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フレイムドラゴン討伐編
第6話 レベルアップする? もちろんです!
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私はとにかくがむしゃらに逃げた。
はあはあと息を切らせながら、人生でこれほど心臓を酷使したことはないだろうというくらいに走っていた。
まちがいなく、モンスターたちは私を標的に定めている。当然フレームドラゴン・ロードの怒りも買っており、それは今も続く地響きから伝わってくる。
天井から、ぱらぱらと小石が落ちてくる。
フレイムドラゴン・ロードが『さっさとこっちに来い、やつざきにしてやる』と苛立っている姿が目に浮かぶ。
「早く、なんとかレベルアップをしたいんですけれど……」
モンスターを倒したことで経験値は得ていた。けれどレベルアップをするにはダンジョンデバイスの操作が必要だった。
十分にレベルアップできるだけの経験値は貯まっているはずだ。
■経験値はいくつになってますか?
コメント欄が目に入った。
「162,231です」
私は答えた。
■すげ
■212層やば
■一撃で経験値十万オーバーって……
■俺なら半年かかる
「あ、1,622,231でした」
■は
■桁まちがえんじゃねえ
■なに言ってんの このコ
■ひ、百万超え!?
■あはは
■ジャパンランク入りすんじゃ?
■すごすぎ 驚異的な数字
「レベルアップってどうやるんですかね」
私はもたもたしながら、ダンジョンデバイスを操作する。
レベルアップをすることで各ステータスを割り振ることができる。そのことは事前に知ってはいたのだが、肝心のレベルアップについては知らなかった。
レベルアップ用のアプリでもあるのだろうか?
■やばいよね
■死亡確定
■面白すぎる
■誰か教えてやれよ
■やだよ、恨まれたくない
なんだか、コメント欄が不穏な空気を醸し出す。読み切れないほどに溢れていたコメントが一気に冷え込むように少なくなった。
「えっと、どなたでもいいので。レベルアップの方法を教えていただけたらと……」
私の発言に、コメント欄がぴたっと止まった。
しばらく誰からのコメントが付かなかったが、ひさしぶりに見た懐かしい名前からのコメントが入った。
もりもりさんだ。
■もりもり:事務局……です
「事務局?」
ハンター事務局のことだろうか。
1層をあがった地上にある、ハンターを統括管理しているあの事務局?
そこで、私は気がつく。
ハンター事務局まで戻るってことは……。
はあ……。
私はその場にへたり込んでしまった。
ダンジョンから出ないとレベルアップできないってこと?
え、無理じゃん。
詰んでるじゃん。
どうすんの? これ……。
■もりもり:まあ、他の手段がないわけではないですが……
「ほ、他の手段!?」
私はダンジョンデバイスに食いつくようにかじりついた。
画面には私の顔がアップで映る。
■もりもり:あ、いえ……あの……。たぶん無理です
「なんでもいいので教えて下さい!」
私は叫びながら目を見開く。
見えないはずのもりもりさんの顔がひるんでいるように感じた。
わずかに遅れて、もりもりさんからのコメントが返ってくる。
■もりもり:レベルが低い人がレベルの高いモンスターを倒した時、レアアイテムがドロップしやすいそうです
「アイテム?」
そういえば、私はモンスターを倒したのだ。
■もりもり:獲得アイテムはダンジョンデバイスが自動的に電子データ化します。マナ因子を解析してeMANAと呼ばれる情報体に変換するんですね。ドロップアイテムがデバイスの中に入っているはずですよ。
私はダンジョンデバイスを操作する。
討伐したモンスターの履歴が残っていた。
倒したモンスターは5体。
そこにあったドロップアイテム
――――――――――――――――――――――
『EXRレベルアップシード』
――――――――――――――――――――――
■うおおおおおお
■出たー!!
■EXR! はじめて見た!
■ぎやあああ
■祭りだ 祭りだ!
■くれー 俺にくれー
■ぬおおお
■はちゃげえええ!!
■ほみゃみゃにゃああ!!!!
突然にコメント欄が勢いよく噴いた。わけのわからないことを叫ぶ人までいる。
そもそもEXRっていったいなんなのだ?
私はここに来て、特定の視聴者のコメントを固定する機能に気がついた。もりもりさんを固定にする。
■もりもり:EXRはエクストラ・レア。めったに出ないアイテムに事務局がつけている称号です。
「これってどういうアイテムなんでしょうか?」
その答えには、しばらくもりもりさんは無言だった。少しの間を空けて教えてくれた。
■もりもり:デバイスで確認できます……
なんだかテンションの低さが伝わってきた。
私はデバイスを操作してアイテムの効果を確認する。
――――――――――――――――――――――
【レベルアップシード】
効果:使用者のレベルを1上げる
――――――――――――――――――――――
思わず目を見開く。
「うわああああ!」
私は喜びのあまり、叫んでしまった。
「みなさん、私、レベルアップできます! できるんですよおお!!」
とんでもない嬉しさに、視聴者に向かって夢中になって手を振る。
ところが、コメント欄の反応は私の思いとは真逆だった。
■やめろおおお!!
■レベルが1しか上がらねえんだぞ!
■使うなああー!
■EXRだろ! はやまるんじゃねえ!
■やめてくれー おねがいだー
■うわああああ
■使わないよなあ 使わないと言ってくれえ
■のおおお
■Don't Use!
■ボケ! あほ!
■N’utilisez pas(なんだかよくわからない外国の言葉、使うなという意味らしい)
その時、長文のコメントが入った。
■俺が説明してやる! EXRアイテムである『レベルアップシード』。
これは本来、レベルを上げることが困難になった高レベルプレイヤーこそが使うべきものだ!
現在の最高レベルはワールドクラスプレイヤー・世界ランク1位ミランダ・モリスのLV87。彼女が次のレベルに上がるのは3年後だと言われている。
そしてレベルアップシードのドロップは今回が2回目。
1個目のレベルアップシードは当局が管理下においていて、市場には出ていない。
仮に市場に出ていたら、その相場は1,000億円とも2,000億円とも言われている。
そしてお前はLV1だ。LV2になるには、どのくらいの時間が必要だと思う? ヘボい装備だと3日はかかるだろうな。でもそれなりに装備を固めてサポートもつけば、1時間もかからないぞ。つまり、お前はそれを……
この直後、またもやコメント欄が噴いていた。理由は私の行動だった。
■ぐわあああ!!
■こいつ、こいつ!
■使いやがったー あほなのかー!
■こ、ここまで馬鹿な子だったとは……
■Noooooo!!
■がっでえむ!
■貴重な! 貴重なEXRがああああ
LV2になったことはステータス開示により、すべての視聴者に知られてしまっていた。
最高の笑顔で、画面に向かって手を振る。
「さて、みなさーん。筑紫春菜はレベルが2になりましたー。では、これから本格的に、対策を考えようと思いまーす。あ、チャンネル登録ありがとうございます。つーか、チャンネル登録、ほんとにお願いしますねー。では、がんばってダンジョンを攻略していきますよー。ドラゴンを倒しますよー」
レベルアップシードを使ったためだろうか、ついに私の配信がバズり始めた。
はあはあと息を切らせながら、人生でこれほど心臓を酷使したことはないだろうというくらいに走っていた。
まちがいなく、モンスターたちは私を標的に定めている。当然フレームドラゴン・ロードの怒りも買っており、それは今も続く地響きから伝わってくる。
天井から、ぱらぱらと小石が落ちてくる。
フレイムドラゴン・ロードが『さっさとこっちに来い、やつざきにしてやる』と苛立っている姿が目に浮かぶ。
「早く、なんとかレベルアップをしたいんですけれど……」
モンスターを倒したことで経験値は得ていた。けれどレベルアップをするにはダンジョンデバイスの操作が必要だった。
十分にレベルアップできるだけの経験値は貯まっているはずだ。
■経験値はいくつになってますか?
コメント欄が目に入った。
「162,231です」
私は答えた。
■すげ
■212層やば
■一撃で経験値十万オーバーって……
■俺なら半年かかる
「あ、1,622,231でした」
■は
■桁まちがえんじゃねえ
■なに言ってんの このコ
■ひ、百万超え!?
■あはは
■ジャパンランク入りすんじゃ?
■すごすぎ 驚異的な数字
「レベルアップってどうやるんですかね」
私はもたもたしながら、ダンジョンデバイスを操作する。
レベルアップをすることで各ステータスを割り振ることができる。そのことは事前に知ってはいたのだが、肝心のレベルアップについては知らなかった。
レベルアップ用のアプリでもあるのだろうか?
■やばいよね
■死亡確定
■面白すぎる
■誰か教えてやれよ
■やだよ、恨まれたくない
なんだか、コメント欄が不穏な空気を醸し出す。読み切れないほどに溢れていたコメントが一気に冷え込むように少なくなった。
「えっと、どなたでもいいので。レベルアップの方法を教えていただけたらと……」
私の発言に、コメント欄がぴたっと止まった。
しばらく誰からのコメントが付かなかったが、ひさしぶりに見た懐かしい名前からのコメントが入った。
もりもりさんだ。
■もりもり:事務局……です
「事務局?」
ハンター事務局のことだろうか。
1層をあがった地上にある、ハンターを統括管理しているあの事務局?
そこで、私は気がつく。
ハンター事務局まで戻るってことは……。
はあ……。
私はその場にへたり込んでしまった。
ダンジョンから出ないとレベルアップできないってこと?
え、無理じゃん。
詰んでるじゃん。
どうすんの? これ……。
■もりもり:まあ、他の手段がないわけではないですが……
「ほ、他の手段!?」
私はダンジョンデバイスに食いつくようにかじりついた。
画面には私の顔がアップで映る。
■もりもり:あ、いえ……あの……。たぶん無理です
「なんでもいいので教えて下さい!」
私は叫びながら目を見開く。
見えないはずのもりもりさんの顔がひるんでいるように感じた。
わずかに遅れて、もりもりさんからのコメントが返ってくる。
■もりもり:レベルが低い人がレベルの高いモンスターを倒した時、レアアイテムがドロップしやすいそうです
「アイテム?」
そういえば、私はモンスターを倒したのだ。
■もりもり:獲得アイテムはダンジョンデバイスが自動的に電子データ化します。マナ因子を解析してeMANAと呼ばれる情報体に変換するんですね。ドロップアイテムがデバイスの中に入っているはずですよ。
私はダンジョンデバイスを操作する。
討伐したモンスターの履歴が残っていた。
倒したモンスターは5体。
そこにあったドロップアイテム
――――――――――――――――――――――
『EXRレベルアップシード』
――――――――――――――――――――――
■うおおおおおお
■出たー!!
■EXR! はじめて見た!
■ぎやあああ
■祭りだ 祭りだ!
■くれー 俺にくれー
■ぬおおお
■はちゃげえええ!!
■ほみゃみゃにゃああ!!!!
突然にコメント欄が勢いよく噴いた。わけのわからないことを叫ぶ人までいる。
そもそもEXRっていったいなんなのだ?
私はここに来て、特定の視聴者のコメントを固定する機能に気がついた。もりもりさんを固定にする。
■もりもり:EXRはエクストラ・レア。めったに出ないアイテムに事務局がつけている称号です。
「これってどういうアイテムなんでしょうか?」
その答えには、しばらくもりもりさんは無言だった。少しの間を空けて教えてくれた。
■もりもり:デバイスで確認できます……
なんだかテンションの低さが伝わってきた。
私はデバイスを操作してアイテムの効果を確認する。
――――――――――――――――――――――
【レベルアップシード】
効果:使用者のレベルを1上げる
――――――――――――――――――――――
思わず目を見開く。
「うわああああ!」
私は喜びのあまり、叫んでしまった。
「みなさん、私、レベルアップできます! できるんですよおお!!」
とんでもない嬉しさに、視聴者に向かって夢中になって手を振る。
ところが、コメント欄の反応は私の思いとは真逆だった。
■やめろおおお!!
■レベルが1しか上がらねえんだぞ!
■使うなああー!
■EXRだろ! はやまるんじゃねえ!
■やめてくれー おねがいだー
■うわああああ
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■のおおお
■Don't Use!
■ボケ! あほ!
■N’utilisez pas(なんだかよくわからない外国の言葉、使うなという意味らしい)
その時、長文のコメントが入った。
■俺が説明してやる! EXRアイテムである『レベルアップシード』。
これは本来、レベルを上げることが困難になった高レベルプレイヤーこそが使うべきものだ!
現在の最高レベルはワールドクラスプレイヤー・世界ランク1位ミランダ・モリスのLV87。彼女が次のレベルに上がるのは3年後だと言われている。
そしてレベルアップシードのドロップは今回が2回目。
1個目のレベルアップシードは当局が管理下においていて、市場には出ていない。
仮に市場に出ていたら、その相場は1,000億円とも2,000億円とも言われている。
そしてお前はLV1だ。LV2になるには、どのくらいの時間が必要だと思う? ヘボい装備だと3日はかかるだろうな。でもそれなりに装備を固めてサポートもつけば、1時間もかからないぞ。つまり、お前はそれを……
この直後、またもやコメント欄が噴いていた。理由は私の行動だった。
■ぐわあああ!!
■こいつ、こいつ!
■使いやがったー あほなのかー!
■こ、ここまで馬鹿な子だったとは……
■Noooooo!!
■がっでえむ!
■貴重な! 貴重なEXRがああああ
LV2になったことはステータス開示により、すべての視聴者に知られてしまっていた。
最高の笑顔で、画面に向かって手を振る。
「さて、みなさーん。筑紫春菜はレベルが2になりましたー。では、これから本格的に、対策を考えようと思いまーす。あ、チャンネル登録ありがとうございます。つーか、チャンネル登録、ほんとにお願いしますねー。では、がんばってダンジョンを攻略していきますよー。ドラゴンを倒しますよー」
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