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ダンジョンからの脱出
第59話 〝A〟
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のんびりとミリアの元へと歩き出す。
少し距離はあるが、15分も歩けばミリアのところまで行けるだろう。
2倍速の早回しでミリアの配信を見ていく。
最初はのどかな雰囲気の配信だったが、とあるユーザーの発言から流れが変わっていた。
■A:いっちょ前に、人間気取りか?
初めて見るハンドルネーム〝A〟。
すぐに他のコメントに流され、誰も気にしている様子はなかった。だが、〝A〟はしつこくコメントをしてきた。
■A:そのデバイスはお前の物ではない。盗んだのだ
ミリアは視聴者にそそのかされ、調子に乗り、こんなところまで来てしまっていた。盗んだわけではなく、少し借りているだけだとほとんどの視聴者は解釈していた。ミリアを擁護するコメントも多かった。
けれど、ミリアからは笑顔が消えていた。
「ミリア、これを盗んだの?」
■A:デバイスがほしいと思ったんじゃないのか?
■A:自分のものにしたいと思ったんじゃないのか?
■A:筑紫春菜から奪いたいと、少しくらいは思わなかったのか?
「奪いたい?」
ミリアは考え込んでいる。
■A:デバイスがほしい。そう思ったんじゃないのか?
■A:自分でもダンジョン配信がしたい、そう思って持ち出したんじゃないのか?
■A:筑紫春菜を殺して、それを奪えばお前の物にできるんだぞ
■A:人間はモンスターを殺してアイテムを奪う
■A:モンスターも同じだろ?
「ミリア、デバイスがほしいって思った」
声はか細く小さくなっていく。
何かがおかしい。歩く速度をあげながら、続けて動画を見ていく。
いつのまにか他のユーザーからのコメントがなくなっていた。
ミリアと〝A〟だけの会話になっている。
接続者数は1。通常は同時接続者数が1万人を下回ることはない。この配信は〝A〟だけが見ていることになる。こんなことはあり得ないことだった。
■A:やはりな、お前はモンスターだ
「モンスターなの?」
すっかり小さくなった声は掠れて弱々しい。
■A:まだわかってねえのか? 人間にでもなったつもりか? ああん?
■A:攻撃力ももたないくせに
「モンスター? ミリアはモンスターなの?」
■A:筑紫春菜を殺して奪いたいと、ほんの少しでも思わなかったのか? 少しは思ったんじゃないのか?
「少しは……思ったかも……」
■A:お前はモンスターなんだよ。悪意を持ったモンスターなんだ
■A:そして、モンスターは死ぬんだよ。人間に殺されるんだ
■A:ハンターに殺される運命にあるんだ
■A:お前はモンスターだ
■A:悪意を抱いているモンスターだ
――お前はモンスターだ。モンスターは殺すか、殺されるか、だ。
ここまでの映像を見て、もりもりさんはデバイスを操作して現在の映像を映す。画面にはライブ映像が映し出された。今現在の映像だ。画面は暗い。地面だけが映っている。おそらくは下向きになってデバイスが地面に落ちていると思われた。
「春菜さん、急ぎましょう」
「はい」
私ともりもりさんは全力で走り出した。
「配信の管理者なら、他のユーザーを締め出すことができます。〝A〟は管理者なのでしょうか……」
私の問いかけに、もりもりさんは答えない。答えようがない質問だった。
「ミリアは大丈夫でしょうか……」
「何もないといいのですが……」
少し距離はあるが、15分も歩けばミリアのところまで行けるだろう。
2倍速の早回しでミリアの配信を見ていく。
最初はのどかな雰囲気の配信だったが、とあるユーザーの発言から流れが変わっていた。
■A:いっちょ前に、人間気取りか?
初めて見るハンドルネーム〝A〟。
すぐに他のコメントに流され、誰も気にしている様子はなかった。だが、〝A〟はしつこくコメントをしてきた。
■A:そのデバイスはお前の物ではない。盗んだのだ
ミリアは視聴者にそそのかされ、調子に乗り、こんなところまで来てしまっていた。盗んだわけではなく、少し借りているだけだとほとんどの視聴者は解釈していた。ミリアを擁護するコメントも多かった。
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■A:筑紫春菜から奪いたいと、少しくらいは思わなかったのか?
「奪いたい?」
ミリアは考え込んでいる。
■A:デバイスがほしい。そう思ったんじゃないのか?
■A:自分でもダンジョン配信がしたい、そう思って持ち出したんじゃないのか?
■A:筑紫春菜を殺して、それを奪えばお前の物にできるんだぞ
■A:人間はモンスターを殺してアイテムを奪う
■A:モンスターも同じだろ?
「ミリア、デバイスがほしいって思った」
声はか細く小さくなっていく。
何かがおかしい。歩く速度をあげながら、続けて動画を見ていく。
いつのまにか他のユーザーからのコメントがなくなっていた。
ミリアと〝A〟だけの会話になっている。
接続者数は1。通常は同時接続者数が1万人を下回ることはない。この配信は〝A〟だけが見ていることになる。こんなことはあり得ないことだった。
■A:やはりな、お前はモンスターだ
「モンスターなの?」
すっかり小さくなった声は掠れて弱々しい。
■A:まだわかってねえのか? 人間にでもなったつもりか? ああん?
■A:攻撃力ももたないくせに
「モンスター? ミリアはモンスターなの?」
■A:筑紫春菜を殺して奪いたいと、ほんの少しでも思わなかったのか? 少しは思ったんじゃないのか?
「少しは……思ったかも……」
■A:お前はモンスターなんだよ。悪意を持ったモンスターなんだ
■A:そして、モンスターは死ぬんだよ。人間に殺されるんだ
■A:ハンターに殺される運命にあるんだ
■A:お前はモンスターだ
■A:悪意を抱いているモンスターだ
――お前はモンスターだ。モンスターは殺すか、殺されるか、だ。
ここまでの映像を見て、もりもりさんはデバイスを操作して現在の映像を映す。画面にはライブ映像が映し出された。今現在の映像だ。画面は暗い。地面だけが映っている。おそらくは下向きになってデバイスが地面に落ちていると思われた。
「春菜さん、急ぎましょう」
「はい」
私ともりもりさんは全力で走り出した。
「配信の管理者なら、他のユーザーを締め出すことができます。〝A〟は管理者なのでしょうか……」
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「ミリアは大丈夫でしょうか……」
「何もないといいのですが……」
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