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一章 勇者様の秘密
4話 勇者よ、変態であれ
しおりを挟むまさか勇者がロリコンとは……いや、男ってわかる様に言ったのに追いかけて来たって事はショタコンか……?どっちでもいいけど、こんな子どもに迫ってくるなんて、ほんとに世も末だ……。
ヴァンさん、何であんな変態通しちゃったんだよ。まさか、この気配を察知したからオレが服を脱がせないでいい様にしたのか……?だったら何で余計に通した!?いや……実力に性癖は比例しないのか……。
「ちょっとー!勇者変態だったんですけどー!オレあんなのと戦うの嫌なんですけどー!断固拒否なんですけどー!!」
バーン!と店の扉を乱暴に開けて、中にいるはずの相棒に怒鳴る。
「落ち着くにゃ。何?昼間言ってた強いやつって勇者だったにゃ?良かったじゃにゃい、待ちに待った強者にゃんでしょ?たとえ変態でも」
「そう!まだ原石だけどね!研けばピッカピカだろうさ!でも変態だったの!この姿のオレに熱い視線で迫って来たの!怖かったのー!!」
カウンターに寝そべる黒猫に必死に訴る。側から見たらオレも立派な変質者だ。
「にゃはははは!ご主人様が迫られたにゃ?てっきり、勇者パーティのにゃんにゃんでも見たのかと思ったにゃ。ご主人様ならそのくらい軽くあしらえたでしょ。何をそんなに動揺してるにゃ?」
そう言われて、はたと気づく。ほんとだ、何で抵抗しなかったのオレ。いや、しなかったってのは語弊があるけど、迫られる前に飛び退くとかできたはずだ。でもしなかった。選択肢にもなかったと言っていい。何で?
「それにねぇ、それってほんとにそーゆー意味で見てたにゃ?ご主人様の勘違いって事はないかにゃ?」
「へ……?」
「したんでしょ?アフターケア。完璧に治したんでしょ?普通出来るわけ無いのに。お礼言いたかったとかじゃにゃいの?穢れた目で見てたのはご主人様だけだったりしてにゃ」
丸い猫の目が、ニヤニヤと三日月型に歪む。自分でもわかる程に、サーっと顔から血の気が引く。
「いあぁぁぁあぁぁっ!!おっおお… オレの勘違い!?そっそんな事……」
「ないとは言い切れないにゃん?」
ヒュッと言葉に詰まる。ほんとに勘違い?オレが穢れてただけ?明日会うのに?はっ恥ずかしすぎる!!
「っ!!~~~ーーっ!!」
「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!ひーっひゃっひゃっひゃっひゃっ!」
オレの言葉にならない悲鳴と、相棒の猫らしからぬ下卑た笑い声が夜の店内に響き渡った。
頼む勇者よ!変態であれ!!
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