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case 2 スパイダーフラワー討伐 ログブック 記入者 マジックアーチャー ソラ 中編 ③
しおりを挟む「いい泡の具合だ。腕をあげたな」
「どうせなら、魔法の上達を褒めてもらいたいものだ」
アサシンプリンスも口にし、世辞を言われる。まあ、こいつはいつも飲んでいるし、こんな反応だろ。
それよりも、3人の反応が気になる。
「お、おいしい!」
「プチプチが口の中で弾ける!」
「魔法でこんなことができるなんて……」
カレン。ソーニャ。ルークは興味深そうに飲み始めて、夢中になっている。
どうやら、口に合っているみたいだ。誰も狂信者みたいに吐き出す奴はいないくてほっとする。
「褒めても何も出ないぞ」
その後、わずかばかりの自己紹介をし、新しくハニープチプチ水を入れ直すとアサシンプリンスが言葉に重みを込めて、話し始めた
「ホーネットウォーター。覚えているか?」
「ああ、俺たちが初めてパーティーを組んだ相手だろ」
怪物名。ホーネットウォーター。黒い靄のような蜂の姿で、視認できない大きさの針を空から降り注がせる猛毒を持つ怪物だ。
刺されば1週間は全身麻痺で動くことができず、じわじわと死が近づいていることを嫌でも実感させられる。
何よりも大変なことがホーネットウォーターは雨の日のみで活動し、それ以外では発見することができていない。
雨の日に見つけにくい相手を見えない攻撃をよけながら討伐するのに苦労した。
「そいつが現在、王都の上空を支配し飛び回っている」
「なんだと!?」
俺は声を荒げて叫んだ。そして、すぐに冷静になりアサシンプリンスの言葉に耳を傾ける。
「状況は最悪だ。王都の民を避難させるために冒険者と兵士は怪我人だらけ。無事なのは民と誘導に当たっていた憲兵ぐらいしかいない」
「他の冒険者がいないのはそれが原因か」
「ああ」
重苦しい空気が部屋の中にたまる。
カレン。ソーニャ。ルークの三人は黙っているが状況だけは理解しているようだ。
俺はその空気を壊すべく、アサシンプリンスを挑発することにした。
「で、どうするんだ? このまま黙ってやられるのを待つだけか?」
「……その前に聞きたいことがある。狂信者はどうした?」
あ、そういえば狂信者のことを話すのを忘れていた。
俺は一瞬、理解できるように最初から話すべきかと考えたが――。
「……あいつは、ゴブリンに連れていかれたよ」
「……魔族の中で最弱と名高いあのゴブリンに?」
「ああ、そのゴブリンで間違いない」
「…………そうか」
すべてを諦めたかのような顔でアサシンプリンスは呟いた。
さすがはアサシンプリンス。どう考えてもおかしいことにはもうしゃべるだけ労力の無駄だということをよく理解している。だって、狂信者だもんな。その気持ちはよくわかる。
「バーサーカーローグは数日以内にこっちに来るよう手紙を出しておいた」
狂信者のことは放置し、先に進むことにする。
アサシンプリンスはすでにバーサーカーローグを呼び出すよう手を打っているみたいだが、それには致命的な邪気点がある。
「どうだろうな。バーサーカーローグはなかなか、手紙は読まないからなぁ」
「ああ、この際、2人で解決する方法で策を練ることにしている」
突然いなくなる狂信者。アイテムを最優先にするバーサーカーローグ。この2人は来ないことを想定することが俺たちの仲間としてどうなんだという思考はすでに捨て去っていた。
(いっそのこと。一度、まともなやつがどうなのかが気になってくるが……)
それはこの危機を脱してからゆっくりと考えることにしよう。
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