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フレイムドラゴン討伐編
第16話 こんなの聞いてません
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チャンネル登録者数 50万! 突破!
閲覧者数 150万! 突破!
なんですか、これは! このバズり方は!
コメントの流れが超高速。まったく読むことができない。怒涛の勢いでテキストが流れている。いや、もう、文字であることの判別ができない。
スパチャ、スパチャ、スパチャの嵐。
チャリーン、チャリーン、チャリーンという通知音が鳴り止まない。いつまでも続く。
私のダンジョンポイントは100万、200万、300万と、とんでもない勢いで増えていく。あっという間に800万DP。これは日本円と等価だから、800万円を稼いだことになる。
まあ、地上の事務局に戻らないと換金できないのだけれど。
■なんじゃこりゃああああ
■ほ、ほんとに倒したのか!?
■倒せるとは思ってなかった!
■いや、俺はハルナっちを信じてた
■やればできる子
■俺の娘にしてやる
■いや、俺の嫁
■ちょっと待て、みんなの嫁だ【1000DP】
■え、そもそも階層主って、レイドを組んで団体で倒すものじゃないの?
■ワールドクラスプレイヤーを中心に、メンバーを募って報酬も別に出したり
■ボスって、1週間くらいかけて倒すものでしょ?
■どらごーーん! もっと見たかったーーー
■あああ、哀れなフレイムドラゴンよ
■ハルナっちが強すぎた!
■コスプレなんて言ってゴメン!【500DP】
■え、フェイク? フェイクなんだよね?
■フェイクじゃねえよ!
■神王装備は?
■まじものだった! え、筑紫冬夜の妹?
■ハルナっちいいいいい、結婚してくれえええええ【777DP】
■あああ、もう駄目だあああ 俺のハルナが……俺の手の届かないところへーーー
■速報 215層踏破 215層踏破 人類の到達域が大幅に更新【215DP】
■え いままでの165層ってどうなん?
■LV2が216層へ…… LV87のミランダ・モリスは涙目……
■216層へ行くん?
■いや、上に戻るでしょ
■早く戻っておいで【10DP】
■そうだ、レベル上げしよ
■とりあえず、地上に戻ってきてね♥
■経験値は?
■とんでもなさそう → ドラゴンの経験値&ドロップアイテム
■お祭り! お祭り!
■うひゃあああ
■ほわああああいいいい
コメント欄はまさに大荒れといった状態だった。未発見だったドラゴン種。それを私はみんなの力を借りて倒すことができた。
とはいえ、倒すと言うよりも罠にはめたと言ったほうが正確だろう。
絶対に倒せないと思っていたフレイムドラゴン・ロード。
倒すために全精力を注ぎ、ライブ配信のチャンネル登録者数や閲覧者数なんてどうでもいいものかと思っていたが、そうではなかった。
今も数値が上がり続けてる。
チャンネル登録者数 50万1275、50万1282、50万1291……
閲覧者数 150万1250、150万1258、150万1263……
数値は飛び飛びに増えていく。見たことのないような上がり方だ。
そうか。
応援してくれる人が増えるって、こんなに嬉しいことだったんだ。
配信の向こうではたくさんの人が応援してくれている。
私一人の力で達成したのではない。
みんなのおかげだ。
みんなの助けがあったから、倒すことができた。
そして、フレイムドラゴン・ロードを倒す目的。
このダンジョンからの脱出だ。
「それで、上にあがるための階段は?」
私は満面の笑みのまま、なんとなく呟いた。
少し、コメントの増加が鈍くなる。
■階層主を倒した場合、どこかに扉が出現するはず
■扉は倒したモンスターのすぐ横にあることが多いよ
「215層はマグマの海ですが?」
私は高い場所からドラゴンの死体を見下ろしている。
マグマの中では、ぐつぐつと煮え立つように泡が上がっている。
灼熱のマグマは真っ赤に熱せられていた。
■……
あれだけ噴いていたコメントがぴたりと止まった。
え、嘘でしょ。
誰か、なにか言ってよ。
え? なに?
悪い予感しかしない。
しばらくコメント欄には何も書き込まれない。
ダンジョンデバイスが壊れたかと思って、拳でこんこんと叩く。
何も反応がない。
少し待つと、ぽつぽつとコメントが入ってきた。
■誰か教えてやれよ
■やばいよね
■面白すぎる
なんだか、不穏な空気。
「まさか……、……また……この……、パターン……?」
呆れたような声が漏れてしまった。
■死亡確定
■え? どういこと?
■だから、教えてやれって!
■やだよ、恨まれたくない
■おまえが教えろよ!
やっとのことで真相を語る視聴者。
■だ、大丈夫。その扉は5分間は消えない
■制限時間あるんだ
■知らなかった(笑)
「…………」
私は口をポッカリと開けてしまった。
「マグマが引く気配、ないんですけど……」
■誰だ、この作戦考えたやつ
■半分くらいはハルナっち
■俺の案も少し採用してもらえた
■帰ってきたら謝る 土下座する
■帰還アイテムとかあるんじゃなかったっけ? UR(ウルトラレア)だけど。
■大丈夫、次の階層主を倒せば帰れる さあ、下へ
「うわああああ」
頭を抱えて天を仰ぐ。
ダンジョンの摂理は残酷だ。
フレイムドラゴン・ロードが逆らえなかったように、私も逆らえない。
上層へ登る扉。それは階層主を倒すと現れる。一度でもその扉を通れば、扉が固定される。ずっとそこにあり続ける。
そこを通らなければ……
一定時間が経過すると……
消える……
なんで、そんな仕組みなんだああああ!
いや、まだ方法はある。
扉はすぐ上の階層へ戻れるということだけではない。地上のすぐ近くまで戻れることもあるから、さらに下にいるであろう次の階層主を倒せば……
って……。
まじ?
あるいは、フレイムドラゴン・ロードの復活を待つ。
ダンジョン管理協会によると、数ヶ月、あるいは数年で復活するんじゃないか、とのこと。なんという無責任な発言。まあ、未確認情報なので仕方ないけれど。
■ほ、ほら……シューターには制限時間はないからさ……下へは行けるんだし……
■えっと、ドラゴン倒したら100万スパチャするって言ったけど、保留していい?
■と、とりあえず、下へ降りようか…… あ、まだ無理か……
■マグマが引かないとね……
■今はまだ、上も下も行けないね……
■上はもう無理
「ぐわあああああああああああああああああああああああああああ」
私はフレイムドラゴン・ロードの三百倍の大きさで断末魔を上げた。
頭を抱えて天を見上げる。まあ、岩の天井しか見えない。
結局、マグマが引くのに7日もかかり、あやうく飢え死にしかけた。
なんとか新しいモンスターがポップしてくれて、食料と水を確保することができた。
私は216層へのシューターを探し出し、その中へと飛び込むしかなかった……。
チャンネル登録者数……50万……。
24時間、ライブ配信中です……
まだ配信は続きます……
閲覧者数 150万! 突破!
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■あああ、哀れなフレイムドラゴンよ
■ハルナっちが強すぎた!
■コスプレなんて言ってゴメン!【500DP】
■え、フェイク? フェイクなんだよね?
■フェイクじゃねえよ!
■神王装備は?
■まじものだった! え、筑紫冬夜の妹?
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■あああ、もう駄目だあああ 俺のハルナが……俺の手の届かないところへーーー
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■え いままでの165層ってどうなん?
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■216層へ行くん?
■いや、上に戻るでしょ
■早く戻っておいで【10DP】
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■とりあえず、地上に戻ってきてね♥
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マグマの中では、ぐつぐつと煮え立つように泡が上がっている。
灼熱のマグマは真っ赤に熱せられていた。
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ダンジョン管理協会によると、数ヶ月、あるいは数年で復活するんじゃないか、とのこと。なんという無責任な発言。まあ、未確認情報なので仕方ないけれど。
■ほ、ほら……シューターには制限時間はないからさ……下へは行けるんだし……
■えっと、ドラゴン倒したら100万スパチャするって言ったけど、保留していい?
■と、とりあえず、下へ降りようか…… あ、まだ無理か……
■マグマが引かないとね……
■今はまだ、上も下も行けないね……
■上はもう無理
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私はフレイムドラゴン・ロードの三百倍の大きさで断末魔を上げた。
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