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新しいダンジョン
第123話 ミリアと再会
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「春菜お姉様!」
「ひさしぶりー、ミリア」
私は手を振ってミリアを出迎える。
ミリアはピンク色の髪に、服も全身がピンク色だ。フリルのワンピースを着ている。相変わらず可愛らしく、スキルを使わずとも周囲の男どもを魅了していた。
捜索に加わった半数くらいがこの場所にいた。私とミリア、そして瑞稀社長とSPの警察官が60人くらいに囲まれている。
「お姉様! こんなにも配下の者を引き連れて! サキュバス・クイーンの名はお姉様に献上するなの。お姉様こそ淫魔の名を!」
「いや、いらない」
私は冷静に言い放つ。
尚人さんがミリアのすぐそばまでやってきた。
「うわあ。かわええ。マジ天使じゃん。オレ惚れちまうわ。春菜さんから乗り換えっかな」
間髪入れずに、若菜さんからお尻のあたりをつねられた。
「痛っ、痛いって! 若菜、手加減しろって!」
瑞稀社長とSPは落ち着きがない様子だった。
「ミリアちゃんも見つかったことだし、東京に帰りましょう」
「早くこの場を離れましょう」
尚人さんはその様子を見て気を使ったのか、仲間に解散を宣言した。
「おっしゃー。お前ら、サンキューな。じゃあ、これで解散!」
そのまま一同はばらばらに散っていく。バイクや車が走り出した。
しばらく経ったが、それでもまだ10人くらいが残っていた。
そこへ、1人の男性がやってきた。年齢は50歳後半くらいだろうか。スーツを着ていて、少し猫背になりながら、よたよたと歩いていた。
「やべ。あいつ蛭田だ」
誰かが呟いた。
「蛭田?」
「秩父南署のデカ」
「ほら、友樹が万引きで捕まった時に」
「ああ、あの時の」
「蛭田刑事ね……」
「最近やたら俺等に絡んでくるな」
近寄ってくるのは刑事だった。
頬をぼりぼりとかきながら、蛭田刑事が歩いてくる。
尚人さんの前までやってきて、ぐいっと顔を寄せた。
「通報があってな。ガラの悪い連中がたむろっているって。てめえ等が悪巧みでもしてるんじゃないかと思ってよ」
「悪いことなんか、なんもしてねえよ」
尚人さんは不満そうに言った。
「まあ、なんでもいいや。おい、上宮尚人だっけか? お前リーダーだったよな。ちょっと署まで顔出せや」
「なんでオレが。行くわけねえだろ」
尚人さんは断り、立ち去ろうとした。
「お前ら、今日は解散。帰るぞ」
だが、 蛭田刑事が尚人さんの腕を掴んだ。
「上宮尚人。お前だけ署に連行だ。来い」
「痛えな。離せよ。行かねえって言ったろ」
「なんでもいいんだよ。お前らなんて、叩けば埃なんていくらでも出てくるんだ。バイクの改造だってしてるんだろ? こないだも飲食店で騒いでたって聞いたしな。コップ割ってそのままだったろ。そんなんでもいいんだよ」
「そんな。無茶苦茶な」
「来ねえんなら、テロ等準備罪でもいいし、未成年者略取・誘拐罪でもいい。現行犯逮捕してやろうか?」
私たちがそばで様子を見ていると、SPの男性が動き出した。
「瑞稀社長、こちらを」
SPからスマートフォンを渡された瑞稀社長は一言二言話し、その電話を蛭田刑事に渡した。
「ん? なんだ?」
「わたくし、デバイスリンク・テクノロジーズの社長をしております藤井瑞稀と申します。こちらの方があなたに御用があると」
「御用?」
「ええ」
不審そうな顔をしながら、蛭田刑事は受話部分に耳を当てた。
「誰だ? 俺に用って」
しばらく先方の話を聞いているようだった。
「本部長?」
蛭田刑事の顔色が少し変わった。
「埼玉県警本部長? ご、ご本人でいらっしゃいますか? ……はい。はい。……承知いたしました。そうですね、そのようにいたします。ご指摘、ごもっともでございます。はい。大変申し訳ございませんでした」
蛭田刑事はスマートフォンを手に、深く頭を下げていた。
「ちっ」
電話を切ると、苦々しい顔で舌打ちをした。
「本部長と知り合いなんて、手が出せねえじゃねえか。胸糞悪い……」
放り投げるように電話を返した蛭田刑事は、こちらに背を向けて歩き出す。胸元から煙草を取り出し、火をつけた。深く息を吸いすぎたのか、ごほごほとむせていた。
そのまま乗ってきたパトカーに乗り込み、去っていった。
「うおおおお」
「すげえ、すげえっす」
残っていた尚人さんの仲間が沸き立った。
「尚人さんの推しは警察の部長さんと知り合いですか?」
「部長って会社で言ったらそこそこのお偉いさんじゃん」
「すげっすね」
尚人さんは仲間に囃し立てられながら、頭をぼりぼりとかく。
そして、私と瑞稀社長に軽く頭を下げた。
「部長だから蛭田刑事のすぐ上くれえかな。春菜さん、偉い人と知り合いだったんだな。助かった。ありがとな」
瑞稀社長は何も言わず、ただ苦笑いをしていた。
そばにいた若菜さんはぼそっと呟く。
「県警本部長は、埼玉県警のトップだけどな。会社で言ったらグループ会社の社長だろ。埼玉の警察で一番えらい人だぞ。こいつら、馬鹿だから知らないんだろうけどよ」
その呟きは尚人さんたちには聞こえていないようだった。
私もてっきり会社の部長くらいに思っていたから、若菜さんは頭がいいのだと思った。
「ひさしぶりー、ミリア」
私は手を振ってミリアを出迎える。
ミリアはピンク色の髪に、服も全身がピンク色だ。フリルのワンピースを着ている。相変わらず可愛らしく、スキルを使わずとも周囲の男どもを魅了していた。
捜索に加わった半数くらいがこの場所にいた。私とミリア、そして瑞稀社長とSPの警察官が60人くらいに囲まれている。
「お姉様! こんなにも配下の者を引き連れて! サキュバス・クイーンの名はお姉様に献上するなの。お姉様こそ淫魔の名を!」
「いや、いらない」
私は冷静に言い放つ。
尚人さんがミリアのすぐそばまでやってきた。
「うわあ。かわええ。マジ天使じゃん。オレ惚れちまうわ。春菜さんから乗り換えっかな」
間髪入れずに、若菜さんからお尻のあたりをつねられた。
「痛っ、痛いって! 若菜、手加減しろって!」
瑞稀社長とSPは落ち着きがない様子だった。
「ミリアちゃんも見つかったことだし、東京に帰りましょう」
「早くこの場を離れましょう」
尚人さんはその様子を見て気を使ったのか、仲間に解散を宣言した。
「おっしゃー。お前ら、サンキューな。じゃあ、これで解散!」
そのまま一同はばらばらに散っていく。バイクや車が走り出した。
しばらく経ったが、それでもまだ10人くらいが残っていた。
そこへ、1人の男性がやってきた。年齢は50歳後半くらいだろうか。スーツを着ていて、少し猫背になりながら、よたよたと歩いていた。
「やべ。あいつ蛭田だ」
誰かが呟いた。
「蛭田?」
「秩父南署のデカ」
「ほら、友樹が万引きで捕まった時に」
「ああ、あの時の」
「蛭田刑事ね……」
「最近やたら俺等に絡んでくるな」
近寄ってくるのは刑事だった。
頬をぼりぼりとかきながら、蛭田刑事が歩いてくる。
尚人さんの前までやってきて、ぐいっと顔を寄せた。
「通報があってな。ガラの悪い連中がたむろっているって。てめえ等が悪巧みでもしてるんじゃないかと思ってよ」
「悪いことなんか、なんもしてねえよ」
尚人さんは不満そうに言った。
「まあ、なんでもいいや。おい、上宮尚人だっけか? お前リーダーだったよな。ちょっと署まで顔出せや」
「なんでオレが。行くわけねえだろ」
尚人さんは断り、立ち去ろうとした。
「お前ら、今日は解散。帰るぞ」
だが、 蛭田刑事が尚人さんの腕を掴んだ。
「上宮尚人。お前だけ署に連行だ。来い」
「痛えな。離せよ。行かねえって言ったろ」
「なんでもいいんだよ。お前らなんて、叩けば埃なんていくらでも出てくるんだ。バイクの改造だってしてるんだろ? こないだも飲食店で騒いでたって聞いたしな。コップ割ってそのままだったろ。そんなんでもいいんだよ」
「そんな。無茶苦茶な」
「来ねえんなら、テロ等準備罪でもいいし、未成年者略取・誘拐罪でもいい。現行犯逮捕してやろうか?」
私たちがそばで様子を見ていると、SPの男性が動き出した。
「瑞稀社長、こちらを」
SPからスマートフォンを渡された瑞稀社長は一言二言話し、その電話を蛭田刑事に渡した。
「ん? なんだ?」
「わたくし、デバイスリンク・テクノロジーズの社長をしております藤井瑞稀と申します。こちらの方があなたに御用があると」
「御用?」
「ええ」
不審そうな顔をしながら、蛭田刑事は受話部分に耳を当てた。
「誰だ? 俺に用って」
しばらく先方の話を聞いているようだった。
「本部長?」
蛭田刑事の顔色が少し変わった。
「埼玉県警本部長? ご、ご本人でいらっしゃいますか? ……はい。はい。……承知いたしました。そうですね、そのようにいたします。ご指摘、ごもっともでございます。はい。大変申し訳ございませんでした」
蛭田刑事はスマートフォンを手に、深く頭を下げていた。
「ちっ」
電話を切ると、苦々しい顔で舌打ちをした。
「本部長と知り合いなんて、手が出せねえじゃねえか。胸糞悪い……」
放り投げるように電話を返した蛭田刑事は、こちらに背を向けて歩き出す。胸元から煙草を取り出し、火をつけた。深く息を吸いすぎたのか、ごほごほとむせていた。
そのまま乗ってきたパトカーに乗り込み、去っていった。
「うおおおお」
「すげえ、すげえっす」
残っていた尚人さんの仲間が沸き立った。
「尚人さんの推しは警察の部長さんと知り合いですか?」
「部長って会社で言ったらそこそこのお偉いさんじゃん」
「すげっすね」
尚人さんは仲間に囃し立てられながら、頭をぼりぼりとかく。
そして、私と瑞稀社長に軽く頭を下げた。
「部長だから蛭田刑事のすぐ上くれえかな。春菜さん、偉い人と知り合いだったんだな。助かった。ありがとな」
瑞稀社長は何も言わず、ただ苦笑いをしていた。
そばにいた若菜さんはぼそっと呟く。
「県警本部長は、埼玉県警のトップだけどな。会社で言ったらグループ会社の社長だろ。埼玉の警察で一番えらい人だぞ。こいつら、馬鹿だから知らないんだろうけどよ」
その呟きは尚人さんたちには聞こえていないようだった。
私もてっきり会社の部長くらいに思っていたから、若菜さんは頭がいいのだと思った。
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