49 / 50
エピローグ
妹の気持ち
しおりを挟む
まさかの呼び出しを受け、私は沙代に連行されるがごとくうるストの横道へ移動しました。
入れ違うようにベンチに座ったギルベルトと並んだユリウスをチラリと伺い見る。背恰好もあまり変わらなくなってしまった二人が一緒にいると迫力があります。
「どうしたの?」
「いやなんというか……陽キャの頂点と陰キャの頂点って感じだなぁと思って」
「ああー、それわかる」
明暗の対比が激しい二人を見て頷き合いながら、沙代が私に視線を移しました。
「これも綾姉のおかげだよ」
「え、陽キャと陰キャが?」
「まあそれも含めて」
なににこれを含めてなの? 頭に疑問符を浮かべる私に構わず、沙代は続ける。この子も羨ましいくらいぶれませんね。
「正直、綾姉なら……って思ってはいたけど、ここまで助けられることになるとは思ってなかった」
「ええと。それは、私がなにか沙代の助けになったって……こと?」
意外すぎる言葉に戸惑いながらも聞けば、頷き返された。今、自分の目が思いっきり見開かれているのがわかる。
「ユリウスを向こうに置いておけないとは思ったけど、私にはどうしたらいいのかなんて全然わからなかった。そしたら綾姉の顔が浮かんだんだよね」
珍しく沙代が自信なさそうに目を伏せました。沙代がです。あの沙代がです!
「私はいかに目の前の奴を叩き伏せるかを考えるのは得意だけど、それだけなんだよ。周りの事情なんて考えてやれないし、知ったところでなにをしたらいいのかわからない。ギルもマルゴも同じようなもんだし、どうしようかと思ったとき──綾姉に会わせてみようと思った」
その言い方だと勇者一行がとんでもなくゴリ押しで力押しなパーティーですが……と心配したけど、あれ? どれだけ思い返してみてもその通りだった。
けど、そこで出てきたのが私というのも腑に落ちない。
「なんで私?」
「最後に綾姉と手合わせしたときのこと、覚えてる?」
ビクリと自分の肩が跳ねたのが、わかった。
小学生の頃、我が家の道場で沙代と手合わせをした。最後どころかそれが最初で最後だった。
あのときのことは私の中でトラウマ級の出来事ですからね。それはもうボッコボコにされました。
兄のようになれると思って必死に練習していたのに、私はちっとも同じようにはなれなくて。それなのに後から始めた沙代に手も足も出ないまま叩きのめされました。心もボッキリ折れた。
「──あのとき、綾姉は足を痛めてたでしょ」
どこか苦しそうな顔で言葉を吐き出す沙代に、首を傾げる。
「だからって、それが負けた理由にはならないと思うけど」
そんなハンデがあろうがなかろうが、ボッコボコにされたでしょうよ。なのに沙代はそうじゃないとばかりに首を振る。
「私は足を痛めてたのを知ってて、そこを利用した」
そうだったかな? 言われても私にはピンとこない。多分そんなことは私にとって些細なことだった。すると「そういうとこなんだよ」なんて声がする。だからどういうことなの。
「綾姉は足を痛めてたこともそこを狙われたことも、なにも言わなかった」
「……それとこれとは別じゃない? そうじゃなかったとしても、私は沙代にかなわなかったし、沙代には間違いなくお兄ちゃんみたいな才能があったもの」
「だから、私にはそう思うことができない……! 私だったら妹に負けるのなんて嫌だし、足を痛めて負けたなら絶対に負けを認めなかった! 綾姉みたいに考えられない……っ」
堪えていたものを吐き出すように、沙代が声を荒げる。
「正直、綾姉を下に見てたのは、あったよ」
「おおう……」
ザックリと心を抉られて吐血しそう。だろうなとは思ってましたけど。沙代ってば容赦ないんだからぁ!
「だから単純に叩きのめせばいいと思った。足を痛めてるならそこを突けばもっと簡単だ。って、私はただ馬鹿みたいにそれだけで、そうしたらどうなるかなんてわかってなかった──綾姉が剣道辞めちゃうなんて思わなかった……」
俯いた沙代のつむじが見える。
頑として顔を上げない彼女は、もしかしたら泣いているのかもしれない。……絶対にそんな顔見せないだろうけど。
「綾姉は毎日楽しそうに道場に来てて、兄ちゃんもそれが嬉しそうで、私もみんなで一緒に練習するのが好きだった。なのに、私が、いつも自分のことばっかりだから……もっと一緒にやりたかったのに、私が……っ」
そんなことない。沙代は悪くない。勝気なのは沙代の長所だ。だから、まさかこんな風に思っているなんて思いませんでした。
私こそあのとき完全に、兄にも沙代にも見限られたに違いないと思っていたのに。
同時に剣道からも遠のいてしまったけれど──思い返せば、確かに練習は辛くなかった。兄妹で毎日楽しく道場に駆け込んでいたのに、どうして忘れていたのだろう。三人でふざけて父に雷を落とされて、それでもケラケラと笑っていた日々が唐突に蘇る。
私こそ兄や沙代の気持ちを無視して、すっかり記憶に蓋をしていたんだ。
「だから今年の大会は、足を痛めたけど出ようと思った。言い訳しないでやろうって」
いやいや、そこは欠場しようよ。と、姉としては思います。けれど沙代にとっては大事なけじめだったのだろう。
「でも決勝でめちゃくちゃ足のハンデを狙われて、結局いつもみたいに感情的になって ボロ負けした。私は全然変わってなかった」
そんな内面を微塵も感じさせなかった沙代に驚く。
ただただ、準優勝に甘んじた自分が許せなかったのだろうと単純に考えていた。優勝できなかったのが悔しいだけだろうと。
「そのあと異世界なんかに飛ばされて、勇者なんて言われてさ。まあ色々あって、少しは成長したと思ったのに──でもユリウスに会って……どうしてやるべきなのかが、わからなかった。結局、私には身体を鍛えてやることしか思いつかなかった」
やっぱり私は成長できていなかった。
初めて聞く沙代の弱音は、思いもよらない言葉ばかりでした。
でもユリウスを鍛えてあげようという考えは、あながち間違ってもいなかったんじゃないかな。過去に囲い込まれていたユリウスは心身共に強くなるべきであったと思うし、なによりそれが必要だと沙代が考えてあげてのことだもの。
突拍子なく思えていたことは、全て沙代なりに考えての結果だったのだ。
沙代は今も昔もすごいよ、と思ったとき、ポツリと言葉が聞こえた。
「私は、綾姉みたいになりたかった」
信じられない言葉に息を呑む。
胸の奥が熱くなる。熱くて熱くて声が詰まりそう。
「……私こそ、沙代みたいになりたかったよ」
羨ましくて仕方がなかった。
絞り出すように言えば、顔を跳ね上げた沙代の目が見開かれている。睫毛が少し濡れていたのは見ないふり。
「そう思ってくれて、ありがとう」
可愛い妹の頭を久しぶりに撫でたら「だから、こういうとこなんだって」としかめっ面をされてしまいました。
入れ違うようにベンチに座ったギルベルトと並んだユリウスをチラリと伺い見る。背恰好もあまり変わらなくなってしまった二人が一緒にいると迫力があります。
「どうしたの?」
「いやなんというか……陽キャの頂点と陰キャの頂点って感じだなぁと思って」
「ああー、それわかる」
明暗の対比が激しい二人を見て頷き合いながら、沙代が私に視線を移しました。
「これも綾姉のおかげだよ」
「え、陽キャと陰キャが?」
「まあそれも含めて」
なににこれを含めてなの? 頭に疑問符を浮かべる私に構わず、沙代は続ける。この子も羨ましいくらいぶれませんね。
「正直、綾姉なら……って思ってはいたけど、ここまで助けられることになるとは思ってなかった」
「ええと。それは、私がなにか沙代の助けになったって……こと?」
意外すぎる言葉に戸惑いながらも聞けば、頷き返された。今、自分の目が思いっきり見開かれているのがわかる。
「ユリウスを向こうに置いておけないとは思ったけど、私にはどうしたらいいのかなんて全然わからなかった。そしたら綾姉の顔が浮かんだんだよね」
珍しく沙代が自信なさそうに目を伏せました。沙代がです。あの沙代がです!
「私はいかに目の前の奴を叩き伏せるかを考えるのは得意だけど、それだけなんだよ。周りの事情なんて考えてやれないし、知ったところでなにをしたらいいのかわからない。ギルもマルゴも同じようなもんだし、どうしようかと思ったとき──綾姉に会わせてみようと思った」
その言い方だと勇者一行がとんでもなくゴリ押しで力押しなパーティーですが……と心配したけど、あれ? どれだけ思い返してみてもその通りだった。
けど、そこで出てきたのが私というのも腑に落ちない。
「なんで私?」
「最後に綾姉と手合わせしたときのこと、覚えてる?」
ビクリと自分の肩が跳ねたのが、わかった。
小学生の頃、我が家の道場で沙代と手合わせをした。最後どころかそれが最初で最後だった。
あのときのことは私の中でトラウマ級の出来事ですからね。それはもうボッコボコにされました。
兄のようになれると思って必死に練習していたのに、私はちっとも同じようにはなれなくて。それなのに後から始めた沙代に手も足も出ないまま叩きのめされました。心もボッキリ折れた。
「──あのとき、綾姉は足を痛めてたでしょ」
どこか苦しそうな顔で言葉を吐き出す沙代に、首を傾げる。
「だからって、それが負けた理由にはならないと思うけど」
そんなハンデがあろうがなかろうが、ボッコボコにされたでしょうよ。なのに沙代はそうじゃないとばかりに首を振る。
「私は足を痛めてたのを知ってて、そこを利用した」
そうだったかな? 言われても私にはピンとこない。多分そんなことは私にとって些細なことだった。すると「そういうとこなんだよ」なんて声がする。だからどういうことなの。
「綾姉は足を痛めてたこともそこを狙われたことも、なにも言わなかった」
「……それとこれとは別じゃない? そうじゃなかったとしても、私は沙代にかなわなかったし、沙代には間違いなくお兄ちゃんみたいな才能があったもの」
「だから、私にはそう思うことができない……! 私だったら妹に負けるのなんて嫌だし、足を痛めて負けたなら絶対に負けを認めなかった! 綾姉みたいに考えられない……っ」
堪えていたものを吐き出すように、沙代が声を荒げる。
「正直、綾姉を下に見てたのは、あったよ」
「おおう……」
ザックリと心を抉られて吐血しそう。だろうなとは思ってましたけど。沙代ってば容赦ないんだからぁ!
「だから単純に叩きのめせばいいと思った。足を痛めてるならそこを突けばもっと簡単だ。って、私はただ馬鹿みたいにそれだけで、そうしたらどうなるかなんてわかってなかった──綾姉が剣道辞めちゃうなんて思わなかった……」
俯いた沙代のつむじが見える。
頑として顔を上げない彼女は、もしかしたら泣いているのかもしれない。……絶対にそんな顔見せないだろうけど。
「綾姉は毎日楽しそうに道場に来てて、兄ちゃんもそれが嬉しそうで、私もみんなで一緒に練習するのが好きだった。なのに、私が、いつも自分のことばっかりだから……もっと一緒にやりたかったのに、私が……っ」
そんなことない。沙代は悪くない。勝気なのは沙代の長所だ。だから、まさかこんな風に思っているなんて思いませんでした。
私こそあのとき完全に、兄にも沙代にも見限られたに違いないと思っていたのに。
同時に剣道からも遠のいてしまったけれど──思い返せば、確かに練習は辛くなかった。兄妹で毎日楽しく道場に駆け込んでいたのに、どうして忘れていたのだろう。三人でふざけて父に雷を落とされて、それでもケラケラと笑っていた日々が唐突に蘇る。
私こそ兄や沙代の気持ちを無視して、すっかり記憶に蓋をしていたんだ。
「だから今年の大会は、足を痛めたけど出ようと思った。言い訳しないでやろうって」
いやいや、そこは欠場しようよ。と、姉としては思います。けれど沙代にとっては大事なけじめだったのだろう。
「でも決勝でめちゃくちゃ足のハンデを狙われて、結局いつもみたいに感情的になって ボロ負けした。私は全然変わってなかった」
そんな内面を微塵も感じさせなかった沙代に驚く。
ただただ、準優勝に甘んじた自分が許せなかったのだろうと単純に考えていた。優勝できなかったのが悔しいだけだろうと。
「そのあと異世界なんかに飛ばされて、勇者なんて言われてさ。まあ色々あって、少しは成長したと思ったのに──でもユリウスに会って……どうしてやるべきなのかが、わからなかった。結局、私には身体を鍛えてやることしか思いつかなかった」
やっぱり私は成長できていなかった。
初めて聞く沙代の弱音は、思いもよらない言葉ばかりでした。
でもユリウスを鍛えてあげようという考えは、あながち間違ってもいなかったんじゃないかな。過去に囲い込まれていたユリウスは心身共に強くなるべきであったと思うし、なによりそれが必要だと沙代が考えてあげてのことだもの。
突拍子なく思えていたことは、全て沙代なりに考えての結果だったのだ。
沙代は今も昔もすごいよ、と思ったとき、ポツリと言葉が聞こえた。
「私は、綾姉みたいになりたかった」
信じられない言葉に息を呑む。
胸の奥が熱くなる。熱くて熱くて声が詰まりそう。
「……私こそ、沙代みたいになりたかったよ」
羨ましくて仕方がなかった。
絞り出すように言えば、顔を跳ね上げた沙代の目が見開かれている。睫毛が少し濡れていたのは見ないふり。
「そう思ってくれて、ありがとう」
可愛い妹の頭を久しぶりに撫でたら「だから、こういうとこなんだって」としかめっ面をされてしまいました。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです
たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。
お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。
これからどうやって暮らしていけばいいのか……
子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに……
そして………
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる