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本編
6話 頼りになる同期 side真
しおりを挟む「……今度は何があったんだよ気持ち悪ぃな」
スマホ片手にニヤついてしまっていたらしい。横から佐伯が嫌そうに話しかけてくる。
嫌ならほっとけばいいのに。
「ふふ、何の憂もなく付き合えるのって、こんなに素晴らしい気分なんだな……」
「え……お前、まさか」
怪訝そうな顔に勝ち誇った顔で返す。
ふ、ついに卒業した僕は一味違うのだよ。
「そのまさかだよ。湖遙くんと付き合う事になった。湖遙くんはすごいんだ、僕の何もかもを受け止めてくれる」
「……ソレも?」
視線が僕の下半身に向いている。お下品だぞ佐伯。
「げほっ、まぁな。言わせるなよ」
「マジか。童貞卒業おめでとうございます。アメちゃんいる?後五年で魔法使いだったのにもったいねーな。会ったばっかでそのまましけ込んだのかよ。あんなに泣き喚いてたくせに。あの時置いていってやった俺に感謝するんだな」
今度は佐伯が勝ち誇った顔になる。その通りなんだけど何かムカつくな。
冗談かと思ったら本当に差し出してきた飴を受け取る。……初恋の味、何だそれ。
「ありがとうございます。あるのに使えない方がもったいないだろ。別に時間は関係ないし。悲しかった気持ちを全部吹き飛ばしてくれるような子なんだ。好きになって何が悪い。それに喚いてはないぞ……。そう言えば、お前もあの後恋人とは大丈夫だったのか?」
うろ覚えだけど、確かバーで飲んでた時に恋人からいつ帰って来るんだと怒りの連絡がきていたはずだ。
「あーん?大丈夫に決まってるだろ。俺らはラブラブよぉ。あつーい週末の出来事を詳しーく語ってやろうか?」
「いらんわ。聞きたいとすれば、付き合って初めてのイベントでどんなプレゼントを送るかだな」
こう見えて佐伯は今の恋人と付き合って長い。きっと恋人には誠実に向き合っているだろう。僕相手とは違って。
「まさか、もうクリスマスプレゼントとか考えてる訳?それまでもつのか?」
「……」
コイツは毎度否定しないといけない呪いにでもかかっているらしい。湖遙くんとは正反対だな。そんな奴には例のあの顔をお見舞いしてくれるっ。
「わーかったわかった!わかったからやめろソレ!腹筋が六つに割れたらお前のせいだぞっ。えっと、プレゼント?そうだなぁ……素直に欲しい物きいてみたらいいんじゃねーの?」
「割れたらむしろ感謝しろよ。実はもうそれとなく聞いてみたんだけどな、特にないらしい」
湖遙くんは遠慮してるのか無欲なのか……聞いても、また迎えに来てほしいとか、今度ちゅーしてほしいとかしか言ってこない。
物欲に乏しいなら旅行なんてのもいいかもしれないな。
「ふーん。なら花束渡して指輪パカってやってこいよ。案外王道なのが好きかもしれねーぞ?」
それだっ……!たまにはいい事言うじゃないか佐伯。
「なぁんて……」
「いいな、それ!早速帰りに指輪予約しに……いや、まずサイズを調べないと。ありがとう佐伯!」
「……な」
プレゼントが決まってやる気が出てきた。午後からの仕事も頑張れそうだ。
さっきもらった飴を袋から取り出して口に入れる。
初恋の味ね、確かによく言うけどベタだな。
ボケっとしている佐伯を放って、僕は仕事に戻った。
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