お兄ちゃんの装備でダンジョン配信 ~勝手に持ち出した装備は84億円でした。レベル1なのに迷宮の最下層で動画をバズらせます~

高瀬ユキカズ

文字の大きさ
上 下
16 / 241
フレイムドラゴン討伐編

第16話 こんなの聞いてません

しおりを挟む
 チャンネル登録者数 50万! 突破!
 閲覧者数 150万! 突破!

 なんですか、これは! このバズり方は!

 コメントの流れが超高速。まったく読むことができない。怒涛の勢いでテキストが流れている。いや、もう、文字であることの判別ができない。

 スパチャ、スパチャ、スパチャの嵐。
 チャリーン、チャリーン、チャリーンという通知音が鳴り止まない。いつまでも続く。

 私のダンジョンポイントは100万、200万、300万と、とんでもない勢いで増えていく。あっという間に800万DP。これは日本円と等価だから、800万円を稼いだことになる。
 まあ、地上の事務局に戻らないと換金できないのだけれど。

■なんじゃこりゃああああ
■ほ、ほんとに倒したのか!?
■倒せるとは思ってなかった!
■いや、俺はハルナっちを信じてた
■やればできる子
■俺の娘にしてやる
■いや、俺の嫁
■ちょっと待て、みんなの嫁だ【1000DP】
■え、そもそも階層主って、レイドを組んで団体で倒すものじゃないの?
■ワールドクラスプレイヤーを中心に、メンバーを募って報酬も別に出したり
■ボスって、1週間くらいかけて倒すものでしょ?
■どらごーーん! もっと見たかったーーー
■あああ、哀れなフレイムドラゴンよ
■ハルナっちが強すぎた!
■コスプレなんて言ってゴメン!【500DP】
■え、フェイク? フェイクなんだよね?
■フェイクじゃねえよ!
■神王装備は?
■まじものだった! え、筑紫冬夜の妹?
■ハルナっちいいいいい、結婚してくれえええええ【777DP】
■あああ、もう駄目だあああ 俺のハルナが……俺の手の届かないところへーーー
■速報 215層踏破 215層踏破 人類の到達域が大幅に更新【215DP】
■え いままでの165層ってどうなん?
■LV2が216層へ…… LV87のミランダ・モリスは涙目……
■216層へ行くん?
■いや、上に戻るでしょ
■早く戻っておいで【10DP】
■そうだ、レベル上げしよ
■とりあえず、地上に戻ってきてね♥
■経験値は?
■とんでもなさそう → ドラゴンの経験値&ドロップアイテム
■お祭り! お祭り!
■うひゃあああ
■ほわああああいいいい

 コメント欄はまさに大荒れといった状態だった。未発見だったドラゴン種。それを私はみんなの力を借りて倒すことができた。
 とはいえ、倒すと言うよりも罠にはめたと言ったほうが正確だろう。

 絶対に倒せないと思っていたフレイムドラゴン・ロード。
 倒すために全精力を注ぎ、ライブ配信のチャンネル登録者数や閲覧者数なんてどうでもいいものかと思っていたが、そうではなかった。
 今も数値が上がり続けてる。

チャンネル登録者数 50万1275、50万1282、50万1291……
閲覧者数 150万1250、150万1258、150万1263……

 数値は飛び飛びに増えていく。見たことのないような上がり方だ。

 そうか。
 応援してくれる人が増えるって、こんなに嬉しいことだったんだ。
 配信の向こうではたくさんの人が応援してくれている。
 私一人の力で達成したのではない。
 みんなのおかげだ。

 みんなの助けがあったから、倒すことができた。
 そして、フレイムドラゴン・ロードを倒す目的。
 このダンジョンからの脱出だ。

「それで、上にあがるための階段は?」

 私は満面の笑みのまま、なんとなく呟いた。
 少し、コメントの増加が鈍くなる。

■階層主を倒した場合、どこかに扉が出現するはず
■扉は倒したモンスターのすぐ横にあることが多いよ

「215層はマグマの海ですが?」

 私は高い場所からドラゴンの死体を見下ろしている。
 マグマの中では、ぐつぐつと煮え立つように泡が上がっている。
 灼熱のマグマは真っ赤に熱せられていた。

■……

 あれだけ噴いていたコメントがぴたりと止まった。
 え、嘘でしょ。
 誰か、なにか言ってよ。

 え? なに?
 悪い予感しかしない。

 しばらくコメント欄には何も書き込まれない。
 ダンジョンデバイスが壊れたかと思って、拳でこんこんと叩く。
 何も反応がない。

 少し待つと、ぽつぽつとコメントが入ってきた。

■誰か教えてやれよ
■やばいよね
■面白すぎる

 なんだか、不穏な空気。

「まさか……、……また……この……、パターン……?」

 呆れたような声が漏れてしまった。

■死亡確定
■え? どういこと?
■だから、教えてやれって!
■やだよ、恨まれたくない
■おまえが教えろよ!

 やっとのことで真相を語る視聴者。

■だ、大丈夫。その扉は5分間は消えない
■制限時間あるんだ
■知らなかった(笑)

「…………」

 私は口をポッカリと開けてしまった。

「マグマが引く気配、ないんですけど……」

■誰だ、この作戦考えたやつ
■半分くらいはハルナっち
■俺の案も少し採用してもらえた
■帰ってきたら謝る 土下座する
■帰還アイテムとかあるんじゃなかったっけ? UR(ウルトラレア)だけど。
■大丈夫、次の階層主を倒せば帰れる さあ、下へ

「うわああああ」

 頭を抱えて天を仰ぐ。
 ダンジョンの摂理は残酷だ。
 フレイムドラゴン・ロードが逆らえなかったように、私も逆らえない。

 上層へ登る扉。それは階層主を倒すと現れる。一度でもその扉を通れば、扉が固定される。ずっとそこにあり続ける。

 そこを通らなければ……
 一定時間が経過すると……
 消える……

 なんで、そんな仕組みなんだああああ!

 いや、まだ方法はある。
 扉はすぐ上の階層へ戻れるということだけではない。地上のすぐ近くまで戻れることもあるから、さらに下にいるであろう次の階層主を倒せば……
 って……。
 まじ?

 あるいは、フレイムドラゴン・ロードの復活を待つ。

 ダンジョン管理協会によると、数ヶ月、あるいは数年で復活するんじゃないか、とのこと。なんという無責任な発言。まあ、未確認情報なので仕方ないけれど。

■ほ、ほら……シューターには制限時間はないからさ……下へは行けるんだし……
■えっと、ドラゴン倒したら100万スパチャするって言ったけど、保留していい?
■と、とりあえず、下へ降りようか…… あ、まだ無理か……
■マグマが引かないとね……
■今はまだ、上も下も行けないね……
■上はもう無理

「ぐわあああああああああああああああああああああああああああ」

 私はフレイムドラゴン・ロードの三百倍の大きさで断末魔を上げた。
 頭を抱えて天を見上げる。まあ、岩の天井しか見えない。

 結局、マグマが引くのに7日もかかり、あやうく飢え死にしかけた。
 なんとか新しいモンスターがポップしてくれて、食料と水を確保することができた。

 私は216層へのシューターを探し出し、その中へと飛び込むしかなかった……。

 チャンネル登録者数……50万……。

 24時間、ライブ配信中です……
 まだ配信は続きます……


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

怖いからと婚約破棄されました。後悔してももう遅い!

秋鷺 照
ファンタジー
ローゼは第3王子フレッドの幼馴染で婚約者。しかし、「怖いから」という理由で婚約破棄されてしまう。

処理中です...