お兄ちゃんの装備でダンジョン配信 ~レベル1なのに迷宮の最下層へ。勝手に持ち出した装備は84億円!? 最強装備の初心者が動画をバズらせる~

高瀬ユキカズ

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最強の初心者パーティ

第181話 待ち合わせ

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 湊ちゃんのダンジョンデバイスを除けば、準備は整った。
 20万円もするデバイスを買うべきか迷っていたのだが、代替策があることが分かった。

 瑞稀社長に用意してもらった私のタブレットがかなりの高性能で、これで代用できるというのだ。
 処理は私のタブレットで行い、湊ちゃんのスマホに入れたアプリで情報を表示する。この組み合わせで、ダンジョンデバイスと同等の機能が使えるらしい。

 決行日となった日曜日。

 私のダンジョンでレベル上げをする日だ。
 今回は特別に、もりもりさんも誘っていた。もりもりさんはロサンゼルス・ダンジョン探索のメンバーではないが、湊ちゃんと春日井君に戦闘の基礎を教えてもらいたかったからだ。幸い、もりもりさん自身も経験値が得られるということで、快諾してくれた。

 待ち合わせの駅に着くと、すでに湊ちゃんと春日井君の姿があった。私は少し離れた柱の陰から、こっそりと二人の様子を観察することにした。しかし期待していた展開はなく、二人は微妙な距離を保ったまま、時折ぎこちない会話を交わすだけだった。

 好きな人と二人きりになれる機会なんて、そうそうあるものではない。でも湊ちゃんは普段と変わらない様子で、春日井君も特に緊張している感じでもなかった。

「もしかして、湊は春日井君のことを特別に思っていないのかな」

 中学二年生。恋愛を意識し始める年頃でありながら、まだ純粋すぎる年頃でもある。あるいは湊ちゃんは、初めてのダンジョン攻略への緊張で、春日井君のことどころではないのかもしれない。

「何を見ているのですか?」

 突然、背後から声がして飛び上がりそうになった。振り返ると、もりもりさんが私の肩越しに二人を見つめている。

「もりもりさん、こんにちは」

「こんにちは、春菜さん」

 私は湊ちゃんと春日井君がいる方向を顎でしゃくって示した。

「あの二人が今日のメンバーなんです。実は、もしかしたら二人の間に何かあるんじゃないかって思ってて…」

「好き同士、ということですか?」

「うーん」
 
 私は言葉を選びながら続けた。

「それが、よくわからないんです。気になってはいるけど、そこまでじゃないのかもしれません」

「なるほど」

 もりもりさんは二人を観察しながら言った。

「でも、お互いを意識している様子はあまりないですね。普通のクラスメイトに見えます」

「ですよねー」

「春菜さんはあの2人に仲良くなってほしいのですか?」

 問われて、私は考え込んだ。

「どうなんでしょう………。湊が春日井君のことを本当に好きなら応援したいんですが、直接聞いたことはなくて。まだ私の推測の域を出ていないんです」

「なるほど。慎重になるのも分かります」

「とりあえず、挨拶に行きましょうか。もりもりさんを紹介しないと」

 私ともりもりさんは柱の陰から出て、湊ちゃんと春日井君の元へ向かった。

「おはよう! 待たせてごめんね」

 私が声をかけると、二人は同時にこちらを振り向いた。そして、私の隣に立つもりもりさんの姿を認めた途端、目を丸くする。特に湊ちゃんは、小さく息を呑むのが見て取れた。

「紹介するね。こちらが、配信でお馴染みのもりもりさんです」

「は、初めまして!」

 湊ちゃんが深々と頭を下げる。普段は大人びた印象の彼女だが、今は完全にファンモードだ。

「動画、拝見させていただいています! 特に、神王装備を身に着けての活躍は何度も見直しました!」

 春日井君も「よろしくお願いします」と短く挨拶しながら、もりもりさんを見つめている。彼も配信は見ているはずだが、湊ちゃんほど興奮した様子はない。でも、普段より真剣な表情をしているのが印象的だった。

「こんにちは。湊さんと春日井さんですね」

 もりもりさんは穏やかな笑顔で二人に頭を下げた。

「今日は一緒にダンジョンを攻略させていただきます。春菜さんから、お二人のことは伺っています」

「あの、質問してもいいですか?」

 湊ちゃんが少し躊躇いながら手を挙げる。まるで授業中のようだ。

「今日は春菜から神王装備を借りることになっています。すごい装備みたいですが、私でも使えるのでしょうか? なにしろ、ダンジョンは初めてなので……」

「ええ、もちろんです。お手本もお見せできると思いますよ」

 その言葉を聞いた湊ちゃんの目が輝きだす。春日井君も、さりげなく身を乗り出していた。私は思わず微笑んでしまう。乗り気ではないと思っていた湊ちゃんも、ダンジョンに行くことになると本当に子供みたいだった。

「それじゃあ、そろそろ行きましょうか。今日は特別な講習会になりそうですね」

 もりもりさんの言葉に、全員が頷いた。これから始まる探索に、どことなく期待感が漂っていた。
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