354 / 360
14 トゥオネタル族
324 トゥオネタルの魔王13
しおりを挟むトゥオネタル族がサタンに飛び掛かり、次々と吹き飛ばされて2分……
ザザザザーーー……
突如、金色の剣が降り注ぎ、サタンに突き刺さった。
「アレは……イロナか? よくわからんけど、全員退避~~~!!」
「「「「「ヒャッハ~~~!!」」」」」
その瞬間、トピアスは直ぐさま撤退の掛け声。トゥオネタル族は倒れた仲間を抱えて散り散りに逃げる。
「戦女神……ついに本性を現したな、戦女神ぃいいぃぃ~~~!!」
サタンは金色の鎧を着て羽ばたくイロナを見た瞬間、憤怒の声を上げて突撃する。おそらく、サタンが最後の瞬間に見た戦女神がこの姿だったので、記憶にこびりついているのだろう。
「そう叫ばなくとも、我から行くぞ!!」
サタンの大声に合わせて、イロナも突撃。その衝突は隕石どうしの衝突かの如く大爆発を引き起こし、ダンジョンの床と天井を破壊したのであった……
* * * * * * * * *
「立てるヤツは救助活動だ! 捜せ! 怪我してるヤツは上の階に逃げろ~~~!!」
イロナとサタンのせいで、トゥオネタル族はてんやわんや。トピアスの叫び声が響き渡ってる。
だって、イロナとサタンが衝突した瞬間、全員壁に叩き付けられたんだもん。生きてるのが奇跡。体の頑丈なトゥオネタル族じゃなければ、全員壁に描かれた真っ赤な絵画になっていたに違いない。
ただし、全員怪我を負っているので、生き残りを捜しているのは数える程度。全員、一斉に上り階段に向かってる。
「ててて……なんちゅう頑丈なヤツらだ……」
頑丈中の頑丈なヤルモがそう漏らしても仕方が無い。ほとんどのトゥオネタル族が階段に走っているからだ。
トピアスも捜索を急がずに、点呼を優先している。幸い下の階に落ちた者はいないようだ。
そんな騒ぎのなかヤルモはポーションを飲みながら、セーフティーエリアの面積を八割は占めそうな大穴の縁に立った。
「うお~。すっげ……」
大穴の中は、金色の剣が無数に飛び交い、真っ黒な炎が蠢き、衝撃波が絶えず吹き荒れているので、ヤルモの目には地獄に見える。
「アレがイロナなのか……」
そうしてヤルモが下を見ていたら、隣にトピアスが立った。
「そうだけど……初めて見たのか?」
「ああ。オヤジから聞いていたが、ここまで強いとは知らなかった」
トゥオネタル族では、イロナの戦女神化を見たことがあるのは祖父だけ。これは昔、イロナが調子に乗って戦女神化を使ったら、モンスターにトドメを刺せずに戦女神化が解けて死に掛けたところを祖父が助けたのだ。
しかし、ヤルモには関係ないこと。それよりも今後のことを話し合う。
「ま、そんなことより、撤退の準備をしとこうぜ」
「お前……あのイロナが負けると言うのか?」
「怒るなよ。もしものためだ。アレには制限時間があるらしいから、もしも時間が来たら俺がサタンを止める。トピアスさんたちでイロナを逃がしてやってくれ」
娘が侮辱されたように感じたトピアスはヤルモを睨んだが、ヤルモの覚悟を知って怒りを収める。
「お前一人じゃ無理だろ。俺も付き合う」
「お義父さん……」
「まだお義父さんじゃねえ! 動けるヤツを捜して来るから、お前はイロナの応援でもしてろ!!」
「まだ……」
お義父さんと呼ばれて怒りが再燃したトピアスであったが、ヤルモはついに認められたと拳を強く握り締めて喜ぶのであった。
ヤルモがイロナを見守り、トピアスがイロナ救出班と撤退班を決めて回復アイテムで体調を戻し、約半数を地上に向かわせている間も、下の階では世界の終わりかのような戦闘が続いていた。
「「うおおぉぉ~~~!!」」
その戦闘は互角。戦女神化したイロナはサタンの強力な魔法を複数の金色の剣を放って掻き消し、そのまま突き刺す。接近戦になればサタンの四刀流を金色の剣二刀流で捌き、鋭い一撃を入れている。
四天王を八体も吸収したサタンの魔法は、先程よりも威力が上がっているので、いくらイロナが金色の剣で散らしたところで余波までは防げない。イロナの体を焦がし、たまに直撃する。
サタンの四刀流の攻撃も、今までの学習効果で鋭さが増しているので、あのイロナでもたまに掠る。だが、接近戦はイロナに軍配が上がっているので、サタンは距離を取ることが多い。
開始たった2分で、イロナとサタンの攻撃回数は万を越える。イロナの金色の鎧は所々剥がれ落ち、サタンも体から腕が落ち足が落ち羽が落ち……その都度、自己再生で生やす。
しかし3分に達すると、ついに勝利の天秤が片方に傾いた。
「わはははははははは」
「グオオォォ~~~!!」
めっちゃ笑っているイロナに、だ。
これは、サタンよりイロナのほうが戦闘に関する頭のネジがブッ飛んでいるからの結果。サタンが自己再生に力を使っているのにも関わらず、イロナは金色の鎧を直せるのに攻撃に全ての力を注いでいたからだ。
こうなっては、もうイロナの独壇場。
サタンに金色の剣を無数に突き刺し、無数の斬撃を喰らわし、反撃すら許さない。
その攻撃は一方的に、千を越え、万を越え、その時が来る。
「ゼェーゼェーゼェーゼェー」
イロナの戦女神化が解けてしまった……
「クハハハ。余を殺すには、いま一歩足りなかったな。クハハハハ」
息を乱し、両膝を手で押して立っているのがやっとのイロナの元へ、体を治すこともできないボロボロのサタンが笑いながら近付いた。
「これで地上は余の物だ! 戦女神よ!!」
サタンが意気揚々と剣を振り上げると、イロナはニヤリと笑う。
「まったく……トドメを横取りされるなんて初めてだ。クックックッ」
「グアアアアアァァ……」
その瞬間、何百発というロケット弾が降り注ぎ、サタンは大爆発に巻き込まれるのであった……
0
お気に入りに追加
319
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる