どうして小説が書けないのか? どうすれば小説を書けるのか?

高瀬ユキカズ

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45日目 漫画vs小説

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漫画やアニメは面白さを簡単に得ることができます。

実際に、漫画を読んだことのない人はほとんどいないでしょうし、売れているのも漫画ですし、作家としてお金を稼げるのもおそらく漫画です。

漫画やアニメが台頭した当初、小説はどんどん先細りになって消えていくだろうと世間では予測されたはずです。

しかし、小説はしぶとく生き残っています。

実際に書店での売上は落ちていますが、これは漫画も同じだったりします。書店の数が減っていることと、YouTubeのような無料動画やスマホゲームなど、娯楽の対象が多岐にわたっていることが理由でしょう。

他の娯楽を考え出すときりがありませんので、漫画vs小説に話を限定して考えてみます。

漫画は絵によって読者の視覚に働きかけます。これは単純に絵があるから視覚的に理解しやすいということだけではありません。実は作者によって巧妙に仕掛けがされています。

漫画は現実世界を忠実に落とし込んでいるわけではありません。漫画特有の嘘を織り交ぜています。

漫画をよく見てみると、現実世界ではありえないパースや構図で描かれていることがあります。私たちは漫画を動画の静止画であるかのように思っていますが、漫画の絵そのものが読み手の想像力を利用した疑似動画のようなものになっています。

漫画の絵は瞬間を切り取った0秒の静止画ではないことがあります。
漫画家の浦沢直樹さんが自作のHappy!(テニスの漫画)での一場面を解説していました。
1コマの中に、ラケットでボールを打つ瞬間、ボールが飛んでいく奇跡、ライン上ドンピシャにボールが落ち、そのボールが読者側へ迫ってくる。ほんのわずかコンマ数秒なのですが、ここには時間が存在しています。

つまり漫画というのは、1枚1枚の静止画で構成されているとは限りません。読者の脳をも利用した動画であり、それは読み手の想像力があって成立します。

なので、動画の1場面1場面を静止画として絵におこしたとしても、漫画としては面白くなくて味気ないものとなります。

漫画の話を書いてきましたが、これが小説でも同じことが行われています。

小説は出来事がそのまま記述されているわけではありません。誰がどこで何をして、どのように行動して。それをそのまま書いてしまうと、ただの説明です。味気なくてつまらないものです。

説明が悪いわけではなく、小説において必ず説明は必要です。基本的には説明とシーンとで構成されています。

説明部分は時間が早回しされます。説明部分を読みたいと思わない人もいるでしょうが、理由は面白みがないからです。ですが、必要なものですので読まなくてはならないものでもあります。

本題に入って、シーンの話。
シーンは現実の時間と同期するように流れていきます。

ここで説明のように、誰が何をしたということをそのまま書いてしまうと、読者は読みたくなくなります。

漫画は読者の脳が生み出す想像力を巧妙に利用していました。

小説も同じです。
単純に、出来事を書いているのではありません。読者の視覚、聴覚、触覚、心情、想像力、そういったものをお借りして、それらを刺激し、ときには利用させてもらって書かれています。

そして小説の利点。絵がないということ。

小説は読者の視覚を操れます。
それだけではありません。

ぼろぼろ涙を流すような物語。
これは漫画よりも小説のほうが得意なのです。

文字しか存在しないという原始的メディアであるからこそ、読者の中へと入っていき、心の深いところへ侵入できます。心の奥深く、人間の根幹にある原始的な欲求に手を伸ばすことができます。

けれど、それは簡単ではありません。
短編小説では難しいです。だから、小説は10万字程度の長編になることが多いです。読者の心に侵入するには時間がかかります。

時間をかけて文章を積み上げ、積み上げて、積み上げて、最終段階まで心にはあまり深く触れないでいて、そしてクライマックスでぐっと迫ります。

言葉で書くと簡単そうですが、実際にはとんでもなく難しいことでもあります。
簡単にできてしまったら、世の中は傑作だらけです。

ほとんどの作品がプロの書いたものも含め、この域に達するのは難しいようです。
まあ、だからこその傑作なのでしょうが。

漫画も小説も、傑作と呼ばれる作品があります。天才だからこそ生み出せたのか、はたまた、奇跡の産物なのか。

私たちはそうした作品を読みたいですし、楽しみたい。

あわよくば自分でも生み出してみたい。
そう考えるからこそ、創作活動に惹かれるのかもしれません。

漫画vs小説の話。

どちらでもいいのです。
読者の心の深い部分に触れたい。刺激したい。感動を与えたい。面白いと言ってもらいたい。もっと読みたいと言ってもらいたい。

そうした欲求が書く側にはあります。
このことを忘れなければ、創作の手が止まることはないかと思います。
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