転生したってわたしはわたし

なの

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束の間の休息があってもいいですよね?

※ 挿話.とある男の物語 その1

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 新入隊員二人を連れて狩りをすることになった。
 新人が入ると必ず行われる行事ではあるが、魔騎士団の大隊長である私がそれの指導にあたることなど本来はないはずなのだが……。
 私は指導に向いていないというのにどうしてこうなったのか。

 いや、補佐のせいなのはわかっているのだが……。

『大隊長は休まなさすぎです。
 最近休んだの本当にいつですか。

 エリックを新人二人につけますから、そこにプラスしてあなたも一緒に行ってきてください。
 エリック一人いれば充分ですからプチ休暇がてらに。』

 ……いや、補佐ではなく私のせいか?

 エリックは入隊してからそこまでたっていない若手だが腕がたつ男だ。
 確かに引率として付けるには充分腕が立つから通常の狩りなら・・・・・・・私がついていく程度で手を出すことはないだろう。

 まぁ……確かに最近仕事のしすぎだったので丁度いいかなとも思う。
 まだ魔王陛下が即位したばかりなのだ、宰相殿が身を粉にして働いているのにその下の地位にいる魔騎士団長である私がサボるわけにはいかないと気を張りすぎていたかもしれん。


「大隊長!  門の準備はできています!」

「よ、よよよよろしくお願いします!」
「よろ、よろしくお願いしますっ!」

 普段使いの魔騎士団長として支給されている金の刺繍の入ったマントを脱ぎ、シンプルな旅装の黒い簡易マントに変更して城の転移門ゲートに行くと、既に部下たちは揃っていた。

「すまぬ、遅くなったか。」

「いえ、とんでもございません!」

 新入隊員に指示をしながら3人で起動したらしい転移門にはほんの少しだが魔力の歪みがあるのが見えた。
 些細だが用心のためにそれに近付き魔力を流す。
 通常なら気にならない程度ではあるが一切の歪みが消えた転移門ソレを見た部下たちは顔をサッと青ざめた。

「「「も、申し訳御座いません!」」」

「?
 何を謝る。
 あのままでも全く問題はないくらいの歪みだった。
 それにたまたま私が気付いたから直しただけだ。
 むしろちゃんとした指導員がいないのに3人であそこまで綺麗に起動出来たことを誇るといい。

 エリックの腕も思っていたよりも素晴らしいようだな。」

「あ、ありがとうございます!」

 そもそも起動にかかる魔力は繊細なもので、普通の粗忽な騎士たちや新人だと指導員の補助があって初めて成功するものだ。
 それを3人分の魔力を綺麗に制御できてあの程度の歪みで済んだのは褒められる点だ。

 エリックの力が一番凄いだろうことは転移門に流れる魔力の量で分かるが、他の二人もそこそこの魔力制御能力があることがわかった。

「しかし、今回の指導員は私だ。
 基本的にはエリックに任せるが一応私の指示なしで勝手にことを進めないように。」

「も、申し訳御座いません……」

 補佐の飼っているケルベロスのように項垂れるエリックに幻覚の耳と尻尾が見えた気がした。






 -------------------------------------




 転移門を抜けると目の前に森が広がる。
 指導員には向いていないとは思うが、森に来るのは久しぶりで気持ちが良いから来て良かったかもしれない。

 森を進んでいき新人二人を中心に魔獣狩りをしていく。
 まだ若く経験の足りていない二人をエリックが声をあげ、時たま二人の手に負えないレベルの魔獣が現れた時は手を出したりしつつ補佐しているのを眺める。

 この調子なら特に城に戻るまでやることはなさそうだなと思いつつ、野宿をして2日の距離にある新人指導の目的地である森の泉にたどり着く。

 本来はこんなとこまでくる必要はないのだが、今回は私の休暇を含んでいるというからここまで来てしまった。
 普段から休暇の時はここまで来ているのだが、新人二人やエリックという足手まといがいると5日かかることには驚いた。

 エリックいわく2日で辿り着くのは私くらいで、むしろ5日は早い方らしい。
 驚いて目を見開いてしまったのは余談だ。

 特に補佐にはいつまでに帰ってこいとは言われていないので休息として泉で1日ゆっくりしてから帰ることにした。

 新人たちも疲れがたまっているのか早いうちから寝たと思っていたら朝から起きて泉で遊んでいた。
 話を聞くとエリックも含めて幼馴染らしく、兄のように面倒見の良いエリックと弟たちのように幼少の頃から仲が良かったようだ。

 今は3人で夕食の準備を早めにすると言って仲良く狩りにいっている。
 そろそろ働こうかと思ったがゆっくりしてくださいと言われてしまい惰眠を貪ることにする。

「っ……」

 どれくらい時間がたったか、微睡んでいるといきなりピリっとした空気が肌に刺さる。
 エリックの魔力だと思うと少し焦る気持ちが出てくる。

 ここまでの道中、エリックも戦闘に参加はしていたが魔力を使うようなことはなかったからだ。

 エリックの魔力を目指して進んでいくと小さい身体を覆うほどの盾をもった女がエリックを相手取り、新人2人は長剣使いの男3人と短剣使いの男1人、そしてその後ろに庇われた魔法使いと言っていいのかも分からない微弱な魔力の女と戦っていた。

「人族の冒険者か」

 誰に聞かせるでもなく口から溢れた台詞だったが、目につくのはエリックの相手の女。
 魔法使いを背に庇っている男の次に戦いに慣れているのはあの女だろう。

 多分咄嗟にエリックと他の2人を引き剥がしたのはあの女だ。
 エリックを相手に人族があそこまで盾として活躍できるのもすごいなと感心してしまった。

 人族を見つけた際には基本的に男は殺して女は持ち帰り慰み者とする。
 稀に美しい男も慰み用に連れて行くこともあるが……。
 今回は女が2人いるからいらないだろう。

 少し様子を伺ってみたが、エリックはうまく足止めされているし新人2人は数に負けて押されていた。

 足止めされているのが新人のどちらかだったらエリックがどうにかできて問題はなかっただろうが……。


 腰に留めていた愛用の剣を抜き近付いていき、まずは一番近いところにいた長剣使い2人を横薙ぎに払う。
 走って斬り込んだ体勢だったために腹の辺りから半分に別れたようだ。
 身長がもう少し高いやつらだったら骨盤やら骨の多い場所で切り辛かっただろうなと一瞬思った。

 切り捨てた男だったモノ・・・・・・が崩れ落ちた音に後ろを振り返った短剣使いを少し下に下げていた愛剣を上に持ち上げ、股から縦に裂く。
 先程よりも中身が飛び出て汚い惨状を見て眉をしかめる。
 たまに縦に裂いてしまうが毎回やった後に後悔するののに懲りずにやってしまうのはどうにかしたほうがいいなと思うのだが……。

 残り1人となった魔法使いもどきを庇っている長剣使いを横目に見ながらそんなことを考えていく。

 初めて見るであろう魔族に震えて魔法詠唱すらできない魔法使いもどき・・・
 庇う価値すら一銭もないただの見目の良いだけの女。

 それに比べて1:1でエリックを足止めする盾使いの女は特に目立った外見はしていないが細い身体ながらしなやかな動きでエリックと対峙している。
 新人のどちらかの足止めくらいなら違和感ないがエリックの足止めとなると興味がわく。
 私が万が一庇うことがあるのならばこちらの女だな。

 エリックも女じゃなければ切り捨てれるから良いだろうが、なるべくなら女には傷を付けたくないのだろう。
 女相手で動きが鈍いというのも膠着状態だった理由の一つだろう。

 魔法使いもどきを庇う男を思考の片隅で切り捨て愛剣についた血肉を振り払う。
 ヒュッと風を斬る音の後に滴っていた血が勢い良く地面に叩きつけられビシャリと音が鳴る。

 それを合図にしたかのように血塗れとなった女の甲高い悲鳴があがりまた眉を顰める。

 煩いだけの女の悲鳴なぞ聞いても何も良いことなどないのでそこから距離を取ると、新人2人が煩い口に布を咬ませてエリックから渡された隷属の首輪を付け、両手に魔封じの手錠をつける。

 遭遇する予定はなかったから、首輪も手錠も私は持ってきていなかったからエリックが持ってきていてよかった。

 途中から茫然とこちらを見ていた盾の女を後回しにしたエリックから首輪を受け取り女に近付いて首輪をつける。

 血と汗のにおいに混じって花のような香り立つ芳香が女からした。

 基本的に捕まえた女はたらい回しだが、何故かその匂いを嗅いだ瞬間下半身が熱くなり自分だけのものにしたいと思った。
 首をもたげた欲望に蓋をして女を肩に担いで振り返ると押さえ込みながら新人2人で女の服を裂いていた。

 エリックはこちらを驚いた様子で見ていたがシカトし、声をかける。

「この女は俺がもらうから手を出したら殺す。
 その女は好きにしろ。
 だがまずは帰路につく、夜まで待て。」

 更に目を丸くするエリックと渋々といった様子で諦める新人2人。

 普段は私が慰み者の女を自分で連れて行くことも、自分のもの宣言をすることなどもないことをエリックは噂か何かで知っているのだろう。

 新人2人はそんなことなど知らなかったらしく、魔族特有の金の瞳が通常よりも昂ぶっているのがわかる。
 瞳孔が鋭くなっていたが少しずつ通常通りに戻って落ち着いてきたようだ。
 興奮状態で万が一私の言うことを聞けないとなると問題になるからそうならずに良かった。

 盾の女を新人が襲っていたら私はどうしていたかな、なんてことも少し考えてしまったがもしもなんてことはどうしようもない、忘れておこう。



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