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ここまで舐められていいのかと。
近代戦において斬り合いを演じた日本民族の血がおまえには流れているはずだと。
剣に生き剣に散った武士の魂が鬼共に屈するのを良しとするはずがない。
またも初撃で倒され回復魔法を使いながら考える。
防御は無駄だ。何度剣で防ごうとしても無理だった。
避けることもできない。身体能力では獣人のほうが上なのだ。
だとしたら……
立ち上がり剣を上段に構える。
鬼に対して振り下ろすことだけに特化する。
薩摩自顕流……
二の太刀要らずと言われたその剛剣は実際には初太刀からの連続攻撃など複雑な剣術だったようだがそんなことはどうでもいい。
こちらはどうせ知識だけの技術のない素人なのだ。
防御を捨て回避を捨て鬼の挙動のみを見つめてジリジリと近付く。
ここだ!
「キエエエエエエエ!!」
振り下ろした剣がどこかに当たったような感触があったのだが既に俺の意識は途絶えていた…
…
……
…………
「グッ」
目を覚ますと脇腹に激痛が襲ってくる
慌てて回復魔法を施す。
どうやら訓練場の隅に運ばれていたようだ。
「お、起きたか」
鬼共……、教官と獣人がそこにいた。
「おまえもしかして回復魔法使えるのか?」
「え、ええ」
「魔力に余裕あるなら周りの連中にも掛けてやってくれ」
周囲を見ると模擬戦に参加した11人と俺の組の獣人が座り込んでいた。
「わかりました」
1人1人に回復魔法を掛けていく。
最後に獣人にどこが痛むのか聞くがムスッとして答えない。
「あの~?」
「そいつは左の鎖骨あたりだ」
なぜか含み笑いしながら教官が答える。
回復魔法を施したのと同時にそいつは立ち上がり、
「俺の名はランテス。貴様の名は?」
「ツトムです……けど?」
「その名……二度と忘れん!!」
と某2号機さんのセリフをパロって立ち去った。
呆然としてると、
「よほど悔しかったのだろう。何せ指導で1撃貰うなんてまずないからな」
「あ、最後の当たっていたのか」
「ククク、なかなかに見事な1撃だったぞ。あそこまで一振りに掛けた斬撃を対応するのは手練れでも難しい。
もっとも実戦では使うなよ?
高い確率で相討ちになるしあれで勝ち切るような相手なら普通に戦っても勝てるはずだ」
「はい。あ、でも実戦ならマジックシールドで相手の攻撃は防げますので」
と魔盾を何枚か展開させる。
「そういや魔術士なんだよな。なぜ剣を取る?」
「魔術士だからって近接戦ができませんでは話にならんでしょ」
「いい答えだ」
教官はニヤリと笑みを浮かべた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
-王都のとある商店通りにて-
「ルルカ? ルルカじゃない?」
ごしゅ……、ツトムさ、んに言いつけられた買い物をしていると突然声を掛けられた。
それにしても奴隷が主人をさん付けで呼ぶなんて無茶振りもいいとこよ!
「ティリア?」
懐かしい友人の姿がそこにあった。
「久し振りね。3年振りぐらいかしら」
「そうね。あなたの旦那が王都に赴任する時に見送ったのが最後だったから」
彼女の名はティリア・コーネル。ロクダーリアにいた時のお互いが結婚する以前からの友人である。
「心配したのよ。実家からの手紙に商会が倒産してあなたが奴隷落ちになったって書いてあって」
「それは……、悪かったわね」
「商会の件は残念だけど奴隷落ちにはならなかったようで安心したわ!」
「ん? 私奴隷よ?」
「え?」
「昨日買われたばかりで」
「ええええ!?」
彼女は私の腕を掴み、
「ちょっと来なさい!」
と強引に私を茶屋に連れ込む。
「ちょ、ちょっと、勝手にこんなお店に入る訳にはいかないわ」
「私が奢るから!」
強引に席に座らせ勝手に注文する。
「で、本当に奴隷なの?」
「疑うの?」
「だって微妙に幸せオーラが漂っててウザくて」
どんな表現なのよ!
「ちゃんと奴隷紋もあるわ。見て見る?」
サンダルを脱いで靴下をめくって見せる。
「あら本当だわ、おかしいわね????」
奴隷として男に買われたのだもの。
労働奴隷として使い潰されるよりマシとは言え。
「どんな人に買われたの?」
「男の子。15歳の」
「侍女とかそんな感じ?(それにしては服が安っぽいような)」
「いいえ、バリバリの性奴隷としてよ」
「はあああ??」
「ちょっと、声大きい」
「ごめん。って、あなた15歳の男の子に抱かれたの?」
「昨日の今日でもう5回もよ」
「ご、ごかい?!?!」
「声大きいって」
「なんなのよ! 私なんてもう何年もご無沙汰なのに!!」
「いや、あ、あのね、若い子の性欲を受け止めるのは凄く大変でクタクタになるし……」
なんだろう。
奴隷落ちした私が騎士爵の奥方を慰めるこの構図は……
「どうりで会った時から妙にツヤツヤしてると思ったのよ!」
「ツヤツヤって……」
「今日も抱かれるの?」
なぜか凄い形相で聞いてくる。
「た、たぶん」
「何回するの?」
「に、2回ぐらい?」
凄く睨まれてる……
「あ、あと朝起きてたぶん1回」
今朝の様子だと間違いないわね。
「ぐぬぬぬぬ……
もう! どこの貴族のボンボンよ! つか年増女より若い娘を抱け!」
ひ、酷い言い方ね!
「お貴族様じゃないわ。冒険者よ」
「冒険者で15歳でもう奴隷買えるの? 15歳よ?」
「さすがに昨日買われたばかりでよくわからないわ。ただ魔術士だからかも」
「魔術士ならあり得るわね」
「あ、そうだ。3日後に王都を出発してバルーカに行くわ。ツトムさ、んはバルーカを拠点にしている冒険者なの」
「あなた主人のことをさん付けで呼んでるの?」
ティリアはバックから紙を取り出し何やら書き出した。
「そういう御命令なのよ。堅苦しい感じは嫌だとおっしゃって」
「ぐぬぬぬぬ」
何なのよ、さっきからのその唸り声は。
「地図書いといたわ。明日明後日と家にいるようにするから訪ねていらっしゃい」
「む、無茶言わないでよ! 奴隷がそんな自由にできる訳ないでしょ!」
「なに言ってるのよ。昨日買われた奴隷がツヤツヤした顔で自由に買い物してて」
あ、あれ?
いやツヤツヤした顔は余計だけども!
「なんならその男の子と一緒でもいいわよ」
「え?」
「むしろ一緒に来てくれれば私にも機会が」
「ダ、ダメよ!」
「ぐぬぬぬぬ……
とにかく!ちゃんとその少年に伝えて来なさいよ!」
そう言って彼女は私を置いて、会計を済まして店を出て行った。
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近代戦において斬り合いを演じた日本民族の血がおまえには流れているはずだと。
剣に生き剣に散った武士の魂が鬼共に屈するのを良しとするはずがない。
またも初撃で倒され回復魔法を使いながら考える。
防御は無駄だ。何度剣で防ごうとしても無理だった。
避けることもできない。身体能力では獣人のほうが上なのだ。
だとしたら……
立ち上がり剣を上段に構える。
鬼に対して振り下ろすことだけに特化する。
薩摩自顕流……
二の太刀要らずと言われたその剛剣は実際には初太刀からの連続攻撃など複雑な剣術だったようだがそんなことはどうでもいい。
こちらはどうせ知識だけの技術のない素人なのだ。
防御を捨て回避を捨て鬼の挙動のみを見つめてジリジリと近付く。
ここだ!
「キエエエエエエエ!!」
振り下ろした剣がどこかに当たったような感触があったのだが既に俺の意識は途絶えていた…
…
……
…………
「グッ」
目を覚ますと脇腹に激痛が襲ってくる
慌てて回復魔法を施す。
どうやら訓練場の隅に運ばれていたようだ。
「お、起きたか」
鬼共……、教官と獣人がそこにいた。
「おまえもしかして回復魔法使えるのか?」
「え、ええ」
「魔力に余裕あるなら周りの連中にも掛けてやってくれ」
周囲を見ると模擬戦に参加した11人と俺の組の獣人が座り込んでいた。
「わかりました」
1人1人に回復魔法を掛けていく。
最後に獣人にどこが痛むのか聞くがムスッとして答えない。
「あの~?」
「そいつは左の鎖骨あたりだ」
なぜか含み笑いしながら教官が答える。
回復魔法を施したのと同時にそいつは立ち上がり、
「俺の名はランテス。貴様の名は?」
「ツトムです……けど?」
「その名……二度と忘れん!!」
と某2号機さんのセリフをパロって立ち去った。
呆然としてると、
「よほど悔しかったのだろう。何せ指導で1撃貰うなんてまずないからな」
「あ、最後の当たっていたのか」
「ククク、なかなかに見事な1撃だったぞ。あそこまで一振りに掛けた斬撃を対応するのは手練れでも難しい。
もっとも実戦では使うなよ?
高い確率で相討ちになるしあれで勝ち切るような相手なら普通に戦っても勝てるはずだ」
「はい。あ、でも実戦ならマジックシールドで相手の攻撃は防げますので」
と魔盾を何枚か展開させる。
「そういや魔術士なんだよな。なぜ剣を取る?」
「魔術士だからって近接戦ができませんでは話にならんでしょ」
「いい答えだ」
教官はニヤリと笑みを浮かべた。
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-王都のとある商店通りにて-
「ルルカ? ルルカじゃない?」
ごしゅ……、ツトムさ、んに言いつけられた買い物をしていると突然声を掛けられた。
それにしても奴隷が主人をさん付けで呼ぶなんて無茶振りもいいとこよ!
「ティリア?」
懐かしい友人の姿がそこにあった。
「久し振りね。3年振りぐらいかしら」
「そうね。あなたの旦那が王都に赴任する時に見送ったのが最後だったから」
彼女の名はティリア・コーネル。ロクダーリアにいた時のお互いが結婚する以前からの友人である。
「心配したのよ。実家からの手紙に商会が倒産してあなたが奴隷落ちになったって書いてあって」
「それは……、悪かったわね」
「商会の件は残念だけど奴隷落ちにはならなかったようで安心したわ!」
「ん? 私奴隷よ?」
「え?」
「昨日買われたばかりで」
「ええええ!?」
彼女は私の腕を掴み、
「ちょっと来なさい!」
と強引に私を茶屋に連れ込む。
「ちょ、ちょっと、勝手にこんなお店に入る訳にはいかないわ」
「私が奢るから!」
強引に席に座らせ勝手に注文する。
「で、本当に奴隷なの?」
「疑うの?」
「だって微妙に幸せオーラが漂っててウザくて」
どんな表現なのよ!
「ちゃんと奴隷紋もあるわ。見て見る?」
サンダルを脱いで靴下をめくって見せる。
「あら本当だわ、おかしいわね????」
奴隷として男に買われたのだもの。
労働奴隷として使い潰されるよりマシとは言え。
「どんな人に買われたの?」
「男の子。15歳の」
「侍女とかそんな感じ?(それにしては服が安っぽいような)」
「いいえ、バリバリの性奴隷としてよ」
「はあああ??」
「ちょっと、声大きい」
「ごめん。って、あなた15歳の男の子に抱かれたの?」
「昨日の今日でもう5回もよ」
「ご、ごかい?!?!」
「声大きいって」
「なんなのよ! 私なんてもう何年もご無沙汰なのに!!」
「いや、あ、あのね、若い子の性欲を受け止めるのは凄く大変でクタクタになるし……」
なんだろう。
奴隷落ちした私が騎士爵の奥方を慰めるこの構図は……
「どうりで会った時から妙にツヤツヤしてると思ったのよ!」
「ツヤツヤって……」
「今日も抱かれるの?」
なぜか凄い形相で聞いてくる。
「た、たぶん」
「何回するの?」
「に、2回ぐらい?」
凄く睨まれてる……
「あ、あと朝起きてたぶん1回」
今朝の様子だと間違いないわね。
「ぐぬぬぬぬ……
もう! どこの貴族のボンボンよ! つか年増女より若い娘を抱け!」
ひ、酷い言い方ね!
「お貴族様じゃないわ。冒険者よ」
「冒険者で15歳でもう奴隷買えるの? 15歳よ?」
「さすがに昨日買われたばかりでよくわからないわ。ただ魔術士だからかも」
「魔術士ならあり得るわね」
「あ、そうだ。3日後に王都を出発してバルーカに行くわ。ツトムさ、んはバルーカを拠点にしている冒険者なの」
「あなた主人のことをさん付けで呼んでるの?」
ティリアはバックから紙を取り出し何やら書き出した。
「そういう御命令なのよ。堅苦しい感じは嫌だとおっしゃって」
「ぐぬぬぬぬ」
何なのよ、さっきからのその唸り声は。
「地図書いといたわ。明日明後日と家にいるようにするから訪ねていらっしゃい」
「む、無茶言わないでよ! 奴隷がそんな自由にできる訳ないでしょ!」
「なに言ってるのよ。昨日買われた奴隷がツヤツヤした顔で自由に買い物してて」
あ、あれ?
いやツヤツヤした顔は余計だけども!
「なんならその男の子と一緒でもいいわよ」
「え?」
「むしろ一緒に来てくれれば私にも機会が」
「ダ、ダメよ!」
「ぐぬぬぬぬ……
とにかく!ちゃんとその少年に伝えて来なさいよ!」
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