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ダンジョンからの脱出
第52話 懇願するミリア
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とりあえず、言葉以外は無害だと判断した私たちはミリアを倒すことはしないでおいた。というよりも、殺すに殺せなかった。
「ミリア、なんでもするよ。助けてくれるなら、なんでもする。どんなことでもするよ。あんなことでも、こんなことでも、なんでもするよ」
相変わらず、上目遣いで舌っ足らず。アニメ調のかわいらしい口調でしゃべってくる。本気で殺されてしまいそうに思っているのか、悲しげな顔はそのままだ。
■駄目だよ、女の子がなんでもするなんて言ったら
■ミリアたんはそのままでいいんだよ。何もしなくていいんだよ
■ミリアたんにひどいことしたら、おいら、許さないぞ
■ああ、そばに行って抱きしめてあげたい、守ってあげたい
■あんなこと? ミリアたんのあんなことってなんだろう?
■そりゃ、決まってるでしょ。でも、ミリアたんにそんなことはさせられないよ
■ああ、ミリアたんにしてもらいたい。あんなことや、こんなことを……
全身フリルのピンクのワンピース。
ダンジョンに似つかわしくない姿のミリアは相変わらず地面の上に女の子ずわりだ。
「もりもりさん、どうしましょうね」
「とりあえず、無視して他のモンスターを倒しましょうか?」
「そうですね、スルーがよさそうです」
私たちの言葉に、ミリアはぴくりと反応した?
「無視!? スルー!? 嬉しいけど、嬉しくないよ! ミリア、絶対に役に立つよ。命を助けてくれるのは、それは嬉しいけれど、無視とかスルーは悲しいよ。だから、なんでもするよ。ミリアはなんでもするよ。なんでもするんだよ」
私は明後日の方向へ顔を向け、歩き出した。
「行きましょうか」
もりもりさんも撮影しているダンジョンデバイスを持ちながら、後ろをついてくる。
「そうですね」
ところが、ミリアは立ち上がり、私たちの後ろをとてとてと歩いて追ってきた。
「待ってよー。ミリアを置いてかないでよー。ミリア、絶対に、役に立つんだからー」
本人は走っているつもりのようだが、内股にスカートが脚に絡みつき、思うように速度が出ていない。
もりもりさんが振り向きながらダンジョンデバイスをミリアに向けた。
「私たちとしては、ミリアさんが無害だということがわかればいいのですが」
「無害? 無害ってどういうこと?」
ミリアはもりもりさんに訊ねる。相変わらずの可愛らしい顔、可愛らしい口調。
「そうですね……。例えば、あなたの攻撃力が本当に低いのかどうか、とか」
ダンジョンデバイスの解析によると、ミリアのレベルは172だ。
これは私たちが遭遇したモンスターの中でも最高レベルだった。
一番恐れるのは、なんらかの能力を隠しているのではないかということだった。
ミリアがもりもりさんの疑問に応える。
「ミリアはね。攻撃はできないの。ミリアの能力はね、男の人を誘惑することだけなの。ミリアは誘惑しているつもりはないのだけれど、男の人はみんなミリアのことを好きになっちゃうみたい。それでね、ミリアのことを好きになった人がモンスターを倒すとね、ミリアのレベルが上がるんだ。それでね、ミリアはレベルがあがったみたいなの。ほら、今も……」
ダンジョンデバイスに表示されていたミリアのレベルが172から173に変わる。どういうことだ?
「もりもりさん、もしかして……」
「ええ、これはかなりまずいのでは?」
私はもりもりさんと顔を合わせる。
ところが、ミリアはにこりとほほえみを返す。
「大丈夫だよ。次のレベルの174までは経験値が32兆5000億くらい必要だから。なんか、ミリア、よくわかんないうちに、16万人くらいの男の人を魅了しちゃったみたいだけど、みんな少ししか経験値をくれないから、簡単にはレベルが上がらないよ。だから、大丈夫だよ」
チャンネル登録者数は90万人に迫っていたが、全員が見ているわけではない。
現在の同時接続者数は20万人ほど。その8割が男性だと仮定したら16万人。
つまり、ミリアはダンジョンデバイスを通してサキュバスの能力を使っていたのだ。
「やっぱり、殺しておきますか? もりもりさん」
「そうですね。ちょっと危険です。この子」
私が長剣をミリアの目の前に突きつけ、もりもりさんがそれを撮影している。
とても非情な光景ではあるが、16万人の経験値を吸い上げているミリアをそのままにしておくほうがとんでもなく危ないのかもしれなかった。
「ひえー! ちょっと、待って! 殺さないで! ミリア、悪いことしないから! なんでも言うこと聞くし、なんでもするから! お願い、命だけは! 助けて!」
またもや女の子ずわりで地面にぺたんとしゃがみ込み、胸の前で手を組んで祈るように懇願してくる。
「お願いだからーーー」
「ミリア、なんでもするよ。助けてくれるなら、なんでもする。どんなことでもするよ。あんなことでも、こんなことでも、なんでもするよ」
相変わらず、上目遣いで舌っ足らず。アニメ調のかわいらしい口調でしゃべってくる。本気で殺されてしまいそうに思っているのか、悲しげな顔はそのままだ。
■駄目だよ、女の子がなんでもするなんて言ったら
■ミリアたんはそのままでいいんだよ。何もしなくていいんだよ
■ミリアたんにひどいことしたら、おいら、許さないぞ
■ああ、そばに行って抱きしめてあげたい、守ってあげたい
■あんなこと? ミリアたんのあんなことってなんだろう?
■そりゃ、決まってるでしょ。でも、ミリアたんにそんなことはさせられないよ
■ああ、ミリアたんにしてもらいたい。あんなことや、こんなことを……
全身フリルのピンクのワンピース。
ダンジョンに似つかわしくない姿のミリアは相変わらず地面の上に女の子ずわりだ。
「もりもりさん、どうしましょうね」
「とりあえず、無視して他のモンスターを倒しましょうか?」
「そうですね、スルーがよさそうです」
私たちの言葉に、ミリアはぴくりと反応した?
「無視!? スルー!? 嬉しいけど、嬉しくないよ! ミリア、絶対に役に立つよ。命を助けてくれるのは、それは嬉しいけれど、無視とかスルーは悲しいよ。だから、なんでもするよ。ミリアはなんでもするよ。なんでもするんだよ」
私は明後日の方向へ顔を向け、歩き出した。
「行きましょうか」
もりもりさんも撮影しているダンジョンデバイスを持ちながら、後ろをついてくる。
「そうですね」
ところが、ミリアは立ち上がり、私たちの後ろをとてとてと歩いて追ってきた。
「待ってよー。ミリアを置いてかないでよー。ミリア、絶対に、役に立つんだからー」
本人は走っているつもりのようだが、内股にスカートが脚に絡みつき、思うように速度が出ていない。
もりもりさんが振り向きながらダンジョンデバイスをミリアに向けた。
「私たちとしては、ミリアさんが無害だということがわかればいいのですが」
「無害? 無害ってどういうこと?」
ミリアはもりもりさんに訊ねる。相変わらずの可愛らしい顔、可愛らしい口調。
「そうですね……。例えば、あなたの攻撃力が本当に低いのかどうか、とか」
ダンジョンデバイスの解析によると、ミリアのレベルは172だ。
これは私たちが遭遇したモンスターの中でも最高レベルだった。
一番恐れるのは、なんらかの能力を隠しているのではないかということだった。
ミリアがもりもりさんの疑問に応える。
「ミリアはね。攻撃はできないの。ミリアの能力はね、男の人を誘惑することだけなの。ミリアは誘惑しているつもりはないのだけれど、男の人はみんなミリアのことを好きになっちゃうみたい。それでね、ミリアのことを好きになった人がモンスターを倒すとね、ミリアのレベルが上がるんだ。それでね、ミリアはレベルがあがったみたいなの。ほら、今も……」
ダンジョンデバイスに表示されていたミリアのレベルが172から173に変わる。どういうことだ?
「もりもりさん、もしかして……」
「ええ、これはかなりまずいのでは?」
私はもりもりさんと顔を合わせる。
ところが、ミリアはにこりとほほえみを返す。
「大丈夫だよ。次のレベルの174までは経験値が32兆5000億くらい必要だから。なんか、ミリア、よくわかんないうちに、16万人くらいの男の人を魅了しちゃったみたいだけど、みんな少ししか経験値をくれないから、簡単にはレベルが上がらないよ。だから、大丈夫だよ」
チャンネル登録者数は90万人に迫っていたが、全員が見ているわけではない。
現在の同時接続者数は20万人ほど。その8割が男性だと仮定したら16万人。
つまり、ミリアはダンジョンデバイスを通してサキュバスの能力を使っていたのだ。
「やっぱり、殺しておきますか? もりもりさん」
「そうですね。ちょっと危険です。この子」
私が長剣をミリアの目の前に突きつけ、もりもりさんがそれを撮影している。
とても非情な光景ではあるが、16万人の経験値を吸い上げているミリアをそのままにしておくほうがとんでもなく危ないのかもしれなかった。
「ひえー! ちょっと、待って! 殺さないで! ミリア、悪いことしないから! なんでも言うこと聞くし、なんでもするから! お願い、命だけは! 助けて!」
またもや女の子ずわりで地面にぺたんとしゃがみ込み、胸の前で手を組んで祈るように懇願してくる。
「お願いだからーーー」
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