上 下
57 / 165
ダンジョンからの脱出

第57話 パーティ

しおりを挟む
 途中、何度か苦戦した。
 レベル差が大きい場合はミリアだけでも対応ができる。
 しかし、この階層にはミリアが押さえきれない敵も存在し、もりもりさんの魔法による拘束も駆使しながら、なんとか私の神王の長剣で倒してきた。

「本当にミリアがいてよかった」

 私がミリアの頭をぽんぽんと叩くと、照れたような表情を浮かべた。
 無邪気そうなほほ笑みで見上げてくる。

「殺しておこうとか言って、ごめん」

「いいの。ミリア、役に立ててよかったよ」

「なんか、パーティみたいだね。私たち」

「パーティ?」

「ダンジョンに潜る時に仲間で行くことだよ」

「じゃあ、ミリアは仲間?」

「仲間だよ。もちろん」

「うれしいかも」

 私はすでに獲得していたアイテムの中から、回復ポーションを実体化する。

「ミリア、ちょっと顔を見せて」

 ん、と言いながらミリアはこちらに顔を近づける。
 目がぱっちりとしていて頬はぷっくらとしている。可愛らしい顔には無数の傷と、そこから流れでた血の跡があった。

「ちょっと痛いかも。しみたらごめん」

 私はミリアの顔に回復ポーションを少しずつ垂らす。固まって黒くなりかけていた血を、軽くこすって落としていく。

 ミリアは目をつぶりながら私の手を受け入れる。

「痛く、は、ない」

 ミリアは棒立ちになり、されるがままになっている。私はなるべくいいポーションを選んで使っていた。地上に持ち込んだら10万円も20万円もしそうな高価なものだったが、もりもりさんも何も言わず私の選択を了承してくれている。

「すぐは治らないのかな?」

 もりもりさんに顔を向けると、

「たいした傷じゃないので、数分もあれば消えると思いますよ」

 もりもりさんはもりもりさんで、自分のポーションを実体化していた。同じようにミリアの腕と脚にかけていった。固まった血を洗い流しながら、傷を消していく。

「ありがと」

 ミリアは恥ずかしそうに私たちの行為を受け入れた。

「ハルナお姉様、もりもりお姉様、おかげで、きれいになったよ。もっと、役に立つよ」

 まったく悪意のない顔で言うものだから、私は思わず胸の中にぎゅっと抱きしめてしまった。

「……むぐ……」

 顔を潰してしまい、ミリアは苦しそうにもがく。

「あ、ごめん。鎧で抱きしめたから、痛かったかも」

「だいじょぶ」

 ミリアの頬には鎧の形にあとが付いてしまっていた。ごめん、ミリア。

「ミリアに悪意がないことは視聴者たちが一番わかっていたのかもね」

■ほのぼの
■憩いの時間
■しばしの休息ですね
■最初はあきらかに警戒していたものな
■ダークなハルナっちになりかけていた
■俺達は知っていた。ミリアたんは天使だということを
■3人だと立派なパーティだね
■俺は3人とも応援するよ
■おいらはもりもりさん派。
■いや、絶対ハルナっちでしょ
■ミリアたんでしょう
■みんな、応援するよ! 3人共!
■3人でがんばれー
■でも、モンスターの階層間移動は不可能。ミリアたんは218階層から出られない
■ミリアたんはモンスターじゃないから!
■そう! 天使だから! 出られるに違いない!
■残念ながら、無理だと思うけれど……

 ミリアは私のダンジョンデバイスを覗き込む。

「この中に男の人がいっぱいいるの?」

「画面の向こう側だよ。地上にいるの」

「10人くらい?」

「もっとだよ」

「100人?」

「今はチャンネル登録者数が90万人くらいかな」

「きゅ、90万!?」

 ミリアはとても驚いていた。

「ハルナお姉様。お姉様はサキュバス!? サキュバスなの!?」

「いや、サキュバスじゃないよ。このダンジョンデバイスでダンジョン配信をしているの」

「ほう」

 わかったような、わからないようなミリアの顔。絶対、わかっていないと思うけれど。

「最初は数人だったんだけどね。応援してくれる人が増えていったの」

「つまり、ミリアも、そのダンジョンデバイスさえあれば。人気者。に、なれる。と。ふむ……」

 私はミリアから隠すように自分の背後にデバイスを持っていく。

「だめだよ。あげないからね」

「ちょっとだけ思ったよ。ミリアなら、ハルナお姉様より、もりもりお姉様より、人気者になれるかもって」

「でも、ミリアはデバイス持っていないしね。配信はできないよ」

「ミリアの完全魅了パーフェクト・チャームより、すごい能力だよ。配信……。すごい、よ……。この気持ちは、いったい?」

 ミリアは天井を見上げ、目玉をぐるぐると回す。

「嫉妬? でしょうか?」

 それにはもりもりさんが答えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編】追放した仲間が行方不明!?

mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。 ※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!

電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。 しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。 「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」 朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。 そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる! ――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。 そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。 二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。 だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。 バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。 ※他サイトでも掲載しています

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...