上 下
9 / 10
本編

8話 初耳ですけど side湖遙

しおりを挟む



 今年もこの季節がやってきましたー。寒いと人肌恋しくなっちゃうよねぇ。わかるわかる。俺も真さんにぎゅってされるの大好きだもの。ぽわーって暖かくて気持ちぃんだよねぇ。
 でも、せっかくの金曜日なのに、その大好きを断らないといけないなんて悲しくなっちゃう。
 毎年クリスマスイヴはしょうちゃんとの約束があるから……仕方ないよね。





「湖遙!」


 待ち合わせのホテルに着くと、いつもの様に菖ちゃんが両手を広げて出迎えてくれる。
 迷わず菖ちゃんに飛びつき、温もりを摂取してやるのだ。
 ふぬー……やっぱり何か違ぁう……。菖ちゃんもいいにおいだけど、真さんならもっとホッとするのに。


「どうした?いつもより熱烈じゃないか」


「そう?でも真さんの方がポカポカなんだよぉ」


「まこ……?相変わらず意味がわからなくてかわいいな。そんなお前にはこれをあげよう。じゃあ早速だけどお願いできるか?」


「はぁい」


 差し出された手からコロンと飴を受け取った。やったぁ、後で食べよ。
 慣れた菖ちゃんは彩芽の様に俺の発言に深入りしない。何事も深く気にしないと言う所は俺とそっくりだと思う。
 よぉし、今年も頑張るぞ。今日は眠れないからねー。


「湖遙くん!!」


 菖ちゃんと手を繋いでホテルに入ろうとした所で肩に強い衝撃を受け、クルッと後ろに振り向かされる。
 そこには俺が求めていた温もりが、いつもと全く違う様子で立っていた。


「はぇ……?真さん?どうし……」
「何でこんな所にいる……」


 それはこっちの台詞。ここ、ホテルなんだけど……ラブの付く。誰と来たの?
 真さん……?顔がすごく怖い。


「ちょっ、あんた……」
「あなたには聞いていない。黙ってろ」


 菖ちゃんが声をかけてくれたけど、すぐに遮られてしまう。きゅわ……たまに出るワイルド真さんだぁ……。胸の辺りがきゅっとする。


 真さんも誰かとこんな所に来るんだ……俺以外とも……。いぁ、そりゃ来るよね。今日もやる気だったのに断っちゃったもんね。あんなに絶倫さんなんだもの……当然か。
 今度は胸の辺りがズキっと痛む。……どうして?


「湖遙くん、何で黙ってるの?あー……いいや。見ればわかるし聞きたくない。行こう、こんな所にいつまでもいたくないしね」


 ズキズキとキュッキュッがごちゃごちゃになって混乱しているうちに、真さんに引き寄せられる。あぁ……これ欲しかった。
 俺の意思に関係なく導かれるままに歩かされる。


「待て!お前、何してるんだ!?」


「一緒にうちに帰るだけですよ。ね?湖遙」


 ひきゃっ!?こここっ、こはるを呼び捨てっ!?初めて呼ばれちゃった……。帰るぅ!ついて行くしかないからっ、こんなかっこいいのぉ……!嬉しさで身体が打ち震える。


「……しょ、ちゃん。ごめんね、ちょっと行ってきます。またね……」


「またなんてありませんから。それじゃ、失礼します」


 最後までかっこいい真さんに連れられてタクシーに乗り込む。あれ……?一緒に来た人はいいの?
 聞きたかったけど、何だか真さんの顔が怖くて聞けなかった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「うっ、ぐすっ……も、やだぁ……真さん、何でこんな事……」


 俺、気持ちいのは好きだけど、恥ずかしいのすごくヤダ……。意地悪な真さんかっこいいけど怖い……。もしかして怒ってるの?何で?俺、何かした?


「何で?本当にわからないの?湖遙は僕のでしょ?浮気しちゃダメだよ」


 散々泣かされた後、身に覚えのない罪状が告げられる。……浮気?何それ。


「俺達……でしょ……?浮気って何の事?」


 真さんはこの世の終わりの様な顔で固まってしまった。
 大丈夫……?心配になってほっぺを撫でた。


「セフ……レ?湖遙くん……ずっとそんな関係だと思ってたの?僕達、付き合ってるんじゃなかったのか……?」


 え……付き、合う?誰と誰が?付き合うってあれでしょ?お互い好き好きになった状態の事。でもさ……


「真さん、俺に好きだって言った事ないよね?」


 途端に真さんの顔がみるみる青くなっていく。こりゃあいかんぞぉ。顔を両手でもみもみして、何とか血行を促進させようと試みる。
 頑張れ真さんの顔筋ーっ!ちゃんと動いて血流を促すのだ!


 中に入りっぱなしだった真さんがしおしおと縮み、ズルズルと抜けていく感覚につい力が入って、その拍子にスポンと抜けてしまった。
 あぁー……ソッチの血行も悪くなったかぁ。
 ソコももみもみしてあげようか?




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

調教済み騎士団長さまのご帰還

ミツミチ
BL
敵国に囚われている間に、肉体の隅に至るまで躾けられた騎士団長を救出したあとの話です

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

嫌がる繊細くんを連続絶頂させる話

てけてとん
BL
同じクラスの人気者な繊細くんの弱みにつけこんで何度も絶頂させる話です。結構鬼畜です。長すぎたので2話に分割しています。

兄が媚薬を飲まされた弟に狙われる話

ْ
BL
弟×兄

【BL-R18】魔王の性奴隷になった勇者

ぬお
BL
※ほぼ性的描写です。  魔王に敗北し、勇者の力を封印されて性奴隷にされてしまった勇者。しかし、勇者は魔王の討伐を諦めていなかった。そんな勇者の心を見透かしていた魔王は逆にそれを利用して、勇者を淫乱に調教する策を思いついたのだった。 ※【BL-R18】敗北勇者への快楽調教 の続編という設定です。読まなくても問題ありませんが、読んでください。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/17913308/134446860/ ※この話の続編はこちらです。  ↓ ↓ ↓ https://www.alphapolis.co.jp/novel/17913308/974452211

【完結】もっと、孕ませて

ナツキ
BL
3Pのえちえち話です。

兄弟愛

まい
BL
4人兄弟の末っ子 冬馬が3人の兄に溺愛されています。※BL、無理矢理、監禁、近親相姦あります。 苦手な方はお気をつけください。

処理中です...