないで!

「あ、あの」

 手で顔をサワサワ撫でられるのヤバイ。

「この3日間会いに来て下さらなくて寂しかった……」

 指で耳の中をコチョコチョしながら反対の耳に囁き続ける。
 何? この地獄コンボは……

「私、お会いした時からツトム様のこと……」

 もう俺の太ももの上に座り思いっきり抱き付いてくる。

「今夜私と一緒に過ごしません……ん?」

 首筋を舐められてる途中でエメリナさんは急にクンクンしだした。

 な、なんだ? 匂い? でもそんな変な匂いは……

「ツトム様。この3日間で女性を抱きましたか?」

「え? はぁ……」

 エメリナさんは俺からスッと離れた。

「えっ?」

「本日は当ギルドをご利用頂き誠にありがとうございました。
 またのお越しをお待ち申し上げております」

 呆然としている俺を尻目に部屋を出て行った。



 不思議に思いながら商業ギルドを出ると、

「あっ!?」

 急に理解できたような気がした。
 エメリナさんは初モノ好きのショ〇好きなんだ。
 だからルルカの匂いが濃厚に染み着いた俺に興味をなくしたのか。
 なんだかエメリナさんに迫られたその日にルルカを買ったので人生初のモテ期が来たかと勘違いしてしまった。
 王都初日にエメリナさんの誘いに乗らないで本当に良かった。

 それにしても……
 あの迫り方は凄まじかった。
 何もエロいことはされてないのにエロいことされてる感が半端ない。
 ルルカにもいずれ教えていかないと。


 所持金16万8,220ルク→244万8,220ルク





「それでバルーカで冒険者になったの?」

「はい、壁外区のギルドで登録しました」

 コーネル騎士爵邸を再度訪れ、最初はソファで向かい合って夫人と話していたのだが、
 いつの間にか俺を挟んで夫人とルルカが座る形になっていた。
 元々2人で座っていたとこに夫人が腰掛けてきたのである。

「黒目黒髪だと東方の出かしら。北西の小国家群の中にもそんな民族があったような……」

 世界そのものが違うのだ。わかるはずがない。

「そう言えばバルーカの南の砦が陥落したという噂をルルカと街で会った日に聞いたのだけど?」

「噂ではなく事実です夫人。私もギルドの緊急招集で砦から退却してくる軍の支援に赴きました」

「ティリア」

「は?」

「夫人ではなくティリアと呼んで欲しいわ」

「わかりました。ティリア様」

「様はダメよ~、ツトムさんは私と仲良くしてくださらないの?」

「いえ、そんなことは……」

 ルルカよ。主を助けようとせず何故にザマァ的な顔をしてる???

「ティ・リ・アよ」

「ティリアさん、でいかがでしょうか?」

「ダメよ~ルルカは呼び捨てじゃない。仲間外れは寂しいわぁ」

「しかしティリアさんのような素敵な女性を呼び捨てなどには……」

「あら! ツトムさんはお世辞もお上手なのかしら?」

「本心です。ティリアさんのお美しさなら世辞など不要でしょう」

 実際美人さんなのだし。30代限定ならルルカとティリアさんで2トップ確定だ。

「あらまぁ! こんな調子でルルカを口説いたのかしら?」

「ルルカは奴隷商で購入したので口説いた訳では……」

「そこよ!」

「は?」

「ルルカからツトムさんの故郷では年上の女性に奉仕される風習があると聞いたわ」

「正確に言うなら風習ではなく価値観でしょうか? 全員が全員という訳ではなく、男性によっては若い娘ほど至高とする考え方も当然ありました」

「その辺りの細かなとこは置いておくとしても、歳を重ねるごとにないがしろにされるこの国の女性にとっては素晴らしい価値観だわ!」

「はぁ、ありがとうございます?」

「でもツトムさんの年齢だと年上の女性って20代までのことだと思うのよ! どうして30代の親世代の女性を求めたの?」

 やべええええ。油断してた。
 実は精神的には30歳なんです。なんて言えないのだから、
 慎重にきちんと答えないと……

「先ほどお話した通り私は天涯孤独な身でして、大人としての意見や考えを言ってくれる女性が欲しかったのです。
 それにバルーカに戻って家を借りたら、その家のこと一切を任せることのできる女性も欲してました。
 あくまで私の感覚なのですが。大人の女性って30代の女性なイメージなのです。20代は自分と世代が近いせいかあまりそういう印象を持てなくて……」

「既婚者かそうでないかでも違ってくるわね」

「はい。20代でも頼れる人はいるし30代でもお子様感覚の人もいる。わかってはいるのですが自分の感性に従うのは如何ともし難く」

「まぁその感じ方のおかげでルルカはツトムさんに買われたのだから感謝しないとダメよ?」

「わかってるわ」

 ルルカはティリアさんには遠慮がないようだ。まぁ20年近い付き合いらしいからな。



「それにしてもツトムさんは偉いわね。私とこうしてお話してくれるし。トッドなんて従騎士になってからロクに家にも帰ってこないわ」

 ちなみにトッドというのはティリアさんの息子で15歳である。従騎士として騎士団の宿舎に入っている。

「私達の年代で自分の母親とはなかなか気軽には話せないですよ」

「そんなものかしら。そうだわ! ツトムさんあなたウチに養子に来ない?」

「ぶっ!?
 し、失礼しました」

 ルルカが紅茶を吹き出して慌ててフキンで拭いてる。

「わざわざバルーカで冒険者することないわよ。ウチに来てくれれば毎日私とイチャイチャできるでしょ!」

 いや、養子とイチャイチャするのもどうよ?

「いきなり私が家に入り込んでいたらご主人とトッド君がビックリしてしまいますよ」

「いいのよ! 2人共ずーっと私をほったらかしなんだから!」

「トッド君は年頃なんですしあと10年は勘弁してあげてください」

「そりゃあ私も母親ですし? 男の子が女親から離れていくのは仕方ないと思ってるのよ? でも旦那は? 何年もほったらかしなのよ?」

 結構ヘビーな話題になってきたな。

「騎士として御立派に務めを果たされている中でご主人も無念の極みでしょう。綺麗な奥さんとの時間を作れないのですから」

「そうかしら? 浮気とかしてる訳ではなさそうだけど。もう私には興味ないのよ」
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