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サキュバスギャル、リリームの来訪
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翌日、いつも通りに仕事に戻り部下からの報告を聞くととんでもないことを言い出された。
「来客? そんな予定は入っていないはずだが」
「えと、先鋒よりどうしても姫様に会いたいとのことです」
「国の名前は?」
「……魔王国です」
「っ! わかった、すぐに謁見できるように伝えてください」
「わかりました」
魔王国と言われ、緊張が走った。帝都に属していない国の一つであり、4年前に戦争がありどうにか終戦に導くことができた相手だ。もし、粗相の1つでもやらかしたらとんでもないことになる。
急遽、準備を推し進めセレス様を説得し、会談の場に持ち込むことができた。
「はぁ、こんなことをしないといけないだなんて……憂鬱よ」
「セレス様、面と向かっては言わないでくださいよ」
「わかっているわよ。ユキ、通していいわ」
「かしこまりました」
なんとか間に合った。ユキが相手を連れてくるまでの間は一息つくことができる。
(それにしても、一体何の用だ? 魔王が来るならいつもなら手紙の一つでも渡してくるはずだ)
考えられるのは魔王国にてクーデターが発生したとかを想像してしまうがあの魔王に敵う相手がいるのかと思ってしまう。
そうこう考えている内にユキが相手を連れてきた。
「あっ、ごめんねー。急に押しかけちゃって、迷惑だったかな?」
「いいわ。今日は何の用かしら?」
連れてきた相手は魔王国の複数いる姫君の1人であるリリーム=サキュバス様だった。
扇情的なスタイルの持ち主であり、ピンク色の長髪だけがその素肌を隠している。正直、初めて会った時は3度見したし、どうにかチラ見できないか考えたこともあった。なお、その度にユキ、もしくはセレスから背中に蹴られた。
その横に付くのは俺に執事のイロハを教えてくれたガイル=ゴブリンさんだ。緑色の筋肉質な肌をピチピチの燕尾服が悲鳴をあげながら覆っている。普段なら魔王につく彼がリリームの隣にいるのは珍しいことだ。
挨拶もそこそこにリリーム様は要件をしゃべり始める。
「いやー、ちょっと相談があってさぁ」
(ん、こっちを見たのか?)
おちゃらけた態度をしているが、一瞬だけ真剣な視線に反応する。
「女性だけの内談ってできる?」
……なにか嫌な予感がする。
これは断った方が無難だ。
「リリーム様、それは申し訳ありませんが」
「いいわ。ユキだけ残して全員、部屋から出なさい」
「セレス様!?」
いつもなら一切口出ししないセレス様が俺の提案を却下した。
「その代わり、そっちもあなただけ残るのよ。できるわよね、リリーム」
「ははっ、いいよー」
「マコト、聞いたわね。すぐに部屋から出ていきなさい」
ここまでくると俺の口出しをすることができなくなる。
嫌な予感はするがここはユキがいるからには大事には至らないはずだ。
目線でユキに任せたぞと伝えるとウインクが返ってきた。
「……では、何かあればこのベルを鳴らしてください。すぐに駆けつけます」
懐からもしものために愛用しているベルを取り出してセレス様に握らせて、退出する。
ガイルさんも一緒に出るが気を抜くことができそうになかった。
隣の部屋にガイルさんを案内し、俺は自身の成長を見てもらうために紅茶を淹れた。
「ふむ、だいぶ板についてきましたね」
「その節はありがとうございます」
自慢の髭を湯気で濡らしながらほめてくれた。
「私も初めての弟子が上達しているのはうれしいものですよ」
そういってもう一口とカップを近づける。
俺も少しだけ張り詰める神経を緩めて対面で紅茶を頂く。
蒸らす時間、温度、茶葉の量、どれも満足が行く出来になっていてほっとする。
「さて、ここなら誰も聞いてませんから聞きますがあれから誰か孕ませましたか?」
「っ!?」
ほっとしたのも束の間。魔王国特有の発言がとんできた。
「その様子だとまだ見たいですね……もったいない」
「ガ、ガイルさん。さすがにそれは踏み込み過ぎですよ」
ユキとはそういう関係だけど避妊の魔法をかけている。
「そうですか? あなたほどの強さを持っているのならば将来、我が子を1人嫁に出そうと思っているのですよ」
「こ、子供の将来を奪うのも……」
「大丈夫ですよ。意思は尊重します。まぁ、女は男の力強さに惹かれるもの。あなたの強さなら娘が嫌がるとは思いませんけどね」
「勘弁してください」
最強こそ史上である。魔王国にはそういう風潮がある。それゆえに帝都に対し何度も戦争を仕掛けては強いものが引き抜かれ、4年前もゴブス王を奪い去ることが目的で戦争が起きた。王の英断がなかったら今でも戦争は続き、死者が出たかもしれない。
話はそれたが、俺自身にもこの国を守るという使命があるまだ子供を作るには早いと思っている。
「それにしても、そろそろあなたは決断するべきですね」
「……なんのことですか?」
「あなたの身の振り方についてです。この国を守るためと言っていますが風のうわさではセレス様の傲慢なご様子しか聞きません。それはひとえにあなたが制御できていないからですよ」
「…………わかっています」
耳が痛い話だ。
「前王は素晴らしい方でした。それを支えていたあなたも素晴らしかった。未熟なりとも一生懸命に頑張っていた。ですが、今のあなたは素晴らしくない……賢く生きようとただ、流されているだけです」
………………。
「決断するのか、流されるのか各々の選択です。ですが、私はもう一度、あなたの情熱を」
その時だった。隣の部屋から食器から何かが割れる音がした。
「セレス様!?」
「姫!!」
お互いに大切な者の身に何かがあったと悟った。ドアから出るのが煩わしく、ガイルさんが腰の剣で壁を切り裂き、俺が蹴ってぶち抜いた。
「こ、これは……」
そこには目を疑う光景が繰り出されている。
王座から立ち上がり手をあげるセレス様。
その足元で頬を抑えるリリーム。
何もしないで静観するユキ。
客であり友好関係にあるリリームにセレス様が手をあげたことを一目見てわかった。
「ははっ、意外と手が出るタイプなんだね」
「……このアマ! 許さないわよ!!」
「セレス様!!」
振り上げた手を掴み、制止する。すでにまずいことになっているがこれ以上は取り返しがつかなくなる!
「放して!! 放しなさい!!」
「だ、駄目です! いくらお嬢様の命令といえど聞くことができません!!」
どうしてこんなことになったんだ。ユキの方に顔を向け問いかける。
「ユキ! どうして止めなかったんだ!!」
「マコト。申し訳ありませんが、今回はあちらに非が……」
駄目だ。ユキはセレス様の肩を持つようだ。
例え、どんな理由があろうとセレス様が手をあげたことは事実だ。
「リリーム様。お怪我は?」
「うーん。ちょっとばかし、頬が痛いかなー」
「そうですか……」
ガイルさんが事実確認にリリーム様の頬を診て……怒りを含んだ眼差しを向けられた。
「マコト殿。これはもう友好条約は破棄ということでよろしいですね」
「それは……!」
「こちらとしても大切な姫君を傷つけられた。引き下がることができません。少々、乱暴な言い方ですがそこのお姫様を首を頂きたいですね」
「っ!」
自分自身でも驚くほどの殺気をガイルさんに向けた。
それだけは許されない。俺の大切な者をこれ以上、奪わせはしない。
「おっと、その殺気は素晴らしいです。ですが、こちらとしても引き下がれません……どうやって、この場を収めましょうか?」
「………………それは」
賠償金、謝罪、魔王国は魔王は受け入れてくれるだろうか? いや、娘を傷つけられて黙っているはずがない。戦争に発展してしまえば国が疲弊する。それだけは避けなければならない。
どうすればいい。どうすればこの場を収めることができる。
考えても、考えても答えが出ない。どうしようもないじゃないか……と諦めていたその時に思い出す。
『ちょっとばかり冒険に行ってくる。留守番は頼んだぞガキ」
『待ってください! 今、あなたがいなくなるとどうなるのか……!』
『大丈夫だ。お前が何とかしろ……セレスのことは頼んだぞ』
『いか、ないで!! 王―――!!』
あの時、俺はこの国を任された。一番大事なことだ。大切な者がいて、大切な場所がある。
そのためにはどうしたらいい? 邪魔なものは何だ。
この国を守るためにはどうすればいい
『バカはバカらしく行動しやがれ』
あの人の言葉を思い出す。確かにその通りだ。
だったら、今やることは決まっている。賢く考えるなんてものは俺には似合わない。
バカらしく、大切なものを守るために行動してやる。
「いいわよ! やってあげるわ!! 負ける訳……」
「セレスは黙ってろ!!」
「っ!!」
もう敬語は必要ない。セレスは驚いているがそんなことは歯牙にもかけない。
膝を突き、地面を頭に擦り付ける。
「大変、申し訳ありませんでした」
「謝罪……ですか。土下座と言うやつですね。一応聞いておきますがマコト殿はこの国でもだいぶ高い位置におられるという自覚はあっての行動ですね?」
「はい。すべては私の責任です」
今は土下座するしかない。こっちが悪いんだ。
バカでもわかる。
「私を好きにしてください。ですので、どうか……どうか……!」
「なにをっ!」
セレスが憤って叫びそうになるのを止める。
「そんなことは」
「セレスは黙ってろって言っただろ!!」
「くっ!」
後は……リリームの機嫌次第だ。
「どうでしょうか?」
「いいわね。本来の目的とは違うけど許してあげる。その代わり……マコト、あなたは魔王国に来るのよ。それが条件よ」
「わかりました」
そんな条件でいいなら二つ返事でいい。
「リリーム様。よろしいのですか?」
「別に―。目的は果たせたから帰るとしよっか。今はマコトの顔を立ててこの場では暴れないであげるね?」
「ありがとうございます」
これで、この場はどうにかなった。
後は……いや、考えるのはやめておこう。
俺の持っているものを思い出せ。この10年で身につけた力を、知恵を、魔法を。
その後は後処理をユキに任せて、俺が自由になるために行動をする。
各方面への引継ぎを行い、部屋を片づけた。
「来客? そんな予定は入っていないはずだが」
「えと、先鋒よりどうしても姫様に会いたいとのことです」
「国の名前は?」
「……魔王国です」
「っ! わかった、すぐに謁見できるように伝えてください」
「わかりました」
魔王国と言われ、緊張が走った。帝都に属していない国の一つであり、4年前に戦争がありどうにか終戦に導くことができた相手だ。もし、粗相の1つでもやらかしたらとんでもないことになる。
急遽、準備を推し進めセレス様を説得し、会談の場に持ち込むことができた。
「はぁ、こんなことをしないといけないだなんて……憂鬱よ」
「セレス様、面と向かっては言わないでくださいよ」
「わかっているわよ。ユキ、通していいわ」
「かしこまりました」
なんとか間に合った。ユキが相手を連れてくるまでの間は一息つくことができる。
(それにしても、一体何の用だ? 魔王が来るならいつもなら手紙の一つでも渡してくるはずだ)
考えられるのは魔王国にてクーデターが発生したとかを想像してしまうがあの魔王に敵う相手がいるのかと思ってしまう。
そうこう考えている内にユキが相手を連れてきた。
「あっ、ごめんねー。急に押しかけちゃって、迷惑だったかな?」
「いいわ。今日は何の用かしら?」
連れてきた相手は魔王国の複数いる姫君の1人であるリリーム=サキュバス様だった。
扇情的なスタイルの持ち主であり、ピンク色の長髪だけがその素肌を隠している。正直、初めて会った時は3度見したし、どうにかチラ見できないか考えたこともあった。なお、その度にユキ、もしくはセレスから背中に蹴られた。
その横に付くのは俺に執事のイロハを教えてくれたガイル=ゴブリンさんだ。緑色の筋肉質な肌をピチピチの燕尾服が悲鳴をあげながら覆っている。普段なら魔王につく彼がリリームの隣にいるのは珍しいことだ。
挨拶もそこそこにリリーム様は要件をしゃべり始める。
「いやー、ちょっと相談があってさぁ」
(ん、こっちを見たのか?)
おちゃらけた態度をしているが、一瞬だけ真剣な視線に反応する。
「女性だけの内談ってできる?」
……なにか嫌な予感がする。
これは断った方が無難だ。
「リリーム様、それは申し訳ありませんが」
「いいわ。ユキだけ残して全員、部屋から出なさい」
「セレス様!?」
いつもなら一切口出ししないセレス様が俺の提案を却下した。
「その代わり、そっちもあなただけ残るのよ。できるわよね、リリーム」
「ははっ、いいよー」
「マコト、聞いたわね。すぐに部屋から出ていきなさい」
ここまでくると俺の口出しをすることができなくなる。
嫌な予感はするがここはユキがいるからには大事には至らないはずだ。
目線でユキに任せたぞと伝えるとウインクが返ってきた。
「……では、何かあればこのベルを鳴らしてください。すぐに駆けつけます」
懐からもしものために愛用しているベルを取り出してセレス様に握らせて、退出する。
ガイルさんも一緒に出るが気を抜くことができそうになかった。
隣の部屋にガイルさんを案内し、俺は自身の成長を見てもらうために紅茶を淹れた。
「ふむ、だいぶ板についてきましたね」
「その節はありがとうございます」
自慢の髭を湯気で濡らしながらほめてくれた。
「私も初めての弟子が上達しているのはうれしいものですよ」
そういってもう一口とカップを近づける。
俺も少しだけ張り詰める神経を緩めて対面で紅茶を頂く。
蒸らす時間、温度、茶葉の量、どれも満足が行く出来になっていてほっとする。
「さて、ここなら誰も聞いてませんから聞きますがあれから誰か孕ませましたか?」
「っ!?」
ほっとしたのも束の間。魔王国特有の発言がとんできた。
「その様子だとまだ見たいですね……もったいない」
「ガ、ガイルさん。さすがにそれは踏み込み過ぎですよ」
ユキとはそういう関係だけど避妊の魔法をかけている。
「そうですか? あなたほどの強さを持っているのならば将来、我が子を1人嫁に出そうと思っているのですよ」
「こ、子供の将来を奪うのも……」
「大丈夫ですよ。意思は尊重します。まぁ、女は男の力強さに惹かれるもの。あなたの強さなら娘が嫌がるとは思いませんけどね」
「勘弁してください」
最強こそ史上である。魔王国にはそういう風潮がある。それゆえに帝都に対し何度も戦争を仕掛けては強いものが引き抜かれ、4年前もゴブス王を奪い去ることが目的で戦争が起きた。王の英断がなかったら今でも戦争は続き、死者が出たかもしれない。
話はそれたが、俺自身にもこの国を守るという使命があるまだ子供を作るには早いと思っている。
「それにしても、そろそろあなたは決断するべきですね」
「……なんのことですか?」
「あなたの身の振り方についてです。この国を守るためと言っていますが風のうわさではセレス様の傲慢なご様子しか聞きません。それはひとえにあなたが制御できていないからですよ」
「…………わかっています」
耳が痛い話だ。
「前王は素晴らしい方でした。それを支えていたあなたも素晴らしかった。未熟なりとも一生懸命に頑張っていた。ですが、今のあなたは素晴らしくない……賢く生きようとただ、流されているだけです」
………………。
「決断するのか、流されるのか各々の選択です。ですが、私はもう一度、あなたの情熱を」
その時だった。隣の部屋から食器から何かが割れる音がした。
「セレス様!?」
「姫!!」
お互いに大切な者の身に何かがあったと悟った。ドアから出るのが煩わしく、ガイルさんが腰の剣で壁を切り裂き、俺が蹴ってぶち抜いた。
「こ、これは……」
そこには目を疑う光景が繰り出されている。
王座から立ち上がり手をあげるセレス様。
その足元で頬を抑えるリリーム。
何もしないで静観するユキ。
客であり友好関係にあるリリームにセレス様が手をあげたことを一目見てわかった。
「ははっ、意外と手が出るタイプなんだね」
「……このアマ! 許さないわよ!!」
「セレス様!!」
振り上げた手を掴み、制止する。すでにまずいことになっているがこれ以上は取り返しがつかなくなる!
「放して!! 放しなさい!!」
「だ、駄目です! いくらお嬢様の命令といえど聞くことができません!!」
どうしてこんなことになったんだ。ユキの方に顔を向け問いかける。
「ユキ! どうして止めなかったんだ!!」
「マコト。申し訳ありませんが、今回はあちらに非が……」
駄目だ。ユキはセレス様の肩を持つようだ。
例え、どんな理由があろうとセレス様が手をあげたことは事実だ。
「リリーム様。お怪我は?」
「うーん。ちょっとばかし、頬が痛いかなー」
「そうですか……」
ガイルさんが事実確認にリリーム様の頬を診て……怒りを含んだ眼差しを向けられた。
「マコト殿。これはもう友好条約は破棄ということでよろしいですね」
「それは……!」
「こちらとしても大切な姫君を傷つけられた。引き下がることができません。少々、乱暴な言い方ですがそこのお姫様を首を頂きたいですね」
「っ!」
自分自身でも驚くほどの殺気をガイルさんに向けた。
それだけは許されない。俺の大切な者をこれ以上、奪わせはしない。
「おっと、その殺気は素晴らしいです。ですが、こちらとしても引き下がれません……どうやって、この場を収めましょうか?」
「………………それは」
賠償金、謝罪、魔王国は魔王は受け入れてくれるだろうか? いや、娘を傷つけられて黙っているはずがない。戦争に発展してしまえば国が疲弊する。それだけは避けなければならない。
どうすればいい。どうすればこの場を収めることができる。
考えても、考えても答えが出ない。どうしようもないじゃないか……と諦めていたその時に思い出す。
『ちょっとばかり冒険に行ってくる。留守番は頼んだぞガキ」
『待ってください! 今、あなたがいなくなるとどうなるのか……!』
『大丈夫だ。お前が何とかしろ……セレスのことは頼んだぞ』
『いか、ないで!! 王―――!!』
あの時、俺はこの国を任された。一番大事なことだ。大切な者がいて、大切な場所がある。
そのためにはどうしたらいい? 邪魔なものは何だ。
この国を守るためにはどうすればいい
『バカはバカらしく行動しやがれ』
あの人の言葉を思い出す。確かにその通りだ。
だったら、今やることは決まっている。賢く考えるなんてものは俺には似合わない。
バカらしく、大切なものを守るために行動してやる。
「いいわよ! やってあげるわ!! 負ける訳……」
「セレスは黙ってろ!!」
「っ!!」
もう敬語は必要ない。セレスは驚いているがそんなことは歯牙にもかけない。
膝を突き、地面を頭に擦り付ける。
「大変、申し訳ありませんでした」
「謝罪……ですか。土下座と言うやつですね。一応聞いておきますがマコト殿はこの国でもだいぶ高い位置におられるという自覚はあっての行動ですね?」
「はい。すべては私の責任です」
今は土下座するしかない。こっちが悪いんだ。
バカでもわかる。
「私を好きにしてください。ですので、どうか……どうか……!」
「なにをっ!」
セレスが憤って叫びそうになるのを止める。
「そんなことは」
「セレスは黙ってろって言っただろ!!」
「くっ!」
後は……リリームの機嫌次第だ。
「どうでしょうか?」
「いいわね。本来の目的とは違うけど許してあげる。その代わり……マコト、あなたは魔王国に来るのよ。それが条件よ」
「わかりました」
そんな条件でいいなら二つ返事でいい。
「リリーム様。よろしいのですか?」
「別に―。目的は果たせたから帰るとしよっか。今はマコトの顔を立ててこの場では暴れないであげるね?」
「ありがとうございます」
これで、この場はどうにかなった。
後は……いや、考えるのはやめておこう。
俺の持っているものを思い出せ。この10年で身につけた力を、知恵を、魔法を。
その後は後処理をユキに任せて、俺が自由になるために行動をする。
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