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ダンジョン部の姫
第82話 レベルアップの説明を受ける
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受付の女性はタブレット端末を私に向けながら説明する。
「春菜様のレベルはこちらの数値となります。レベルは60を超えると人外級とも言われます。戦車や戦闘機にも対抗できるほどの戦闘力を有するからです。くれぐれも能力の扱いにはご注意ください」
見せてくれた端末は視聴者にも見えていた。
■レベル71!?
■71だと!?
■ぎゃああああ!!
■俺の2倍以上あるじゃねえか!!
■ハルナっち、化け物級!
■俺の嫁がああ、強くなりすぎいいいぃぃ
■経験多すぎよ、ハルナっち
■未経験のハルナっちはもういない……
■大人になっちまったなあ……
視聴者はわめいていたが、本気でレベル100くらいにはいくんじゃないかと思っていた私は極めて冷静だった。
「お兄ちゃんから、上層で学んで来いって言われてるんです。このレベルで上の階層から探索をしても大丈夫でしょうか?」
受付の女性は少し黙り込む。
「……まったく大丈夫ではありませんね。各階層には適切なレベルというものがございます。モンスターをドロップ品ごと粉砕してしまいますし、他のハンターに危害が及ぶ恐れもあります。春菜様ですと140階層以下が適正階層となります」
「お兄ちゃんに50階層より下は禁止だって言われていて……」
「では、こちらをお使いください。事務局から貸与させていただきます」
受付の女性がタブレットを操作し、私のデバイスにアイテムが転送された。
――――――――――――――――――――――
能力制限の腕輪
(ハンター事務局からの貸与品)
【説明】:
指導者用のアイテム
装備すると各階層に合わせた能力値に制限される
――――――――――――――――――――――
デバイスを操作して実体化すると、私の右腕には細かい装飾が施された腕輪が装着された。
「こちらは初級ハンター育成のために指導教官が使うアイテムとなります。その階層に合わせたレベルよりやや上方に能力値が修正されます。これは一般ハンターを危険にさらさないためと、獲得アイテムを破壊しないために使用します」
「なるほど、便利ですね」
腕輪にはダイヤルがあり、リミット強度を簡単に変更することができる。能力の完全開放も瞬時に行える。
「この腕輪は地上では機能いたしません。くれぐれも、ご注意ください。特に、2階の訓練場などでは……。2階では他者との模擬戦や、ダミーモンスターとの模擬戦闘も行えますが、間違えても本気で戦わないようにしてください」
「わかりました」
私は頷く。
今の私は神王装備もないし、神王スキルも使えない。
装備は革鎧のみで、武器もない。
本気を出すどころか、攻撃手段すら持っていないのだ。
魔法も使えないし。
と、思っていたところに魔法の説明があった。
「それで、最後に魔法とスキルの説明です。通常はレベルアップに伴い、各人の戦闘形態に合わせて、個性が反映された能力を獲得していきます。まずスキルですが、常時発動されるパッシブスキルと、選択的に発動するアクティブスキルがございます」
パッシブスキルは何もしなくても発動するスキルのことだ。
神王装備を身に着けているだけで軽やかに戦うことができたのもパッシブスキルのおかげだった。
アクティブスキルは空間収縮のように、その時だけ選んで使用するスキルだ。連続使用に制限があったり、チャージ時間が1日におよぶほど長いスキルもある。
「魔法は木火土金水をベースにした5つの系統があります。それぞれ、プランツ、フレイム、アース、アクアと呼ばれています」
もりもりさんが使っていたのがアース系の魔法だった。これは土属性だ。
フレイムが火属性で、アクアが水属性、プランツが木属性となる。
そこで私は4つの属性しかないことに気がついた。
「あれ? 『金』属性の魔法はないのですか?」
「ございます。5つ目の属性、それはメタルと呼ばれる属性なのですが……」
受付の女性が見せてくれたタブレット。そこには私の今後習得するであろう魔法系統の予測値が表示されていた。
――――――――――――――――――――――
習得魔法の傾向予測
プランツ:10%
フレイム:15%
アース:12%
アクア:18%
メタル:45%
――――――――――――――――――――――
「へー、私はメタルの魔法を習得することになりそうですね」
魔法の系統は自分で選ぶことはできない。戦っているうちに、自分に合う魔法が決まってくる。
「メタル、すなわち『金』属性の魔法は習得者がおりません。前例がなく、メタル系統の魔法が本当に存在するのかもまだわかっておりません」
「なるほど、そうなのですか」
「初めて魔法が使えるようになるのが、おおよそレベル20から25くらいです。そのころにはどの系統に向いているのかが100%に近い数値で決まってきます。春菜様の場合はいきなり71ですからね。私たちもどうなるのか予測がつかないところでもあります」
「まあ、最初に覚える魔法がなにか、ということなのですね? それで系統が決まると」
「その通りです」
一通りの説明を受け、私はジャパンランキング52位に認定された。ランキングはレベルだけではなく、装備品や魔法、ステータス等を加味した総合的な強さで決まる。
やや低めの順位なのは、貧弱な装備と魔法がまったく使えないためだ。
ランキングは基本的にAIが算出するが、模擬戦などの直接戦闘によっても変動することがある。
レベルに大きな差がなければ、戦略、個人技能、魔法の使い方、アイテムの工夫などで上位のランカーを倒すことは不可能ではない。
私はもりもりさんの戦いを間近で見てきたが、彼女の体捌きはずば抜けたものがあった。魔法やスキルも常に最適解を選んでいたように思えたし、個人的な能力が高い上に戦闘経験が豊富だった。
おそらくお兄ちゃんが私に学んでこいと言ったのはこのことだ。
上層で個人的な能力を高めることと、経験を積むこと。
……。
いやあ……。
でも、それにしても、1ヶ月に使用できるダンジョンポイントが5万DPか……。
少ないよね……?
制限かけ過ぎじゃないの?
お兄ちゃん……。
まあいいか。
とりあえず、レベル71がどんなものなのか。
2階の訓練場へ行ってみることにした。
「春菜様のレベルはこちらの数値となります。レベルは60を超えると人外級とも言われます。戦車や戦闘機にも対抗できるほどの戦闘力を有するからです。くれぐれも能力の扱いにはご注意ください」
見せてくれた端末は視聴者にも見えていた。
■レベル71!?
■71だと!?
■ぎゃああああ!!
■俺の2倍以上あるじゃねえか!!
■ハルナっち、化け物級!
■俺の嫁がああ、強くなりすぎいいいぃぃ
■経験多すぎよ、ハルナっち
■未経験のハルナっちはもういない……
■大人になっちまったなあ……
視聴者はわめいていたが、本気でレベル100くらいにはいくんじゃないかと思っていた私は極めて冷静だった。
「お兄ちゃんから、上層で学んで来いって言われてるんです。このレベルで上の階層から探索をしても大丈夫でしょうか?」
受付の女性は少し黙り込む。
「……まったく大丈夫ではありませんね。各階層には適切なレベルというものがございます。モンスターをドロップ品ごと粉砕してしまいますし、他のハンターに危害が及ぶ恐れもあります。春菜様ですと140階層以下が適正階層となります」
「お兄ちゃんに50階層より下は禁止だって言われていて……」
「では、こちらをお使いください。事務局から貸与させていただきます」
受付の女性がタブレットを操作し、私のデバイスにアイテムが転送された。
――――――――――――――――――――――
能力制限の腕輪
(ハンター事務局からの貸与品)
【説明】:
指導者用のアイテム
装備すると各階層に合わせた能力値に制限される
――――――――――――――――――――――
デバイスを操作して実体化すると、私の右腕には細かい装飾が施された腕輪が装着された。
「こちらは初級ハンター育成のために指導教官が使うアイテムとなります。その階層に合わせたレベルよりやや上方に能力値が修正されます。これは一般ハンターを危険にさらさないためと、獲得アイテムを破壊しないために使用します」
「なるほど、便利ですね」
腕輪にはダイヤルがあり、リミット強度を簡単に変更することができる。能力の完全開放も瞬時に行える。
「この腕輪は地上では機能いたしません。くれぐれも、ご注意ください。特に、2階の訓練場などでは……。2階では他者との模擬戦や、ダミーモンスターとの模擬戦闘も行えますが、間違えても本気で戦わないようにしてください」
「わかりました」
私は頷く。
今の私は神王装備もないし、神王スキルも使えない。
装備は革鎧のみで、武器もない。
本気を出すどころか、攻撃手段すら持っていないのだ。
魔法も使えないし。
と、思っていたところに魔法の説明があった。
「それで、最後に魔法とスキルの説明です。通常はレベルアップに伴い、各人の戦闘形態に合わせて、個性が反映された能力を獲得していきます。まずスキルですが、常時発動されるパッシブスキルと、選択的に発動するアクティブスキルがございます」
パッシブスキルは何もしなくても発動するスキルのことだ。
神王装備を身に着けているだけで軽やかに戦うことができたのもパッシブスキルのおかげだった。
アクティブスキルは空間収縮のように、その時だけ選んで使用するスキルだ。連続使用に制限があったり、チャージ時間が1日におよぶほど長いスキルもある。
「魔法は木火土金水をベースにした5つの系統があります。それぞれ、プランツ、フレイム、アース、アクアと呼ばれています」
もりもりさんが使っていたのがアース系の魔法だった。これは土属性だ。
フレイムが火属性で、アクアが水属性、プランツが木属性となる。
そこで私は4つの属性しかないことに気がついた。
「あれ? 『金』属性の魔法はないのですか?」
「ございます。5つ目の属性、それはメタルと呼ばれる属性なのですが……」
受付の女性が見せてくれたタブレット。そこには私の今後習得するであろう魔法系統の予測値が表示されていた。
――――――――――――――――――――――
習得魔法の傾向予測
プランツ:10%
フレイム:15%
アース:12%
アクア:18%
メタル:45%
――――――――――――――――――――――
「へー、私はメタルの魔法を習得することになりそうですね」
魔法の系統は自分で選ぶことはできない。戦っているうちに、自分に合う魔法が決まってくる。
「メタル、すなわち『金』属性の魔法は習得者がおりません。前例がなく、メタル系統の魔法が本当に存在するのかもまだわかっておりません」
「なるほど、そうなのですか」
「初めて魔法が使えるようになるのが、おおよそレベル20から25くらいです。そのころにはどの系統に向いているのかが100%に近い数値で決まってきます。春菜様の場合はいきなり71ですからね。私たちもどうなるのか予測がつかないところでもあります」
「まあ、最初に覚える魔法がなにか、ということなのですね? それで系統が決まると」
「その通りです」
一通りの説明を受け、私はジャパンランキング52位に認定された。ランキングはレベルだけではなく、装備品や魔法、ステータス等を加味した総合的な強さで決まる。
やや低めの順位なのは、貧弱な装備と魔法がまったく使えないためだ。
ランキングは基本的にAIが算出するが、模擬戦などの直接戦闘によっても変動することがある。
レベルに大きな差がなければ、戦略、個人技能、魔法の使い方、アイテムの工夫などで上位のランカーを倒すことは不可能ではない。
私はもりもりさんの戦いを間近で見てきたが、彼女の体捌きはずば抜けたものがあった。魔法やスキルも常に最適解を選んでいたように思えたし、個人的な能力が高い上に戦闘経験が豊富だった。
おそらくお兄ちゃんが私に学んでこいと言ったのはこのことだ。
上層で個人的な能力を高めることと、経験を積むこと。
……。
いやあ……。
でも、それにしても、1ヶ月に使用できるダンジョンポイントが5万DPか……。
少ないよね……?
制限かけ過ぎじゃないの?
お兄ちゃん……。
まあいいか。
とりあえず、レベル71がどんなものなのか。
2階の訓練場へ行ってみることにした。
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