お兄ちゃんの装備でダンジョン配信 ~勝手に持ち出した装備は84億円でした。レベル1なのに迷宮の最下層で動画をバズらせます~

高瀬ユキカズ

文字の大きさ
上 下
123 / 241
新しいダンジョン

第123話 ミリアと再会

しおりを挟む
「春菜お姉様!」

「ひさしぶりー、ミリア」

 私は手を振ってミリアを出迎える。
 ミリアはピンク色の髪に、服も全身がピンク色だ。フリルのワンピースを着ている。相変わらず可愛らしく、スキルを使わずとも周囲の男どもを魅了していた。

 捜索に加わった半数くらいがこの場所にいた。私とミリア、そして瑞稀社長とSPの警察官が60人くらいに囲まれている。

「お姉様! こんなにも配下の者を引き連れて! サキュバス・クイーンの名はお姉様に献上するなの。お姉様こそ淫魔サキュバスの名を!」

「いや、いらない」

 私は冷静に言い放つ。
 尚人さんがミリアのすぐそばまでやってきた。

「うわあ。かわええ。マジ天使じゃん。オレ惚れちまうわ。春菜さんから乗り換えっかな」

 間髪入れずに、若菜さんからお尻のあたりをつねられた。

「痛っ、痛いって! 若菜、手加減しろって!」

 瑞稀社長とSPは落ち着きがない様子だった。

「ミリアちゃんも見つかったことだし、東京に帰りましょう」
「早くこの場を離れましょう」

 尚人さんはその様子を見て気を使ったのか、仲間に解散を宣言した。

「おっしゃー。お前ら、サンキューな。じゃあ、これで解散!」 

 そのまま一同はばらばらに散っていく。バイクや車が走り出した。
 しばらく経ったが、それでもまだ10人くらいが残っていた。

 そこへ、1人の男性がやってきた。年齢は50歳後半くらいだろうか。スーツを着ていて、少し猫背になりながら、よたよたと歩いていた。

「やべ。あいつ蛭田だ」

 誰かが呟いた。

「蛭田?」
「秩父南署のデカ」
「ほら、友樹が万引きで捕まった時に」
「ああ、あの時の」
「蛭田刑事ね……」
「最近やたら俺等に絡んでくるな」

 近寄ってくるのは刑事だった。
 頬をぼりぼりとかきながら、蛭田刑事が歩いてくる。
 尚人さんの前までやってきて、ぐいっと顔を寄せた。

「通報があってな。ガラの悪い連中がたむろっているって。てめえ等が悪巧みでもしてるんじゃないかと思ってよ」

「悪いことなんか、なんもしてねえよ」

 尚人さんは不満そうに言った。

「まあ、なんでもいいや。おい、上宮尚人だっけか? お前リーダーだったよな。ちょっと署まで顔出せや」

「なんでオレが。行くわけねえだろ」

 尚人さんは断り、立ち去ろうとした。

「お前ら、今日は解散。帰るぞ」

 だが、 蛭田刑事が尚人さんの腕を掴んだ。

「上宮尚人。お前だけ署に連行だ。来い」

「痛えな。離せよ。行かねえって言ったろ」

「なんでもいいんだよ。お前らなんて、叩けば埃なんていくらでも出てくるんだ。バイクの改造だってしてるんだろ? こないだも飲食店で騒いでたって聞いたしな。コップ割ってそのままだったろ。そんなんでもいいんだよ」

「そんな。無茶苦茶な」

「来ねえんなら、テロ等準備罪でもいいし、未成年者略取・誘拐罪でもいい。現行犯逮捕してやろうか?」

 私たちがそばで様子を見ていると、SPの男性が動き出した。

「瑞稀社長、こちらを」

 SPからスマートフォンを渡された瑞稀社長は一言二言話し、その電話を蛭田刑事に渡した。

「ん? なんだ?」

「わたくし、デバイスリンク・テクノロジーズの社長をしております藤井瑞稀と申します。こちらの方があなたに御用があると」

「御用?」

「ええ」

 不審そうな顔をしながら、蛭田刑事は受話部分に耳を当てた。

「誰だ? 俺に用って」

 しばらく先方の話を聞いているようだった。

「本部長?」

 蛭田刑事の顔色が少し変わった。

「埼玉県警本部長? ご、ご本人でいらっしゃいますか? ……はい。はい。……承知いたしました。そうですね、そのようにいたします。ご指摘、ごもっともでございます。はい。大変申し訳ございませんでした」

 蛭田刑事はスマートフォンを手に、深く頭を下げていた。

「ちっ」

 電話を切ると、苦々しい顔で舌打ちをした。

「本部長と知り合いなんて、手が出せねえじゃねえか。胸糞悪い……」

 放り投げるように電話を返した蛭田刑事は、こちらに背を向けて歩き出す。胸元から煙草を取り出し、火をつけた。深く息を吸いすぎたのか、ごほごほとむせていた。
 そのまま乗ってきたパトカーに乗り込み、去っていった。

「うおおおお」
「すげえ、すげえっす」

 残っていた尚人さんの仲間が沸き立った。

「尚人さんの推しは警察の部長さんと知り合いですか?」

「部長って会社で言ったらそこそこのお偉いさんじゃん」

「すげっすね」

 尚人さんは仲間に囃し立てられながら、頭をぼりぼりとかく。
 そして、私と瑞稀社長に軽く頭を下げた。

「部長だから蛭田刑事のすぐ上くれえかな。春菜さん、偉い人と知り合いだったんだな。助かった。ありがとな」

 瑞稀社長は何も言わず、ただ苦笑いをしていた。
 そばにいた若菜さんはぼそっと呟く。

「県警本部長は、埼玉県警のトップだけどな。会社で言ったらグループ会社の社長だろ。埼玉の警察で一番えらい人だぞ。こいつら、馬鹿だから知らないんだろうけどよ」

 その呟きは尚人さんたちには聞こえていないようだった。
 私もてっきり会社の部長くらいに思っていたから、若菜さんは頭がいいのだと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...