最下位の最上者

竹中雅

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第四章

意識

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咄嗟に刀を抜こうとすると、透百合が敏捷と横に移動し俺の前に来ている。足を引っ掛け、手を掴み捻ると刀を床に落とす。そのまま背負い投げで床に叩きつけた。
投げとばす刹那に身体と共に黒髪が宙を舞っていく様子は、とても美しく波打っていた。
後ろ三人もその様子に怖気つき、立ち止まる。
「この程度なら、体術で十分よ」
振り向き様に見下ろしながら言葉を捨てる。
「これも没収ということでいいわよね」
床に取り置かれた刀を拾うと、慣れた手つきで鞘と共に腰に引っ掛る。
この様子からでも鍛錬していることが見て取れる。何しろ動いた瞬間を見失っていたくらいだ。
「待て...」
「これ以上聞く耳を持たないなら、私も刀を使うけど?」
「くそ...」
立ち上がることなく、そのまま仰向けに天井を眺めている。
「失礼しました」
戦闘意識が無くなるののを確認したのか、一つ息を吐き、華麗な足取りで表情を変えずに出て行った。
透百合の姿が見てなくなっても教室内は静謐としたままで、誰も動こうともしない。
桑原たちをただ一点に見つめて。
集団監視に耐えきれなくなったのか、息を漏らしながら忙しく立ち上がると
「桑原、根性だけは認めてやる。残念だったな」
淡々と抑揚もなく桑原に告げた。
「...二つ聞きたいことがある」
「何だよ」
「先生はさっき、茜澤に退学を伝えていましたよね。おかしくないですか?」
「うん?僕は最初から君たちに言っていたんだけれど?当たり屋紛いなこと、そして今回二つも問題を起こしてくれたね」
確かに俺の後ろに桑原が居た。微笑んで見据えていた違和感が晴れる。俺に言ったのではなく桑原たちへの諫めだった。
「...なんだよそれ」
拳を握りながら歯軋りを立て、怒りを露にしていく。
「じゃあ透百合なんてやつ、どうやって包め込んだんだ?」
「何もしてねーよ。俺にもわからない」
「俺には関係ねえってことか。そりゃそうだよな」
「いや、そういう...」
「戻るぞ」
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