死神の館の主様

XX GURIMU

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死神の館②

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「力……?」
 思わず、聞き返した。
 ゆっくりと頷くと魅惑的な口を動かして、しゃべり始める。
「ええ、そうよ。死んでも死にきれない。激しく燃えるはず魂が見る影もないものことがそれの正銘ね。私にはそれが分かる。あなたにはそれ相応の未練がある」
「未練?」
 訳が分からない。
 彼女の瞳を見ると当然、目が合い照れてしまう。
 クラスの女子に感じたことのないこの思いはなんだろう。
 いや、それよりも確認したいことがある。
「あの、僕って死んだんですか?」
 思わず、僕は慣れない敬語を使って聞いた。
「……死んだことを理解していないのは初めてだわ」
 アリスは目を見開いて、驚いている。
 口元に手を当てて、話すべきか迷っているのがわかる。
 やがて、手を下ろすと呆れたように言った。
「つい、5分前のことよ。なにも思い出せないの?」
「5分前?」
「ええ、あなたの死亡時刻は23時59分。死因は大量の出血による失血死。この状態なら相当苦しい思いをしたはずだわ」
「はぁ……」
 なんだか、ドラマのようなことを言っているが半分ぐらい何を言っているかよくわからなかった。
 ただ、僕が死ぬのに苦しかった記憶はない。
 そもそも、僕は死んだ自覚はない。
 アリスは嘘を言っているのだろうか?
 問いただすために、聞いてみた。
「僕って、その、事故にあったのかな?」
 車に轢かれた。もしくは自転車から派手に転んだのだろうか?
 もし、その場合だったら頭を打ったりしたら記憶がとんでいたり、気絶していたりするかもしれない。
 それだったら、死んだのも他生は納得することが……。
「いいえ、あなたは通り魔にやられて死んだわ」
「はい!?」
 絶対に忘れるはずないじゃん!!
 思っていたよりも刺激的な展開にびっくりした。
 そんな漫画みたいな展開が……。
(あ、れ……?)
 その瞬間、僕の頭の中に……身体の中にできてあった空洞が埋まった。
 僕は帰り道、信号待ちをしていたところを襲われて…………。
 頭を抱えて、その場でうずくまる。
 痛い。怖い。苦しい。
「ああ、なんだ。覚えているじゃない。でも、おかしいのよね。ここに来る奴はみんな何か復讐したいとかそういう気持ちが強い奴が多いのにあなたは無垢な塊じゃない」
 アリスの言っていることがわからない。
 ただ……ただ、ただ…………。
(僕は死んだのか?)
 自分が死んでしまったという事実を受け入れることができなかった。
  
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