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新しいダンジョン
第117話 デバイスの着信音が鳴る
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デバイスから着信音が鳴る。そこには番号の通知がなかった。
「ダンジョンデバイスに着信がありました。非通知ですね。誰からでしょう?」
配信の途中だったが、私は通話ボタンを押した。
「どちら様でしょうか?」
私が問いかけると、野太い声の男性が突然しゃべりだした。
「お前の妹を預かっている。警察にもダンジョンハンターにも連絡はするな」
画面には視聴者からのコメントが流れる。
■なになに? どうしたの?
■なんだか誘拐犯みたいなセリフだね
ライブ配信なので視聴者にも声が聞こえてしまっていた。
「いきなりなんでしょうか? 妹? なんのことですか?」
私には妹などいない。兄弟はお兄ちゃんだけだ。
「どなたかとお間違えでは?」
「お前、春菜だろ?」
相手は私の名前を知っていた。
「すいません。わかるように説明していただけないでしょうか? どうして私の名前を知っているのですか? 妹とは、どういうことでしょうか?」
「だから! てめえの妹を預かったって言ってんだろうが。すぐに身代金を用意しろ。金さえ払えばすぐに妹は返してやる。妹の声を聞きてえんなら聞かせてやるぜ」
男はそう言って誰かに電話を変わったようだ。
すぐに声は聞こえてきた。
「春菜お姉様! 春菜お姉様なの?」
「ミ、ミリア!?」
ミリアの声だった。
「親切な男の人に、お姉様に電話をかけてもらったんだよ」
しかし、電話をひったくるような音が聞こえた。男の声に変わってしまう。
「余計なことは言うんじゃねえ! ほら、こうしてお前の妹は預かっている。大事な妹を傷物にしたくなかったら、すぐに金を用意するんだな。いいか……」
「ちょっと待ってください。その子、私の妹じゃないですよ」
「何を言っている。お姉様と呼んでいただろうが」
「そもそも、なんで私の番号を知っていたのでしょう?」
「それは妹なんだから、知っていて当然……」
そこへ、ミリアが横から電話に口を挟んだ。
「ミリア、覚えていたんだよ。頭いいんだよ」
「ちょ……勝手にしゃべってんじゃねえ!」
ああ、あの時か。私は思い出す。
ダンジョンでミリアが勝手に私のデバイスを持ち出して配信をしたことがあった。その時にデバイスの情報を見て覚えていたんだろう。
「すごい記憶力いいね」
「うん。ほめて、ほめて」
「だから、勝手にしゃべんじゃねえって!」
男の怒鳴り声がうるさくて、耳にキーンとしてしまう。
「じゃあ、ミリア。迎えに行くから、待ってて。そのうるさい男にはスキル使っちゃっていいから」
「ま、まさか……。この小娘……。ダンジョンハンターか!?」
誘拐犯が恐れるのはハンターだ。ハンターだと知っていて誘拐するような馬鹿はいない。まあ、今回はハンター以上に悪い相手だったが。
「いや、違いますね。モンスターです」
「は!?」
男は戸惑っている様子だった。ミリアの明るい声が聞こえてきた。
「じゃあ、春菜お姉様。待ってるね」
まさか、ミリアが誘拐されるなんて思いもしなかった。
今月は残り4万5千ダンジョンポイントしか使えない。
身代金なんてとても払えるわけがなかった。
私は男に告げる。
「犯人さん。あなたには身代金は払えませんし、警察に突き出しますので、震えながら待っていてください」
「…………」
返事がなかった。
「あれ? もう完全魅了済みかな?」
「うん、目がピカピカしているの」
ミリアの無垢な声だけが聞こえてきた。
「じゃあ、そこに行くけれど、場所はわかる? 住所は?」
「住所?」
「ああ、住所がわからないか。何か目印になるものはあるのかな? 今は建物の中?」
「うん」
「窓の外には何が見える?」
「ここは森の中だよ」
森の中か……。手がかりがなさすぎる。
「何が見えているのかな?」
「木と空と鳥と虫」
■なかなかやっかいだね
■俺たちも手伝いたいけれど
■男から聞き出したほうが良かったか
■先に住所を聞かなかったのはまずかったな
■何か手段があるはず
■知恵を絞れ
■みんなで協力してミリアの居場所を探そう
「ダンジョンデバイスに着信がありました。非通知ですね。誰からでしょう?」
配信の途中だったが、私は通話ボタンを押した。
「どちら様でしょうか?」
私が問いかけると、野太い声の男性が突然しゃべりだした。
「お前の妹を預かっている。警察にもダンジョンハンターにも連絡はするな」
画面には視聴者からのコメントが流れる。
■なになに? どうしたの?
■なんだか誘拐犯みたいなセリフだね
ライブ配信なので視聴者にも声が聞こえてしまっていた。
「いきなりなんでしょうか? 妹? なんのことですか?」
私には妹などいない。兄弟はお兄ちゃんだけだ。
「どなたかとお間違えでは?」
「お前、春菜だろ?」
相手は私の名前を知っていた。
「すいません。わかるように説明していただけないでしょうか? どうして私の名前を知っているのですか? 妹とは、どういうことでしょうか?」
「だから! てめえの妹を預かったって言ってんだろうが。すぐに身代金を用意しろ。金さえ払えばすぐに妹は返してやる。妹の声を聞きてえんなら聞かせてやるぜ」
男はそう言って誰かに電話を変わったようだ。
すぐに声は聞こえてきた。
「春菜お姉様! 春菜お姉様なの?」
「ミ、ミリア!?」
ミリアの声だった。
「親切な男の人に、お姉様に電話をかけてもらったんだよ」
しかし、電話をひったくるような音が聞こえた。男の声に変わってしまう。
「余計なことは言うんじゃねえ! ほら、こうしてお前の妹は預かっている。大事な妹を傷物にしたくなかったら、すぐに金を用意するんだな。いいか……」
「ちょっと待ってください。その子、私の妹じゃないですよ」
「何を言っている。お姉様と呼んでいただろうが」
「そもそも、なんで私の番号を知っていたのでしょう?」
「それは妹なんだから、知っていて当然……」
そこへ、ミリアが横から電話に口を挟んだ。
「ミリア、覚えていたんだよ。頭いいんだよ」
「ちょ……勝手にしゃべってんじゃねえ!」
ああ、あの時か。私は思い出す。
ダンジョンでミリアが勝手に私のデバイスを持ち出して配信をしたことがあった。その時にデバイスの情報を見て覚えていたんだろう。
「すごい記憶力いいね」
「うん。ほめて、ほめて」
「だから、勝手にしゃべんじゃねえって!」
男の怒鳴り声がうるさくて、耳にキーンとしてしまう。
「じゃあ、ミリア。迎えに行くから、待ってて。そのうるさい男にはスキル使っちゃっていいから」
「ま、まさか……。この小娘……。ダンジョンハンターか!?」
誘拐犯が恐れるのはハンターだ。ハンターだと知っていて誘拐するような馬鹿はいない。まあ、今回はハンター以上に悪い相手だったが。
「いや、違いますね。モンスターです」
「は!?」
男は戸惑っている様子だった。ミリアの明るい声が聞こえてきた。
「じゃあ、春菜お姉様。待ってるね」
まさか、ミリアが誘拐されるなんて思いもしなかった。
今月は残り4万5千ダンジョンポイントしか使えない。
身代金なんてとても払えるわけがなかった。
私は男に告げる。
「犯人さん。あなたには身代金は払えませんし、警察に突き出しますので、震えながら待っていてください」
「…………」
返事がなかった。
「あれ? もう完全魅了済みかな?」
「うん、目がピカピカしているの」
ミリアの無垢な声だけが聞こえてきた。
「じゃあ、そこに行くけれど、場所はわかる? 住所は?」
「住所?」
「ああ、住所がわからないか。何か目印になるものはあるのかな? 今は建物の中?」
「うん」
「窓の外には何が見える?」
「ここは森の中だよ」
森の中か……。手がかりがなさすぎる。
「何が見えているのかな?」
「木と空と鳥と虫」
■なかなかやっかいだね
■俺たちも手伝いたいけれど
■男から聞き出したほうが良かったか
■先に住所を聞かなかったのはまずかったな
■何か手段があるはず
■知恵を絞れ
■みんなで協力してミリアの居場所を探そう
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