どうして小説が書けないのか？ どうすれば小説を書けるのか？

６１日目 何が苦悩を生むのか？ その１

野球に興味がなければ、野球の練習がうまくいかないことで悩むことはありません。
小説を書こうともしなければ、小説を思うように書けないことで悩むこともありません。

まず起点として、そこに興味があるかどうかが関係しています。

そして初期の頃には悩むことはありません。

プロ野球選手になりたい小学生が、練習のことで悩むことはあまりないでしょう。
小説を書き始めた初心者は、ただ楽しくて書いています。

苦悩が生まれてくるのは、ある程度進んだ先の段階になります。

私はこの原因として、何かに対する期待があったり、自分が思い描く理想の状態との差があるために起こるのだと考えていました。

現実と理想のギャップが苦しみを生むのだと。

ところが、思い通りに行かない自分にいらいらする気持ちが起きる時に、ふと、気がつくことがありました。

思考。
思考なんです。

思考がそこにあります。

私たちは自分の頭で考えていると信じています。だから、思考から離れることはしません。

けれど、この思考が私たちのものではないとしたら。例えばどこか遠く離れた場所にある宇宙サーバーで作られた言語情報、たとえばChatGPTみたいなAIが生み出した言葉。それらが私たちの頭に転送されてきたと考えます。

SF的な考え方ですけれど。

私たちが右手を上げる時、普通は以下のような手順が内部で起こっていると考えます。

まず、脳が右手を上げることを考える。次に神経細胞を通して、右手の筋肉に情報を伝達する。情報を受け取った筋肉が右手を上げる。

しかし、別の可能性もあります。

神経細胞を通して、右手の筋肉に情報が伝達され、情報を受け取った筋肉が右手を上げる。それから、右手を上げたという現実と辻褄があうような思考を宇宙サーバーが作り出して私たちの頭に放り込む。

順番が完全に逆です。

現実が先にあって、思考があとにある。しかもその思考は自分が考えたものではなく、現実に合わせて用意されたもの。

現実はすべて決まっていて、右手を上げることも決まっていた。
思考はただ、それに合わせて作り上げられた言語情報。

私たちは自分の意志で現実を生きていると思っています。
右手を上げるのも、自分の意志で、思考で行っていると思っています。
そう信じてずっと生きてきました。

非常に怖い想像です。私たちの自由意志だと思っていた思考が、実際は現実に合わせて作られたものだったという考えだからです。私たちの自由意志はどこへ行ってしまったのか？　自由意志が否定されてしまうような想像だからです。

思い通りにいかなく、苦悩を感じた時に実験してみました。
思考を外すという実験です。