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第2章 Kingdom of the Demon
第43話 燎火一閃
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フローレンスとジェラシア。この2人が戦えば、ジェラシアが勝つのは目に見えていた。
フローレンスはまだ若く、経験も浅い。それでも王国騎士団の教えと、これまでの戦いで培った力を信じて、敵に立ち向かってきた。しかし、目の前に立つジェラシアは、次元が違う。奈落六大将はムラサメのような伝説の冒険者が、命を代償にするほどの呪い武器に頼ってやっと倒せるレベルであり、現在最強であるアルガードでさえも到底及ぶ相手ではない。
ジェラシアの獣のような眼差しがフローレンスに突き刺さる。
「赤髪の騎士か、奴を思い出すな…。だが、お前は奴と違って弱いな。お前如きが俺に挑むのは命の無駄遣いだ」
ジェラシアは冷酷に言った。フローレンスは、息を呑んで剣を握りしめた。ジェラシアの言葉に何かが引っかかる。
「お前が父を殺した…のか?」
フローレンスの声は震えていた。ジェラシアはフローレンスが、かつて倒した冒険者に似ていると思っていたが、その言葉を聞き、フローレンスがその冒険者の娘なのだと確信した。
「あぁ、そうだ。この俺が人生において1番苦戦した相手だ」
フローレンスの胸が激しく高鳴った。父を失った理由が、まさか目の前に立つ敵によるものだとは。ジェラシアは父を、人生において1番苦戦した相手だと語った。しかしその言葉が、フローレンスの心を深く抉った。
「お前…! どうして、どうして父を…!」
フローレンスの目には涙が浮かび、声が震えた。
ジェラシアは一歩踏み出し、冷徹な目でフローレンスを見下ろした。
「それが戦いだ。弱者が消えていく、ただそれだけのこと。お前の父も、それにすぎない」
フローレンスの心は怒りと悲しみで揺れ動く。父のその全てがジェラシアの言葉で否定されるような気がした。
「私はお前を許さない!」
フローレンスは叫び、必死に剣を構えた。すぐにでも駆け出して、ジェラシアを討つつもりだった。しかし、彼女はジェラシアを相手にするには経験値があまりにも足りない。ジェラシアの圧倒的な力には到底勝てるはずがなかった。
ジェラシアはその姿を見て、呆れたように言い放つ。
「その剣で俺を討つつもりか? だが、お前にはまだ無理だ」
ジェラシアが爪を振り上げ、フローレンスに迫る。フローレンスは必死に避け、間一髪でその一撃をかわす。しかし、ジェラシアの動きは速すぎて、フローレンスは反撃の隙を見つけることができなかった。
その時、フローレンスは、父の教えを思い出した。それは直接聞いたものではないが、今も騎士団の中で受け継がれている言葉である。
「どんなに強大な敵でも、心を強く持て。力だけでは勝てない」
フローレンスは深く息を吸い、心を落ち着ける。ギルクラウド家に伝わる必殺技を使う時が来た。フローレンスは心を決めていた。彼女にとって、父の仇を討つことが目的だからである。
ジェラシアが再度爪を振り下ろす。その瞬間、フローレンスは捨て身の一撃に賭けた。ジェラシアの爪はフローレンスの鎧を紙切れのように引き裂く。それでもフローレンスは怯まない。
ーーーー
フローレンスが騎士団に入ったとき、ソフィアが話してくれたことがあった。
「あなたの父、ヴァンガードさんは王国騎士の歴史上、最強と言われていたわ。若かった頃の私や、兄の目標でもあった」
ソフィアだけではなく、ヴァンガードを知る者達は皆、彼の凄さを語っていた。特に、彼の必殺技であり、ギルクラウド家に伝わる奥義、燎火一閃の破壊力は凄まじかったらしい。
彼が奈落に挑んでいた理由は、オーデインの先代、ボル=グランドリオンの指示であった。オーデインのような、あるかも分からない不老不死の秘薬を探せなどという依頼ではなく、奈落化していく町や自然、やがて世界を飲み込みかねない奈落の脅威。その奈落の元凶の破壊だった。
5人の仲間達と出会い、後に伝説と語り継がれるパーティにまで成長したが、奈落六大将との戦いでヴァンガードはその命に幕を閉じた。
ヴァンガードの死は、当時まだ20歳前後だったアルガードやソフィアをはじめ、多くの騎士や、街の人々から悲しまれた。
当時まだ1歳だったフローレンスは、父の死について理解していなかった…
だが、いまならわかる。いまだからこそわかる。偉大なる父の死の意味と、自身の存在する意義を!
ーーーー
「燎火一閃!」
誰に教わった訳でもない。だが、ギルクラウド家の血が、フローレンスに奥義を発動させた。
「この技は…!!」
灼熱を纏った鋭い一撃は、ジェラシアを掠めた。相打ちを狙った一撃でさえも、ジェラシアを完璧には捉えられなかった。
フローレンスは魔法を使えない。だが、この世界の人々は、属性をもっている。マリーやマチルダのトワイライト家は光、エリスやミリスのマギア家は風、中には2つ以上の属性を持つ者もいる。
ギルクラウド家の血が持つ属性は火。魔法は使えなくとも、その思いが、決意が、積み重ねてきた歴史が、努力が、時として属性を宿す攻撃を生み出す。
決死の必殺技は、ジェラシアにはほとんどダメージはなかった。そしてジェラシアの爪に直撃したフローレンスは、その一撃で致命症を受けていた。
フローレンスは息を荒げながらも、必死に立ち続けていた。彼女の剣は血に染まり、腕も痛みで震えていたが、それでも心は折れなかった。ジェラシアに一撃を加えたことで、かろうじてその不敵な表情に微かな変化が見られた。しかし、彼女にはまだ勝機など見当たらなかった。
※フローレンス
フローレンスはまだ若く、経験も浅い。それでも王国騎士団の教えと、これまでの戦いで培った力を信じて、敵に立ち向かってきた。しかし、目の前に立つジェラシアは、次元が違う。奈落六大将はムラサメのような伝説の冒険者が、命を代償にするほどの呪い武器に頼ってやっと倒せるレベルであり、現在最強であるアルガードでさえも到底及ぶ相手ではない。
ジェラシアの獣のような眼差しがフローレンスに突き刺さる。
「赤髪の騎士か、奴を思い出すな…。だが、お前は奴と違って弱いな。お前如きが俺に挑むのは命の無駄遣いだ」
ジェラシアは冷酷に言った。フローレンスは、息を呑んで剣を握りしめた。ジェラシアの言葉に何かが引っかかる。
「お前が父を殺した…のか?」
フローレンスの声は震えていた。ジェラシアはフローレンスが、かつて倒した冒険者に似ていると思っていたが、その言葉を聞き、フローレンスがその冒険者の娘なのだと確信した。
「あぁ、そうだ。この俺が人生において1番苦戦した相手だ」
フローレンスの胸が激しく高鳴った。父を失った理由が、まさか目の前に立つ敵によるものだとは。ジェラシアは父を、人生において1番苦戦した相手だと語った。しかしその言葉が、フローレンスの心を深く抉った。
「お前…! どうして、どうして父を…!」
フローレンスの目には涙が浮かび、声が震えた。
ジェラシアは一歩踏み出し、冷徹な目でフローレンスを見下ろした。
「それが戦いだ。弱者が消えていく、ただそれだけのこと。お前の父も、それにすぎない」
フローレンスの心は怒りと悲しみで揺れ動く。父のその全てがジェラシアの言葉で否定されるような気がした。
「私はお前を許さない!」
フローレンスは叫び、必死に剣を構えた。すぐにでも駆け出して、ジェラシアを討つつもりだった。しかし、彼女はジェラシアを相手にするには経験値があまりにも足りない。ジェラシアの圧倒的な力には到底勝てるはずがなかった。
ジェラシアはその姿を見て、呆れたように言い放つ。
「その剣で俺を討つつもりか? だが、お前にはまだ無理だ」
ジェラシアが爪を振り上げ、フローレンスに迫る。フローレンスは必死に避け、間一髪でその一撃をかわす。しかし、ジェラシアの動きは速すぎて、フローレンスは反撃の隙を見つけることができなかった。
その時、フローレンスは、父の教えを思い出した。それは直接聞いたものではないが、今も騎士団の中で受け継がれている言葉である。
「どんなに強大な敵でも、心を強く持て。力だけでは勝てない」
フローレンスは深く息を吸い、心を落ち着ける。ギルクラウド家に伝わる必殺技を使う時が来た。フローレンスは心を決めていた。彼女にとって、父の仇を討つことが目的だからである。
ジェラシアが再度爪を振り下ろす。その瞬間、フローレンスは捨て身の一撃に賭けた。ジェラシアの爪はフローレンスの鎧を紙切れのように引き裂く。それでもフローレンスは怯まない。
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フローレンスが騎士団に入ったとき、ソフィアが話してくれたことがあった。
「あなたの父、ヴァンガードさんは王国騎士の歴史上、最強と言われていたわ。若かった頃の私や、兄の目標でもあった」
ソフィアだけではなく、ヴァンガードを知る者達は皆、彼の凄さを語っていた。特に、彼の必殺技であり、ギルクラウド家に伝わる奥義、燎火一閃の破壊力は凄まじかったらしい。
彼が奈落に挑んでいた理由は、オーデインの先代、ボル=グランドリオンの指示であった。オーデインのような、あるかも分からない不老不死の秘薬を探せなどという依頼ではなく、奈落化していく町や自然、やがて世界を飲み込みかねない奈落の脅威。その奈落の元凶の破壊だった。
5人の仲間達と出会い、後に伝説と語り継がれるパーティにまで成長したが、奈落六大将との戦いでヴァンガードはその命に幕を閉じた。
ヴァンガードの死は、当時まだ20歳前後だったアルガードやソフィアをはじめ、多くの騎士や、街の人々から悲しまれた。
当時まだ1歳だったフローレンスは、父の死について理解していなかった…
だが、いまならわかる。いまだからこそわかる。偉大なる父の死の意味と、自身の存在する意義を!
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「燎火一閃!」
誰に教わった訳でもない。だが、ギルクラウド家の血が、フローレンスに奥義を発動させた。
「この技は…!!」
灼熱を纏った鋭い一撃は、ジェラシアを掠めた。相打ちを狙った一撃でさえも、ジェラシアを完璧には捉えられなかった。
フローレンスは魔法を使えない。だが、この世界の人々は、属性をもっている。マリーやマチルダのトワイライト家は光、エリスやミリスのマギア家は風、中には2つ以上の属性を持つ者もいる。
ギルクラウド家の血が持つ属性は火。魔法は使えなくとも、その思いが、決意が、積み重ねてきた歴史が、努力が、時として属性を宿す攻撃を生み出す。
決死の必殺技は、ジェラシアにはほとんどダメージはなかった。そしてジェラシアの爪に直撃したフローレンスは、その一撃で致命症を受けていた。
フローレンスは息を荒げながらも、必死に立ち続けていた。彼女の剣は血に染まり、腕も痛みで震えていたが、それでも心は折れなかった。ジェラシアに一撃を加えたことで、かろうじてその不敵な表情に微かな変化が見られた。しかし、彼女にはまだ勝機など見当たらなかった。
※フローレンス
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第3章は4月3日から、平日AM6:00に更新!ご愛読ありがとうございます(^^) これからも誠心誠意、全身全霊で執筆を続けていきます!
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