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四章 失踪の秘密

25話 大丈夫だよ?猫だもの

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「いにゃー、寒かったにゃあー。まさか朝まで閉め出されるとは思わなかったけどね?別に問題はないよ?何せボクは猫だから。家の外に艶かしい声が漏れてても気にならなかったよ?だってボクは猫だもにょー」


 暖炉の前でお気に入りのクッションに座りながら、尻尾を不機嫌にブンブンと振るケイト。
 ……ごめんて、返す言葉もありませんとも。
 いきなりだったから、防音魔法を掛け忘れたんだ。
 オレだってまさかだったけどね?明るくなるまで続けるなんて誰が思います?絶倫すぎて最早恐怖ですわ。
 それに付き合えたオレもすごい。こりゃあオレも知らない何かがあるな。


 多機能の何かを貰ったけど、何ができる物かよく分からず、説明書ももらえなかった様な感じ。
 言い得て妙とはまさにこの事だな。


「で、何?勇者とデキたの?の避けてたんじゃにゃかったっけ?」


 絶妙な例えができたと満足していると、ケイトにガッツリ図星をつかれる。
 避けてたさ。だって、終わりが見えてて始めるバカはいないでしょ?
 それが今のオレですけどね。


「まだ曖昧な感じ……かな。もちろん断るつもりだったし、実際ハッキリ断ったんだ。でも何でだろうな、カイルだけはダメだったんだ……」


 アレを無かった事になんてしない。流されたんじゃなくて、オレからも求めた結果だ。


「ふぅん。あのさ、ボクずっと言い続けてるけど、別に避けなくていいんじゃにゃいの?表面上は親しくしても心の底では受け入れないにゃんて、そんなの相手も悲しいにゃ。ご主人様だって、色々取っ払えばただの人間でしょ。一人じゃどうしたって生きていけない生き物なんにゃ。封印はちゃんとできてるんだし、別にこのままでも……」


 ……オレだって好きで避けてるんじゃない。
 巻き込むのが怖かった。アーデを失った悲しみは、今も消える事なくジクジクと心に巣食っている。そんな想いを大切な人達に背負わせたくない。街のみんなには甘えてしまっているけれど、心のどこかでストッパーがかかる。だから仕方ないんだ。
 ないはずだったんだ……。カイルが優しくオレを包み込むまではそう思ってた。


 拒んでも拒んでも無理強いする事なく、ただただ大丈夫だと受け入れてくれた。
 オレも好きにしていいんだと手を差し伸べてくれた。
 話してない事もいっぱいあるのに、こんなオレを好きでいてくれるやつを、どうしてこれ以上拒めるだろう。


 忘れそうになるけど、オレもただの人間だもんな……。きっと無意識に、受け入れてくれる誰かを探してたのかもしれない。
 カイルなら、最後の瞬間も受け入れてくれるだろうか……。


「うん……。ありがとうケイト、でもこのままはダメだ。もう少し考えてみる。カイルとも話しがしたい」


「うにゅ……。まだ時間はあるし、後悔しないようにしっかり考えるといいにゃ。話すならこの家でもいいけど、閉め出すのはもう勘弁にゃ」


 ザクっと言葉のナイフが急所に刺さる。
 だからごめんて。やめて恥ずかしいから。
 ケイトの気遣いで場の空気が和んだ気がする。


 そう言えばそろそろヴァンさんが忙しくなっちゃうし、トーマも交えて魔王討伐当日の事を話し合っておかなくちゃ。


「わかったからもうその話は禁止ーっ!ヴァンさんの所寄ってからギルド行ってくる!」


 恥ずかしさを誤魔化す様に家から飛び出た……ところで何かの視線を感じる。


「ん?ふむ……。今はいっか」


 覚えのある気配を無視して、家を離れた。




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