狂信者がリーダーのこのパーティーはもう駄目だろう。

XX GURIMU

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case 1 やくそう採取 完

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「……ふぁぁぁ」
「こら、あくびはよしなさい」
「す、すみません!」
 あの後、狂信者さんのログブックを読み終わり仕事が増えてしまったため帰るのが遅くなってしまった。
 クエスト失敗の処理に別のクエストを終わらせているためそちらも処理しなければならなかった。
 まぁ、それでも多少面白い話を見れたため満足していたが……少し憂鬱だった。
 なぜなら――――。
「あ、狂信者さーん! ちょっといいですかー?」
「ん? あ、ああ。いいけど、どうしたんだ?」
 ギルドでグラスを傾けながら優雅に飲んでいる狂信者さんを呼ぶ。私はこの人にとんでもないことを伝えなければならない。
 片手にグラスを持ったままこっちまで歩いてきてくれた。
「ギルドから通達が来てまして、読ませてもらってもいいですか?」
「珍しいな。別にいいぜ」
 真面目に話を聞いてくれるらしく、コップを片づけて目の前の椅子に座った。この人……なんでこんなにまじめそうなのに狂信者なんて呼ばれているんだろう?
 私は、他の人が呼んでいるからそう呼んでいるだけで詳しいことは知らない。
 あ、その前に仕事をしなければ――。
「では、『狂信者 リム。そなたにSランクからFランクへのランクダウンを命ず』……以上です」
「は、はぁぁぁぁぁ!?」
 椅子を倒して机に手を置き、狂信者さんは叫んだ。
 はい。叫びたくなるのはわかりますよ。
「な、なぜだ!?」
「…………やくそう採取のクエスト失敗がまずかったみたいです」
「マジか!? で、でもグリズリーバーンを倒した実績があれば……」
「それを考慮したうえでのこの結果です。誠に残念ですが……」
 私は言葉を選びながら、慰める。いくらここが冒険者にとって通過点とはいえ、Sランクの冒険者がいることで助かっていた部分は多かった。
(狂信者さんは比較的、まじめで仕事にも責任を持ってくれる人なのにどうして上の人たちは降格処分することにしたのだろう?)
「く、くそぉぉ!! あと一歩! あと一歩だったのに!?」
「? 何があと一歩だったんですか?」
「SSランクになれば……なれれば俺の夢がかなったのに!!」
 SSランク。それはギルド内で最も冒険者としての格が高く、ギルドの象徴となる。現在は3人しかおらず、王国で保護されている。狂信者さんはその中に入りたかったのか……。
「どんな夢なんですか?」
 私は気になった。
 SSランクはクエストの難易度は一気に上がり、拒否することができない。Sランク冒険者でも断る人は多いのだがこの人は一体、どんな夢を――――。
「決まっているだろ!? 魔界へ行ってサキュバス様に会うためだ!!」
「は?」
 場が一瞬にして凍った。この人は一体何を言っているんだ?
 狂信者さんは狂ったようにその場で膝をつき、天を仰ぎ叫ぶ。
「ああ、サキュバス様!! 俺はどうやらそちらへは行くこと遠ざかってしまったみたいです!! ですが……必ず、あなた様のもとへと旅立つためにどうかどうかぁぁぁぁ!!」
 あれ、この人、もしかしなくとも相当にやばい人なんじゃ……と、私の中で狂信者さんの評価が大暴落していると、ギルドの扉を乱暴に開いて、2人入室してくる。
 あれは、アサシンプリンスさんとマジックアーチャーさんだ
「マジックアーチャー。やれ」
「よし」
 マジックアーチャーさんが弓を構えて、魔法の矢を放った。
 その矢は、正確に狂信者さんの後頭部を直撃する。
「俺も、もっと精進して強く―――! へぶっ!??」
「ナイス」
「狙撃は任せろ」
 衝撃で顔面から地面に叩きつけられた狂信者さんはピクピクと虫の息になっている。
 そんな彼をはアサシンプリンスとマジックアーチャーは2人がかりで両腕を持ち、引きずっていく。
「お騒がせしました」
 アサシンプリンスがペコリっと謝って出て行った。
 嵐のように去っていく3人を見つめながら、私はそっと狂信者さんのランクをFランクに変更しておいた。
(このレベルの変態はギルドで管理すべきね)
 先ほどまでのまじめだった評価はもう消え去っていた。
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