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ダンジョンからの脱出
第54話 本当になんでもする
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ダンジョンデバイス越しに視聴者を操れる能力を持つ、驚異的なミリア。
「ミリアね。本当になんでもするよ。だって、命を助けてくれたんだもん」
「まだ助けるとは言っていないんだけどな……」
ミリアは助けてもらうことを前提として会話を進めてくる。
■ミリアたん。いいよ、君はなにもしなくても。
■そうだよ。そこにいてくれるだけでいいんだ。
■天使は存在するだけで天使なんだよ。
■君を見ているだけで、僕は幸せなんだ
完全魅了の能力すら使わずに、ミリアは視聴者を魅了していた。
視聴者が全員魅了されているわけでもなく、全員が馬鹿なわけではない。一部の視聴者がこうしてコメントをしているだけだ。
「ユーザーのブロックってできるんでしたっけ?」
「できますけれど、きりがないですよ?」
もりもりさんは冷静に撮影を続けている。とりあえずミリアに危害を加えられることはないようだし、周辺に他のモンスターはいなかった。
ミリアは私たちの後をついてくるが、気にせずこれまで通りダンジョンを歩いていく。
「ねえ、全身金色の、金ピカ鎧のお姉さん?」
ミリアは体をくねくねとさせながら、私にすり寄ってくる。
「ん?」
「お姉さんのお名前は? なんて呼んだらいいの?」
「私は筑紫春菜だけれど……」
「じゃあ、ハルナお姉様」
今度は私からもりもりさんのほうへと顔を向ける。
「そっちの、モデルのような体系をした美人さんは? お名前は?」
「私? ハンドルネームはもりもりですけれど……」
「じゃあ、もりもりお姉様」
ミリアは両手をグーの形に丸め、顔の下へと持っていった。男性が可愛いと感じるようなぶりっ子をしている。もりもりさんはさり気なく、カメラの画角から外していた。
「ハルナお姉様、もりもりお姉様。どうか、ミリアを下僕として扱って。犬と呼んでいいし、ミリアはなんでもすると言ったら、なんでもするんだよ」
「何でもすると言われても……。困りますね……。私たちはこの階層のモンスターを倒したいだけで」
もりもりさんは困った顔をした。
私がミリアに説明する。
「レベルを上げることは期待できないから、アイテムを集めるのが目的。対抗できるだけのアイテムを集めて、220階層の階層主に挑みたいんだよ。あなたにかまっている暇はなくて、モンスターを倒したいんだけれど」
私の言葉を聞くと、ミリアは目を大きく開き、花が開いたような笑顔を見せる。
「それなら! ミリアは役に立てるよ! ミリア、そういうの、得意なの! だって、ミリアはこの階層に長くいるんだから! 道も全部覚えているよ。モンスターたちのこともよく知っているよ! 案内するよ!」
「道なら、このもりもりさんが魔法でこの階層を作り変えちゃったんだよね。あなたのことを追い詰めながら、1匹ずつモンスターを対処できるように隔離していったから」
「あなたがよく知る218階層とは別物になっていますね……」
「つまり、ミリアは私たちの役に立たないかな……。残念ながら……」
私が腰のあたりに手をやったのを剣を抜くのかと勘違いしたようで、ミリアは少し慌てる。
「ちょ、ちょっと待って。待ってよ、お姉様方! そう! ミリアには、この鼻! 鼻があるんだよ、でございます、です、のよ!」
ミリアは敬語を上手く使えないのか、語尾がはちゃめちゃになっていた。
自分の鼻を指さしながら、懸命に訴えかけてくる。
「鼻?」
「そうなの! ミリアは犬なの。そう、犬なんです、よ! 犬にならせていただきます、とも! モンスターの匂いをたどり、かならずやお姉様方のお役に立つんだよ、させていただきます、とも!」
おかしな言葉になりながら、ミリアは這いつくばり地面をクンクンと嗅ぎ出した。
もりもりさんはさりげなく、デバイスを目線の高さまで持ち上げる。撮影エリアからは完全にミリアが消えていただろう。
四つん這いになり、地面に残る匂いを犬のように嗅ぎ回るミリアの姿は視聴者には見えていない。
「こっち! こっちに無敵の兎の匂いがするよ! 私に着いてきて! モンスターのところまで案内するよ!」
もし褒めたなら、きっとミリアは「ワン!」と吠えたはずだ。
「えっとね、ミリア。私たちはダンジョンデバイスという道具を持っていて、モンスターの居場所なら全部わかるの」
「!?」
「アップグレードされましたから、かなり詳細な情報も表示されますしね」
「!?!?」
ミリアは涙目だ。
「ミリアね。本当になんでもするよ。だって、命を助けてくれたんだもん」
「まだ助けるとは言っていないんだけどな……」
ミリアは助けてもらうことを前提として会話を進めてくる。
■ミリアたん。いいよ、君はなにもしなくても。
■そうだよ。そこにいてくれるだけでいいんだ。
■天使は存在するだけで天使なんだよ。
■君を見ているだけで、僕は幸せなんだ
完全魅了の能力すら使わずに、ミリアは視聴者を魅了していた。
視聴者が全員魅了されているわけでもなく、全員が馬鹿なわけではない。一部の視聴者がこうしてコメントをしているだけだ。
「ユーザーのブロックってできるんでしたっけ?」
「できますけれど、きりがないですよ?」
もりもりさんは冷静に撮影を続けている。とりあえずミリアに危害を加えられることはないようだし、周辺に他のモンスターはいなかった。
ミリアは私たちの後をついてくるが、気にせずこれまで通りダンジョンを歩いていく。
「ねえ、全身金色の、金ピカ鎧のお姉さん?」
ミリアは体をくねくねとさせながら、私にすり寄ってくる。
「ん?」
「お姉さんのお名前は? なんて呼んだらいいの?」
「私は筑紫春菜だけれど……」
「じゃあ、ハルナお姉様」
今度は私からもりもりさんのほうへと顔を向ける。
「そっちの、モデルのような体系をした美人さんは? お名前は?」
「私? ハンドルネームはもりもりですけれど……」
「じゃあ、もりもりお姉様」
ミリアは両手をグーの形に丸め、顔の下へと持っていった。男性が可愛いと感じるようなぶりっ子をしている。もりもりさんはさり気なく、カメラの画角から外していた。
「ハルナお姉様、もりもりお姉様。どうか、ミリアを下僕として扱って。犬と呼んでいいし、ミリアはなんでもすると言ったら、なんでもするんだよ」
「何でもすると言われても……。困りますね……。私たちはこの階層のモンスターを倒したいだけで」
もりもりさんは困った顔をした。
私がミリアに説明する。
「レベルを上げることは期待できないから、アイテムを集めるのが目的。対抗できるだけのアイテムを集めて、220階層の階層主に挑みたいんだよ。あなたにかまっている暇はなくて、モンスターを倒したいんだけれど」
私の言葉を聞くと、ミリアは目を大きく開き、花が開いたような笑顔を見せる。
「それなら! ミリアは役に立てるよ! ミリア、そういうの、得意なの! だって、ミリアはこの階層に長くいるんだから! 道も全部覚えているよ。モンスターたちのこともよく知っているよ! 案内するよ!」
「道なら、このもりもりさんが魔法でこの階層を作り変えちゃったんだよね。あなたのことを追い詰めながら、1匹ずつモンスターを対処できるように隔離していったから」
「あなたがよく知る218階層とは別物になっていますね……」
「つまり、ミリアは私たちの役に立たないかな……。残念ながら……」
私が腰のあたりに手をやったのを剣を抜くのかと勘違いしたようで、ミリアは少し慌てる。
「ちょ、ちょっと待って。待ってよ、お姉様方! そう! ミリアには、この鼻! 鼻があるんだよ、でございます、です、のよ!」
ミリアは敬語を上手く使えないのか、語尾がはちゃめちゃになっていた。
自分の鼻を指さしながら、懸命に訴えかけてくる。
「鼻?」
「そうなの! ミリアは犬なの。そう、犬なんです、よ! 犬にならせていただきます、とも! モンスターの匂いをたどり、かならずやお姉様方のお役に立つんだよ、させていただきます、とも!」
おかしな言葉になりながら、ミリアは這いつくばり地面をクンクンと嗅ぎ出した。
もりもりさんはさりげなく、デバイスを目線の高さまで持ち上げる。撮影エリアからは完全にミリアが消えていただろう。
四つん這いになり、地面に残る匂いを犬のように嗅ぎ回るミリアの姿は視聴者には見えていない。
「こっち! こっちに無敵の兎の匂いがするよ! 私に着いてきて! モンスターのところまで案内するよ!」
もし褒めたなら、きっとミリアは「ワン!」と吠えたはずだ。
「えっとね、ミリア。私たちはダンジョンデバイスという道具を持っていて、モンスターの居場所なら全部わかるの」
「!?」
「アップグレードされましたから、かなり詳細な情報も表示されますしね」
「!?!?」
ミリアは涙目だ。
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