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ダンジョンからの脱出
第74話 最後の階層主
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リーン、ゴーン、リーン、ゴーン……
鐘が鳴り続けている。
「これは……。モンスターハウスの警告音……」
お兄ちゃんがつぶやく。
「モンスターハウス?」
私の問いかけにはユカリスさんが応えてくれる。
「モンスターが大量に湧く部屋のことじゃ……」
その時、デバイスを見ていたもりもりさんが大きな声を上げた。
「ダンジョン管理協会より連絡事項があります!」
みんなが一斉に自分のデバイスに目を向けた。
――〝A〟の正体が一部判明。実態のない情報体であり悪意を持ったAIだと推測される。〝A〟はダンジョン配信のハッキングを行ったり、ダンジョンの一部をウィルスのように侵食することができる。
同時にデバイスに表示される〝階層主その3〟の出現情報。
――――――――――――――――
名称:220階層(階層主その3)
推定レベル300
推定能力 モンスターハウス(モンスターが大量に湧く)
ドロップアイテム なし
討伐履歴・なし
備考:〝A〟によりハッキングされている
――――――――――――――――
この階層主の特殊能力は『モンスターハウス』。
〝A〟がダンジョンのハッキングを行い、階層全体をモンスターハウスにしてしまったらしい。
「みんな! いそいで上の階へ行くんだ! この〝階層主その3〟は無視しろ!」
お兄ちゃんが全員に号令を出し、私はミリアに声をかける。
「ミリア! ハンターたちを上へ逃がして!」
「わかったよ」
「ギガちゃんも早く逃げるのじゃ」
ユカリスさんにそう言われるが、私がまっさきに逃げ出すわけにはいかない。
「私は最後にする……」
「そうか、わかったのじゃ……」
私の言葉でユカリスさんは察してくれたのだろう。
すべての元凶は私にある。
最後まで見届ける義務があるはずだ。
大勢いたハンターたちは上層へ上がる階段へと向かっている。
「全員を逃がすには時間がかかりすぎる……」
その間にもモンスターはポップし始めていた。
小型のモンスターが多い。
トカゲやワニのような地を這う動物ばかりだ。サソリや蜘蛛もいる。
動きはそれほど早くなく、知能は低い。
「〝A〟がコントロールできるモンスターは知能が低いものだけのようです。1匹や2匹なら私たちでも倒せますが、大量に湧いてしまったら手遅れです。早く逃げましょう」
もりもりさんの分析はおそらく正しいだろう。通常のモンスターであれば私たちは全滅してしまうはずだ。〝A〟がコントロールしているため、弱体化している。しかし、数の多さはやっかいだ。
逃げながら、防御力が高い私とミリアで壁になる。その後ろにお兄ちゃんともりもりさんとユカリスさんが控えている。
2重の壁でタンク役をこなし、モンスターを倒すことよりも避難を優先する。
「220階層の全体が階層主じゃなんて、倒すのは不可能じゃ。逃げるの一択じゃ!」
「早く! 早くしろ!」
「非常事態だから!」
叫び声と怒号の飛び交う中、階段の付近までたどり着いた。後方にはたくさんのモンスターが迫っている。
階段はユカリスさんとミリアを先に登らせる。
「お子様ふたりは先に逃げて!」
ユカリスさんは子供扱いされて頬を膨らまえせていたが、ミリアといっしょに小走りに階段をあがる。5機のドローンは220階層に残っていて、私の頭上を旋回していた。
続いてお兄ちゃんともりもりさんが階段を上がり、最後に私が登ろうとした。
「早く! 早くギガちゃんもこっちへ!」
「あ……!」
がちん、と音がして壁に頭をぶつける。階段を登ろうとするが、横の壁に鎧がこすれる。
「サイズがぎりぎりで……通れない……」
階段を上がるのが難しい。ここへ来るときはみんなに押されて頭から段を滑り降りた。登るときは立ちあがって階段を歩いて登らなければならない。
ところが、それが難しい。
「手を伸ばすのじゃ……。みんなで引き上げるのじゃ……」
私は両手を伸ばし、可能な限り巨体をまっすぐにする。お兄ちゃんともりもりさんが引っ張ってくれる。その後ろでは他のハンターたちも引っ張ってくれているようだ。
私の足をモンスターが噛みついた。ワニだろうか?
1匹が噛みつくと2匹目、3匹目と強い力で引き戻される。
半分くらい上がりかけていた階段を一気にずるすると引きずられた。
「あーーーー!!」
私は悲痛の声を上げる。
お兄ちゃんともりもりさんの手が離れてしまった。
219階層が遠ざかる。
一気に階段を滑っていく。
「ギガちゃーーーーん!」
「ギガちゃーーーーん!」
ユカリスさんとミリアの声。
「春菜さん!」
もりもりさんが飛び出してくる。
「春菜!」
お兄ちゃんもいっしょに私のもとへと階段を降りてきた。
とっくに私の正体がバレていたなんてこの時初めて気がつく。
もりもりさんが「サタンの大鎌」をふるい、ワニの1匹を倒すが、他のモンスターが一斉におそいかかってくる。
とても対処できる数ではない。
三人でモンスターに飲み込まれてしまう。
鐘が鳴り続けている。
「これは……。モンスターハウスの警告音……」
お兄ちゃんがつぶやく。
「モンスターハウス?」
私の問いかけにはユカリスさんが応えてくれる。
「モンスターが大量に湧く部屋のことじゃ……」
その時、デバイスを見ていたもりもりさんが大きな声を上げた。
「ダンジョン管理協会より連絡事項があります!」
みんなが一斉に自分のデバイスに目を向けた。
――〝A〟の正体が一部判明。実態のない情報体であり悪意を持ったAIだと推測される。〝A〟はダンジョン配信のハッキングを行ったり、ダンジョンの一部をウィルスのように侵食することができる。
同時にデバイスに表示される〝階層主その3〟の出現情報。
――――――――――――――――
名称:220階層(階層主その3)
推定レベル300
推定能力 モンスターハウス(モンスターが大量に湧く)
ドロップアイテム なし
討伐履歴・なし
備考:〝A〟によりハッキングされている
――――――――――――――――
この階層主の特殊能力は『モンスターハウス』。
〝A〟がダンジョンのハッキングを行い、階層全体をモンスターハウスにしてしまったらしい。
「みんな! いそいで上の階へ行くんだ! この〝階層主その3〟は無視しろ!」
お兄ちゃんが全員に号令を出し、私はミリアに声をかける。
「ミリア! ハンターたちを上へ逃がして!」
「わかったよ」
「ギガちゃんも早く逃げるのじゃ」
ユカリスさんにそう言われるが、私がまっさきに逃げ出すわけにはいかない。
「私は最後にする……」
「そうか、わかったのじゃ……」
私の言葉でユカリスさんは察してくれたのだろう。
すべての元凶は私にある。
最後まで見届ける義務があるはずだ。
大勢いたハンターたちは上層へ上がる階段へと向かっている。
「全員を逃がすには時間がかかりすぎる……」
その間にもモンスターはポップし始めていた。
小型のモンスターが多い。
トカゲやワニのような地を這う動物ばかりだ。サソリや蜘蛛もいる。
動きはそれほど早くなく、知能は低い。
「〝A〟がコントロールできるモンスターは知能が低いものだけのようです。1匹や2匹なら私たちでも倒せますが、大量に湧いてしまったら手遅れです。早く逃げましょう」
もりもりさんの分析はおそらく正しいだろう。通常のモンスターであれば私たちは全滅してしまうはずだ。〝A〟がコントロールしているため、弱体化している。しかし、数の多さはやっかいだ。
逃げながら、防御力が高い私とミリアで壁になる。その後ろにお兄ちゃんともりもりさんとユカリスさんが控えている。
2重の壁でタンク役をこなし、モンスターを倒すことよりも避難を優先する。
「220階層の全体が階層主じゃなんて、倒すのは不可能じゃ。逃げるの一択じゃ!」
「早く! 早くしろ!」
「非常事態だから!」
叫び声と怒号の飛び交う中、階段の付近までたどり着いた。後方にはたくさんのモンスターが迫っている。
階段はユカリスさんとミリアを先に登らせる。
「お子様ふたりは先に逃げて!」
ユカリスさんは子供扱いされて頬を膨らまえせていたが、ミリアといっしょに小走りに階段をあがる。5機のドローンは220階層に残っていて、私の頭上を旋回していた。
続いてお兄ちゃんともりもりさんが階段を上がり、最後に私が登ろうとした。
「早く! 早くギガちゃんもこっちへ!」
「あ……!」
がちん、と音がして壁に頭をぶつける。階段を登ろうとするが、横の壁に鎧がこすれる。
「サイズがぎりぎりで……通れない……」
階段を上がるのが難しい。ここへ来るときはみんなに押されて頭から段を滑り降りた。登るときは立ちあがって階段を歩いて登らなければならない。
ところが、それが難しい。
「手を伸ばすのじゃ……。みんなで引き上げるのじゃ……」
私は両手を伸ばし、可能な限り巨体をまっすぐにする。お兄ちゃんともりもりさんが引っ張ってくれる。その後ろでは他のハンターたちも引っ張ってくれているようだ。
私の足をモンスターが噛みついた。ワニだろうか?
1匹が噛みつくと2匹目、3匹目と強い力で引き戻される。
半分くらい上がりかけていた階段を一気にずるすると引きずられた。
「あーーーー!!」
私は悲痛の声を上げる。
お兄ちゃんともりもりさんの手が離れてしまった。
219階層が遠ざかる。
一気に階段を滑っていく。
「ギガちゃーーーーん!」
「ギガちゃーーーーん!」
ユカリスさんとミリアの声。
「春菜さん!」
もりもりさんが飛び出してくる。
「春菜!」
お兄ちゃんもいっしょに私のもとへと階段を降りてきた。
とっくに私の正体がバレていたなんてこの時初めて気がつく。
もりもりさんが「サタンの大鎌」をふるい、ワニの1匹を倒すが、他のモンスターが一斉におそいかかってくる。
とても対処できる数ではない。
三人でモンスターに飲み込まれてしまう。
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