お兄ちゃんの装備でダンジョン配信 ~レベル1なのに迷宮の最下層へ。勝手に持ち出した装備は84億円!? 最強装備の初心者が動画をバズらせる~

高瀬ユキカズ

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ダンジョンからの脱出

第57話 パーティ

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 途中、何度か苦戦した。
 レベル差が大きい場合はミリアだけでも対応ができる。
 しかし、この階層にはミリアが押さえきれない敵も存在し、もりもりさんの魔法による拘束も駆使しながら、なんとか私の神王の長剣で倒してきた。

「本当にミリアがいてよかった」

 私がミリアの頭をぽんぽんと叩くと、照れたような表情を浮かべた。
 無邪気そうなほほ笑みで見上げてくる。

「殺しておこうとか言って、ごめん」

「いいの。ミリア、役に立ててよかったよ」

「なんか、パーティみたいだね。私たち」

「パーティ?」

「ダンジョンに潜る時に仲間で行くことだよ」

「じゃあ、ミリアは仲間?」

「仲間だよ。もちろん」

「うれしいかも」

 私はすでに獲得していたアイテムの中から、回復ポーションを実体化する。

「ミリア、ちょっと顔を見せて」

 ん、と言いながらミリアはこちらに顔を近づける。
 目がぱっちりとしていて頬はぷっくらとしている。可愛らしい顔には無数の傷と、そこから流れでた血の跡があった。

「ちょっと痛いかも。しみたらごめん」

 私はミリアの顔に回復ポーションを少しずつ垂らす。固まって黒くなりかけていた血を、軽くこすって落としていく。

 ミリアは目をつぶりながら私の手を受け入れる。

「痛く、は、ない」

 ミリアは棒立ちになり、されるがままになっている。私はなるべくいいポーションを選んで使っていた。地上に持ち込んだら10万円も20万円もしそうな高価なものだったが、もりもりさんも何も言わず私の選択を了承してくれている。

「すぐは治らないのかな?」

 もりもりさんに顔を向けると、

「たいした傷じゃないので、数分もあれば消えると思いますよ」

 もりもりさんはもりもりさんで、自分のポーションを実体化していた。同じようにミリアの腕と脚にかけていった。固まった血を洗い流しながら、傷を消していく。

「ありがと」

 ミリアは恥ずかしそうに私たちの行為を受け入れた。

「ハルナお姉様、もりもりお姉様、おかげで、きれいになったよ。もっと、役に立つよ」

 まったく悪意のない顔で言うものだから、私は思わず胸の中にぎゅっと抱きしめてしまった。

「……むぐ……」

 顔を潰してしまい、ミリアは苦しそうにもがく。

「あ、ごめん。鎧で抱きしめたから、痛かったかも」

「だいじょぶ」

 ミリアの頬には鎧の形にあとが付いてしまっていた。ごめん、ミリア。

「ミリアに悪意がないことは視聴者たちが一番わかっていたのかもね」

■ほのぼの
■憩いの時間
■しばしの休息ですね
■最初はあきらかに警戒していたものな
■ダークなハルナっちになりかけていた
■俺達は知っていた。ミリアたんは天使だということを
■3人だと立派なパーティだね
■俺は3人とも応援するよ
■おいらはもりもりさん派。
■いや、絶対ハルナっちでしょ
■ミリアたんでしょう
■みんな、応援するよ! 3人共!
■3人でがんばれー
■でも、モンスターの階層間移動は不可能。ミリアたんは218階層から出られない
■ミリアたんはモンスターじゃないから!
■そう! 天使だから! 出られるに違いない!
■残念ながら、無理だと思うけれど……

 ミリアは私のダンジョンデバイスを覗き込む。

「この中に男の人がいっぱいいるの?」

「画面の向こう側だよ。地上にいるの」

「10人くらい?」

「もっとだよ」

「100人?」

「今はチャンネル登録者数が90万人くらいかな」

「きゅ、90万!?」

 ミリアはとても驚いていた。

「ハルナお姉様。お姉様はサキュバス!? サキュバスなの!?」

「いや、サキュバスじゃないよ。このダンジョンデバイスでダンジョン配信をしているの」

「ほう」

 わかったような、わからないようなミリアの顔。絶対、わかっていないと思うけれど。

「最初は数人だったんだけどね。応援してくれる人が増えていったの」

「つまり、ミリアも、そのダンジョンデバイスさえあれば。人気者。に、なれる。と。ふむ……」

 私はミリアから隠すように自分の背後にデバイスを持っていく。

「だめだよ。あげないからね」

「ちょっとだけ思ったよ。ミリアなら、ハルナお姉様より、もりもりお姉様より、人気者になれるかもって」

「でも、ミリアはデバイス持っていないしね。配信はできないよ」

「ミリアの完全魅了パーフェクト・チャームより、すごい能力だよ。配信……。すごい、よ……。この気持ちは、いったい?」

 ミリアは天井を見上げ、目玉をぐるぐると回す。

「嫉妬? でしょうか?」

 それにはもりもりさんが答えていた。
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