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14 トゥオネタル族

321  トゥオネタルの魔王10

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 イロナが協力してくれると約束してくれたので、ヤルモは各種補助アイテムの支給。
 イロナがボリボリ食ってゴクゴク飲んでいるうちに、ヤルモもつまみながらレジェンドマイナスの刀のチェック。少し痛みがあったので、一段強いレジェンドの刀【物干し竿】をイロナに渡していた。

「準備万端だな」
「不本意ながらな」
「んじゃ、上に戻るか」

 イロナはドーピングしたくなさそうだったが、ヤルモは無視して上を指差した。たぶん、イロナに運んでほしいのだろう。

「行くぞ!」
「う、うん……」

 するとイロナは了承。でも、ヤルモは首根っこを掴まれたので、「持ち方はなんとかしてほしいな~」と思いながら、空を駆けるイロナに身を任せるのであった。


「戻って来たか」

 床に開いた大穴からイロナが飛び出て華麗に着地し、ヤルモがドシャッと落ちた場所にはサタンが待ち構えていた。言葉から察するに、イロナたちが生きていると知っていたようだ。

「我の主殿は凄かろう?」
「その男か……確かに余の攻撃をいなしたことには驚かされた。マグレだとしてもな」
「マグレかどうかは、これからたっぷり教えてやろう」

 戻ってすぐに、イロナとサタンがヤルモを持ち上げるので、ヤルモも何か言わなくてはならない。

「さっきまでの俺と思うなよ。いまの俺は、戦女神を守る騎士だ。もう、イロナに指一本触れさせないからな」
「戦女神だと……」

 ヤルモが挑発すると、サタンは怒りの表情に変わる。

「どうりで強いわけだ! 今度は余が勝たせてもらうからな!!」

 サタン降臨はこれが二度目。前回の敗北を記憶していたサタンは、明らかに戦女神のイロナを意識して腕と羽を広げる。

「「かかってこ~~~い!!」」

 こうして、サタンVSイロナ&ヤルモの戦闘は、二人の息の合った掛け声でリスタートするのであった。


 先手はサタン。ヤルモ程度なら真っ直ぐ攻撃してもすぐに終わると思ったのか、突撃からの四刀流。

「支えてくれ!」
「おう!」

 パワー負けしていては、受けるに受けられない。ヤルモはイロナに背中を押してもらい、サタンの一撃目を受け止めた。

「ぐおぉぉ!!」

 全体重の乗った一撃目さえ止められたら、あとはヤルモのモノ。ナビと視界を共有しているので、サタンの攻撃もハッキリ見える。
 サタンは体の大きさが裏目に出ているので、動き出しまでハッキリ見えるから、ヤルモは今までの経験から体が自然に動くのだ。

 サタンの斜め上から振り下ろされる剣は、角度を付けた大盾を上に持って行って、滑らして回避。横から来た剣も大盾で滑らして上に流す。最後の逆からの横薙ぎだけは、体当たりするように大盾をぶつけて止めた。

「さすが主殿だ!」

 その一瞬の停止が命取り。すかさずイロナが飛び出し、サタンを連続で斬り付ける。

「羽をなんとかしてくれ!」
「わかった!」

 サタンが痛みに顔を歪めている隙に、ヤルモの指示。イロナがサタンの左羽に向かうが、サタンはそれを阻止しようとイロナにターゲットを移す。

「させん」
「それは俺のセリフだ!」

 しかし、サタンが横を向こうと体を捻るのに合わせて、ヤルモのバズーカフルスイング。サタンの回転を止めるには攻撃力が足りないが、イロナが片羽を斬り落とすには十分だった。

「ドンドン行くぞ!」
「おう!」

 地上に張り付けにさえすれば、二人の独壇場。ヤルモがサタンの動きを止めて、イロナのアタック。順調にダメージを積み重ねる。

「ぐっ……重くなった。ちょっと待った……」

 だが、四天王の一角がまた落ちて、サタンの力が上がる。スピードも上がったようなので、ヤルモはタイミングを計るためにイロナに支えてもらう。

「いまだ!」

 サタンの攻撃に慣れると、ヤルモはまた大盾でのいなし。サタンは力を込め過ぎていたのか、大きくバランスを崩した。

「喰らえ~~~!!」

 大チャンスに、イロナのスキル発動。サタンの足を斬り、そのまま飛び上がりながら縦に斬り裂き、上からの斬り付けに移行する。

「ナビ、ビームだ!!」
『はっ! ファイアー』

 その連続斬りはサタンに邪魔されそうになったので、ヤルモはアゴが外れない程度のビーム。前もって準備をしていた最速の攻撃で、サタンの攻撃を邪魔する。

「グオオォォ! 舐めるな~~~!!」

 イロナに、頭から腰に掛けてバッサリ斬られたサタンは怒り狂い、自分中心に黒い炎を出して、ヤルモたちを吹き飛ばした。

「魔法も強えな~」
「うむ。最初からそれをやっていれば、もっと楽しかったのにな」
「それは同意できないけど……いまのうちに回復アイテムとか飲んどこう」

 ここからは魔法も加わって難易度が上がりそうなのに、イロナは待ってましたと言わんばかり。もちろんヤルモは強くなって欲しくないので、ボヤキながら回復と補助アイテムを補給する。

「四天王はあと一体……いや、やりやがったな!?」

 黒い炎の鎮火を待ちながら周りを見ると、ちょうどトゥオネタル族が四天王を倒してしまったので、ヤルモは締めの言葉はストップ。最後の四天王が倒される前にサタンにダメージを多く与えようと言おうとしてたっぽい。

「これでさらに強くなるのか。クックックッ」
「チッ。あいつら……まぁいい! これで打ち止めだ。サクッと倒してやろうぜ!!」

 これでサタンの急激な力の変化はストップ。ヤルモはポジティブにサタンとの戦闘を再開するのであっ……

「ちなみに主殿の頭に乗ってる人形はなんだ? 巨乳になってるぞ??」
「いまいいこと言ってたんだけど……」
「やはり主殿は巨乳が好きなのか??」
「いま聞くことか??」
『元帥の好みに体が作られています』
「……とか言ってるぞ?」
「ナビはよけいなことを言うなよ~」

 いや、軍服巨乳人形ナビが気になったイロナの質問や、ナビがヤルモの潜在意識で具現化しているとチクるので、ヤルモの集中力が削がれるのであったとさ。
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