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第1話 俺は異世界に行けると固く信じている
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さて、俺が勉強した成果をそろそろ発揮しようと思う。
せっせと買い集めた小説から得た情報だ。世間には異世界へ行って冒険する小説があまた溢れている。それによると異世界へ行くにはいくつかの方法があるらしい。
最もオーソドックスな方法がトラックに轢かれるってやつだ。トラックに轢かれて、ぐしゃりとつぶされ、脳髄を撒き散らしながら死ぬ。すると、どういうわけか異世界へ行くことができるらしい。
しかしこの方法の欠点は、「痛い」ことだ。なにせトラックに生身でぶつからなきゃいけない。しかも死に損なうと後遺症が残ったまま現世で生き続けることになる。そうなったら最悪だ。
それ以前にトラックに飛び込むなんて行為、これがそもそも無理だ。歩道からびゅんびゅん車が行き交う車道へ向かって飛び出す? 無理無理、俺のようなヘタレに実行できるわけがない。
つまりトラックに轢かれる、この方法は却下だ。
次に挙げるのは、いつのまにか異世界に行っているパターンだ。なんかVRMMOとかいうジャンルのゲームがあるらしい。仮想体験型の冒険ゲームのようだ。一般的なのはヘッドセットを装着するとゲームの世界に入り込み、まるでその世界の住人になったかのように遊べる。そしてそのゲームの世界がいつの間にか異世界になっていたってやつだ。これは簡単お手軽でおすすめだ。
だが、この方法にも欠点がある。このVRMMOのゲームがどこにも売っていないのだ。ヘッドセットも手に入らなかった。ゲームショップの店員にも聞いてみたが扱っていないそうだ。Amazonでも検索してみた。だが、売っていない。Amazonで売っていないということは売り切れなのだろうか。簡単な方法であるがゆえに、みんなこの方法に飛びつくのだろう。俺は今すぐに異世界へ行きたい。VRMMOゲームを予約しようかと考えたが、時間がかかりそうなので別の方法を探すことにした。残念ながらこの方法も却下だ。
他にどんな方法があるだろうか。都会の雑踏の中、歩きスマホならぬ歩き読書で俺は歩いている。本を読みながら人混みをかき分ける。
バイト先へ向かっているわけだが、往復の道は歩き読書で勉強に励んでいる。手元の本をかばんへしまい、何か良い資料がないか別の本を求めてかばんを漁った。取り出したのは「ニート転生」、「毒蜘蛛に転生したら、自分の毒で死にましたがなにか?」の二冊。歩きながら器用に二冊を同時に読み進める。
これらの本はさんざん読んで手垢で真っ黒になっている。新しい情報は得られなかった。この二冊をかばんにしまいながら、たくさんの本の中から、真新しい本を見つけた。「問題児たちが異世界へ招待されるそうですよ?」か、これは読んでいなかった。ページをぺらぺらと捲ってみる。歩きながら斜め読みで読み進めてみる。お、この方法いいな。異世界から招待状を受け取ればいいのか。よしこれで行こう。でもどうやって招待状を受け取るんだ?
信号が赤に変わった。気が付かずに足を踏み出していた。
横断歩道を渡る。
「危ない!」
背後で誰かが叫んだ。きききいいいぃぃぃとスキール音が鳴る。
うるさいなと思いながら顔を上げる。目の前にトラックが迫っていた。
一瞬、自分の身に何が起こっているのか理解できなかった。
スローモーションのようにトラックが眼前に迫る。俺は固まって動けないでいた。
そして、ぐしゃり。そんな音を聞いた気がした。
強烈な痛みが襲ったあと、視界が真っ暗になった。
痛みは数秒間続いた。苦痛のあまり呻き声を上げたつもりだったが、声にならなかった。
わずかな時間が経過した。
突然に痛みの感覚が消えた。それと同時にすべての感覚も遮断された。
痛みもない。視界もない。匂いもない。何も聞こえない。もちろん苦痛も苦悩もない。幸福感だったり、至福感だったりもない。何もない。
「無」が訪れた。
せっせと買い集めた小説から得た情報だ。世間には異世界へ行って冒険する小説があまた溢れている。それによると異世界へ行くにはいくつかの方法があるらしい。
最もオーソドックスな方法がトラックに轢かれるってやつだ。トラックに轢かれて、ぐしゃりとつぶされ、脳髄を撒き散らしながら死ぬ。すると、どういうわけか異世界へ行くことができるらしい。
しかしこの方法の欠点は、「痛い」ことだ。なにせトラックに生身でぶつからなきゃいけない。しかも死に損なうと後遺症が残ったまま現世で生き続けることになる。そうなったら最悪だ。
それ以前にトラックに飛び込むなんて行為、これがそもそも無理だ。歩道からびゅんびゅん車が行き交う車道へ向かって飛び出す? 無理無理、俺のようなヘタレに実行できるわけがない。
つまりトラックに轢かれる、この方法は却下だ。
次に挙げるのは、いつのまにか異世界に行っているパターンだ。なんかVRMMOとかいうジャンルのゲームがあるらしい。仮想体験型の冒険ゲームのようだ。一般的なのはヘッドセットを装着するとゲームの世界に入り込み、まるでその世界の住人になったかのように遊べる。そしてそのゲームの世界がいつの間にか異世界になっていたってやつだ。これは簡単お手軽でおすすめだ。
だが、この方法にも欠点がある。このVRMMOのゲームがどこにも売っていないのだ。ヘッドセットも手に入らなかった。ゲームショップの店員にも聞いてみたが扱っていないそうだ。Amazonでも検索してみた。だが、売っていない。Amazonで売っていないということは売り切れなのだろうか。簡単な方法であるがゆえに、みんなこの方法に飛びつくのだろう。俺は今すぐに異世界へ行きたい。VRMMOゲームを予約しようかと考えたが、時間がかかりそうなので別の方法を探すことにした。残念ながらこの方法も却下だ。
他にどんな方法があるだろうか。都会の雑踏の中、歩きスマホならぬ歩き読書で俺は歩いている。本を読みながら人混みをかき分ける。
バイト先へ向かっているわけだが、往復の道は歩き読書で勉強に励んでいる。手元の本をかばんへしまい、何か良い資料がないか別の本を求めてかばんを漁った。取り出したのは「ニート転生」、「毒蜘蛛に転生したら、自分の毒で死にましたがなにか?」の二冊。歩きながら器用に二冊を同時に読み進める。
これらの本はさんざん読んで手垢で真っ黒になっている。新しい情報は得られなかった。この二冊をかばんにしまいながら、たくさんの本の中から、真新しい本を見つけた。「問題児たちが異世界へ招待されるそうですよ?」か、これは読んでいなかった。ページをぺらぺらと捲ってみる。歩きながら斜め読みで読み進めてみる。お、この方法いいな。異世界から招待状を受け取ればいいのか。よしこれで行こう。でもどうやって招待状を受け取るんだ?
信号が赤に変わった。気が付かずに足を踏み出していた。
横断歩道を渡る。
「危ない!」
背後で誰かが叫んだ。きききいいいぃぃぃとスキール音が鳴る。
うるさいなと思いながら顔を上げる。目の前にトラックが迫っていた。
一瞬、自分の身に何が起こっているのか理解できなかった。
スローモーションのようにトラックが眼前に迫る。俺は固まって動けないでいた。
そして、ぐしゃり。そんな音を聞いた気がした。
強烈な痛みが襲ったあと、視界が真っ暗になった。
痛みは数秒間続いた。苦痛のあまり呻き声を上げたつもりだったが、声にならなかった。
わずかな時間が経過した。
突然に痛みの感覚が消えた。それと同時にすべての感覚も遮断された。
痛みもない。視界もない。匂いもない。何も聞こえない。もちろん苦痛も苦悩もない。幸福感だったり、至福感だったりもない。何もない。
「無」が訪れた。
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