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魔物ハンターとサキュバス
咲宮(さきみや) 雫(しずく) 身長169cm B108 W59 H89 Eカップ ㉖
しおりを挟む暗い暗い、闇の底から意識が戻るとそこは知らない天井でした。
ふかふかのベッドの上に寝かされて、体を起こそうとするにも力が入りません。
「雫様!? よかった。目が覚めたのですね」
傍には美羽さんがいて、私の手を握って安堵しています。
「こ、ここはどこですか?」
「私の家です。水をお注ぎしますね」
手慣れた仕草でガラスのコップに水を入れてくれた。
堂に入った身のこなしだが、その小さな体躯では妹に勧請されているようにしか見えなかった。
体を起こすのを手伝ってもらい、後ろに倒れこむのを枕で支えてもらう。
受け取った水を飲み干して、コップを預けます。
乾いた体に冷たい水がすみずみまで染み渡ります。
「お身体の調子はどうですか?」
「だ、大丈夫です。それよりも、私はどうして美羽さんの家に……」
そこまで言葉を話した、その時思い出しました。
メリナが私を起こしたこと。詩衣里さんに助けてもらったこと。
詩衣里さんの命令を受け、学園から逃げ出したこと。
「わ、私は……。そうです。詩衣里さんは、メリナは!?」
部屋の中を見回すも姿がありません。
もしかして……。
「2人は帰ってきてません。恐らくは」
「っ!」
想像はしてました。簡単に思いつくことでした。
だけど、その現実を受け入れるにはつらい出来事です。
「私の……私のせいです」
「雫様?」
「私が……ぜん、ぶ。ぜんぶ!!」
「雫様!!」
バチンッと頬を叩かれます。
いきなりの出来事に把握できず、ポカンと美羽さんを見上げます。
「正気に戻りました? では、後悔はもうやめです」
「でも……」
「でも、だけども、しかしも! そんな言葉はどうでもいいのです!!」
「はっ?」
「人は振り返っても何もできません! 反省? 公開? そんなものは前を向いた後で考えてください! あなたは……あなたにしかできないことがあるでしょう!?」
「っ!!」
そうだ。何度目でしょうか。
後悔したのは……そして、その度に勇気づけられたのは……。
「…………これが服に挟まれていました」
「これは、水鉄砲?」
「メリナ様が愛用しているものだと思われます」
どこに挟まっていたのか気になりますが後回しです。
妙にしっくりと来る中身の入っていない悲しい水鉄砲を見つめます。
あの、メリナがどうでもいいことをするわけがないです。
恐らくは、これが私に残されたできること。
なら……。
「雫様。申し訳ありませんが、もうすぐここも危なくなります」
「ええ、わかってます。ムルトの手先が来るのでしょう?」
「はい。ご支度を」
「わかりました」
動きたくないという手足に力を籠めます。
頭が休めと命じているのがわかります。
だけど、止まることなんてできません。
「こっちです!」
私は美羽さんの後ろを追いながら自分の中で決心します。
(ムルト。ひとまずは私の負けです。ですが、絶対に……絶対に勝ちます!!)
それ以降、私たちはムルト達から隠れ潜む逃亡生活が始まりました。
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