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一章 魔族の村

1話 勇者様は魔法もお得意 ちょっとだけR18

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「まっ、まてっ!こんな所でやっ、あぁっ!んっ」


「待たない、待てない。これなら背中も痛くないでしょ?」


 そうじゃないそうじゃないそうじゃなーいっ!
 オレは今、何枚も敷いて簡易なマットレスくらいになった布の上に、仰向けに転がされている。下半身からは衣類が全て取り払われ、当然の様にオレの中にはカイルのモノがガッツリと入り込んでいた。
 設備だけなら文句はない。だが貴様っ!ここを何処だと心得る!?外ぞ!屋外ぞ!!
 軽い雨宿りが出来そうなくらいの浅い洞穴だ!
 お陰様で未だに正気を保てているが、これなら何も考えられない方がましかもしれない……。


「ち……がっ、恥ずっかし、からぁっ!ふあっ……もっ動くなっ!抜いってぇ!」


 ここは魔族領の森の中。いつ魔物が出てもおかしくない危険な場所だ。魔族の村に向かう道中、少しずつ休憩を挟みながら進み、日が落ちてきた頃にこの洞穴を見つけて、今日の野営地にする事にした。
 そんな所で盛って来る奴がどこにいる!とっととやめんかエロ狼!!


「無理に決まってるよね。大丈夫、教えてもらった結界張ったから。外には音も漏れないし、姿も見えないよ」


 オレからは外が丸見えなんじゃ!
 いつも思うけど、お前の恥の沸点どこなん!?何をしたらわかってもらえるんだ、この羞恥心を!
 里帰り前日に青姦とか笑えない……。


「やだっ、て、あぅ……ほんと、お願っ」


「ダメ、嫌じゃないでしょ。こっちに集中して……ほら、もうこんなに濡らしてる。気持ちいね」


「ひぅっ!?あっ、あんっ!おくっ……ぐりぐり、だめぇ……」


 わざとグチュグチュと水音をたててオレの羞恥を更に煽って来る。
 腕を突っ張って覆い被さってくるカイルを除けようとすると、その両腕を引っ張られ、更に腰を密着させて奥を抉られてしまった。
 このままではいつもの様に流されてしまう……。
 こんな事なら余計な事教えるんじゃなかった……。
 恨むぞ!昼間のオレっ!





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 アンタレスを出て数時間、湧水を見つけて馬を休ませる為に休憩を取る事にした。
 この調子でいけば予定通り、明日のお昼には目的地の魔族の村に着けそうだな。
 魔族の村に宛てて、魔法で作った簡易の手紙『魔報』を送った。作る人によって形は違うけど、オレは何となく蝶々にして飛ばしている。ひらひらするのが綺麗なんだよなぁ。魔族間では魔力で誰から来たものか判別できる為、簡易でありながら偽装されない信用のある代物だ。


 ここは既に魔族領。元々魔気の濃度は濃い為に動物は少なく魔物も強い。休憩中でも辺りの警戒は怠れない場所だ。


「アーシェ、疲れてない?」


「ん、大丈夫。疲れたらポーション飲むし。カイルは……オレが心配するまでもないか」


 馬に湧水を飲ませながら、同じ様に隣で馬の世話をするカイルを見ると、当たり前に疲れは見えない。オレよりひ弱な訳ないもんな。


「ふふ、そうだねぇ。お気持ちだけもらっておこうかな」


 気になる事が目に入ってボーッとしていたら、ひょいとアゴを掬われてむちゅっと唇を奪われてしまった。
 お気持ちだけっつったろ。何ちゃっかり現物自足してんだ。それはイケメンだけに許された特権なんだぞ。……なので許す。


 しかしカイルの頭のが気になって吹き出してしまった。


「ぷっ、あのさ……かっこいいとこ悪いけど、ソレ何とかできないの?かっこいいのにかっこつかないってどう言う事?」


 カイルが乗ってきた馬が、髪にもしゃもしゃと齧り付いている。今餌食ったとこだろ。それは草じゃねぇ。
 あれか、色んなものに好かれ過ぎる勇者フェロモン。


「うーん、何だろうねぇ。何もしてないんだけど」


「何もしてないからじゃない?そう言えばオレのせいでヴァンさんに習えてないのか……。前に言ってた威圧、教えようか?」


 二人で湖に出かけた時にも勇者フェロモンのせいで、そこそこな規模の触れ合い動物の様な状況になった事があった。
 ここが魔族領で良かったな。動物が少ないお陰で、今日はその馬だけだ。オレが乗っていた馬は軽い威圧の効果なのか、大人しく水を飲んでいる。


「お願いしようかな……。このままだと髪が無くなっちゃうよ。イタタタタ……」


「こら、やめな。ふーっ!これやるからあっちで食ってこい。お前も一緒に行っておいで」


 馬に軽く魔力を吹きかけてカイルから引き剥がし、二頭におやつの人参をやって木陰に誘導した。
 解放されたカイルの髪は馬の唾液でとんでもない事になっている。


「毎度ごめんね、助かったよ」


「まだ助かってないでしょ。ほら、頭洗いなよ。髪が乾くまで威圧の訓練しよう」


「うん!よろしくお願いします」


 それからはこいつの勇者たり得る所以をまざまざと見せつけられる事になった……。





「……流石だな。こんな短時間でできる様になるとは思わなかったよ。それを薄くして常に纏っておけば、咄嗟の攻撃にも対応できるし、必要以上に動物も寄って来ないはずだ」


 まさか髪がまだしっとりと湿っている間に習得してしまうとは思っていなかった。元々器用なのもあるだろうが、流石加護『勇者』。経験が直接力になるってゆーアレね。ネーミングはまんまだが、最強の加護だな。女神が喜ぶ訳だ。


「うん、これくらいなら寝る時以外は維持していられそう。アーシェは教えるの上手だね。すごくわかりやすかった」


「……褒めても何にもでねーよ。あ、それの応用で色々できるけど、ついでだしやってみる?持ってる属性によって出来る事は限られるみたいだけど、オレ、意識して属性つけてないから、どの魔法にどの属性が必要かとかわかんないんだよなぁ。まあやってみてできたらラッキーって事で……」


 褒められて調子に乗ったんだよな。オレのバカ……。
 そして簡易結界と、それに付属させる防音、遮蔽の魔法を習得し、冒頭に戻るのである。
 空間魔法一つ覚えるのに、オレは一ヶ月半かかったのにーっ!勇者ずるい!魔王の加護くれーっ!




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